「……以上の理由で、私は機械仕掛けの自動人形でも従者とする事ができる、と考えている」
「なるほど…人形に対してかりそめの命を与える契約と主従関係を結ぶ契約か…でも、それって本来二本の契約で縛ってる従者を一本でしか縛れなくなると思うんだが、問題ないのか?」
「いや、人形契約だけで十分だ、魂を込めた際の刷り込みは主従契約を結ぶまでのつなぎに過ぎん」
会議室のような部屋に通された私達はエヴァンジェリンとの交渉にあたって、まずは互いの認識のすり合わせを行う事にした。
本当なら今回の交渉でそこまでする時間はないのだが…幸いこの別荘、外の一時間が中の一日と同じらしいのでそういう余裕ができた。
今は、この別荘を管理している魔法人形に出会って浮かんだ疑問、従者にする際に魔法で自立思考能力を与えるのならばこちらの人工知能と反発しないか?……という問題について話している。
もし、反発するなら人工知能を除かなければいけないが、除いてしまえば本質的にエヴァンジェリンの魔法人形と同じ事になるし、私達の利益が大きく失われる(稼働データ的な意味で)。
それに対しての解答はこうだった。
普通、魔法人形を製作する時は必ずどこかの段階で『魂』を吹き込む儀式を行うのだが、この時、人形は創造者に対する忠誠を誓う。
さらに、完成した後にドール契約という主従関係を結ぶ契約を行い正式に忠誠を誓わせる。
こういった段階を踏むために、ドール契約のみを行えば追加で意志を与えずに主従契約を結べるとのことだ。
ちなみに、後者の忠誠は前者の忠誠に優越するが、後者だけが残るというものではないらしい。
たとえば魔法人形師Aが人形使いBに人形を売却し、Bがドール契約を行った場合、Bの命令に反しない、あるいはBに対して損害を与えない範囲に限り、Aの命令も聞く。
そして逆にBに命令されれば(売買契約などで規定されていない限り)人形はためらいなくAを殺すらしい。
それゆえに面倒事を防ぐために普通、一人前の人形使いは自分で人形を作るらしいが…今回は仕方ない、とエヴァンジェリンは言っていた。
「…あの、別に魂とやらを込めなくてもドール契約というものはできるんですか?」
「ああ、ドール契約は完全な非生命体とでも可能だ。魂を込める儀式はあくまで人形に自己判断能力を付与するためのもので…厳密には生命体の持つものと同じ魂を与えるわけではないからな」
その後、私や聡美が次の質問をしない事を確認して超が言う。
「エヴァンジェリンさん側の要求に関する質疑はこんなもので良いカナ?」
エヴァンジェリンは沈黙で、私と聡美は無言で頷いて肯定する。
「ならば、次は私達の要求に関する質疑に移るとするネ」
超はそう行って私達に提供した設計図と同じものをエヴァンジェリンに渡した。
「む…これは…って、ちょっと待て…これは精霊エンジン…ではないのか…しかし…」
エヴァンジェリンは図面を読みながら何かを考え込む。
「超らしくない所があると思ったら…やっぱり元になる魔法使いのエンジンがあったのか…」
「そうですね…超さんにしては洗練されてない所がありましたし…一部ブラックボックス的に流用してるんですね」
エヴァンジェリンの邪魔にならない程度に声を絞って私達はつぶやいた。
「むむ…やはりばれてたカ…そうヨ、ある伝手で知った精霊エンジンの設計図を基に再設計したものヨ。
もっとも、いくつかのエンジンや術式をつなぎ合わせて設計したせいでうまく動くかわからないし…そもそも手に入れたものが本物かすらわからなかったネ」
超はそう言って笑ってごまかそうとしている。
「…うむ、外部から魔力をここに取り込んで、電力として供給したいんだな。やりたい事は大体わかったが…」
唸っていたエヴァンジェリンが大体やりたい事を理解したらしく、口を開いて…
「だが、この図面通りに作っても動かんぞ?」
とんでもない事を云い放った。
「むむ…という事は…この設計図は役立たずという事カ?」
「あわてるな、修正は可能だが…そちらの本来の希望からは少し外れる事になるな」
そう言ってエヴァンジェリンは黒板に設計図の概略図を書き、魔力の流れを書き込んでゆく。
