例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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夏休み迄編
57 夏休み迄編 第1話 裁きと招待


「さて、長谷川君、葉加瀬君…君達に来てもらったのは他でもない…超君の件じゃな」

恐らく、刑罰を言い渡されるのだろう、と呼び出された学園祭最終日翌日の学園長室、そこには高畑先生、源先生、明石教授がいた…私は聡美をかばうように立つ。

「はい…何なりと…とは申し上げかねますが、罪に対する罰は受ける所存です」

そう言って、私は学園長たちに首を垂れた。気配で、聡美もそのようにしたのであろう事は読み取れた。

「…それなんじゃがな…ある種、最も辛い刑じゃ…処分は…無罪放免…いや最初から何もなかった、事になった」

無罪放免という言葉に力が抜け、直後、はっとする

「…それは…昨夜には何も起こらなかった事になった…という事でしょうか」

「うむ…じゃから、超君と共に歩んだ葉加瀬君も、色々と便宜を図った長谷川君も…処罰に値する事は何もなかった…という事になる」

学園長がひげを撫でつけながら言った。

「っ…あなた達は…超の…私達の2年間を無かった事にするというのですか!」

「その通り…それがワシらが下したもっとも良い後処理の方法であり…それが君たちへの処罰じゃ…別名目での処罰もなしじゃ」

ああ、叫んでしまいたい、終身オコジョ刑でも受けてやる、何なら死刑だっていい…でもそれだけはやめてくれ…あの革命家の、私たちの親友の全てを無かった事にするのだけは…と…きっと、独りだったなら…守るべき人がいなければ、私は本当にそう叫んでいただろう。

「…その場合、我々の身分は…」

「何も変わらぬ…いや、葉加瀬君が長谷川君と仮契約した事により、関係者枠扱いとする

…特になければ以上じゃ、二人とも、下がりなさい…ゆっくり休むのじゃよ」

そして、私と聡美は高畑先生に寮の部屋まで送られて…二人で泣いた…力尽きるまで泣き続けた…

 

 

 

「ずるいですね…大人って…あれだけのことをしたのに全部無かった事にして…」

「そうだな…いっそオコジョ刑にでもしてくれた方が…いや、それだと聡美といられなくなるかな」

「別に…そうとも限りませんよ…貴女といられるなら二人でオコジョでも構いませんよ?私は」

「…ああ、それならアリかな」

「…私も関係者扱いになった事ですし、一緒にマギステル・マギでも目指しましょうか…そして自伝で暴露するんです、昨夜の事を」

「ああ…それはいいな…権力自体に興味はねぇけど…聡美となら…それもいいな…」

日も傾きかけた大浴場…それを二人だけで使うという贅沢を堪能しながらそんな会話を交わしていた。

「明日は…ふて寝でもします?茶々丸の強化もしてあげたいですが…明日一日くらいは…貴女とふて寝というのも魅力的です…千雨さん」

「そうだな…と言いたい所なんだが、実はエヴァの古い友人のクウネルこと、アルビレオ・イマ氏から招待を受けていてな…一緒に行かないか?」

「えっと…クウネル選手ことアルビレオ・イマさんですか?いいんですか?私が一緒でも」

「パートナーの方もよろしければ、って言われているから大丈夫だよ」

「でしたら…喜んで…でも、今晩は一緒に寝ましょうね」

そう言って、聡美は私の腕に抱きついてきた。

 

 

 

翌朝、私にしては朝寝坊をした後に朝食と朝風呂を済ませ、諸々のデータ回収を行った。

「便利ですね―そのアーティファクト…千雨さんがネギ先生と仮契約…キスしちゃったのは不満ですけれども」

「ごめん…聡美をかばう為の材料づくりに電子戦能力が欲しくて…つい口車と脅迫に乗った」

「脅迫ですか?」

聡美が眉を顰める。

「あーうん、カモの野郎にパートナー庇う為にも戦果がいるだろ?って」

「成程…うーネギ先生との仮契約を見越して千雨さんの唇と仮契約の初めてを貰っておいたのはファインプレーでしたが、そういう弊害が…」

ムムムっという顔になる聡美に対し

「ま、アレはファインプレーだったな…おかげで一段親密になれたし…な」

と、聡美の額にキスをする。

「もーそこは唇でしょう?千雨さん」

「ハイハイ…あんまりすると歯止めが利かなくなる気がしてな」

と、唇を合わせるだけのキスをした。

「歯止めが聞かないって…舌でも入れます?」

「…したいか?ディープキス」

「興味はあります、好奇心的な意味でも」

「…次にロマンチックなキスをする機会があれば試そうか」

「はい…お待ちしています…私から行っちゃうかもですけれど」

まあ、こんな感じで午前中の作業は終わった。

 

