「あれ?もう着いたんですか?」
と、ハルナ…まあ理屈は何時もエヴァの城で使っているのと同じだからな。
「ええ、到着よ」
「早ッ」
「ココどこなん?」
「ゲートポート…空港みたいな場所よ」
「いやーいいね、転送は!飛行機とは大違い」
「ホント楽だねー現実世界でも実用化しないかな」
「あそこを上がれば入国手続き前に街を眺められるわよ」
「おおっ」
「ホンマ!?」
「行ってきまーす」
「お先ー」
と、一同が騒ぎ始める。
「あの…千雨さん…私達も行きません?」
「あ、ああ…」
と、聡美に促されてテラスへと向かう…その前にネギと目を合わせて、頷き合って。
「おおーっ」
「わひゃー」
「おおお」
「すっ…ごーい!」
「うわぁ…」
「くうぅ~~~っいい!いいね!!さすがファンタジー!いやー来て良かった、コレが見たかったんだよねー」
「マンハッタンというより香港ですね」
「へぇ…やっぱりどこも同じだなぁ…リアルの匂いがプンプンするよ」
「何言ってんのよ、千雨ちゃん、アレ見てよアレッ!」
私の感想にハルナは興奮しながらクジラ型飛行船を指さす。
「クジラが空飛んでるじゃんか!他にもいろいろ」
「ありゃあ、現実世界で言う所のトラックの類だな…取り立てて騒ぐほどのもんじゃあないぜ」
まあ、技術的な意味では興味深いが。
「もー何でそんなに冷めてるかなーこのシニカル娘はっ、夢がないよ、若人のくせに!」
「ふん…まあこれでもエヴァの弟子を長年やっているんでね…こーいう性格なんだよ」
「あれー?千雨さん、エヴァさんに弟子入りする前後でそんなに性格変わっていましたっけー?」
と、聡美から突っ込みが来る…元々だったかもしれないけど、今はいいっこなしだろうに。
「アーうん…まあそれは置いておいて…知っていたつもりだったけれど、あの街並みを見てはっきりと分かった…こっちの世界には魔法はあるが、向こうと同じで夢やメルヘンはねーよ…希望は知らねーがな」
「…メルヘンがあっても困りますよ?魔法って言ったってただの技術ですし…地球と同じく、人の営みが紡がれているだけでしょう?そうでなければ世界大戦の英雄なんて生まれませんよー」
「うわーこの子らは本当に…」
そう、ハルナが呆れたように言った。
少ししていやな気配を明確に感じる。
「むっ…ネギが当たりかっ」
「へ?どうしました?」
「何かあった。ネギたちに合流する…みんなは少し離れてついてきてくれ」
と私は聡美たちが小走りで着いてこられる程度の速度で先行し、ゲートポートに戻ると雷撃が場を覆っていた。
「げっ…なんだアイツら…ネギが被弾…仮契約カードも杖もなくて治療ができない…そんなところか…」
「ち、千雨さん一体…」
「しっ…聡美たちは少し下がって隠れていてくれ…」
と、着いてきた聡美たちを少し下がらせる。
「千雨さんは…」
「戦うしかねーよ…だから隠れていてくれ」
「はい…ご武運を」
と、言った所で楓、刹那、コタローが敵に飛び掛かる…一番不利なのは…刹那か
魔法の射手 雷の3矢 固定 魔力掌握 精霊の歌・雷の射手の旋律・三重奏 三位一体の闇呪紋 発動
と、状況が状況かつ、携帯杖のスペックを鑑み、魔法の射手・雷の矢を装填する…正直、魔法の射手3本で下級精霊3柱より、上位精霊1柱を召喚する雷奏のソロの方が威力はあるのだが贅沢は言っていられない。
偽・断罪の剣・エンハンスド
跳躍し、呪血紋による断罪の剣…紋に専用の発動媒体系の機能も埋め込んでいるので使える…に微弱な雷を纏わせて刹那をすでに下した白髪の少年に切りかかる…が
「まだいたか」
反応され、手を翳されると切り結ぶ以前に、膨大な魔法障壁に切りつけたような手ごたえを感じ、離脱する。と、石の槍が私のいた場所を貫いた。
「へぇ?思ったよりやるじゃないか」
「あー鉄扇使いのお姉さん、お久しゅう」
と、コタローを片付けたファンシーな格好の剣士が切りかかってくる。
「月詠…」
「と、いう事は君が長谷川千雨かな?」
「そーいうてめぇはフェイト・アーウェルンクスか?」
「よそ見はアカンえ、お姉さん」
そう言うと月詠の剣技が鋭さを増す。
「彼女の相手は任せたよ、月詠さん」
と、フェイトは私を無視してネギたちと会話を始めた…私も真面目に月詠の相手をするのであればそれに関わっているどころではなく、せめて巻き込まないようにと少し離れた場所で月詠と戦い始めた。
「…あれからどんだけ強くなったんだよ、てめぇは」
近接戦闘技術も身体スペックも割と頑張って向上させたつもりだが、月詠の剣技はそれを上回る勢いで明らかに鋭くなっていた。
「またまたーお姉さんこそ、強うなってて嬉しいわー」
暢気に会話などしているが、ただ逃げ惑うだけならともかく、抑えていられるのはこの月詠だけで手いっぱいである…し、多分こいつまだまだ遊んでいる…絶体絶命である。様子を見ているほかの奴が参戦してこなくともこのままでは月詠が飽きたら殺られる。
魔法の射手 雷の3矢
「あはは、可愛らしい魔法や事…まともな発動媒体あらしまへんの?」
月詠が小刀で魔法の矢を切り払い、煽るように言う。
「そーだよ…私の発動媒体は封印箱の中だよ、わりーな」