「この設計図では外部から魔力を取り込み、貯蔵する機構、魔力を電力に変換する機構、そして電力を使いやすいように整える機構の3つにわかれている…そうだな?」
超は黙ってうなずく。
「変換に関しては簡単なマジックアイテムの原理を応用すれば可能だという予想は正しいし、推力に最適化してある設計を電力変換に再設計するのはそれほど難しくない。
電力を整える事に関してはお前たちの方が詳しいだろうからあまり関与はできない。ただ、魔力を自動供給する術式は無謀としか言いようがないな。
より具体的には、この術式では動力炉内部の魔力濃度が反応最低濃度まで達しない…例外は麻帆良祭くらいだな、あれだけの魔力濃度ならいけるかもしれん」
「魔力を集める術式とかはないのカ?」
「無くはないが…可能なのは儀式魔法だけだな…少なくともこのように使う事は私の知る限り不可能だ。
儀式魔法で魔力溜りを発生させて、その魔力をとりこんで暫くの時間動かす事も不可能ではないが…まあ数百体単位にならない限りは儀式を行う術者が直接した方が早い。
つまり…こういう事だな」
そう言ってエヴァンジェリンは最初の矢印に添えられた『外部から(自動)』に斜線を入れてを『術者から(手動)』と書き換えた。
「別にこれは別に魔法使いがやる必要はない…まあ、魔法使いの方が効率は良いが…それは置いておこう。
たとえば機械式時計のゼンマイを巻いたり、手回し発電機のハンドルを回したりするような、意味のある行為に対して関連付けを行った儀式魔法を行う事でお前たちにもこの魔力供給は可能だ。」
そいうってエヴァンジェリンは術者に矢印を付けて一般人でも可と付け加えた。
「儀式魔法…ですか?」
「そう、儀式魔法だ。詳しくは省くが、儀式魔法はモノや行為自体を行う事がより重要になってくる…それこそ行為の意味さえ理解していれば魔法の才能がなくてもできる位にな。
詳しい事は契約が正式になった後に技術提供の一環に含める、理論を知らねば良いものはつくれないだろうからな」
「わかりました、とにかくこちらが意図している出力は得られるんですね?」
「うむ…だが、さすがにそう言うものを多数の一般人に作らせるわけにもいかん…お前たちは協力者として許可をとれるが…不特定多数の目にさらすようなまねは許可がおりんぞ」
「ん…ならば試作実験機として外部電源式で完成させたのちに私達の手で動力の換装を行いましょうか」
「ならば、その方向で行くとしよう…他にそちらの要求に関する確認があれば聞くが、何かあるか?」
「私は今のところないですね。」
「私もないな。」
「ならば条件の交渉に移るとするネ」
こうして実際の条件に関しての交渉が始まった。
半日(休憩時間込み、別荘内部の日の出ごろから初めてそろそろ日の入り)に及ぶ交渉の結果は以下の通り
① エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(以下 依頼者とする)は葉加瀬 聡美を筆頭とする三名、すなわち葉加瀬 聡美、長谷川 千雨、超 鈴音、の三名(以下 製作者)に対し、自立型のガイノイド(以下 人形)の作製を依頼する。
ただし、人形の性能は以下の条件を満たす事とし、人形の所有権はドール契約を行った時点で依頼者に移る事とする。
また、製作者が依頼者に敵対しない限り、所有権が移った後も人形は製作者に危害を加える事はしない。
・ごく日常的な程度の動作において最低36時間の継続稼働が可能であり、簡便な手段により動力の補充が可能である事。
ただし、30分間の戦闘行為を行った場合でも、その前後を合わせて最低24時間の継続稼働が可能であること。
・最低限の家事能力を有する事。最低限の家事能力とは麻帆良学園の平均的女子中学生が有する程度の家事技能をさす。
・独力、白兵戦能力のみで2000年度の秋の大格闘大会優勝者クラスの格闘家を5分以上拘束可能であり、
かつ依頼者の魔力が封印されている現状においてのドール契約による魔力供給下において、魔力または気の補助をうけない平均的な大学部所属の武芸者20名を格闘戦のみで5分以内に制圧可能である事。
・学生生活が可能である程度のコミュニケーション能力を有する事。
