例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

64 / 129
64 夏休み編 第5話 白き翼の夏合宿とアンナ・ココロウァ

私が死にかけたマスターの稽古の翌日、私たち白き翼のメンバーは夏合宿として海に二泊三日の旅行に来ていた…というか、本来、稽古が休みになるので休養の前に無茶をするつもりで無理して死にかけた、が正解か。

「皆さーん、はやくはやくーッ、ホラホラ見えますよーッ」

「あははは、大はしゃぎねーネギ、それが目的だからいいんだけど」

「連れて来た甲斐あったってもんじゃない?あの遊ぶのが苦手なネギ君がさ」

はしゃぐネギを見て、アスナとハルナがいう。

「ウフフ…それは私も同じだけどね…ようやくエヴァちんのあの地獄の修行から解放されて…

ネギやコタ君はいいんだろうけどあんな地獄、たまの息抜きでもないと死んじゃうわよ…ってか昨日、千雨ちゃん本当に死にかけちゃったし…

この二泊三日の合宿がウェールズ行き前の最後のオアシスになるかもしんないんだし…

待ちなさいよネギーッ私も遊びまくるわよーッ

ざまぁみなさいよ、エヴァちゃんーッ」

アスナはそんなことを言うと、高笑いをしながらネギを追いかけていった。

「たまっとるなーアスナ…そんなにキツイんかなー」

「まあ、かなり…」

「ま、本来普通の女子中学生が受ける様な修行じゃねーからな…キツさの一端は私にもあるけど」

本来、マスター一人ではできないことも、指導役の姉弟子がいれば…まあできるのである。

 

「夏!それはつまり…」

「海やーッ!」

と、旅館に荷物を置いた私たちは早速、水着に着替えてビーチに繰り出してきていた。なお、私も聡美も文字入りのスクール水着である。

「ネギ坊主は日本の海に来るのは初めてでござったな」

「はいっ、スゴイ人ですねー」

「さあネギ、今日は約束どおり思う存分遊んでもらうわよッ!とことん遊びなさい、死ぬ気で遊びなさいッッ!」

「死ぬ気で!?」

と、困惑するネギに、アスナが今回の合宿はネギが遊ぶ事が目的なのだから修行も禁止であると言い渡した。しかし、ネギはどうやってとことん遊ぶかで悩み始める。

「あんた、その生真面目から直した方がよさそうね…ま、いっか、とりあえず遊ぼ!」

「ハ、ハイッ、アスナさん」

「ホーホッホッホ」

といった会話を見守っていると聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。

「ホホホホ、日本の海は賑やかですわねぇ、たまにはこういう場所も悪くはありませんわ」

と、我らが委員長、雪広あやかがいた。

「って、なんでいんちょがいるのよ!?これは一応、ネギま部(仮)の合宿なのよっ」

…まあ、それはそうだが、白き翼という名称に、英国文化研究倶楽部という公称もあるのにその名を使うか…案外気に入っているのか?

「あら、ネギま部って何のコトですの?私はただ偶然ここに遊びに来ただけですわ、奇遇ですわね、アスナさん」

「むむむ…っ」

と、白々しい事を言う…まあ、多分情報漏洩源は少し離れた場所で那波と村上に捕獲されているコタローだろうがな。

「私達もいるよーッ」

と、現れたのは鳴滝姉妹に、まき絵、裕奈、亜子にアキラだった。

「何であんた達までいんのよー!?」

「偶然だってば、ぐーぜんー」

と、こいつらまで白々しい事を言い始めた。

そしてこいつらもバッジを狙っているらしく、アスナに一斉に襲い掛かろうとした…が、委員長はそれを制止し、バッジ奪取も事情の詮索も禁じた…まではよかったのだが。

「うう~ん、でもアスナさん…」

「ん?」

「私、この夏はイギリス旅行に行きたくなってきましたわ、個人的に。

今日のように偶然あちらでお会いすることもあるかもしれませんわね」

とか言い出して、何だかんだで自家用機で白き翼以外のメンツもイギリスに連れて行くという事になってしまった。

流石に、危険な場所…魔法世界へついてこない事が条件ではあるが。

「じゃ、決まりでいいかにゃ?」

「夏休みはみんなでイギリスにゴーッ」

「「「「「オオーッ」」」」」

と、いう事で無事?に話が付き、みんなで楽しく遊び始めるのであった。

 

 

 

