例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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71 辺境編 第2話 拳闘士への道

「すみません、お店を…」

「いつものコトだ、あいつらに弁償させるからOKさ。

しかし君達若いのに強いねえ、おじさんも昔を思い出しちゃったよ」

「え、あ、あのそれって…父さ…」

と、ネギは父親の事しか頭に内容ではあるが、当然バーテンの言葉は違った。

「君達、拳闘士でもやってみちゃどうだい」

「拳闘士?」

「ああ、君達くらい強けりゃガッポリ儲けられるだろうよ」

まあ、資金があって困ることはないが…今欲しいのはそれではない。

「金なんかどうでもええ、欲しいのは情報や、何か思い出さへんか?」

と、コタロー…一応のロールとしては賞金稼ぎのフリしているんじゃなかったかな?私達は。

「ああ、うん、思い出したよ。賞金首じゃないけど、このコがね、水を貰いに来たから気前よく…」

「ホントですか!?」

「誰や!?」

と、食いつくネギたち…しかしバーテンが指した写真は予想外のモノだった…

「このコだよ、そばかすが可愛いコだった、間違いない」

「へ…」

それは村上のモノで…密航者としてもゲートポートで確保されていなかったはずなのだが…どこで紛れ込んだんだ、あいつ。

「ああ…確かに前の通りで男たちとモメてたかなあ…他にも女の子がいたか…その後、馬車に乗り込んで…奴隷商人にでも捕まったんじゃなきゃいいんだが…」

「「「「「ええ~っ!?」」」」」

私たちは、思わずそんな声を上げるのだった。

 

 

 

その後、店の片づけを手伝った後、夕方まで時間をかけて情報収集をし、酒場で夕食をとりながら情報を統合・解析した結果、村上を含む数名の少女が奴隷商らしき一団に連れ去られた、行先は南の港街グラニクス。ただ、そのうち一人が病気のようでもあったという情報もついてきた。

「さて…どうする?」

と、コタロー

「行くしかないでしょう!」

と、ネギ

「だな、でかい街ならバッジの持ち主もそっちに行っている可能性はあるし…

何より私たちの仲間が奴隷商なんて奴らに捕まっているてんなら…悩んでいる暇はないだろ?」

「ハイッ」

「はぁ~~しっかし、夏美姉ちゃんまで巻き込まれとるとは…ま、嘆いてても始まらんな、行くで!」

と、会計を済ませて席を立つ。

「もう発つのかい、店の修理手伝ってくれてありがとな」

「何の、マスター、飯、旨かったで、サンキューな」

「グラニクスはここよりデカくて治安も悪い、気をつけてな」

そして、私たちは店を出て…グラニクス行きの夜行船に乗り込んだ。

 

 

 

翌日、グラニクスに到着した私たちは情報収集の結果、明朝に移民管理局を訪ねるべきであるという結論に至った…あまりよくない結末ではあるが、ここグラニクスでは奴隷の需要が十分にあり、グラニクスで働く正規奴隷として登録されているのであればそこに行けばわかる筈だという事が判明したからである。あるいは、単にここの住民として登録されている可能性も含めて。

「なんだかんだでやっとまともな寝床が使えますねー」

「そうだな…村上達には悪いが今晩はゆっくり休もう…夜通し調査というのもきついからな」

移民管理局を訪ねるべきだという事がわかったのが夕方、その時点で窓口は閉まっているという事がわかった為、まずは宿をとる事になった私達であった。

尚、部屋わけはフツーにネギとコタロー、私と聡美と茶々丸、である。

「あの…私もベッドを使って本当によろしいのですか?」

「ああ、椅子でも大丈夫なのはわかっているけど、気分があるだろ?おいで」

「うんうん、川の字になって寝よ、茶々丸」

「あ…はい、ハカセ、お母様」

そして、その晩はなぜか私を真ん中にした川の字で寝る事になった…私は娘の茶々丸を真ん中に、と言ったのだが…

 

 

 

そして翌朝、朝一番に移民管理局を訪ね、問い合わせ…村上、大河内、亜子、まき絵、裕奈に関して…を入れ、出た結果は…

「ムラカミナツミ、オオコウチアキラ、イズミアコの登録はありました。そしてその三人はすでに正式な奴隷です」

という回答だった。その回答に当然コタローはブチ切れるが、3人は3日前からドルネゴスとやらの債務奴隷…それも3人で100万ドラクマという大金で…となっているという詳細を告げられただけであった。そして話が殴り込みという方向になりかけた時…

