日が変わってさらに4日間修行を重ねた私たちは少し休息をとってダイオラマ球を後にした…今日は決勝トーナメント1回戦である。
計8試合行われる今日の試合は、9時から1時間毎の予定で最終試合が16時スタートの予定である…で、15時から試合のネギ達はエヴァやノドカたちとダイオラマ球に残り、12時から試合の私はさすがに仕事があるらしいVIP達と共にオスティアへと戻ってきた。
「いやぁ…大した伸びだなぁ、ネギの奴」
「本当に…ある程度習熟していたとはいえ、まさかもう千の雷をあそこまでモノにするとは思ってもみなかったわ」
「ほんにのう…流石はナギの息子、と言った所じゃな」
師匠連がネギの成長を褒めたたえる。
「いやぁ…マジでいい線行くかもしれねぇぜ?ラカンの奴相手に十分試合にゃなる所までは行けるだろう」
「そうね…このまま伸びれば届くかはともかく同じ舞台には立てる事でしょう…マギア・エレベアでも何かやっているらしいし」
「フム…あの筋肉ダルマめに一泡吹かせてやれるかの」
…しかしその口ぶりはラカンに勝てる所まで行けるとは思っていないように見える…当然か。
「決勝トーナメント第1回戦第4試合、北方ナイト-2003、フリーダム-00ペア!対するは南方、チウーッ!」
大闘技場に押し掛けた観客たちの歓声を浴びながら入場する…5年ぶりのソロ決勝トーナメント出場と言う事もあって私もなかなかの人気だそうだ。司会娘の紹介を聞き流して対戦相手を観察していると…重装騎士と魔法使いのペアのようであるが種族は全身鎧とローブで不明…事前情報でも同じく…まあどうでもいいか。
「それでは参りましょう!」
と、司会娘…私は剣に手をかけ、対戦相手も構えをとる。
「開始!」
闘技場の中央でぶつかる私とナイト…大剣と大盾に重装鎧といういで立ちの割には素早い反応ではある。その激突の間にフリーダムが唱え始めた呪文は風精霊使役…まあネギもよく使っていた戦乙女の召喚である。
「ノイマン・バベッジ・チューリング 闇の精霊73柱 集い来りて 敵を射て 魔法の射手 闇の73矢」
と、ナイトと数合、剣を合わせた私は彼(?)をすり抜けて魔法の射手を発動、出現したばかりの戦乙女たちとフリーダムに闇の矢を殺到させた。さらに跳躍し、生き残った戦乙女たちを切り裂きながらフリーダムに肉薄…一撃を加えた…が、かろうじてではあるが魔法使いにしては十分な杖術で凌いで見せた…
魔法の射手 雷の13矢
と言った所で、ご挨拶だけ残して追撃せずにその場を離脱、直後追いついてきたナイトが私の残影をシールドバッシュでかき消した。
「おおっと、チウ選手後衛狙い!しかしフリーダム―00選手、辛くも凌いだ!!おおっと!?」
魔法の射手 雷の13矢
何時ものネギのパクリの突きをナイトの背中から放つ…も、ナイトは前方へ離脱、魔法の矢のみが障壁で軽減された上で命中した。
「ぐっ…」
うめき声を上げながらもナイトはぐるりと体勢を整え、私の追撃を盾で防ぐ…追撃…と行きたいがフリーダムが詠唱する白き雷が間もなく完成するか…ならばとショルダータックルでナイトを一瞬怯ませて、ナイトを盾に距離をとる…が
「ノイマン・バベッジ…チッ」
始めた詠唱を中断してさらに跳躍する…と、フリーダムは大きく跳躍して射線からナイトを外して白き雷を放ってきた…なかなかの練度だな…連携も悪くはない…ネギ達には劣るが…となるとこれが一番であるな。
「ノイマン・バベッジ・チューリング 来たれ雷精 風の精」
と、詠唱を始めながら空に舞う…その隙にナイトは感電の後遺症を治療し、フリーダムについた…が、それは残念ながら悪手である。
「雷を纏いて 吹きすさべ 南洋の嵐 雷の暴風」
と、斜め上から打ち下ろしたソレがナイトとフリーダムを呑む…
