例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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92 拳闘大会編 第10話 決勝

「それでは決勝戦…開始!」

若干のトラブル…遅刻ギリギリまで切り札が完成しなかった…が発生し、危うく変装しておっさんと再戦する可能性も出たが、若干予定から遅れたものの無事に決勝戦が始まった。

ネギはアーティファクトを展開し、千の雷…おそらく術式兵装用…を詠唱開始。一方ラカンチームはカゲタロウが影の刃でネギの詠唱を妨害、に対してコタローが防御に入って追撃の太い槍状に編んだ影での攻撃も右手一つではじいて見せた。その間にラカンのおっさんはアーティファクトの斧槍に気を装填…高速投擲されたそれは闘技場の床を貫いて大爆発を起こした…昨日使われていたら防御は不可能だっただろう、強化状態ならよゆーで避けられるとはいえ。しかし、ネギはアーティファクトでハマノツルギを召喚、その攻撃を防いで見せた…つーか、ネギが防いだ上でその余波だけであの爆発ってもろに炸裂していたらヤバかったんじゃなかろうか。現にテオ様が全世界中継にもかかわらず素の口調でおっさんに怒りをぶつけていたし。

そして土煙の中から現れたネギの反撃、千の雷は遅延呪文に入れたらしく、素の時状態でハマノツルギを持って突撃、おっさんの大剣投擲を切り払いつつ肉薄、おっさんの剣を熱したナイフでバターを切るが如く真っ二つにした。その後、なぜかハマノツルギを仕舞うと刹那の『ヒ首・十六串呂』を召喚し、おっさんを包囲するというデモンストレーション…?を始めた。まー当然ただの誘導小刀であるのでおっさんに口でキャッチされていたが。そうしてネギはラカンのおっさんから女の子の力を借りまくりとの煽りを流して気弾と『千の顔を持つ英雄』の無力化を宣言…素手による白兵戦を提案し、おっさんは素手のが強いぜ、と応じた。

続いてネギは遅延呪文から千の雷を解放し、術式兵装として取り込み、コタローとカゲタロウが激しめにやり合っているのを尻目におっさんとにらみ合う…まずは単装填で行くらしい…刹那、ネギの拳がおっさんの顔にめり込むのを皮切りに雷速瞬動によるヒットアンドウェイでおっさんをフルボッコにし始めた…とりあえずは初手で対応される事態にはならなかったようで何よりである。短い会話の後に空に打ち上げられ、打ち下ろされるおっさん…に、千の雷の解放攻撃で追撃、それだけでは届かない事を私が実証しているので連続でゼロ距離から雷の暴風をかました…と同時にそれに気を取られたカゲタロウを獣化したコタローが撃破した。

そして司会娘による解説が挟まった後にカウントが始まる…

「これで…終わり?千雨さんがあれだけやって届かなかったのに?」

「…まあ大呪文の二連撃、それも二発目はゼロ距離からのほぼ不意打ちとなれば決まってもおかしくはないが…おっさんだからなぁ…」

「と言う事は?」

「…多分これからが本番」

と、解説とは真逆の会話をしているとカウントが19に到達し…おっさんが何事もなかったかのように立ち上がった。

「くくくく、フフフフ、フフフフフ、ハハハハハ、ハハハハハハ」

「ど、どうしたんでしょうかラカン選手、あ…頭でもぶつけてしまったんでしょうかぁ?」

歓喜とも取れる嗤い声を上げるおっさんに司会娘がそんな事を言う。

「ハハハ、アハハハ、フゥフフハ、ヌフウフハ、ウハハハハ、ワーハッハッハッハッハハ、はははハはははハはははハはははハはは」

そして、ひとしきり笑ったおっさんは、昨日私に見せた自称本気とやらと同等かつ異質な気合…本気の種類が違うな、アリャ…を纏うと構えをとった。

 ネギが再び千の雷を纏うと同時におっさんの右ストレートが炸裂、同時にカゲタロウも復活し、コタローを貫いた。雷速瞬動でネギは離脱、おっさんと距離をとるがおっさんは追撃する…ああ、完全に見切られたなあれは…少なくとも先行放電か電位差を認識して瞬動を始めていないと間に合ってないタイミングである。そしてついにネギは追い詰められ…接触状態から気を伴う物理攻撃を喰らって吹っ飛んだ。

