例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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82 辺境編 第13話 出場権の行方

「ホントですか!?まき絵さんたちも無事だったんですか!?ほかの皆も…!?

良かった…ホントに…良かったです…」

コタローから聞いた皆の安否情報を告げた結果、ネギはそんな事を言って泣きながら喜びを示した。

「おー」

「まあ落ち着け、ネギ。それで、残りは夕映、ハルナ、アーニャ、それにカモ…まーどこでもなんとか生き延びてそうな連中ばっかりだな」

「そうですねー過信はできませんがー自力でオスティアにて合流できそうな方々ばかりですねー」

と、聡美が私の楽観論に乗る…実際は連絡がない事を鑑みれば、世界一周組の探査に引っかからない場合、その三人と一匹が全員無事かつ自力でオスティアにて合流可能な可能性は、面子を考慮しても五分五分かと言うのが私と聡美の共通見解ではあるが…まあウソではない。単に8割の確率で無事にオスティアまでやってこられる3人と一匹が全員無事にやってくる確率が5割を切るというだけで。

「そう…ですね」

「ふ…嬢ちゃんたちが言うなら間違いねぇ!よかったな、ぼーず。

よし、じゃあ修行の続き行くぞぉ!」

バムッとおっさんがネギの背を強くたたいた。

「ええーッもう少し詳しい話を…」

「いや、まあ…無事と決まったわけではねぇんだが…」

ネギのメンタル的に楽観論で行くとは示し合わせているが、そこまで楽観視されても困る。

「大丈夫、大丈夫、その四人は無事だぜ!仲間を信じようっ」

「いや…まあ…そう…だな?」

「千雨さんまでー皆さんの情報、もう少し詳しくー」

「私もそれほど詳しい情報があるわけじゃねーけど…次の休憩にな?つうことで、食料しまったら水浴び場を借りるぞ、おっさん」

「おう、頼んだぜ、嬢ちゃんたち!よっしゃ、嬢ちゃんたちが戻ってくるまでぶっ続けで行くぜ、ネギ!」

と言う感じで、私たちはラカンのおっさんの隠遁地に戻ってきた。

 

 

 

「で、おっさん…カゲタロウの奴が拳闘試合を仕掛けて来たんだがどー言う事だ?」

その夜、私はそうおっさんを問い詰めていた。

「んー?カゲちゃんがか?」

色々バレているだろうと、私相手にはもはや親しさを隠そうともしない。

「そうだよ、ボスポラスのカゲタロウが、だよ」

「そーいう事もあるさね、あいつだって放浪拳闘士なんだしな」

「…あくまでそーいうスタンスか…で、当然っちゃあ当然だが強さ評価700なんてもんじゃなかったぞ…私が見たレベルで2000越え…本当の実力は3000超えても不思議じゃねぇ」

「まーそりゃあそうだ、700はぼーず相手に手加減していた時のだからな」

おっさんはそう笑いながら杯を傾ける。

「で、勝ったのか?」

「勝たせてもらった…だな…」

と、簡単に試合の終着を説明する。

「ふはは、マジでギリギリでの離脱じゃねぇか、カゲちゃんの奴…嬢ちゃんがそこそこつえーにしても遊びすぎだろ」

…やっぱりそこまで笑われる程度の力の差か

「いや、悪い悪い、だが、嬢ちゃんが闇呪紋や呪血紋なんかのオリジナル技法を使うならともかく、隠したままならそんなもんだ…オリジナル技法無しの嬢ちゃんが1500位として、カゲちゃんの本気は3000超えるからな」

言い換えれば、全部出せばチャンスはあるか、と言った所か。

「はぁ…で、本気でカゲタロウに勝てるようになるのか?ネギ先生」

と、私はため息をつき、その後、悪戯っぽく言う…確か、そんな事を言っていたはずである。

「あー…まあ術式兵装使いこなせればワンチャンある…よな?」

「くっくっ…私に聞くなよ、おっさん。

おっさんが言ったんだぜ?カゲタロウに二週間で勝てようにしてやる、って」

「いやぁ…ぶっちゃけカゲちゃんがチサメ嬢ちゃんにケンカ売ったのは想定外でなぁ…どこまで強くなるかなぁぼーず…中々楽しみではあるんだが」

そう、おっさんは杯をあおった。

 

 

 

「よし、始め」

ラカンのおっさんの合図に従って私はネギに魔法の射手付きの体術で襲い掛かる。

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 来たれ雷精 風の精 雷を纏いて 吹きすさべ 南洋の嵐 雷の暴風 固定 掌握 魔力充填 術式兵装 疾風迅雷」

…それを掻い潜りながら術式兵装をする、と言うのがこの修行の前半である。いまの手加減具合で9割方上手くいくようにはなってきた…と言うか私の特技でもある機動詠唱の技術習得でもあるのだが、コレ。

「よーし、じゃあこのまま模擬戦行ってみっか」

と、おっさんの気まぐれでここから体術のみの模擬戦に突入する。大体5回に1回程度ではあるが、連続の事もあれば10回連続無しのこともある。

咸卦の呪法をフルにして鉄扇を抜き、掻き消えたネギの動きを追う…大体の勝率は3割と言った所だが…

 

ドンッ

 

今回はネギの猛攻をしのいで投げ、私の勝ち。逆にスペックで押し切られると私の負けである。なお、機動戦に入るパターンもあるのだが、長引くし、疲れるので大体は私がネギを待ち受ける形式でやっている…まあ機動戦にするとスペック差が如実に出るが逆に技量差が大きいのでこっちも勝率3割くらいである。ただし、機動戦を選んだと気づかずにネギが私の残影を本気でぶん殴ったりしたら話は別だが。

