例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

93 / 129
お久しぶりです、まあ色々ありまして投稿せずに書き溜めだけしていました。
36巻末ぐらいまで書き溜まったので1日1話で暫く毎日投稿します。


93 拳闘大会編 第11話 戦い終わって

「ネ…ナギさーん、お疲れ様です、ナギさん!」

「スゴかったよ、ネ…ナギさん!」

試合を終え、関係者(私と聡美と奴隷3人組とカモとクママチーフとバルガスさん…に少し離れてトサカ)でネギ達の控室を訪ねていた。

「わ、ハダカ」

「キャ」

「あ、ス、スミマセンッ」

何か、『いつもの』の逆であるな、コレ。

「本当にスゴイ試合だったよ、心動かされた。拳闘も魔法も詳しいことはわからないけど、君が本当にすごいというのはわかる…」

「ハ、ハァ」

アキラとネギがそんなやり取りをしている脇では、夏美がコタローに声をかけていた。

「よ、よう無事かよコタ…ジロー君」

「何やねん、村上さん」

「が…がんばったんじゃん?ま…別にかっこいいとかは一切思わなかったけど?脇役は脇役なりに仕事したってゆーか?お疲れ様みたいな?」

「はぁ?」

まーコタローに夏美のツンデレが通じる訳もなくそんな反応を返すコタローだった。

「ちょっとアンタ最近オカシイで、口調も変やし、頭打ったか?」

「うっうるしゃいなッ」

「「「「アハハハ」」」」

まあ、傍から見ていると痴話げんかにしか見えないそれは盛大に笑われていたが。

 

「しっかしよくやったよ!いや、アンタならやると思っていた!今日はパーッと興行成功打ち上げパーティーだね!チウちゃんも主役の一人だから逃げるんじゃないよ!」

と、クママさんとバルガスさんがバンバンとネギの肩を叩き、クママさんは私を抱き寄せる。

「結果的には引き分けと負けだったけどね、なぁにあの伝説の英雄が相手だ、いつぞやチウちゃんとの実践稽古を見た時から思っていたけどただもんじゃなかったね、あんた達、本当に大したモンだよ」

クママさんのその言葉に、ネギは亜子と顔を合わせて口を開いた。

「あ…その…亜子さんごめんなさい、勝つっていう約束守れなくて」

「な…何言うとるん、ナギさん。ナギさんはうちらの為にあんながんばってくれて…うち、それだけで…本当に十分や」

「亜子さん…で、でも引き分けですから賞金も半分の50万しかもらえなかったし、皆を解放するにはもっと…」

「なーに、また稼げばいーよ!パルにも相談してさー」

「そーですねーまあその場合、今回のオスティア滞在時にー帰還というルートはつぶれてしまいますがー」

確かに、50万元手にアイツの漫画をこちらの世界に持ち込めば大儲けできそうではあるが…その場合、今回のオスティア行で一座を離脱、現実世界への帰還という話はなくなるのである。まあ、最悪来年に同じ事をすればいいという案もなくはないが…

 

「うぃース」

金策の話をしているとそんな声と共にラカンのおっさんが現れた。

「いよぉ♪」

「ギャアアァ出たぁあッ人間核兵器」

「何やそれ」

と、夏美がよくわからないネーミングの呼び名と共にコタローの陰に隠れる。

「ほほぅ?」

その様子に気付いたおっさんはおふざけを始めた。

「ホレホレ人間核兵器だぞーッ」

「いやぁぁあッオカされるぅう〜」

そんな感じでおっさんが夏美を追い回し始めた。

「やめんか、おっさん」

暫く観戦していたが、かわいそうなのと話が進まないのもあって私は回し蹴りをかましてラカンのおっさんを止めた。

「で、何の用です、ラカンさん」

「ホレ」

「え?」

ネギの問いにおっさんは巨大な革袋を放り投げてよこした。

「これは…」

「賞金の残りだ、やるよ」

「ええぇーっ何で!?」

「金にがめついおっさんが!?」

「医務室に連れて行かないと――」

「ったく、言ったろ一人前と認めるって」

私達の反応におっさんは苦笑いをしてそう答えた。

「最後の殴り合いは紅き翼の一員としての意地と俺の趣味によるいわばオマケ、師匠としての俺としちゃああの敵弾吸収陣を喰らった時点でお前の勝ちは認めてんだよ。本当に見事だったぜ、俺から教えるコトぁもうねぇな、弟子卒業だ」

「ラカンさん…」

「お前がこの試合に投入した新呪文の数々…『雷速瞬動』『常時雷化』『融合呪文』に『敵弾吸収陣』、どれをとっても一流魔法大学の教授が腰を抜かすような一級品だぜ。しかも、よもやその一級品の切り札をさらなる奥の手の誘い技に使うとはな、なんつー贅沢。さすがの俺様も気持ちよくハメられちまったぜ。リカードに言わせりゃ軍ですらアレ全部を開発するには数年かかるそうだぞ」

おっさんがそんな賞賛を送っているとエヴァのコピーが現れる。

「――フ、私も驚いたぞ、ぼーや」

「あ」

「私の巻物の中で新呪文の開発をするとは聞いていたが、まさか敵弾吸収陣をあんな短時間で実用化するとは思ってもみなかったぞ、途中までサポートを受けていたとはいえ…な」

そう言ってエヴァのコピーはちらりと私を見た。

「そこの姉弟子が言っていたぞ、貴様はマギステル・マギにするよりも魔法研究室にでも放り込む方が良いとな。まさに『天才少年魔法使い』…闘技場ではなく机の上…新たな魔法理論と魔法技術の開発の場こそが貴様の独壇場というわけだな…見事な解答だったよ、ぼーや…それに比べて姉弟子は…いや、まあ良いか、ラカン相手にしてはよくやった」