「フフ…殴りこむねぇ、それはあまり賢明じゃないんじゃないかな、コタ君」

私が止めるより早く、コタローたちを制止する声があった

「誰や?」

「流しのお姉さんのお話、ちょっと聞いてった方がいいと思うな~」

そこにいたのは、バッジの主であろうと推測されていた朝倉だった。

「あ…」

「よっ」

「ん、和美姉ちゃんか、話は向かいながらでもええか!?」

「うん、徒歩でよければ、ね」

 

 

 

移動中に朝倉と共有した情報は私たちがヘカテスで得た情報の補強と…三人を奴隷にした人物、ドルネゴスについて…単純にいうとドルネゴスは幾つかの闘技場を経営したりしている有力者であり、違法に奴隷を奪うなんてすれば色々とマズイことになる…という事だった。

「…となると…今日は面会を求めるくらいで…対策は後々、って所か?」

「そうだねぇ…少なくとも拙速な強奪はマズイ」

「チッ…とにかく、夏美姉ちゃん達の無事を確認しに行く、ってのはええんやな!?」

「それは大丈夫…だから行くのは止めなかったのさ」

という事でドルネゴスの経営する闘技場の一つ、村上達が働いているという場所に到着した。そこで面会を求めると…奴隷長だという熊獣人が現れた。

「何だい、あんたたちは」

「僕たちは村上夏美、大河内アキラ、和泉亜子の知り合いで…偶然彼女たちの現状を知って訪ねて来たんですが…面会できないでしょうか」

「ああ、あの子たちの…まあいいだろう、ついておいで」

と、割とあっさりと面会は認められて、今、開店準備をしているというテラス席に案内される…途中

 

ガシャーン

 

「「今のは!?」」

と、ネギとコタローが駆け出していく…

「すいません…落ち着きがなくて…」

「いいんだよ、知り合いが急に奴隷になっただなんて知ったら心配するのは仕方ないさ、私達も急ぐよ」

熊獣人も割と軽やかに走り出し、私たちもそれに続いた。

 

「何やってんだい、この穀潰しがーッ」

と、チーフはブチ切れモードのネギと対峙していた男をタコ殴りにし始めた。内容から察するに、その男はボスの所有物である奴隷にちょっかいをかける常習犯で、村上達に(経緯はともかく)ちょっかいをかけた事で折檻を受けている様子である。

そんなこんなをしているとフラッと亜子が倒れた。

 

 

 

ネギが亜子を現在の部屋…あまり良いとは言えないが、思ったよりはまともな部屋だった…に運ぶと私たち…というか朝倉が大河内と村上に現状の裏取りを済ませ、茶々丸と朝倉がテラスで情報交換をしている間、私たちは部屋の前で待機していた。

「ったく、なんで見ただけで見破れんねん」

「え~わっかるよー髪型も性格もまんまだもん、演技力ゼロ」

「完璧な変装の筈なんやけどやばいな~」

「まあ、文字通り寝食を共にする知り合いならわかる、って事だろうな」

「そうですねー私達と違ってコタロー君は年齢だけでー種族を変えていませんしー」

「ああ、そっか、そのペンダントで種族と年齢を変えているって事は、二人は長谷川さんとハカセさんなの?全然わかんなかったよ」

一応、特徴というか一時期クラスの連中が騒いでいた揃いのペンダントがなければ私たちの正体はバレていなかったらしい。

「…まあ、それやったらええかな…て、それはそうと、なんでついて来てんねん、来んな言うてたのに

おかげで借金やら奴隷やら、訳わからん面倒に巻き込まれて…自業自得やで?」

と、コタローが辛辣な事を言う。

「ご…ごめん、でも…コタロー君、何も話してくれないし、気になったんだもん…」

「?なんで夏美姉ちゃんが俺のコト気にすんねん」

「だ…だって…危険があるとか言ってたし…」

まー要するに、コタローに対する庇護心的な感覚で心配していたわけか…多分だが。

「は?」

「…!いいんちょとちづ姉と私はコタロ君の保護者なんだから心配すんの当たり前でしょー

もーそ、その変装やめてよ、調子狂っちゃうじゃんっ!」

庇護心…だよな?それとも弟的な庇護心が成長したコタローの姿を見て…的な?