 

 

今日の午後のお茶に、というアバウトなお誘いを受けてとりあえずと13時につくようにと、昼は軽食で済ませて図書館島深部を私と聡美は歩いていた。

「ここ…だな」

指定された場所に着くとそこには門があり、門番らしき竜がいたが、招待状を見せるとどこかへ飛び去ってしまった。

「わぁ…すごいです…日が差し込んでいるみたいですね」

「ああ…綺麗だな」

と、二人で身を寄せ合って少しばかり風景に見入っていた。

 

「おい、そこの二人、人んちの前でいちゃつくな」

と、同じく招待されていたらしいエヴァが後ろから声をかけてくる。

「「あ…」」

「まったく…その様子だと大丈夫そうだな?」

「ええ、昨日は少し泣きましたが」

「少し…ですか」

私の物言いに聡美が笑った。

「…まあ、ジジイも酷な事をするものだ…が、歴史は勝者の作るもの…仕方ない事でもあるが…な」

「はい…わかっています…」

「うむ…ならばよい…行くぞ」

エヴァを先頭に、私たちは門をくぐった。

 

そこは光あふれる空間で、いかにも魔法使いの住処、といった感じの建物が建っていた。

そのままエヴァを先頭に歩を進め、建物に入るとそこは書架であった。

「この構造なら…こっちだな」

と、なれた様子でスタスタと歩を進めるエヴァに私たちは黙ってついていった。

 

「ようこそ、私のお茶会へ…お待ちしていましたよ」

「ふん、きてやったぞ、アル」

「お招きありがとうございます、イマさん。こちらは私のパートナーの聡美です」

「葉加瀬聡美と申します。武道会では優勝おめでとうございます」

「初めまして、葉加瀬さん。歓迎いたしますよ…それはそうと…皆さん、私の事はぜひクウネル・サンダースとお呼びください」

「あ、はい。サンダースさん」

思わず、私はそう答えた。

 

「さて、実は千雨さんを訪ねて先客がおりまして…千雨さんが早く来てくれて丁度良かったです」

「先客…私たちの知り合いですか?」

首をかしげて私は問うた。

「いえ…エヴァの知人ではありますが…おそらくお二人とは初対面でしょう…私の母にあたります」

「なぬ、あいつが来ているのか…何年か前にあったが珍しい」

「エヴァの古い友人のサンダースさんの母にあたる方…ですか」

どー考えても恐ろしい存在だろう。

「ええ…まあ年だけはいってますが、恐ろしい人ではありませんよ…さあ、こちらに」

サンダース氏に促されて階段を上るとそこでは一人の女性が紅茶をたしなんでいた。

「テンブリス、数年ぶりだな」

「あら、エヴァちゃん…お久しぶりね」

テンブリス…おそらくラテン語で暗いと呼ばれたその人?は黒いフード付きのマントを椅子に掛け、また黒いローブを身にまとった若い女性で、植物の蔓のようなもので鈍色の石をつりさげたネックレスをしていた…

「初めまして、長谷川さんと…そちらは?」

テンブリスさんは聡美を見て問うた。

「母様、こちらは葉加瀬聡美さん、長谷川さんのパートナーです」

そして、サンダース氏は聡美や私が答えるより先に、聡美を紹介した。

「成程…私も名乗らないとね…色々と名前はありますが、テンブリスとお呼びください。

ここ麻帆良の神木・蟠桃を含め、いくつかの聖地の精霊を兼任させていただいています」

…案の定、大物だった件

「それで、テンブリスさんは私に御用という事でしたが…」

「ええ…貴女は恐らく私の娘の転生体で…といってもあまたに千切れた魂のほんの一欠片ではありますが…珍しく覚醒し、それでいて正気を保っておられるようですのでぜひお会いしてみたいなと思いまして、アル…今はクーネルでしたか?…にわがままを言ってお茶会に参加させていただいたんですよ」

と、テンブリスさんはほわほわととんでもない事を暴露してくれた。

 

