例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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56 第2計画編 第4話 決着の後…

「全て…終わたな、ネギ坊主」

「超さん」

イベントが成功裏に終わり騒いでいるみんなを尻目に、超とネギが対面していた。

石柱の上に立っていた超のそば、別の石柱にネギが上がる。

私と聡美はその石柱の影にいた。

「超さん…行ってしまうんですか?」

「ああ、私の全てだた計画は消えた…もうココに用はない」

「…一つだけ聞きたいことが…超さんの全身に施された呪紋処理の事です。

あれは…超さんが自分でやったものじゃないですね?」

ネギの問いを超は無言で肯定する。

「…やっぱり…あれは…正気の人がやったものとは思えません!

あれは千雨さんでさえ躊躇う類の…術者の肉体と魂を喰らってそれを代償に力を得る狂気の技です!

いったい誰があなたに…何のために!?」

…やかましい、というか私でも躊躇うってなんだよ、その言い回しは…第一、そういう類の研究もしているし…自慢にゃならんが。

「…超さん、あなたの過去に何があったんですか?その『何か』があなたにこんな計画を実行させた理由なんですか?」

「フフ…未来のコトは話せないネ」

「超さんッ」

「ネギ坊主」

ネギをたしなめる様に超が言う。

「誰かの過去を知ることで誰かのコトを理解できるなどとは思わぬコトダ。

私を知りたければ歴史の教科書を開くか今夜のニュースでも聞け。

今現在も世界に溢れるありふれた悲劇と何ら変わらぬつまらぬ過去ネ」

「…超さん…」

「お前たちが勝た、その事実で十分のハズヨ。

言たハズネ、君と話すコトはもう何もないト。

では、これでサヨナラネ」

行くのか…超…さらば…だ

「…駄目です、超さん」

と、おもったらどうやらネギが跳躍を止めたらしい…そして、五月とクーと…茶々丸が近くにやってきた。

「ムム…今の瞬動はスバラシイネ、縮地レベル!」

「もーっ、ごまかさないでくださいっ」

 

そんな会話を聞きながら、互いに頷き、胸の中の聡美にいう。

「行けるか?」

「はい…今度こそ、本当にお別れ…ですね」

聡美はそう言ってうなずいた。

 

ザッ

 