「この変装といたらマズイ言うてるやろ」

「うるさーい、背が高くなる変装なんて非常識だよ!結構かっこいいのもスッゴクむかつく!」

「はぁ!?」

…もう痴話喧嘩でいいか、これは…とか思っていると大河内がネギに質問を始めた。

「あ…あの、ナ…ナギさん、少し…質問していいですか?」

「え」

「これは…現実なんですね?この魔法があって、人間じゃない人たちがいる世界…」

「ハイ…スミマセン、こんな大変な事になってしまって…」

「い…いえ、それはいいんです、助けに来てくれたし…ただ…それより…」

と、ちらりと大河内は私達とコタローを見る。

あ、そうか、コタローの正体がばれて、私と聡美の正体もバレたという事は…芋づる式にネギの事もバレる訳で…

「ナギさんはさっき『僕の生徒に』って言いましたよね、それでアレは魔法で変装した小太郎君、そしてあのお姉さんとお嬢ちゃんが長谷川とハカセ…

と、いうことは…あ…あなたは…君は…きっ君は…ネッ」

そこまで言って、大河内はついに崩れ落ちた…

「ま、待って…色々ありすぎて…で、でもそんな…そしたら…」

「大河内、今はソレは忘れろっ!今日はそれ以上考えるな、な?あとで話すから」

正直、ネギがナギである事がバレると亜子の恋心的な問題でマズイと言うのをすっかり忘れていた。

「だ、大丈夫ですか!?」

「てめぇは黙っとけ!」

と、いう事にして大河内も亜子と並べて寝かせて村上に二人の世話を任せることにした、亜子に『ナギ』の正体をばらすな、と厳命した上で。

 

 

 

「問題は山積みだな」

テラス席で朝倉と茶々丸に合流した私は思わずそう言った。

「そうですねー特にアレはまずいですねー」

「あの…さっきのは」

と、ネギが言う。

「…この問題は難しすぎるから私達に任せてお前は忘れろ。ただ、亜子に正体はバラすなよ」

「ハ…ハア…」

よくわかっていないようだが…正直亜子の体調も考えるとこれは爆弾であり…解除方法は、正直ないに等しく、いかに被害を少なく爆発させるか、という問題でさえある…言い換えれば蓋をしておくしかない、ともいう。

「さて…まとめてくれ」

と、私もある種問題を投げ捨てて、朝倉にバッジを投げ渡すと共に状況の取りまとめを頼んだ。

「サンキュ、いやー悪いね、私としたことが聞き込みの時にバッジ落しちゃったみたいで」

「で?」

「うん、結論から言うとやっぱり…あの三人を力ずくで救出するってのは今はまだ無理だね」

と、切り出した朝倉が語った事は概ね私たちの掴んでいた内容を詳しくしたもので、亜子が風土病で相当ヤバい状態だったのをここのボス、ドルネゴスが与えた薬で何とかなった。しかし、その薬、イクシールの正規代金(本物であれば)として100万ドラクマの借金を三人は背負い、債務奴隷となった…というわけだ。で、経緯はどうあれ、正規の契約である以上、奴隷の首輪をはずす方法は身分の買戻し以外に不可能であり、無理に外そうとすれば、首輪が爆発するとの事だ。

「しかし、それはもしやアスナさんの能力で…」

と、茶々丸が言う。

「確かにね…けどさっきも言ったように、3人を奴隷にしたここのボスはいくつかの闘技場を経営したりしている有力者の一人でね。

そこから違法に無理矢理3人を奪うとなるとその後がマズイ、色々と敵に回すことになる。

まだみんなと合流できていないウチに下手な行動は控えた方がいいっしょ?」

「…と、なると強奪するとしても最終段階、帰還手段を含めて3人の身柄以外の全てが整った段階で、って事だな」

「そーなるね、その場合でもネギ君の父親探しが終わっていなければ、次を考えた場合よくない手段ではある。

まあ一番文句ないのは100万ドラクマ払って三人を買い戻すことだけどね」

「そんな金、どこにあんねん、10年遊んで暮らせる額らしいで?」

まあ、逆にいえば、その程度の難易度ではあるが…賞金首状態では色々と方法に制約もある。

「…いや、コタロー君、無いこともなさそうだよ」

そう言ってネギは拳闘大会のポスターを指した。

「…朝倉、これに関しての情報は何かあるか?」

「そうだねぇ…まだ調査中なんだけれども…約1か月強後にオスティアって言う場所で開かれる世界規模の決勝大会…らしい、詳しくはまだわからないけれど…終戦記念の大会でナギ・スプリングフィールド杯って言うらしいよ?」

「えっ…」

思いがけない大会名にネギが声を上げる。

「全世界大会か…とりあえず、拳闘士自体も儲かるらしいし…目指してみる事自体は問題ねーと思うぞ、他の皆とそこで合流してここに戻ってきて金策するっていう手もあるしな」

「どー言うこっちゃ、千雨姉ちゃん」

と、コタローが言う。

「…逆に聞くがな?拳闘大会に出てくるって言う範囲内でも世界中の猛者相手に優勝する自信あるのか?私のガチモードでさえ、この世界の本物連中にとっちゃ下位程度にすぎねぇのに?」