その後に聞いた話をまとめると、私の最古の記憶である詩は彼女の娘だった魂に刻まれた葬送の言葉であり、私は輪廻の果てに無数に散ったその魂の一片を宿す存在で、奇跡的にその力を目覚めさせた事、数多に千切れた魂の欠片ではさほど大きな力は無く、世界樹の魔力と相性が良くなり、色々と才能に恵まれる代わりに闇の悪夢に囚われると言うだけの物らしいが、闇の悪夢を認識したまま正気を保つというのは珍しく…魔法界に関係しているというのも相まって会いに来たらしい。それと、人でなくなる可能性は…それを望んだ時に多少やりやすい、くらいはあるらしい…真面目にそっちの研究しようかなーと食指は動いたりした、少しだけ。

 

「闇の悪夢ですかー千雨さん?歌は聞いていましたがその話は聞いてないですよー?」

「アーうん…心配かけるかなと思ったのとエヴァが気にしなくても大丈夫って言っていたし」

「まあ、割と考え事をしたり、気の修行をするのには便利らしいですし、完全な闇への精神耐性があれば怖がる必要はありませんからね…想い合う人と同じ寝床で寝ている時には二人で飲み込まれる事も時々ありますので日常的に同衾をするようになったらお気をつけてくださいねー」

テンブリスは、相変わらずほわほわとした感じでそうのたまった。

「成程…千雨さんと加速空間で思う存分いちゃつきたい時はリアルで添い寝すればよいと…」

「あーそーいう使い方考えるか…私は完全に思考と気の運用訓練に使っているからなぁ…」

「…お前ら、いい加減に付き合え…」

「「これが恋かはよくわからないので」」

「またそれか…」

悪いが、またこれである…まー付き合っている、でもいいんだけれども…麻帆良内でも、同性愛への偏見は多分にあるのだ…ならば交際という関係をどちらかが望むまでは、否定させてもらうに限る。

 

 

 

しばしば歓談とお茶を楽しんでいるとテンブリスが唐突に口を開いた。

「次のお客さんが来たようだし、私はそろそろお暇するわねーごちそうさま、クウネル」

「はい、お粗末様でした、母様…それではまた」

「ええ、エヴァちゃんも、千雨ちゃんも、聡美ちゃんもまたねー」

「ああ、またな」

「ええ、またお会いしましょう」

「お話色々と興味深かったです」

そして、テンブリスが掻き消えるとほぼ同時に外側の門が開き、少しの後にネギと刹那、アスナにコノカが階段を下ってきた。

 

ネギ達が席について少し、エヴァ…マスターが口を開いた。

「それでぼーや、今回の事件はどうだった?何か得るところはあったか」

「…自分がどんな場所に…どんなモノの上に立っているかを知りました。

いえ…超さんに言われる前から僕は知っていたはずでした。

マスターの言う通りです、キレイなままではいられない。

いや、そもそも最初から僕たちはキレイなどであるハズがない…」

ネギの言葉を聞いていたマスターは満足げに微笑んだ。

「…フッ…超鈴音は上出来だったな、お前のような真っ直ぐで才能ある、前途有望だが世界を知らぬガキには、それを思い知らせるのが最も難しい」

まー第二計画がネギ先生育成計画を兼ねる、と聞かされている以上、それも目的だったんだろうしな。失敗に備えたサブプランという奴である。そして、マスターが生きる事と悪を成す事は同義であり、悪こそ世の真理であると説く…まー我を通す事、を悪とすればそりゃそうさね。

そしてマスターが演説を続けようとした所、クウネルが口をはさみ始め、ネギが結局は自分の立つ場所を理解した上で、それでもマギステル・マギを目指すといった辺りまではまともな会話だったのだが、その後はマスター…エヴァがクウネルに遊ばれる展開へと堕した。

 

その後、仮契約カードの状態から、ネギの父であるナギ・スプリングフィールドの生存をクウネルが保証し、そしてネギにウェールズへと戻って魔法世界、ムンドゥス・マギクスを訪ねることを提案した…そしてネギは魔力を漏らして風を暴走させ、まるでちょっと出かけてきますといわんばかりに飛び出そうとした所をエヴァの糸術でこけさせられて止められた。

そして、せめてとネギはクウネルにナギ・スプリングフィールドの話を請うたが、ほかの魔法ばれ組が到着し、またの機会という事になった…その後は、夕方まで賑やかなお茶会が続いたといっておく。

 

 




警告にあるオリキャラ登場の回。ある種のデウス・エクス・マキナではありますが原則登場は致しません。実は過去に一度だけ登場していたりしますが。クウネルさんはフツーに原作通りの古本ですがその著者というか作成者がオリキャラです。(uqホルダーでその辺り設定出ていたらごめんなさい)

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