「おおっと、チウ選手の大魔法!雷の暴風がナイト-2003選手とフリーダム-00選手を飲み込んだぁぁぁ!!」
これで決まってくれ…るほど甘くはないか。
雷の暴風が晴れるとナイトの大盾と二人分の障壁で雷の暴風を防ぎ切ったようである…が、フリーダムが離脱ではなく足を止めたのが運の尽き。
「ノイマン・バベッジ・チューリング 来れ 虚空の雷 薙ぎ払え 雷の斧」
虚空瞬動で後方上空まで突っ切ると雷の斧をフリーダムにめがけてぶっ放した。
「うぎゃぁぁぁぁ」
「フリーダム!くっ」
着地し、ナイトに切りかかりながら詠唱を始める。
「ノイマン・バベッジ・チューリング 闇夜切り裂く一条の光」
ナイトは私の攻めを盾で防ぎ、大剣で反撃もしてくるが私の詠唱を止めるには至らない…
「わが手に宿りて敵を喰らえ 白き雷」
そして完成した白き雷を纏った斬撃はナイトの大盾に炸裂した。
「ぐむぅ…」
流石は決勝トーナメントの出場選手の装備だけあって、それだけでは倒しきれなかったようではあり、盾を手放して剣を構えて何とか立っていた。
「まだやる?」
と、私は大盾を遠くに蹴り飛ばし、剣を弾くとそう問うた。
「いや…我々の負けだ…チウ殿」
「ナイト-2003選手ギブアップ!フリーダム-00選手はダウンですので20カウント成立でチウ選手の勝利となります!1,2,3」
…と読み上げられるカウントが過ぎてゆき…
「19,20! チウ選手勝利!ソロ選手の決勝トーナメント勝ち上がりは本大会始まって以来の快挙デス!」
場内が大歓声に包まれる…のを聞きながら私は剣を収めて退場し…ようとして、勝利者インタビューに捕まった。
「よう来たの、チウ…案内してやってくれ」
ダイオラマ球内に施術用の鏡の間を用意するのは難しいという事で、リゾートホテルエリアの一室に設備を用意してもらった私と付き添いの聡美はテオの侍従に案内されて施術部屋に通された。
「どうぞ、こちらの部屋をお使いください」
「はい、ありがとうございます」
と、私は持ってきた荷物を降ろし、色々と施術の準備をする…変装を解くのも含めて。
「さて、千雨さん…麻酔のお時間ですよー」
タオルで体を拭いた後に聡美が麻酔入り軟膏を塗ってくれた…
「そろそろ良いかな」
少しおしゃべりをしながら時間をつぶして、麻酔が効いた事を確認して施術を始める。
まずは背中の闇呪紋を解いた後、主呪紋の再記述を行い、再設計に合わせて補助呪紋の書き換えを行っていった。続いて、前回積層記述の実験として刻んだ腰の呪紋の性能を上げる方向で再記述する…割とピーキーな性能に仕上がっていく…そして小休止…聡美に汲んで貰った水を飲み干して一息ついた。
続いて前面の施術…以前は予備の副系統として刻んだ子宮上の闇呪紋の核を今度は同時使用前提としたモノに刻み変えて行く…一応、片方の核が残っていれば酷い暴走はしないはずであるので予備でもあるが。そして、さらに腹部の緊急展開障壁はコンパクトにして残しはするものの、子宮の方の闇呪紋の核に対する補助呪紋にスペースを譲る…そうして乳房の中にも立体的に呪紋を刻んだ…そのうち、内臓にまで呪文を刻み始めそうで少し自分が怖くなってくる…と言った話は置いておこうか。
で、四肢の施術…脚は特に再施術の必要はないが腕は魔力掌握の補助を最低限にする代わりに『属性の招来』系の魔法を補助する魔法陣を刻んでゆく…ここまでしてもセプテットではおっさんに届く気がしないがやれるだけの事をやっておくしかないのである…
「よし…完成だ」
「…大分カリカリのチューンになっちゃいましたよね…」
「仕方ないよ…あのおっさんに対抗しようとしたら…本来これでも足りねぇくらいだから」
「これ以上はダメですよ?危険すぎますからね?」
聡美が不安そうに私に言う。
