例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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55 第2計画編 第3話 決戦の地へ

「…お母さま、あなたは化け物ですか?」

「ん?まあ並の連中よりは使えるとは思うけどそこまでかね?」

とりあえず、と部屋で留守番している連中を除いた手持ちの電子精霊7群の内、3群を割いて茶々丸と踊りながら予備1群を手元に拘置、残り3群で図書システム経由で学園内の各学校の授業用PCを一斉占拠、割り出した茶々丸側の中継ポイントに一斉にDDoS攻撃を敢行、茶々丸が対応に回った隙をついてとりあえず、と学園側の指揮所と茶々丸側を隔離し、復旧阻止を止めさせた辺りでそんなことを言われた。

「ええ、先ほどのDDoS攻撃まで優勢と思っておりましたが、すでに通信妨害の余裕もなくなっていますよ…お母さま、そのアーティファクトを持って電賊になれば無敵じゃないですか?」

「ははは、まーリソースの問題さね、今のは。まぁ攻城戦で圧倒できるほどの差はないだろうし…せいぜい頑張れ」

と、攻め手を強めていく。

 

 

 

イベントの状況を確認しながら茶々丸と遊んでいるとついに超の居場所が発見され、ネギの出陣という段階に達した…唯一魔力だまりに到達していない鬼神もネギが中破くらいまで追い込んで。

「っと…そろそろあっちに行かねーとな…」

聡美の身の安全にゃ代えられんのである、例え超もネギも聡美に危害を加える気がなかろうが、流れ弾で何かないとも限らないし…何かあったら、私は私を許せない。

「って事でこの辺りにしようか、茶々丸」

学園結界の復旧システムを掌握し、茶々丸の反撃をしのぎながら復旧を進めていた(超とネギとの決着がつくまで復旧させる気はないが)中々の佳境ではあった。

「むぅ…あれだけ有利な状況からでしたのに…」

茶々丸のアバターが現れる。

「ちうさま、学園結界再起動プロセス進度85%ですが…どうしましょう」

「再起動寸前まで進めとけ、超が負けたら再起動で、ネギが負けたら撤収しろ…でいいな?茶々丸」

「はい、かまいません。では私はこちらから見届けさせていただきます…本当はもう少し遊んでいただきたかったのですが」

「わるいね…私のお姫様を守りに行かにゃならんのでな」

と、いう事で私は意識の比重を再び現実に戻した。

 

 

 

図書室近くの中庭まで来ていた体に意識を戻すと、私は空を駆ける。瞬動で、虚空瞬動ではるか上空へ…スタミナも大分削れるだろうがまあ戦うわけではないのでかまわないだろう。

「っと…あれはネギか」

ロボ軍団に迎撃されていたネギが後続の支援を受けてさらに上昇するのが見えた…間に合ったか。私は戦闘空域を迂回し、飛行船に降り立った。

 

「ネギ先生!」

「超さん…葉加瀬さん…!」

「っと…間に合ったみたいだな」

「千雨さん!」

「千雨さん!?どうしてここに!」

聡美が喜びの、ネギが驚愕の声を上げる。

「んーお前と超とのバトルに聡美が巻き込まれないように肉壁になりに来たんだよ、まあ気を付けてはくれると思うけどな、一応、だ」

そう言って私は聡美の隣に立ち、息を整える。

「さて、私はおまけだ、邪魔して悪かったな」

「そうネ…っほん、さてよくここまでたどり着いたネ、ネギ坊主。

そして…これで君と私は同じ舞台に立った。

さあ…それで、どうする、ネギ坊主?」

超の言葉にネギも杖から飛行船へと降り立ち、口を開いた。

「今度こそ…あなたを止めます、超さん!」

「…よかろう。では、私も私の思いを通すため、持てる力を揮うとするネ」

ネギの言葉に超はそう応えた、そして…

「行くヨ」

戦いは始まった。

 

 

 