② 依頼者は必要に応じて製作者に対し、人形の修理、改良またはメンテナンスを要求する事ができ、製作者側は特別の事情(技術的理由を含む)がない限り応じなくてはならない。
また製作者も依頼者に対し人形のメンテナンスを行う事を要求でき、それが前回の修理またはメンテナンスの完了から30日以上経過していた場合、依頼者側は特別の事情がない限り応じなくてはならない。
製作者側は人形の修理及び改良についても申し入れられるが、依頼者側はそれを拒否する権利をもつ。
製作者はこの修理、改良、またはメンテナンスの際に人形に蓄積されたデータを回収できる。ただし、依頼者のプライベートに関する事項を除く。
③ 人形の制作および②で規定された依頼者の権利の行使に際し、依頼者は製作者に対し技術面、知識面、及び資金面で十分な援助を行う。
供与された技術及び知識は、事前の許可なく第三者に公表してはならない。
④ この契約に関する学園を拠点とする魔法使い達(以下 学園)との交渉は依頼者が行い、許可の獲得は依頼者が責任を持つ。
⑤ 依頼者は、製作者の立場等に関する、製作者と学園の交渉を仲介し、その交渉の際に製作者の後見役を務める事。
⑥ 依頼者が④と⑤の条件を満たした後1年以内に①の条件を満たす人形の製作を完了できなかった場合、人形完成までの間製作者のうち誰か一人以上が人形の代わりに家事を行う事。
この義務は依頼者が例外とした場合は発生せず、製作者が同意した方法により代替できる。
また、メンテナンス及び修理が24時間を超える場合、それが依頼者の重大な過失または故意である場合を除き製作者は同様の義務を負う。
…まあこんなもんだろう。
「…さて、こんなところで良いカナ」
「ああ、私は構わん」
「私もOKです」
「私も…これでかまわねぇ」
この契約メンテナンスに応じる期限や家事代行の期限を書いてないんだが…学園側との交渉のためにわざとこうしてある。
変に期限を決めると期限切れを理由に私達の記憶を消そうとするかもしれないから、と私と超が工夫した点だ。
…って事で、さっきの契約に関する密約が別に存在して、その他の事について通し番号は連番だがこちらは別契約扱いとなっている。
⑦ 依頼者と製作者が行った人形に関する契約について、⑦以降の項目(以降 契約後半部)は①~⑥までの項目(以降 契約前半部)とは別の契約とする。
前半部は依頼者と製作者が交わした人形の制作についての契約であり、後半部は前半部の取り扱いに関する契約である。
また、契約後半部に関しては、全ての契約者はその内容を他の契約者全員の許可なしに第三者に漏らしてはならない。
⑧ 契約前半部によって発生する、製作者の義務及び人形の所有権を除いたすべての権利は依頼者が封印の影響下にある限り有効である。
ただし、別荘内における一時的な封印の解除は除き、また②に関する契約者相方の権利及び義務は人形と依頼者がドール契約を遂行した日から2年間は継続される。
また、依頼者は製作者から完成を通知された日の翌日から起算して2度目の満月までにドール契約を行う、これは人形が①に掲げた条件を満たしていない以外の理由によって拒否してはならない。
⑨ 製作者の②に関する義務は、製作者全員が義務の遂行が不可能な状態になり、回復が不可能な場合に終了する。
依頼者は②の義務を理由に依頼者は製作者の許諾しない手段による寿命の延長行為を行ってはならない。
これは製作者が依頼者に対して行うそれの要請を妨げないが、依頼者はそれに応じる義務を負わない。
また、製作者が後継者を用意する、依頼者に必要な技術などを習得させる、その他依頼者が認めた手段によっても義務を終了させる事ができる。
⑦は、学園側が契約内容を確認させろと言ってきた時に、前半だけで
『これがガイノイド製作についての契約の全てだ。』
と、言うためである。後半部は『ガイノイド製作について契約』の取り扱いに関するものであるから嘘ではない。
ガイノイド製作に関する、と言わない所がみそになっている。
また、逆に学園側が他に契約や密約がないか、と言ってきた時は
『ガイノイド製作に関する契約以外は結んでいない』
と、言っても逃げる事ができる。
まあ、小手先だけの手だがないよりましだろう。