五月をクーが、聡美を私が抱え、別々の石柱上に上がる。

「「超…」さん…」

「みんな…」

超が私たちに気づいたように言う。

「超さん…全てだなんて…嘘ですよ。儚い夢だなんて、そんなハズありません。

…超さん、僕と一緒に『マギステル・マギ』を目指しませんか?同じこの時代を生きる人間として。

この時代を生きる人間として一緒に未来を変えていくのなら…僕が誰にも文句は言わせません」

気づけば、朝倉を含めたネギの仲間たちも近くへやってきており、私たちを見守っている…

「そうネ…そんな未来も悪くないかもしれぬナ」

穏やかな表情でそういう超の様子にもう一度…もう一度止めてしまいたくなる…が、もう私は語るまい、と聡美の手を握った。すると聡美も手を握り返してくれた。

「そ…それじゃあ、超さん!ここに残って…みんなと一緒に卒業を…!」

「いや、帰るネ」

その言葉に、アスナたちがずっこける…私たち超一味はやれやれという感じであるが。

「超…」

「超さん、どうして…!?」

ネギが戸惑う様子で問う…が、超はからかうように応じた。

「ハハハ、それよりいいのカ?この私にそんな愛の告白のようなコトを言て?」

「え…あいの?」

わかっていない様子のネギに超が説明をする。

「共に『マギステル・マギ』を目指そうというのは魔法使いの世界では生涯を添い遂げようと言うに等しいネ」

「えっ」

超はネギの両ほほに手を添えてつづけた。

「仮にも血の繋がた私にプロポーズはまずいのではないカ?ネギ坊主」

「いえッ」

いえッ、じゃねぇよ、それでも構わないと取れるだろうが。

「コラーッちょっと超ッ、あんた―ッ!」

「黙って聞いていれば何言ってんの、アンタ」

アスナとハルナが流石に突っ込みを入れてくる。

「アハハハ、怒るな、冗談ネ」

「超さん!冗談じゃないです、僕は本気で…」

「尚悪い、バカ坊主」

ゴッ

「あぷ」

言いすがるネギに超のこぶしが決まる。

「今のは聞かなかたことにしてやるネ、そんなセリフはお前の大事な人の為にとっておけ」

「超さん、なんでそんなに頑固に…」

「クドい。やれやれ…この件についても力でやり合わねば結論は出ぬか?所詮、血塗られた道ネ…」

そして超は悪い笑みを浮かべてつづけた。

「よかろう…私も最後の切り札を出そう、この超鈴音最強最大の一撃ネ。

先程の戦いでこれを使えば私が確実に勝てただろうがあまりに危険過ぎてあえて封印していたほどヨ」

「くっ…超鈴音!まだやる気か!?」

超の言葉にネギたちは刹那を筆頭に臨戦態勢になる。

「ちゃ、ちゃ、超さんっ!?」

「これを使えば君たちの仲間割れは必至、未来の力を集結した究極の心理攻撃兵器…」

超とネギのやり取りを眺めつつ、聡美に問う。

「そんなのあったのか?」

「多分なかったと思うんですが―」

「それが―これネ」

そして超が取り出したのは、超家家系図と書かれた一冊の本だった…場が困惑で凍る…

「ちゃおけ…かけいず?」

ネギが首をかしげる。

「私がネギ坊主の子孫とゆーことは、当然ネギ坊主はだれかと結婚して子を生したとゆーことネ。

という事はこの家系図には当然、その誰かの名前も…」

…ああ、そういう事か…私にゃ関係ないが…多分。私は末代になる予定だしな、今の所は…できればそうなりたい、あるいは科学か魔法かでそうならない事を望めるならば望んでもよいが。

 

「ネギ先生の結婚相手がなんですの!?」

場の硬直は委員長とまき絵がやってきたことで解けた。

「とにかくマズイッ、ネギ君、それを守って!」

朝倉の檄が飛ぶ…が時はすでに遅くハルナが家系図を強奪し…その後およそ一分足らずで乱闘に突入した事によりネギパーティーはその組織的戦闘力を失った。

「ああああ」

「アハハハ、計算以上ネ」

ガクガク震えるネギに対して、超はそう笑った。

「では…私はそろそろ行くとするネ」

「超さん…どうしても…なんですか?」

「いや…楽しい別れになたヨ、礼を言う、ネギ坊主。私には上々ネ」

ニコっと超は明るく笑う。

「でも…本当にこれでいいんですか!?超さん、あなたは何一つ…」

ネギの言葉を遮って超が言う。

「いや…案ずるな、ネギ坊主。私の望みはすでに達せられた」

あはは…それにはいくつの意味が含まれているんだろうな…超。

「え…そ、それはどういう…」

「わが計画は消えた、だが私はまだ生きている。

ならば私は私の戦いの場へと戻ろう…ネギ坊主、君はここで戦い抜いていけ」

大規模跳躍用と思しき魔法陣が展開され、超が宙に浮く…いよいよだ

「超さん…」

「五月、超包子を頼む、全て任せたネ」

五月が頷き、任せて、と答えた。

「ハカセ、未来技術についての対処は打ち合わせどおりに…あとこの間の実験途中のデータだが…」

「全てわかっていますよ、超さん」

聡美も大丈夫、と胸に手を当てて答えた。

「千雨サン、協力ありがとう、本当に助かった…心の底から感謝しよう…ハカセと仲良くナ」

「ああ…」

私も微笑み、聡美を抱き寄せて短く答える

「…茶々丸、お前はもう自立した個体だ、好きなように生きるがいい」

「…了解しました。ありがとう、超鈴音」

超はニヤリとエヴァと学園長の方を向いて笑った。

「クー!いつかまた、手合わせするネ!」

「…ッ、うむ!必ず!」

最後に、クーが答えた。

「…超さんッ」

あまたの光がうねり、超に向って収束していく…

「さらばだ、ネギ坊主、また会おう!」

「ハ、ハイッ、いつかまた…」

そして、超は光の中へと消えていった。

 

 

 

「…帰るんだな」

時間は戻ってネギがやってくる前の事…

「アア…生き恥を晒してしまったが…理想は潰えた…ならば私は退場せねばならぬ」

「…それは私たちの為か?」

私たちの罪をも背負って消える気か?と問う。

「…イヤ…私の為ヨ…理想の為という理由がなければ…私は私に許せないだろう…この楽園で、あなた達と生きていく事を…だから、私は帰る、私自身の戦いの場へ…ネ」

「…難儀な奴だな…ネギのこった、一緒にこの時代で世界を良い方向に変えて行こう、くらい言うぞ?あいつは…」

「ハハハ…あの時…あの日に…貴女からそう言われていたなら…あり得たかもしれないネ…しかし、もはやサイは投げられ…その目は定まってしまった…もはやその道を選ぶ事は私の矜持が許さぬネ」

超が遠い目でいう。

「はぁ…ならば止めまい…達者でな…最後に、胸くらい貸してやってもいいぞ?」

「ええ、あの日みたいに…」

泣いてもいいんだぞ?と私と聡美は暗にいう。

「ふはは…それは魅力的な提案だけど…帰りたくなくなってしまう…二人ともっと一緒にいたいと願ってしまう…だから…やめておこう、そして…私の大切な人達…言うまでもないと思うが…二人には幸せになって欲しいと願っているよ」

「ああ…この手を放すつもりはねーよ」

「ええ…私も、千雨さんと共に生きて…逝くつもりです」

私と聡美は握っていた手をさらに強く握った。

「それならばよい…少し…風にあたってくる」

超は、そうして石柱の上に飛んだ。

「千雨さん…」

「ああ…」

私は、私の胸に飛び込んで声を殺して泣く聡美を抱きしめた。

 

 

 


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