「おっと」

カシオペア使い同士の戦いというチートバトルを聡美の隣で眺めていると真上での電撃衝突なんて事をしやがったので、余波を防ぐために障壁を張る。

「計算以上です…!」

「だな、私もどれだけ凌げるやら…」

まー一応の対応手段がないわけではないが、逃げに走っても対応困難なチート技能である事は疑いようもないし、恐らくは攻め手に回った瞬間に鎧袖一触にされるであろう。

というか、私がいない所でこそこそやっていた研究の一部はこれだな。

「フフ…ネギ坊主、まさかこれ程とは…この短期間でカシオペアをここまで使いこなすとは…さすがは私のご先祖サマネ…あ、千雨サン、まさか協力してないだろうナ?」

超がジト目で私を見る。

「してねーよ…まあ協力を頼むつもりだった、らしいが…な?ネギ」

「ええ…カシオペアの戦闘への利用に際して未来予報の魔法にも詳しい千雨さんの協力を得たかったのですが…」

そう言ってネギは自身のカシオペア一号機を取り出して見せた。

「!!それは…精霊ですか?まさか、それで事象予測と精密操作を…?」

聡美がそう問うた。

「その通りです、魔法使いならば誰もが最初に習う最も基本的な魔法、『小物を動かす魔法』と『占いの魔法』…それを司る精霊です」

「成程…貴方だからこそ、そんな基本的な魔法でも…成し遂げてしまえた…と」

「ええ、ご存じの通り、こういった基本魔法や魔法理論は得意中の得意なので…戦闘魔法や戦闘技術よりも、遥かに。さすがに実験には相応の時間が必要でしたが、何とか間に合わせました…伊達にメルディアナ魔法学校をここ10年で一番の成績で卒業していませんよ」

「むむーさすが天才少年、ネギ先生…と言った所でしょうか…そして自らの自慢とは珍しい!」

「そうだな…でも…」

やけに饒舌に過ぎる…超も訝しんでいる。

「さあ、超さん、これであなたの戦力的優位はなくなりました。大人しく降参し、計画を中止してください!」

あー成程…そこまで甘ちゃんだとは思いたくないので…そういう事か…超もニヤリと笑う。

「大丈夫ヨ、ハカセ。最終詠唱に入ってクレ」

「でも…」

「大丈夫ネ…ハカセを頼むよ、千雨サン」

「ああ…言われなくとも」

「超さん!?」

ネギが焦ったような声色で叫んだ。そして、さらに饒舌になるネギに、超はらしくないと告げ…ネギのカシオペアが後、良くても数回で壊れてしまうだろうことを看破した。

「…一撃あれば充分です」

「…待て、ネギ坊主。その一撃の前に、今一度問おう」

構えをとるネギに対して超がそう言って制止する。

「事ここに至って、頭のいい君にはもうわかっているハズネ、私の計画が意味するものを」

一瞬、ネギが身じろぎした…超が続ける

「ネギ坊主、私の同志にならないカ?悪を行い、世界に対し僅かながらの正義を成そう」

超とネギが見つめ合う…そして聡美の詠唱を聞き流しつつ、それを見守る。

一瞬の逡巡…

「隙アリ」

案の定、超はそれを突いた…が、ネギもカシオペアを用いてそれに応じ、見事、超のカシオペアを破壊せしめた。

「う…ぐっ」

「超さん…僕はあなたを否定できません…ですが、あなたの仲間にもなりません!」

「フ…君はそういうとわかっていたヨ」

ネギの宣言に、超はそう答えた…と、同時にネギのカシオペアも限界を迎えた。

 

と、いうあたりで軍事研の機体が上がってきたらしく、近くでホバリングを始める。

「…お帰り頂くか?」

「イヤ…せっかくの祭りの佳境ヨ…地上の皆の為にもご観戦いただく…ネッ!」

超が強制跳躍弾をネギに放ち、戦闘が再開する…

「超さん、やめてください!勝負はつきました」

「いや、まだネ、ネギ坊主…まだ終わらぬヨ!」

まったく…諦めの悪さはさすがネギの子孫か?と心の中で独り言ちた。まあ、私が超の立場でも諦めなどしないが。

…超の、浮遊レーザー砲台を犠牲にした跳躍弾の弾幕…しかし、ネギはそれを危なげではあるが回避して見せた。

「確かにその銃弾は脅威です…ですが…もう簡単には喰らいません!」

…一撃必殺の弾丸は未だ有効…超にとって、最悪相打ちでも良く、この状況下であればあと数分、時間を稼げば聡美の最終詠唱は完了し、それは超の勝ちでもある…はずだ。その点では、超をできるだけ傷つけたくないと未だ考えている節の有ることも考慮すれば戦術的に不利なのはネギの側である…まあ超をボコる気になればあっという間に天秤は傾くが。

