例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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長らくお待たせいたしました。ある程度めどが立ちましたので投稿再開します。スピードは前より大分落ちるかも。


第二計画編
53 第2計画編 第1話 自分からの手紙


「やほーっいいんちょいるアルかー?」

私がクラスの当番で開店準備をしていると、クーがそんな掛け声と共に入ってきた。無事に戻ってこられたらしい…という事は第二計画世界線に私は分岐したという事になる…のだろう。そして後から入ってきたアスナが委員長と喧嘩を始めて、その上で学園祭最後の合同イベントをかくれんぼ大会から対ロボ軍団迎撃サバゲ―に変更する様に申し出てきた…当然大ゲンカである…ふむ…ネギの反撃の一手だろうが…誰の入れ知恵だろうか?

「あー…実はいいんちょ、これはネギ坊主からのたっての頼みなのアルが…」

と、クーが囁いた瞬間、委員長は落ちた…ウム、そりゃあそうなるか。

 

「あ、そうそう、千雨…ちょっと来て欲しいアル」

と、私はクーに呼ばれた。

「あれっ千雨ちゃんいたのっ!?」

「いや、アスナ…いるはずだから呼んでくるように言われていたアルネ?いるに決まっているネ…まあ気配は消していたようだが本気で隠れてはいなかったアルよ」

「ま、そういう事だな…おかえり、クー、アスナ」

と、私はクーに促されるままについて行く。

「応、ただいまアル…ってアレ?」

「ちょ、千雨ちゃん、なんで私達が一週間後から戻って来たって…」

「ネギの携帯にかけて私が別荘出てすぐの時間にお前らがいなかったのは確認済みだ…し、超の奴がそーいう罠をタイムマシンにかけているとは最初から予測していたし、その予測が正しい事も確認しているよ…まあいつから戻ってきたのかは今知ったけど」

「ちょ、だったら教えてくれてもいいじゃん!」

「私は中立だって言っただろうが…そーいう搦手も戦いの内さ…で、何処に向かっているんだ?」

「ん…図書室よ…ネギがあんたに渡す物があるから連れてきて欲しいって」

「私に渡したいもの…?」

このタイミングで何事だろうか…未来で私が妨害をしたので、敵と確定されてタコられるとかのがありそうなのだが。

 

「よう、おかえり、ネギ…えらく派手な事を企んでいるみてーじゃねーか」

ソファーで横になるネギをからかうように声をかける。

「あ…千雨さん…よかった…本当にこっちにいてくださいました…」

と、ネギはのっそりと起き上がって安心したようにそう言った。

「そりゃあいるさ、向こうの私を置いてきたのでも気にしていたのか?」

まあ、連れて来られても困るのだが、この私も向こうの私も。

「はい…さすがちうさん…お見通しですね…」

「ははは…なんでも、ではねぇさ…現に誰の入れ知恵か知らねぇが、無自覚一般人を動員するなんて大それた作戦を実行するとは思ってもみなかったしな…誰の立案だ?」

「えっと…僕…です。超さんなら僕たちが最終日に戻ってくる可能性は当然考えていると思うべきです…だとしたら超さんが驚くくらいの作戦じゃなければ勝てないと…思ったんです」

「ああ…なるほど…な。その発想は間違っちゃいねぇな」

現に、ネギが罠にかかった後に戻って来る事までが超の計画であると私は聡美から聞いている。

「えっと、それで本題ですが…向こうの貴女からです…できれば、僕たちの手伝いをして頂けませんか?」

そう言って、ネギは私に一通の封書を手渡してきた。その場で開封して中身を読む…簡単にではあるが暗号化された未来の…いや別の世界線の私からの手紙…その内容を要約すると、第一計画は今のところ順調で、事前に聞いていた通り、最後の仕上げにネギをこちらに送る。その時に、こっちの私を信じるなら渡してほしい、とこの手紙を預ける事にする、向こうの私が言えた義理ではないが、信頼に応えてやってはくれないか?という事だった。