ラカンのおっさんが解説を始める…曰く雷速と言っても瞬間的な事であり、思考加速を伴わないそれは技のつなぎ目や出がかりをつぶせば対応できる事、曰く何らかの探知手段…おっさんの場合は空気のカンジ…で電位差を読めば経路予測は可能だし、先行放電迄伴っているのでおっさんクラスからすればテレフォンパンチも同然である事…まあ私がやった対応手段そのものではあるが出し惜しみが災いしたか…?と思っているうちに吹っ飛ばされたネギがおっさんがいつぞや開発していた『エターナル・ネギフィーバー』に焼かれ…かけてハマノツルギで防いだが、右ストレートで打ち下ろされ…地に伏した。

「ありゃあ…ネギせんせーやられちゃいましたね」

「…うん、色々用意した本当の切り札使う余地あるかなぁ…アレ」

と、聡美と話しながら観戦している間にもカウントが進む。途中、立ち上がりかけるも吐血して立ち上がれない…そんなネギにおっさんが声をかける。試合を終えて手当てしないと手遅れになるぞ、俺の拳を喰らって動けてるってだけでも免許皆伝もの、ここでやめにしよう…と。100%のネギと戦ってみたかったのだ、と。結果は期待以上で、特に雷速瞬動は良かった、世界でも初見対応可能なのは十人くらいしかいない…と、全国中継で破ったから八十人くらいに増えたかもと付け加えて。

「ウハハハハ、落ち込むんじゃねぇぞ、この俺様に本気を出させたんだ。そんな奴はこの世に5人いるかどうかだ、昨日のチウ嬢ちゃんを合わせてもな。いやいや、ホントに驚いたぜ、まさかここまでやるとは思わなかった!さすがあのバカの息子だよ、胸張っていいぜ、ぼーず!」

そう、無自覚にネギの闘争心を折るような、言葉を重ねていく…ここまでならばここで試合は終わっていたかもしれない…が。

「ああ、そうそう、俺に勝てたわけじゃねぇし『一人前の男』ってのはなしだかんな。お前の母親の昔話はまた大きくなってからって事で♪」

恐らく、その言葉がネギの闘争心に火をつけた…手を叩きながらお開きにしよう、早く手当てを受けないと死ぬぞというラカンに向かってネギは怒りを向けた。

「ふざけないでください!」

そしてネギは闇の魔法を活性化させながら立った…立ってしまった。

「あちゃぁ…闇の魔法の侵食がやばいなぁ…アレ」

思わず、私は独り言ちた。そしてその直後、ネギに続くようにコタローも立ち上がり、試合継続の意思を示した…満身創痍で、血塗れの姿で。

 

「捨て駒役スマナイ!!」

「へっ 裏稼業でな!昔からこーゆー脇役仕事は…慣れっこやで!」

ネギとコタローはそんな会話を交わしてコタローがラカンのおっさんとカゲタロウに吶喊する。

「むう…よかろう!ではこちらも全力でもってお相手致す」

と、応じるようにカゲタロウは私との戦いで面制圧をした時の様に数多の影刃を召喚・構築し、対応する。

「千の影精で編まれた千の槍!避けられぬぞ、コジロー殿!」

対するコタローは…なんとハマノツルギを咥えた完全獣化状態…狗音影装だったか…で影刃を無効化していた。さらに吶喊するコタロー…カゲタロウは影布による障壁で防ごうとする…が、この場合、それは悪手だ。案の定、ハマノツルギで影布障壁を突破したコタローはカゲタロウを壁に縫い付けてしまった。