そして夕刻…そろそろ宿に戻ろうかという時間…明らかに攻撃魔法が使われた気配がした。

「楓!刹那!」

「ああ、私も感じた」

「うむ、拙者が様子を見てくるでござる、応援が必要なら気弾を打ち上げる!二人は皆を」

と、いう役割分担で楓が現場に向かった。

「なにかあったんですかー?」

と、聡美。

「ああ、誰かが攻撃魔法を使った気配がした…今、楓が偵察に出ている」

「何々、ヤバい事態?」

とハルナが寄ってくる…

「状況がわからん…とりあえず、みんなを宿に戻るといって集めた方がいいかもしれない」

「私も賛成だ、それで行こう…お嬢様はこちらに」

「りょーかい、じゃあそうしよう」

「わかりましたー」

という事でみんなをビーチから引き上げさせ始めた…が。

 

「先ほどのはどうやらネギ坊主の知人のアーニャという子供がやらかしたことのようでござる、ネギ坊主を早くイギリスに連れ戻したいようではござったが…まあ心配は無用で御座ろう」

という事らしかった。

「まあ、時間的にはちょうどいいし…このまま旅館に引き上げようか」

と、いう事になり、私たちは旅館に引き上げ、ひとまずは軽く潮を流して夕食という事になった。

 

 

 

そして夕食の時間、みんなで宴会場に向かおうとしたのだが…

「ネギはイギリスから来た幼馴染の女の子と部屋で食べる事になったから」

と、アスナが宣言した。

「「「「「ええ~~っ!?ネギ先生の幼馴染の女の子ー!?」」」」」

「どういうことですの!?」

「いや、単に早く里帰りしろって連れに来ただけみたいだけど」

「同い年!?」

「確か1歳年上のハズ…」

「かわいい子なの?び、美人?」

と、一部の面子がネギ(とアスナと刹那と木乃香)の部屋を覗きに殺到した。

「はぁ…まったく…先に行ってもしゃあないし…待とうか」

「そうですねー」

と、興味がないわけではないが覗き迄するほどではない面子は廊下でその様子を眺めていた…

 

 

 

その一件が終わり、夕食を済ませた私と聡美はのんびり温泉…という事にした。

「クーはいかないのか?」

「私は海から上がった時ので十分アル」

「じゃあ行きましょうかー千雨さんー」

 

体を流して二人で露天風呂に行くとそこには夕映とノドカのほかに赤毛の少女がいた。

「よお夕映…ん?そいつがネギの幼馴染のアーニャとやらか?」

「え、ええ…そうよ、私がアンナ・ココロウァよ」

「なるほど、なるほど…つまり夕方の下手人か…もう怒られているとは思うが、魔法の秘匿、なんだと思ってんだ、お嬢ちゃん」

と、少し凄みを聞かせて私は言った。

「えっ…あっ…その…」

と、言ったあたりで扉の前に気配がする。

「千雨さーん、明石さんと佐々木さんが来ましたよー」

「ん、サンキュー、聡美…一般人が来るから深くは言わねぇけど…オコジョが嫌なら気を付けような?」

「はい…ごめんなさい…」

と、アーニャは素直に謝った…まあ本当は野良の私に謝られても本当は意味がないのだが。

 

 

 

「千雨、朝練するアルヨ」

「んー…クー、修行無しなんじゃなかったか?」

まどろみながらクーの誘いに返事をする…まあ別に私は構わんし、そのつもりで着替えの枚数は用意してあるのだが。

「それはネギ坊主だけの話ネ、私たちは関係ないヨ…ところでハカセがいないアル?」

「ここにいますよー」

と、クーの疑問に私の布団の中から聡美が返事をする…

「アイヤ…そこにいたアルか…とりあえず、コタローと楓にも声をかけてくるから身支度するヨ」

そう言ってクーは隣のコタローと楓と朝倉(+相坂)の部屋に突撃していった。

「…もう少しゆっくりしたかったけど、起きようか」

「はい…私もですかー?」

「んー体力づくり的には海で遊んでいれば十分だし…どっちでもいいぞ」

最近、修行前の図書館島探検部組(ほぼ、スペックは体育会系相当である)程度までは体力がついてきた聡美にそういう。

「わかりましたーじゃあ見学していますねー皆さんの分のお風呂セットと着替えも預かりますよー?」

と、いう事で朝練をして、その後、朝風呂に入る事となったのであった。

…朝練中にネギが降って来たとかは特に気にしないでおく。

 

 

 

その日も楽しく遊び…昼過ぎ頃からはアーニャも合流してきた…一般客からは見えない入り江で水蜘蛛?(水の上に立つ忍術)を虚空舞踏の応用の力技で再現してそれは違うとか言われたりして、最終的にはそれらしきことはできるようになったりした晩…私たちは白き翼のみならず他の面子も含めて大部屋で雑魚寝という事になった、なぜか。