「あ…そうでした…賞金を稼げて修行と皆さん…特にまき絵さんとゆーなさんと合流する旗印にもなっていい案だと思ったんですけど…」

と、ネギが落ち込む。

「早合点するな、私は反対したわけじゃねぇ…優勝は難しくとも、金策にはなるし、合流の旗印や機会にもなる良い案だ、って言ったんだよ…やってみようぜ、拳闘士」

変装を幼女化でなく大人方向にしたかいがあったというモノである。

 

 

 

熊のチーフ…クママというらしい…にお願いして拳闘士になりたい旨をドルネゴス氏に伝えてみた所、まずはネギたちの入団テストが行われる事になった、と言うのが先ほどの事。そして勝てと言われた相手がヘカテスの酒場でネギがのした禿マッチョ、バルガスで…当然まあ圧勝だったわけだ…が。

「さて、次は私だ、誰と戦えばいいんだ?」

と、言って私はクママさんや聡美たちと観戦していた場所から飛び降りた。

「は?」

「へっ?」

そんな声を上げたのは先ほど折檻を受けていたチンピラ…トサカとクママさんだった。

「…えっ?」

その反応に私もそんな返事を返さざるを得なくなった。

「あ、あんたも入団テスト受けるつもりだったのかい!?いやーごめんよ、てっきりその二人だけかと」

「え…姉ちゃんも受けるってそりゃあ…」

クママさんとトサカが困惑する。

「…その姉ちゃん、俺らよりも強いで」

ぼそっとコタローがつぶやいた。

「あ…えっと…ちょっと待っていろ」

と、色々予想外だったらしく、トサカがどこかへ行った…おそらく座長のドルネゴス氏に相談しに行っているのだろう。

「いやー私も昔は拳闘士やっていたんだからちゃんと確認するべきだったね、ごめんよ」

観客席からクママさんが言う。

「いえいえ、ちゃんと3人と言わなかった我々にも問題がありましたので」

確か、クママさんにネギが言ったのは、『僕たち、拳闘士になりたいんですが、どうすればいいでしょうか』だった筈である。

 

「よ、よし…姉ちゃんも同じ条件で良いそうだ…しかし、こいつらより強いってんならアニキに勝って貰うからな!?」

と、治療を終えたバルガスと共に戻ってきたトサカがやけっぱちの様子で言った。バルガスはすごく嫌そうな顔をしているが。

「えーっと…バルガスさん?」

「入団希望者のテストも仕事なんでな…」

と、哀愁漂う様子…まあ、手加減するか、真面目にやるか悩む…

向かい合い、互いに構えをとる…

「じゃあ、始めろ!」

流石に実力を示す場で舐めプはまずかろうと気だけではなくて咸卦の呪法までは発動させ、様子を見る…と、バルガスも戦いの旋律を発動させた後、様子を見ているようである。

 

魔法の射手 雷の3矢

 

ならば、始めるかと無詠唱で雷の矢を放つとバルガスが瞬動でその場を離脱、反撃に酒場で見せた砂の5矢を待機させた状態で殴りかかってくる。

 

「ノイマン・バベッジ・チューリング 雷精召喚」

 

魔法の射手 雷の7矢

 

と、跳んで後ろに下がるデコイを編み、直後に魔法の射手を行使、私本体は瞬動で大迂回をしてバルガスの後ろに回る。

そして、バルガスが砂の矢を雷の矢にぶつけ、砕けた砂利とバスガル自身のこぶしが私のデコイを貫くと同時に、トン、と鉄扇を心臓の真裏に当てた。

「これでいいかい?」

「あんたの…勝ちだ」

私の問いに、バルガスは冷や汗をたらしながら、そう答えた。

と、いう事で私たちは、無事に金策方法と宿とを手に入れたのだった。

 

 

 




逆にいえば、その程度の難易度ではあるが:遊んで暮らせる、を豪遊して暮らせる、ではなく働かずにそこそこの生活水準で暮らせると解釈すれば、100万ドラクマを10年分の若干浪費癖のある独身者の生活費とみてざっと3000万、一人当たり1000万とすれば簡単では決してないけれども、絶望的でもない…かな?確かに泊まり込みのきつめの仕事を共同生活で5,6年すれば返済できてもおかしくはない、くらいという解釈。
また、子供二人の1か月のクルーズの船賃が5万ドラクマなのでこの仮定だと150万円位、中古の長距離大型トラック?(パル様号)が450万、早々変でも無いかな?と思ったけれども、1ドラクマ30円換算なのでナギまんが1つ1アス?で約2円になってしまう…のでナギまんは無視(食料品が安い世界観にしても5,6年働くを普通の労働に限定するといろいろと問題もあるので
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