「へ…残念やったな、カゲちゃん。この剣は魔法使い…特に俺達みたいな精霊使いには天敵やねん」

「やるじゃねぇかコジロー…けど詠唱中のぼーずが無防備だなッ」

と、おっさんがネギにかかっていく…のをコタローは黒球を吐いて爆ぜさせ足止め、さらにタックルから肉弾戦に持ち込んでいった。が、一見善戦して見えたのもつかの間、あっという間に逆転され右ストレートを喰らってしまった。一応コタローはそれに耐えたが、その後千の顔を持つ英雄を召喚したおっさんに10秒ほどで剣でめった刺しにされてしまった…が、どうやらネギが要求した時間稼ぎにはぎりぎり耐えきったようである…その証拠に、ネギは千の雷の二重装填…『雷天大壮2(仮)』を終え、狗音影装の解けたコタローとバトンタッチした。

「さて…切り札はすべて準備できたようではあるな」

「そうですね、敵弾吸収陣含めて準備万端のようですね」

恐らくは協力した私達にだけわかる切り札群の用意が完了していた様子はばっちりとらえている…後はそれがうまく決まるか、である。ネギが動く…攉打頂肘から始まり、常時雷化によって食らいつき、インファイトに持ち込んだ…並の魔法使いなら一撃で倒れる雷打撃を幾百に及ばんだけ打ち込んでいく…がラカンのおっさんは倒れない。まー想定通りではある。

「へへっ、罠にハマりましたね?ラカンさん」

と、ネギが言うとラカンのおっさんはコタローの影沼に足を取られていた。ネギは距離を取り、これぞ最後の切り札でございと言わんばかりに千の雷と雷の投擲を融合させて巨神ころしを形成、力比べに持ち込むかのような構えを見せた。案の定ラカンのおっさんは喜んでそれに乗ってきた…それこそが本当の罠であるとも知らずに。

闘技場に渦巻く魔力と気…そしておっさんは最大出力と思われる気を乗せた右ストレート…ラカンインパクトを放った…ネギの思惑通りに。ネギに迫る巨大な気弾…それにネギが手を翳すと巨大な魔法陣が出現し、受け止めて…吸収して見せた。巨神ころしを遅延呪文に入れ、おっさんに殴りかかるネギ…ラカンパワーとでも呼ぶべきソレをのせた拳は遂にラカンのおっさんの防御を破り、血を吐かせた。そして、ここが唯一の好機とネギの全力攻撃が始まった。ラカンパワーによる拳でおっさんを殴り倒した次は二重装填された千の雷の解放による雷撃突進…これにより障壁際に追いつめた。続いて千に届かんばかりの魔法の射手による雷華崩拳、そして単なる見せ札ではなく対ラカン火力の切り札の一つでもある巨神殺し…コレがおっさんを貫通、そして解放された千の雷が内部からおっさんを焼く…この連撃についに闘技場障壁は耐えきれず、砕け散ってしまった。

 土煙が晴れるとそこには巨神殺しの軸である雷の投擲に貫かれたおっさんがぐったりとしていた。その様子に司会娘はネギ達の…ナギチームの勝利を宣言…し、会場もその雰囲気に包まれた…のだが…おっさんは突然復活するとネギをぶん殴り、敵の生死を確認せずに気を抜くという致命的ミスを叱責し、同時にネギに惜しみない称賛を贈った…大量吐血しながら。

「うわぁ…やっぱただのバグキャラじゃねぇか、あのおっさん」

「そーですね…巨神ころしは直撃すれば理論上大公位の悪魔でも送還するんですけどねー」

そりゃあ、体内から千の雷を喰らえばどうしようもない…私だって死ぬか瀕死になる、闇呪紋装填前提で。そんなラカンのおっさんはネギにお前は一人前だと太鼓判を押すともっとやろうぜ、と問いかける。そして、ネギはそれに応じて雷の暴風…最後の保険らしい…を術式兵装として装填して満身創痍なハズのおっさんと殴り合いを始めた。笑いながら殴り合いを続けるネギとおっさんに会場からは温かい拍手が送られ、そんな中続いた殴り合いは…引き分けという形で決着を迎えた。

「やれやれ、ですねー」

「そうだなぁ…計画はプランBか…まあ半額稼げたなら良しとしようか…」

そして、その結末は計画が最短ルートを通れない事を意味していた…一部メンバーは引き続き魔法世界に残留…性格的に全員残留してグラニクスで金策という流れになるだろうか。

 

 

 

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