「おーし…丁度10本模擬戦やったし少し休憩入れようか」

と、ラカンのおっさんが声をかける。

「はい、飲み物です。千雨さん、ネギ先生」

聡美がスポーツドリンクのような飲み物を私たちに差し出してくれる。

「ありがとう、聡美」

「ありがとうございます、ハカセさん」

 

「いやーぼーずに修行つけるにも助手役がいるとやっぱ楽だわ。

ま、それはさておき…ぼーずの技量も大分上がって来たし…もうちょいチサメ嬢ちゃんの前段でのギア上げるか」

と、少し休憩した頃にラカンのおっさんが言う。まーその代わり、私もおっさんに修行をつけて貰っているのだが。

「は、はい!」

「ん、了解」

という事で、ネギの修行が再開した。

 

 

 

そして数日後…ついにネギがグラニクスに帰還する日になり…帰ってきた。

「おっし、それじゃあ今後の修行は手はず通りに…な」

まあ、要するにおっさんを闘技場に侵入させる手はずの話である…トサカにだけは訓練用に場所を借りる話と共に師匠がラカンのおっさんである事を伏せて根回し済みであるが。

「はい、ラカンさん」

「うっしゃ、って事でひとまず解散!」

という事で、ネギはナギ・スプリングフィールドとして拳闘界に復帰し、ラカンのおっさんとの修行を継続することになる…

 

次の夜、当然の様に復帰初試合シングルマッチとタッグマッチとを勝利したネギには亜子たちによる完全回復祝いの特別料理がふるまわれる事となり、私達もその相伴にあずかる事となった。

 

そして、半月ほど私たちは拳闘士として活躍を重ね、グラニクスの夏季大会、ミネルウァ杯は終わりを告げるのであった。

 

 

 

「チウ、お前、ナギ・スプリングフィールド杯に出ろ」

夏季興行も終わり、オスティアへの移動準備が始まる頃(うちのボスのドルネゴス氏は思っていた以上に大物で、オスティアの大会にも一枚噛んでいて、運営要員を出す必要がある)にトサカに呼び出されて開口一番、そう言われた。

「…うちの推薦枠はナギ達という事で話が付いたはずでは?」

と言うか、ドルネゴス氏の面前で私が辞退してそう決まったはずだが。

「それがな…お前達が集まってきた有力な放浪拳闘士ボコりまくっただろ?それで追加の推薦枠が来ちまったんだよ…ナギ達はきちっと出場させる、その上でお前も出ろ、いいな?」

「…ナギとコジローが出場できるのであれば」

本当は大会中はフリーハンドの身で居たいのだが…ここで推薦を蹴るのは色々とまずそうだという事で了承する事にした。

 

 

 

「ええっ、ちうさんも大会に出場することになったんですか!?」

と、ネギが驚きと困惑の声を上げる。

「そー言うこった…本来私は予備戦力の予定だったのはわかってるが自由度が下がっちまった…断ると拳闘士を続ける場合に後が怖い感じだったんでな…わりぃ」

「いえ…優勝賞金が得られなかった場合はグラニクスで拳闘士を続ける予定でしたから…仕方ないかと」

「せやな、まあ賞金得られる確率が上がると思えばええんや。で、ちう姉ちゃんの相方はどないするんや、バルガスさんか?」

と、ネギとコタローがフォローしてくれる。

「いや、単騎で出るよ?んで、お前らが負けたらどっちかをペアに登録する」

「は?アリなんか?ソレ」

「規定上、アリの筈だな。トサカに確認してもらっているが多分通る。それと…極力私とお前らは戦わないようにされるらしいから生き残れたならぶつかるのは決勝だな…二人がかりで私が勝てるとは思えねぇが本気では行く、万一私が単騎で優勝したら賞金はネギに貸しだからな、無利子、出世払いでいいぞ」

「あ…ハイ…頑張ります」

私の言葉に、ネギは微妙な表情でそう答えた。まー流石に『剣闘士チウ』が『ナギ・スプリングフィールド』に勝つことはねーだろうが。

 

 

 

「それでは本船はオスティアに向けて出発する!」

諸々のオスティア行きの用意を済ませ、中型の貨客飛行船を丸々一隻借り切り、その船上でドルネゴス氏がそこそこの長さの演説の後にそう宣言した。実はグラニクスからは既にドルネゴス氏の手配した数隻の飛行船が出航しており、この便では生鮮食品と応援の接客要員、そして拳闘士が移動することになっている。

「ついに出港か…じゃあ、そろそろ私達も計画を詰めにゃならんな」

「…とは言っても決められる事は大体決まっていますけどねー」

「そうですね…しいて言えば、朝倉さんと茶々丸さんをゲート探索班に入れるか、皆さんの合流の為のピックアップ班に割り振るかくらいですね」

「何や、ノドカ姉ちゃんを探索班に入れるのは無しかいな」

「そーだな、罠探知って意味ではありではある…が、本人の志願を前提に探索班が護衛しきれると判断した場合に限るべきだな」

そんな感じで私たちはオスティアでの行動計画を策定するのであった。

 

「で、結局千の雷は間に合ったのかよ」

船内で出来る程度には、と組み手をしながらネギに問う。

「いえ…一応習得はできたんですが実戦レベルにはもう少し…グラニクスでの修行ペースで基礎以外の時間を一週間分丸々つぎ込んで、と言った所でしょうか」

「なら私と似たようなもんか…っと」

私も射撃場では行使できる位には習得できている。

「あー千雨さんの『使える』の定義だとまだまだかかります…まだ補助陣アリで、ですね」

「じゃあ、私の方が少しだけ進んでいるか…後で理論の討議するか」

「よろしければお願いします」

…遅々として、ではあるが多少の修行も重ねながら私たちは旅程を消化していった。

 

 

 

そして…9月27日夕刻、私たちはオスティアへ到着した。

 

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