「別にいいけど…私らの分の部屋はあるんじゃねぇのかな…元々予約してあったんだし」

「まぁいいじゃありませんか、千雨さん、これはこれで楽しそうですし…枕投げとか」

「いや、それやると他のお客に迷惑じゃ…」

とかいう話をしていると、木乃香が爆弾を投下し始めた。

「ところでなーネギ君の隣に寝る人、気をつけてなー

ネギ君、お姉ちゃんのぬくもりがないと寝られへん時があってなー

たまに隣の人に寝ぼけて抱き着いてくるから」

そしてまあ、こんな燃料投下にネギラブ勢が反応しないわけがなく、大騒ぎとなった…

私たちはそれを端っこの二人用布団を確保してそのうえで笑って見ていたが。

 

その夜…あほどもが大騒ぎするので目が覚めて、念の為、聡美をかばうように抱きしめていると、背中に何かがぶつかった。そのままの体勢で首だけ回して確認するとそれはネギだった。

「んーお姉ちゃ…」

と、私の背中に抱き着いてくる。

「…まあいいか」

と、私はネギを放置し…あほどもは相打ちで静かになった様なので…再び眠りに落ちた…

 

 

 

そして、明朝…またもやクーに誘われて朝練をする事になったのだが、その時発見した昨晩のバカ騒ぎの跡は放置して、朝練を済ませ、ゆっくりと朝風呂を楽しんだ。

そしてその日も昼過ぎまで楽しく遊び、私たちは麻帆良へと帰還した。

 

 

 

合宿の終わった次の日の朝練にネギはアーニャを連れてやって来た。

「ちょ、ちょっとネギ、何なのよ、ここは!」

「何って…ダイオラマ球だよ?アーニャ」

「ふっふっふ…初々しい反応ねぇ…私達にもそういう時期があったあった…」

と懐かしむようにハルナ入って、そして続ける。

「さーて、楽しい楽しい夏合宿も終わった事だしー今日も修行、がんばるぞー」

「「「「「「「「「「「「オー」」」」」」」」」」」」

と、いつもの通りにハルナの掛け声を合図に、朝練が始まった。

「さて、楓、さっそく一戦頼むアル」

「あい、分かった」

「なら俺は千雨姉ちゃんとや」

「了解、コタロー」

と、次々とまずは肩慣らしとそれぞれの相手を見繕っていく。

「ちょ、ちょっと、何なのよ、一体!?」

とアーニャが困惑を隠しきれずに叫んだ。

「何って…朝練?」

「アニキ…そうじゃなくて、具体的に何するが、だろ?」

「あ、そっか…えっと…魔法戦闘の修行なんだけど、まずは軽く肩慣らしからで…見た方が早いかな?」

「そうですね、でしたら下で空中戦でもしましょうか、ネギ先生」

「でしたら、私たちは観戦という事で」

「うん、行こう、アーニャちゃん」

「わ、え、ちょっとのどか!?」

と、騒がしい感じでネギ、刹那、アスナ、アーニャに図書館組は水面近くの展望塔に転移していった。

「聡美も行くか?」

「そーですねーアーニャさんに見せるつもりならば千雨さんとコタロー君の肩慣らしを見ているよりは楽しそうですしー」

「わかった、また後で」

「はいーではまた後でー」

と、聡美もそれに続いた。

 

「さて…まずは軽く組手と行こうか」

展望舞台はクーと楓に取られてしまったので、屋上へ上がってコタローと向き合う。

「おう、瞬動、魔法、忍術無しでええな?」

「ん、そんなところだろう」

「では…」「じゃあ」

そして呼吸を合わせ…

「いくぞ」「いくで」

朝練を始める私達であった。

 

 

 

ドゴォォン

体が温まって来たので、瞬動有り(虚空瞬動無し)にルール変更して少し、そんな破壊音が聞こえて地面というか塔が揺れる。

「ん、なんやろ」

「ちょっと様子見に行こうか」

という事になり、二人して展望舞台辺りに飛び降りてみると、頭をケガした楓が木乃香の治療を受けていた。

「なーにやってんだよ、楓」

「およ、邪魔をしてしまったようでござるな、千雨、コタロー」

「い、今、何処から!?えっ、ふ、降って来た!?」

と、ネギと刹那の一戦が終わったようで戻って来たらしいアーニャが私達を指さして何かわめいている…ちょっと驚かせちまったかな?