「い、いえ、そんなマスター、僕の独創は『雷速瞬動』くらいで、後は千雨さんやハカセさんの力を借りてマスターの理論を後追いしたに過ぎず…」

と、ネギは謙遜するが、珍しくべた褒めである。

「スゲー兄貴、兄貴とおっさんにホメられまくってるぜ」

「まーついに超一流に仲間入りだからなぁ…完全に追い抜かれたよ」

「…でもマスター、ラカンさん。今回この方向性に気付けたのは僕の力じゃないんですよ」

「ほぉ?」

「僕がこの答えに気づけたのは――あそこの亜子さんと、扉の影のトサカさんのおかげです」

おっ?トサカの奴、何かやったのか?

「誰かのようになるんじゃなくて、もしかしたらスゴくはないかも知れない自分のままで…それでも主役は自分だろって。きっと僕一人で悩んでたら答えを見失って負けていたと思います。亜子さん、トサカさん、ありがとうございます。それに千雨さんとハカセさんも研究へのご協力本当に感謝しています」

「ナ…ナギさん、そんな…」

「ケッ」

「おう」

「お気になさらずー」

ネギの謝辞に各々が返事をした。

「まあ、ただ、そのー…正直この方向性はどうかと思っているんですけどね、主役っぽくないし…」

「あー確かになぁ!」

「あー」

「そうかもねぇ」

「インテリメガネは脇役だよね」

「うんうん」

「まー王道少年漫画って感じではないよな、いい悪いとは別にして」

「そうですかー?私はかっこいいと思いますよー?」

「開発力と開発速度が武器ってなぁ?どう考えてもハカセポジションやで!」

「ガハハハハ、確かに主人公っぽくはねぇわな!最終回3話前に敵を食い止めて死ぬキャラだわ」

「ラカンさん、ひどいです!」

と、ネギの自嘲にみんなが乗って場は大いに沸いた。

 

「フム…私としてはもう暫く君たちに拳闘士を続けて欲しかったのだが…目的が達成されたのであれば仕方がないな」

ドルネゴス氏に亜子たち三人の解放の申し入れと拳闘士としての活動を休止する事を伝えた返事がそれであった。

「ハイ…短い間でしたが、本当にありがとうございました」

「拳闘団に入れてもろうたおかげでえろう助かった、サンキューな」

「短い間でしたが、本当にありがとうございました」

それぞれそう言って私たちは頭を下げた。

「うむ…元気でな、ナギ、コジロー、チウ…ああ、三人娘も含めて祭りの間は宿舎も使い続けて構わないぞ…特になければ下がりなさい」

こうしてドルネゴス氏との会談は終わった。

 

花火を背にした闘技場、皆と合流し、テオの仲介で亜子たち三名の奴隷解放の手続きが取られ、そして…

「それでは興行の成功を祝して…」

「「「「「「カンパーイ」」」」」」

優勝記念パーティーが開かれた。

 

「アレ?マスター、おっさん、ネギの奴見なかったか?」

厄ネタ…魔法世界のちょっとした秘密とその終わりについて情報共有の為のアポを取りにネギと接触しようとしたのだが、ネギがいたはずのバルコニーにはマスターのコピーとラカンのおっさんだけがいた。

「ん?ぼーずなら医務室だぞ、どうかしたのか?」

「ああ、おっさんの映画に埋められていた厄ネタの共有をちょっとな」

「厄ネタ?ドレだ?」

と、おっさんが聞いてくる。私は周りを確認し、他に人がいない事を確認していった。

「あーおっさんは多分わかっていると思うし、マスターは興味ないと思うけど…ココが火星の異界で…始まりの魔法使いの手で始まった、って話?」

「ああ、ソレか。どこまで読めた?」

「…逆に聞くけど何処までおっさんは知っているんだ?」

「んー秘密、でも答え合わせ位はしてやるぜ?」

と、おっさんはひょうひょうと答えた。

「…正直、確定事項と仮説としての理解は混在しているな…まーこの世界の中枢が火星のテラフォーミング企んでいるんだろうなってのは」

「…オイ、待て、何がどうしてそーなるんだ」

「ん?違うのか?超の未来情報でもそうなっているし、魔法世界の崩壊を止めるにはソレが一番単純明快だろ?」

と、言いった所で私は両肩をおっさんにむずんと掴まれた。

「チョーっとおっさんとお話ししようか?嬢ちゃん…もしかしたら本当に世界の運命が変わるかもしれん」

「は?ちょ?まさか…」

ドデカ核地雷を踏んだやもしれん…と思いつつ、おっさんの答えを待つ。

「そうだ、残念ながら俺たち魔法世界人達は異界崩壊を止める手を持っていなかった…今、この瞬間までは、な…ほかにこの話を知っているのは?ハカセ嬢ちゃんは知っているな?他は?」

「い、いや…誰にも話してないけど…」

「うっし、なら…俺の頭じゃあ詳しい事を理解できねぇ…そこで天才少年魔法使いの出番だ…と言う事で…」

「まて…大事な話なのは分かるが、それは戦士の休息を妨げてまで直ちにする必要があるのか?」

「あーいや…急ぎはするが別に今日中に、という話じゃねぇな」

「ならば明日でも良かろう…千雨、そう言う事だ、今は宴を楽しんでおけ…今夜位ぼーやもゆっくり寝かせてやるんだ」

「あ…ハイ」

と、言う事で微厄ネタだったはずの核地雷ネタは明日に持ち越される事となった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。