「…で?私に何をしろって?」

ここで正面戦力として動員する気ならさすがに帰る…が

「千雨さん…僕が超さんを止めます…だからそれまでの間、インターネットで超さん達がしている活動を阻止して頂けませんか?それと、終わった後の後始末と…できれば迎撃作戦の広報を」

「…わかった、インターネットでの超たちの情報拡散活動の遅延とお前が勝った場合の後始末、それと一般人を動員したあの迎撃作戦の広報だな?」

と、意図的に少し言い回しを変えて協力を呑む。

「おっと、超たちが学園結界を解除する為に学園側に仕掛けるであろうクラッキングの阻止も頼むぜ、姉さん」

カモがこう口を挟んできた。そこには触れないように言い回しを変えたのに…

「…それはちっときついな。正面切って超たち…恐らく茶々丸とやり合うのは電脳戦でも断る。学園側の支援というのも…指揮所に入れれば防衛の手伝い位はしてやってもいいが…少なくともこの件に関して、私は学園から信用されてない。外部からだと超の隠し玉を得た茶々丸相手だと…装備が足らん、フル装備でギリギリって所だが、私の電子戦装備は逃亡用に一部解体してある」

「そこで仮契約さ、千雨姉さん」

「ちょっと、カモ君」

「オイ、カモ」

カモの言葉にネギと私が突っ込む。

「でもよ、そうでもしねえと装備が足りねぇんだろ?千雨姉さん…初めてでもねぇみたいだし…なにより、パートナー庇う為にも戦果はあった方が良いだろう?」

と、カモが言う…最後だけは私だけに聞こえるようにわざわざ私の肩に飛び乗って。

「っ…カモ、てめぇ!」

どうやって知った、と激高してカモをひっつかんで叫びかけて気付く…このエロオコジョ、絆契約を得意とする妖精だったな、と。そりゃあ私と聡美が一緒にいるところで何度も会っていれば隠しきれるわけはなかった。一応、聡美は協力者枠なので魔法界の慣例的に重い罪にはならんはずだが事が事である…庇う算段はしていなくはないのであるが…確実を期すために私はカモの囁きに乗る事にした…主作戦の妨害にならない程度の戦果でアリバイを作っておくという方向で。

「カモ君!千雨さんに何言ったの!」

「何でもねぇよ…ネギ…する…仮契約するし…学園側に支援もする…だから…聡美たちの減刑への協力を約束してくれ」

私は懇願する様な演技でネギに言った…カモを掴んだまま…

「えっ…はい…僕の生徒ですし、当然、酷い処分は避けられるように尽力しますよ」

と、ネギは戸惑いながらも答えた…よし、言質は取れた。

「よし…やれ、カモ」

「あいよ!」

カモを放し、仮契約の魔法陣を書かせる。

「えっちょ、千雨さん!?んっ…」

…という事で私はネギと仮契約を結んだ。

 

「アデアット」

カモに複製カードを作ってもらった私は、再び眠りについたネギを起こさないよう、少し離れた場所でアーティファクトを具現化させてみた。…力の王笏という名のそれは、その名にふさわし…くない魔女っ子の玩具の様な見た目であった。

「はい、千雨さん、簡易取扱説明書です。この通りにすれば正式な取扱説明書を開けるはずです」

「夕映…その…ありがとう…別荘では少しからかい過ぎた」

「…いえ…向こうの貴女に注がれた毒に比べれば…」

「…そんなに酷い事言ったのか?向こうの私…」

「いえ…ただ…超さんの罠と麻帆良祭内での跳躍の違いを突き付けられただけです…カモさんを含め、皆さんは気づいていなかったようですが」

「ん…?向こうの千雨姉さんが協力してくれた理由か?ゆえっち」

と、カモが言う。

「ああ…同じ世界線の中にいるか…分岐した別の未来から帰って来たか、か?」

「…はい」

「なっ…それって…時間差や事情はともかく、超のやっている事と完全に…この事は兄貴…いや皆には」

「…黙っておくべきです…少なくとも、自力でその事にたどり着くまでは」

「どうするか、私は口を挟まんし、私からは言わねぇが…ここぞという時に超に囁かれても知らんぞ?」

と、私は夕映から受け取った説明書を読みながら言った。

 