「ねーみんな見て見てーっ、見て見てー刹那さん、私飛んでる、飛んでるよーホラホラ」

とハルナの作品らしき翼をつけて宙を舞うアスナがいた。

「おおっ、スゴイです、アスナさん」

「フフフ…自信作よ」

「ところで、ねぇパルーこれどうやって操縦すんのー?あと時間って大丈夫なの?」

「あっ…やっべ…」

「「え…」」

 

ポンッ

 

「へ…」

次の瞬間、そんな音と共に翼は消え去り、アスナは水面に向かって落下していった。

「いやぁあああああああっ」

「アスナー!?」

「アスナさーんっ」

アーニャが叫び、ネギがとっさに飛び降りる。

「何やってんのよ、人殺しーっ!?」

「いやーまあ、アスナなら大丈夫だし。改良の余地ありかー」

「だからって友人をあんな目にあわせて平然としてんなよ」

と、私は手加減の上、ハルナを叩いた。

 

なお、アスナはハマノツルギを城の壁に突き立て、それを足場にして落下を止め、杖飛行のネギに回収された。

「なな…な…何でみんなこんなにスゴイのよ!?アスナはバカだけどっ。

超人集団じゃないッ、一般人じゃなかったの!?」

「それは…皆、明確な目標を持ち、良き師の元で研鑽を積んでいるからではないかと…」

「師って誰よ?」

アーニャが聞いてはいけない質問をしてしまう。いや、別に知られて困るこっちゃないのだが。

「この城の主…エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル」

そして、夕映は答えた、敬愛なるわが師の名前を。

「エ…エヴァ、エヴァンジェリン…?」

「ええ」

「そ、それって、あ…あの『不死の魔法使い』の…」

「ええ、『人形使い』『悪しき音信』『闇の福音』『禍音の使徒』…のエヴァさんです、ご存じで?」

魔法使い社会育ちのアーニャがご存じでないわけがなかろう、夕映よ。

「御存知も何も、伝説の大悪党じゃないっ!ネギのお父さんがよーやくやっつけたっていう究極の闇の大魔法使いよっ!?」

「…のようですね」

と、暢気にいう夕映にアーニャはしびれを切らしたのかヒソヒソと何かを夕映に吹き込み始めた…が…ニヤニヤと笑う大人モードのエヴァが近づいてきていた。

「ほう?私が何をするって?アンナ・ココロウァ」

と言ってポンポンと頭をなでながら言うエヴァにアーニャは…

「いやあぁああっ食べられるうぅぅぅッ」

と、叫びながら逃げ去っていった。

「何をやってらっしゃるんですか」

「あのガキはぼーやの幼なじみだろ?ちょっと脅しておこうと思ってな」

「何でー」

「いじめっ子ねー…」

「…大人げない」

アーニャを追いかけていく夕映とノドカを見送りながら、私たちはエヴァの行為をそう酷評するのであった。

 

 

 

「と、言うわけで私も明日から一緒に修行することにしたから、よろしくね!」

…何がどうなったのかはわからないが、なぜかそういう事になったらしく、アーニャは夕食の席でそう宣言した。一応、とエヴァの方を向くと、今更一人増えた所で変わる物か、と言う顔をして鼻を鳴らしているのでまあ良いのだろう。

 

 

 

「ちょっとネギ、アンタ一日で何日分の修行してんのよ!?」

アーニャがそう叫んだのは夕食後の歓談時の事だった。

「この朝練で三日分集中的に修行して、そこから午後にまた数時間って一週間分じゃないのよ!?」

「そうだね、用事のない日はそんな感じかなー。今日は海で遊んだ分のリハビリもあるから午後は少し長めにしようかなって思っているけれど」

「ストイックすぎんのよ!せっかくの長期休暇なんでしょ!もう少し遊びなさいよ!?」

「えー普通に息抜きにチェスとかカードとかボードゲームとかしているよ?」

…確かに丁度、ネギはアスナ達とポーカーをしている。私は聡美とチェスである。

「そーいうんじゃなくて!」

とアーニャは叫ぶ…なお、アーニャは図書館組+刹那とボードゲーム中だったりする。

「まあまあ、アーニャちゃん…昨日までみたいに遊びに行ったりもしているよ?」

「せやなーネギ君誘って遊びに行こ?アーニャちゃん」

「あ…そうよね…その手があるわよね…ありがとう、ノドカ、コノカ」

と、いう事になり、その場は収まった。とはいえ、キッチリとその日のネギの鍛錬に、午後錬も含めて付き合う事になったのであるが。

 




おまけ
白き翼の部屋割り
ネギ アスナ 刹那 木乃香
夕映 ノドカ ハルナ (アーニャ)
千雨 葉加瀬 クー
コタロー 楓 朝倉+相坂(仮の依り代)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。