⑧はまあ…ずっと封印され続けてる気はないってことなんだろう。
⑨は私達が生きてる限り整備する分には異論はないが…ずっと整備しろ、と吸血鬼されちゃかなわん、という事で付け加えといた。
それとは別に気に入ったから、と下僕にされる事はありえるが…ないと信じておく。
こんな内容を契約用紙に記載し、エヴァンジェリンと私達3人のサインをした。
契約前半部に使った契約用紙は契約を破ろうとしたら頭痛がしたり、凄い罪悪感がこみあげてきたり…といった、エヴァンジェリン曰く形だけのものだとか。
…正式な契約を破る事自体が魔法使いにとっては不名誉かつ不利益を被ることらしいが。精霊の信頼度的な意味で。
契約後半部は強制執行機能付きの上級品を使ったが、やはりこれでも当たり前のことらしい。
重要な商取引、軍への入隊誓約書など、日常的ではないがそれなりによく使われているとのことだ。
「さて、契約はなった。あとは時間まで別荘を楽しむといい、何かあればメイドに言ってくれ」
そう言ってエヴァンジェリンが指を鳴らすとすっと、メイド服を着た魔法人形が入ってくる。
「私はしばらく休む。夕食時にまた会おう、基礎的な魔法理論についての書物を用意しておく」
そう言ってエヴァンジェリンは退室していった。
「さてと…どうする?」
「んん…どうしましょうか」
「そうネ、せっかくの南国リゾートだが…水着なんて持ってきてないヨ」
「そうですね…」
「そうだな…水着があれば上層にあったプールでひと泳ぎしたい気分なんだが…ないもんはしゃあないな。
着替えもないし…さっきみたいになんか飲み物でも貰ってゆっくりしとくか?」
楽しめと言われても、水着なんて用意してないので水泳は却下、砂遊びって面子でもないし、着替えもないので運動系はやめといた方がよさそうだな。
「水着や着替えでしたらご用意できますし、海やプール以外に温泉もありますがいかがいたしましょう」
沈黙を保っていたメイド魔法人形が口を開く。
「着替えや水着があるなら貸して貰えるか?後サイズは大丈夫か?」
「はい、お客様用に余り種類はありませんがご用意しております。サイズは我々が調整いたします。」
無表情のまま、メイド人形が答える。
「なら、水着と着替え…あとで寝巻貸してくれ」
メイドはぺこりとお辞儀をして言った。
「かしこまりました、長谷川千雨様。葉加瀬聡美様、超鈴音様、お二人はいかがいたしますか?」
「むむ…ならば同じく水着と着替えと寝巻を借りたいネ」
「私もお願いします」
「かしこまりました。衣裳部屋にご案内いたしますので水着をお選びください」
再びペコリとお辞儀をして私達を先導してくれる。
いくつもの大きな衣装ダンスが並んだ部屋に通され、メイドがその中の1つのタンスを開いた。
「皆様方が着用できるサイズはこちらとなります」
そこにはずらっと並んだ子供サイズの水着があった。
「私は…これで良いか、着慣れてるしな」
「私もこれにします」
「む…なら私もこれネ」
「かしこまりました、少々お待ちください」
そう言ってメイドは私達の選んだ水着…スクール水着を持って奥の部屋に入って行った。
…泳ぐのに変な装飾ついてない方が好きなんだよ。それにスクール水着が一番着慣れてるし。
聡美も同じ理由でシンプルなのを好む、ただし課外で使ってる水着はいろいろと科学系の文字や絵が書いてあるが。
…超は私達が同じのを選んだから合わせたって感じだな。
んでもって、戻ってきたメイドが持っていたスクール水着にはそれぞれ
『超 鈴音』
『ハカセ』
『ちう』
と、書かれた大きめの白布が縫い付けてあった。
メイド曰く、
「油性マジックで記名した白布を縫い付けるのがスクール水着の正しい流儀だとされております。
我々もマスターやマスターのお客様のために日々情報収集を行っておりますのでそういった知識も完璧です」
との事だ。
「こんな知識どっから仕入れてくるんだよ…」
「マホネットと呼ばれる演算機ネットワークがございまして、我々も電子精霊を通して利用しております」
「…インターネットみたいなもんか…」
「ほう、電子精霊と演算機ネットワークか…それは興味深いネ、詳しい話とかも聞いてみたいものヨ」