「アハハ、西洋魔法使いやのにうちとこれだけやり合えるお姉さんの全力…是非味おうてみたいなぁ…」
月詠が頬を赤らめてそう言う…
「まったく…戦闘狂が」
「お姉さんこそ…剣合わしとればわかりますえ、貪欲なまでの力への渇望が!」
「てめーらみたいな危険人物が闊歩しているこの世界、力を求めて何が悪いっ」
「別に悪うあらしまへんけど…うちみたいなんに狙われとう無かったら力をつけるよりも縮こまってガタガタ震えてはる方が安心どすえ?」
そんな軽口を叩きながら互いに時間を稼ぎ合う…状況の好転を祈る私に、私を抑えて楽しく死合えればそれでいい月詠の思惑が重なって…せめてバングルかその代わりになるような呪紋の再施術時間がなければ月詠に勝つのは無理である。
バキンッ
そんな音が響き、直後、仮契約カードや発動媒体がまき散らされる…
「おろ…お姫様の力で封印箱が…」
「よし…すぐ戻るからちと外すぞ」
「お仕事ですし、逃がしまへんえ」
と、月詠の明らかに手を抜いた攻撃をかいくぐりながら自身と聡美のバングルを回収、糸でかっさらった木乃香とアスナ以外の仮契約カードを持ち主に投擲していく…
「もうよろしおすか?」
「応、ありがとうな…それじゃあ…ヤろうか」
バングルをはめ、私は言った。
「あぁぁ…楽しみやわぁ」
「ノイマン・バベッジ・チューリング 拡散・白き雷」
「あはは、魔法アリになってお姉さんえろうキラキラしはって、楽しゅうてしゃあないわー」
楽しそうに斬りかかってくる月詠を、後退しつつ、断罪の剣でいなしながら準備を整える。
「ノイマン・バベッジ・チューリング 契約により来たれ 高殿の王 我に力を 雷の招来」
魔力開放 終演 精霊の歌・雷の射手の旋律 三重奏
魔力掌握 精霊の歌・雷奏 三位一体の闇呪紋 発動
「ノイマン・バベッジ・チューリング 契約により来たれ 嵐の女王 我に力を 風の招来」
魔力掌握 精霊の歌・雷と風の二重奏 三位一体の闇呪紋 増強装填
「うふふ、ほんに美味しそうやなぁ…お姉さん…行きますえ」
「こっちこそっ」
流石に三重奏まで待ってくれる雰囲気ではなかったので、二重奏で切り結ぶ…殺意を込めて。
「あぁん、お姉さん、それや、この瞬間がたまらへんのや…うち、軽うイッてまいそうや」
そんなふざけた事を言いながらではあるが、月詠の剣技はさらに鋭さを増していく…こいつの底はどこにあるんだよ。
「そうかい!ならば逝ね!」
「アハハ、お姉さんこそー綺麗な血花を見せて欲しいわー」
いつぞやの様に、障壁と三位一体の闇呪紋の気によって防げているが、掠り傷のなりそこないを互いに浴びせながら切り結ぶ。剣技の不利を底上げした身体スペックと無詠唱・魔法の射手を始めとした魔法で補い、何とか拮抗させている…が、いやそうじゃない、と断罪の剣を解く。
「おろ?どないしはりましたん?まさか降参…な訳あらしまへんなぁ?」
「いやーフェイトとやらに切りかかってからついつい勢いで断罪の剣で戦っていたが…お前の相手はこっちのほうがよさそうなんでな…」
と、鉄扇を構える…月詠相手ならば断罪の剣よりも鉄扇がいい。
「あぁ…そらそうやわーお姉さん鉄扇使いやもんなー」
それじゃあ仕切り直し…となる寸前、こんな声が聞こえてきた。
「月詠さん、撤収」
「えーいよいよこれからやのに殺生なぁ~」
と、月詠が切なそうに声を上げる。
「えーじゃない、帰るよ」
「う~わかりましたー雇い主さんの指示やし従いますーという事でお姉さん、名残惜しいけどまたこんど殺り合うてなー」
と、月詠は敵パーティーに合流していった…すごく残念そうな雰囲気で。という事で、私も展望台への階段に向かう通路に隠れていた聡美たちに合流した…
「冥府の石柱」
直後、フェイトの召喚した石柱が場に降り注ぐ…
「げっ…こっちは範囲から外れているけど…」
「皆さんがやばいですねー…どうしましょう」
「私達では手が出せません…」
「私のアーティファクトでもきついかなぁ…」
とかやっていると、ゲートの要石が砕け散り、私たちの足元に魔法陣が浮かび上がる。
咄嗟に、聡美を抱き寄せて私は叫んだ。
「はぐれないように、互いに掴まれ!強制転移魔法だ!」
それが間に合ったかどうか…それを知るのは大分先の事になる。
そして直後…私たちは密林の中に立っていた。
「千雨さん…」
「聡美…」
とりあえず、聡美と逸れるという大惨事だけは避けられた様子である。
「これからどうしましょうか…」
「とりあえず…バッジの機能で位置検索しようか」
「アーそれがありましたねー」
という事でバッジ探知を行ってみたのだが…
「北西に1つ、南東に2つ、それぞれおおよそ100km…にさらに遠方に幾つかの反応、ですかー」
「ああ、とりあえず北西の一つと合流して南東の2つと合流、5人で次の反応を追おうかと思う」
「ムム…確かにそれがよさそうですね…ですが…多少体力がついたとはいえ、100kmはきついです」
「そうだな…お姫様抱っこで運ぶって言うのは…?」
「その…体力が切れたらお願いします」
「うん、それじゃあ、行こうか…夜になったら力の王笏使って電子精霊に星で現在地を照合させよう」
「はい」
そういう事で、私たちの行動方針は決まった。