「絶対的有利を保証したカシオペアが使えなくなった以上…魔法を使えないあなたは僕に勝てませんよ!さあ、超さん!」

「魔法ネ…さあ…それはどうカ?」

ネギの降伏勧告に超は吐き捨てるように答えた。

「コードXXXXXX呪紋回路開放封印解除」

そして聞き捨てならない事を呟いたのち…

「ラスト・テイル・マイ・マジックスキル・マギステル」

呪文の詠唱を始めたのであった。

「契約に従い我に従え炎の覇王 来れ浄化の炎 燃え盛る大剣」

「呪文!?まさか…!?」

「私が魔法を使えるとオカシイカ?私はネギ坊主とサウザンドマスターの子孫ヨ?」

へぇ…と思わず思考する…超はそういうが、実態は恐らく違う…超の体に見える魔力の流れ…あれは多分、魂に負荷をかけて魔力を絞り出す呪紋である…私が次の切り札の一つとして研究している設計を煮詰めていくと…ああなると私は確信する…あれを見せられればそれはそれで派生も浮かばなくは無いのであるが。

「ほとばしれソドムを焼し 火と硫黄 罪ありし者を 死の塵に 燃える天空」

超の呪文が完成し、障壁を張ったネギに直撃する…これで五分といった所か…見せてくれ、超…きっと私が原型を残したソレの威力を

 

「…素晴らしい、今のを持ちこたえたか、ネギ坊主」

息を乱しながら、超が言う。

「ハハ…ここまでくればもはや策などない。後は互いの思いをかけた力と力のぶつかり合いがあるのみネ」

覚悟を決めた顔で超が再び詠唱に入る…やはり心身…そして魂への負荷はすさまじそうだ。

「ラスト・テイル・マイ・マジックスキル・マギステル 火精召喚 槍の火蜥蜴29柱」

「ま、待ってください!」

「問答無用ネ」

「くっ…ラス・テル・マ・スキル・マギステル 風精召喚 戦の乙女17柱」

超とネギの精霊召喚が激突する…技量・練度はさすがにネギのが上か

「超さんッそんな力を使っちゃダメです!それは千雨さんの呪血紋何て比べ物にならないくらいの外法でしょう!?呪文を唱えるだけで凄まじい痛みがあなたを襲っているハズですよ!?なんで…ッ」

「ほお…そんなことまでわかるのか、そう言えば千雨サンで呪紋自体は見慣れていたナ…だが…」

「かッ…ゲほッ」

超の一撃がネギの腹に入る…油断しすぎだ、アホめ

「今さら手を緩めてどうする?死ぬゾ。それに…意見を違えた君と話すことはもう何もない。

私はこのためだけにこの時代へやて来た。2年の歳月と全ての労力をこれに注いだのダ

この計画は今の私の全てだ、ネギ坊主!言葉などでは止まらぬヨ!」

なんだかんだと言葉を交わしつつ、今度は魔法の射手が激突…機動魔法戦に移行した…一応余波は大したことないが油断せずに流れ弾から聡美の盾を務めねぇとな…

聡美の方を見ると詠唱を続けながらも不安そうに超とネギを目で追っていた。

「大丈夫だ…きっと…な」

私の言葉に聡美はこくりとうなずき、詠唱を進めていく…

 