「大丈夫だよ…本命はネギだ…悔しいがな…それでも、試合になる位までは届かせたいんだ…姉弟子の意地ってもんを見せてやる、それだけだよ」
「…心配しかないんですが…千雨さんが意地を張るって」
「なはははは…うん、生きて…五体満足で帰ってくる…だから安心…はできなくても、見守ってほしい」
「わかっていますよ、千雨さん」
そう言って、聡美は私にキスをした。
夜…用事を済ませた私たちは再びダイオラマ球に集合した…正直、拘束される事のない私達とネギ達が一番乗りである…ちなみに前回、私達はネギの杖に乗せてもらっていたが、今回は私が箒を用意して、それで飛んできた。
「じゃあ、先に入っておくか」
「はい、そうしましょう、千雨さん」
「ええ」
「おっしゃ」
「は、はいー」
ちなみに、補助員としてノドカも同伴である。
「さて…まずは…私は闇呪紋の更新を確認するか」
食料を整理した後に私は砂浜に立っていた…
「千雨姉ちゃんもパワーアップかぁ…」
「いろいろと無茶重ねていますけれどもねー意地はっちゃって…もう」
「千雨さん、がんばってください」
「は、はいー応援していますー」
…で、せっかくだからとネギ達も見学である。
「…さて、行くぞ ノイマン・バベッジ・チューリング 契約により来たれ 高殿の王 我に力を 雷の招来」
魔力掌握 精霊の歌・雷奏 三位一体の闇呪紋 発動
「ノイマン・バベッジ・チューリング 契約により来たれ 高殿の王 我に力を 雷の招来」
魔力掌握 精霊の歌・雷の二重奏 三位一体の闇呪紋 増強装填
「ノイマン・バベッジ・チューリング 契約により来たれ 高殿の王 我に力を 雷の招来」
魔力掌握 精霊の歌・雷の三重奏 三位一体の闇呪紋 増強装填
さて…ここからである…
「ノイマン・バベッジ・チューリング 契約により来たれ 嵐の女王 我に力を 風の招来」
魔力掌握 精霊の歌・雷と風の四重奏 三位一体の闇呪紋 増強装填
成功…よし、次
「ノイマン・バベッジ・チューリング 契約により来たれ 嵐の女王 我に力を 風の招来」
魔力掌握 精霊の歌・雷と風の五重奏 三位一体の闇呪紋 増強装填
ああ…無茶をしている自覚がアリアリと感じられる…本当ならばコレで少し慣らすべきなのだろうが…時間がない。
「ノイマン・バベッジ・チューリング 契約により来たれ 闇の女王 我に力を 闇の招来」
魔力掌握 精霊の歌・雷と風と闇の六重奏 三位一体の闇呪紋 増強装填
少しきついが…成功…次
「ノイマン・バベッジ・チューリング 契約により来たれ 闇の女王 我に力を 闇の招来」
魔力掌握 精霊の歌・雷と風と闇の七重奏 三位一体の闇呪紋 増強装填
「くっ…これで完成…だ」
「ち、千雨さん…?」
「うっへぇ…明らかにヤバい奴やんか…コレ」
「想定よりもえげつないですねぇ…大丈夫ですか、千雨さん?」
「ネ、ネギ先生…大丈夫なんですかー?コレ」
割と酷い感想に腕を見ると黒い雷が風をはらんでバチバチと渦巻いていた…水面で見る限り、精霊化の度合いも酷い…確かに見た目はネギの『雷天大壮』よりもいかついな。
「とりあえず…少し動いてみる」
と、私は空に舞い上がった。
「うひゃぁ…えげつない出力やなぁ…アレ…ネギの『雷天大壮』とどっちが出力有るやろか」
「実質、一時的な精霊化の領域ですからねーアレ」
「だ、大丈夫なんですか!?」
「理論上は大丈夫ですよー千雨さんは咸卦の呪法で魂の保護をしていますのでー暴走しない限りはー」
私が空を舞って慣らし運転をしている間、そんな感じの会話をしていたらしい。
どーも原作読む限りは中日二日で二日間で3試合こなしているとしか読めないのですが間隔を揃えた方がらしいという事で中日一日で一日一試合と言う事にしました。