「申し訳ありません、私にはそのような権限を与えられておりませんので、マスターにお聞きいただけますようお願いいたします」
「ならば仕方ないネ、またの機会にするとするヨ」
「はい、ありがとうございます」
まあいいや、せっかくだし、三人で遊ぶとしようか。
さて、散々プールで騒いだ後に風呂入ったんだが…
バスローブを渡されて今は三人別々の部屋に通されている。
「これは?」
「はい、長谷川千雨様の着替えでございます」
いや、それはわかっているんだが…
「なぜドレス?」
なんで人形が着てそうな黒のパーティードレスなんだよ。
「マスターからの指示です。」
「…わかった。こう言うの着た事ないんだ、手伝ってくれ。」
主人からの命令ならメイドも逆らえないんだろう。
…まあ、突っ込み入れたかっただけで嫌じゃないってのもあるが。
どっかのお姫様…程ではないが貴族令嬢位の格好になり、風景が見渡せる部屋に連れていかれた。
ディナーの用意がされたその部屋には大人のエヴァンジェリン(極めて高度な幻術らしい)と超がドレス姿でいた。
幻術での成長は予想外だったが、エヴァンジェリンは当然として、超の黒いチャイナドレス姿も私よりずっと自然で綺麗だった。
「うむ、オーソドックスに来たか…なかなか似合っているな」
エヴァンジェリンがニヤニヤとした様子で言う。
「まった、この服はあんたの指示じゃなかったのか?」
「ああ、確かに私の指示だ。『客人の容姿を最も引き立てる盛装を着せろ』と命じた」
「…そうか、つまりメイドドール達は私には黒のこういう落ちついたドレスが似合う、と判断したって事か…」
いやまあ、確かにこういうのも好きだが…もう少し可愛い系も、柄でないのはわかってるが…好きなんだがな。
ん?って事はファッションセンスとかもあのメイド達は判断できるってことか?
「確かにちさめサンには黒が似合うヨ」
あ、3人共着ているドレス黒じゃないか…かぶるとかいうのは考えなかったのかよ…
「おまえもな、まるで悪の組織の女幹部ってとこだな」
「ハハ…それを言うならちさめサンは悪の大総統の娘といったところネ、それもヒロインではなく最終回間際でヒーローの前に立ちふさがるタイプヨ」
そう言ってお互いに笑い合う。もちろん少し乾いた感じも込めて。
いやまあ、まかり間違っても正義の味方なんかじゃないんだが…倫理規定は殆ど守ってるし、悪い事をしたいとかいうわけでもない…殆どがつく時点でダメなのか…
「葉加瀬聡美様がいらっしゃいます」
入口あたりに控えていたメイドがそう言った。
やってきた聡美は私とそっくりなデザインで色だけが純白のドレスを着ていた。
「おお、やっと黒以外か…しかし、全体のバランスも考えさせておけばよかったな…みな似たり寄ったりでつまらん」
確かにそうだが仕方ない、私らはまだまだ子供だ。あまり大人びたものにすると似合わない。
「むむ…皆さん真っ黒ですね―千雨さん、似合ってますよ」
しかし…なんか聡美がすごく可愛いんだが…いつもは制服か科学者Tシャツに白衣だからなぁ…そのギャップもあるんだろうか。
「千雨さん、どうしました?顔が赤いですよ?」
「あ、ああ。ごめん、聡美も似合ってると思う。しかし…デザイン殆ど一緒だな。」
「確かにそうネ、ハカセとちさめサンのデザインそっくりヨ。」
「ふふ、確かにペアルックみたいですね。」
ゲホッ
思わずせき込む。
そう言う言い方されるとなんか恥ずかしいからやめてくれ、せめてお揃いくらいで。
「何を漫才しているか、早く席に着け」
エヴァンジェリンが少しいらつき始めてるような声で言う。
「あ、すいません。」
聡美はそう言っておとなしく席に着いた。
「では、始めるとしよう。」
エヴァンジェリンが合図をするとメイド達が給仕を始める。
さすがというか、食前の飲料から食後の紅茶まで料理はどれもおいしかった。
今更ですがハカセと千雨の関係は親友です。恋愛的な感情にはならない…かどうかは微妙。
コノセツ程度には百合かも?(要するにいちゃつきはする。正式に恋人になる可能性は作中では低い・・・と思う。でも作者は百合好きなので警告タグは入れる。
ペアルックネタは誕生日プレゼントにコノカがアスナにペアルックシャツを買おうとしてたあたりからきています。