 

 

「とりあえず表向きの広報は一通りおわったぞ」

作戦の確定を受けて麻帆良祭最終イベントの告知という体で色々とネットで宣伝をした私はそう宣言した。

「ありがとうございます…千雨さん。でも…本当にこれでよかったんでしょうか…一般人を巻き込んで…これでは超さんと同じです。力に対して力で対抗するなんて…それに僕…超さんが本当に間違っているのか、まだ…」

再び目覚めたネギがそんな泣き言をいう…まったくマスターの弟子らしからぬ奴である…まあそういう所も嫌いではない…が。

「…私にそれを問うな、別荘で言ったように手段が悪だと呼ばれる自覚はあるが間違っていると思っちゃいねぇから協力していたんだからな。それに、デカイ悩みは吹っ切るなって言いはしたけどな、お前はリーダーだ、少なくとも仲間の前では腹括ってドーンと構えているのも仕事の一つだぞ、ネギ」

「…でもせめてもう一度話し合いを…」

「…それを望むならば、あいつの送別会の時にでもその席を設ける約束を結んでおべきだったな…もう遅い」

「あうう」

「力には力を!超達も魔法使い側も、もうそういう段階に入っちまっている。まずは超の計画を実力で止めん事にはお前の…いや学園の魔法使い達の負けだよ」

「…そうですね、確かに主義主張の相容れぬ者が力を行使してきた時、既にそこに話し合いの場などなく…力に対するには力の行使か、力を後ろ盾とした交渉が基本です」

と、ハルナの手伝いをしていた夕映がやってきて私の言葉を補足した。

「でも、悩む事が悪いとは思わないです。自分が正しいと思ってしまえばそこですべての回路は閉じてしまうのですから…少なくとも、あなたは間違っていないと思うですよ、ネギ先生」

そう、夕映はネギに言った。

 

 

 

「よし…全て終わりだ」

力の王笏に付随していた電子精霊アップデート(昇位)キットの精査並びにうちの電子精霊たちへの適応と、超の情報拡散プログラムへの活動遅延と世論誘導を兼ねた新イベント関連の噂拡散を終えた私はそう宣言した。なお、さっそく電子精霊たちには、この建物の通常ネットワーク(学園長室とかは物理的に別系統にされている様である)を掌握・拠点化する準備をさせている。

「よっしゃー」

「お疲れ様ですー」

ハルナとのどかがそうねぎらってくれる。

「浮かれるのはまだはえーぞ、ハルナ」

「本番はこれからでござる」

「ええ…」

「うぅ~ん」

ハルナを窘めているとネギがうめき声をあげた。

「やっと寝られたかと思えばうなされているな…」

「だ、大丈夫なんですか」

「…まあ一応、魔力回復的にはそう心配することはない…が心配すべきはネギのメンタルだな。

何が正しいとか、間違っているとか…ネギにゃまだ重すぎる荷物だよ」

「確かにネー私にもそんなんわかんないのに」

「本当だよ…かといって開き直れる奴でもねーからなぁ…」

「ええ…それが先生の美徳でもありますが」

「そうだな…わりぃが私はその辺りは今回ノータッチだ、ネギが望むなら感想戦くらいは付き合ってやってもいいけどな…超にここ一番って時に傷口抉られたくなけりゃ、さっきの件と合わせてお前が手当てするしかねぇぞ、夕映」

「…はい、わかっています」

夕映は少し震えた声でそう返した。

 


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