「やっと本気カ…そうだ、それでいい」

覚悟を決めたらしきネギに対し、超がそう言って、こう続けた。

「この計画を止めたくば、私を力で倒せ、完膚なきまでに。サウザンドマスターの息子ダロ」

ネギが応える。

「…一つだけ…教えてください。このためだけにこの時代へ来たと言いました、これがすべてだと。

では、くーふぇさんや葉加瀬さんに千雨さん、そしてクラスのみんなと過ごしたこの2年間は…超さんにとって何だったんですか?」

「クラスの…みんな」

超の表情がその瞬間、革命家から一人の少女のものになる。

「…そうネ、それが私の唯一の計算違い…驚いたことにこの2年間は…とても楽しい2年間だたヨ…

大発光の1年前倒しの可能性を聞かされた時、これが罰かと思ってしまう程に…

だが…元々、その幸せは私にとてはいつかは覚めねばならぬモノ…儚い夢…ネ」

超は自分に言い聞かせるようにそう言って瞼を閉じ…開いた時には元の革命家の顔に戻っていた…第一計画…それはあるいは夢を見続ける為の箱舟だったのかもしれない…

「おしゃべりは終わりネ」

瞬間…にらみ合い、二人は互いに詠唱を始める

「ラスト・テイル・マイ・マジックスキル・マギステル 契約に従い我に従え炎の覇王」

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 来れ雷精 風の精」

「来れ浄化の炎 燃え盛る大剣 ほとばしれソドムを焼し」

「雷を纏いて吹きすさべ 南洋の嵐」

「火と硫黄 罪ありし者を 死の塵に」 

「雷の暴風」

「燃える天空」

僅かに早く完成したネギの魔法、そして迎撃には間に合った超の魔法…それは二人の間よりも超寄りで激突し、互いに魔力を注ぎ込んで押し合う…

「…引き分け…いや、超の勝ちかな…?」

もうすぐ終わるであろう聡美の詠唱に耳を傾け、そうつぶやいた。

 

パキイィン

 

そんな音が聞こえた気がする…そして突如、超の魔法が止まった。

ネギの魔法に弾き飛ばされ、墜ちていく超…それをネギが手を掴んで阻止する…

「甘ちゃんめ…なんのために戦ったんだか…超の事は私に任せて上がってくれば…勝ちだったのに」

飛び降りようと寄った飛行船のふちで私は呟く…ちょうど背中では聡美が詠唱を…終えた。

 

ちうさま、どうしましょう。今ならまだ止められますが

 

随伴していた電子精霊が電脳側に残してある私の意識にそう問う…ああ、まだこれがあったな…

「…ネギが上がってきたら学園結界を再起動しろ、上がってこられなければ勝ち…そうでなければ…」

ネギの様子をうかがう…超を抱きかかえ何とか上昇してきたネギと目が合う。

「千雨さ…ゴぷッ」

だが、あと少し、という所でネギは血を吐き、体勢を崩す…ああ、魔力の限界か…

「くっ…わあぁぁ…ぁ」

そして、最後の力を振り絞ろうとしたネギは、しかしそれはかなわずぶつりと糸が切れたように墜ちていく…

というわけにはいかず、私は二人を回収した。

「お疲れ様…ネギ、若干甘いがお前の勝ちだよ…って事でいいな?」

そう、私は超と聡美に問うた。

「ええ…少しもったいないですが…」

聡美が柔らかい笑みでほほ笑む。

「アア…私を無視していれば…自力で上がれたハズネ…」

超も、倒れたままネギを見て微笑みながらそう答えた。

「と、いう事だ、やってくれ」

 

かしこまりました

 

直後、学園結界が再起動し…強制認識魔法は…私たちの2年間は…その力を急速に失っていき…はじけ飛んだ…

 

「おーい!」

アスナの声が聞こえる。

「あ、皆さん」

振り返ると、そこには飛行路面電車に乗ってここまで上がってきたアスナたちの姿があった…五月か…この改造は手伝った記憶がある。

「さ、ネギ君、超りん、治療の時間やえ」

このかがアスナに抱えられてこちらに飛び移ってくる…そしてあっという間に二人の傷を治してしまった。

「さ、帰ろう?みんな待っているよ」

アスナがそう言って私たちに手を差し出した。

「…ああ…行こう、聡美、超」

「ええ…夢から覚めたら…日常に帰らないといけません…たっぷり叱られるでしょうが」

そう、聡美が返す。

「ああ…生きながらえてしまったからには…帰らねばならないネ」

超も、そう言ってにこりと笑った。

 

こうして超の…いや私たちの夢は終わりを告げた

 


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