「すまない、助かった、トサカさん」
私達はトサカの馴染みらしい安宿に匿われた。
「いや、良いって事よ…っていうか、ナギを脅すのに使った動画のバックアップを官憲にパクられた…それでお前らが捕まったら目覚めがわりぃじゃねぇか」
「…そう言う事にしておくよ、ありがとう」
「けっ…」
そんな会話をしているとネギのいる部屋から木乃香達が出てきた…治療は終わったらしい。外の様子を見回ってくれていたクレイグさんと合流した私たちはネギのいる部屋を訪ねることにした。
「よぉ、ぼーず、周囲を見て来たぜ、しばらくこの安宿は安全だ」
「クレイグさん、トサカさん、千雨さん、ハカセさん」
「かー、てめぇの正体ホントにガキなのな、知ってても信じられねぇぜ…チウもなんだろう?」
「ああ…ついでに言うと聡美もだよ…ほら」
と、魔法での変装を聡美の分も合わせて解いてみせる。
「アーそりゃあそうか…くっ…なんか負けた気分だぜ…」
「ネギ先生ー大変です!」
そんな会話をしていると、ノドカが駆け込んできた。
「どうしましたか?」
「ネギ先生の上着の中からこんなものが…」
そう言ってノドカは一通の招待状を差し出した。
「何ぃ今夜の…舞踏会への招待状?オイッ総督からだぜ」
「いつの間にこんなものを…」
「調べましたが、今夜、総督府で舞踏会が開かれるそうです」
「くぁ~二人も斬っといてぬけぬけとまあ」
「どういうつもりだよ?賞金首に招待状ってのぁ」
「あの場での勧誘失敗時の保険のつもりだったんだろーけどなぁ…」
まあ、糸が切れないように制圧して長話していた時にでも入れたんだろうな。
「どうする、ぼーず、中を見てみるか」
「招待状自体に罠はないですー」
「お、さすが嬢ちゃん」
「ネギ先生、あの総督ですが只者ではありません…魔法障壁を斬撃がすり抜けたとおっしゃいましたね」
「え…ええ」
「あの男の使った技は神鳴流…私と同じ流派です」
「え…」
やはりそうか。
「しかも先生を斬った技は神鳴流の中でも宗家にしか伝承を許されぬ…」
「ど、どういうことですか?神鳴流は日本の京都の流派じゃ…」
バンッ
「うぃーす」
ドアが勢いよく開け放たれて乱入してくるものがいた。
「あ…あんたは!?」
「ハッハハ、よぉぼーず、詠春の弟子に敗れたって?」
「ラカンさん!」
「おっさん!」
…ラカンのおっさんだったが。
「せ…千の刃のジャック・ラカン、ホ…ホンモノかよ」
「こっ、こここ、これはラカ、ラカンさん。こんな安宿にわざわざおいでをっスンマセン」
と、いつもと調子が変わったトサカはおっさんに椅子をすすめ、クレイグさんと二人そろってサインを貰っていた。
「…そうですかートサカさんが僕たちを見かけて皆に連絡を…やっぱりいい人ですね…トサカさん、ありがとうございます」
皆から事情を聴いたネギがそう、トサカに感謝を述べた。
「ラカンはん呼んだんはカモ君やけど」
「バ…ちげーよ。実はホラ…お前を脅すのに使ったあの動画、あのバックアップをよ、官憲にパクられちまったらしくてな、保険に手下に持たせてたんだが…さっきのは多分俺のせいだ、そんなんでてめーらが捕まったら目覚めがわりぃだろが」
「え…あー」
「安心しな、トサカ、てめぇのせいじゃねぇ。多分総督の奴ぁ前から偽ナギの正体は知ってたさ」
「どういうことですか?――そう言えば先ほど総督は詠春様の弟子と…」
「それより、お前の服にねじ込まれてたっつー総督からの招待状ってのを開けてみちゃどうだ」
刹那の問いをぶった切り、ラカンのおっさんはそう促した。それに従い、ネギは招待状を再生する。
内容は…やはり交渉決裂の際の保険としてねじ込んだものらしく、ネギが総督と会う為にと舞踏会に私たち含めて招待する問う内容から始まり、私達への国際指名手配の恩赦…そして廃都に降りるにあたっての護衛としての艦隊提供…とソレが提案を蹴った場合の追っ手となるという脅し…その上で『ネギの父と母、そして世界の謎』どんな問いにも答えると誘った…ついでにナギの姿で来てほしいと付け加えて。
「オイオイオイこんなん罠に決まってんじゃねぇか!?」
「艦隊って…ヒデェ脅しだな」
「確かにこれは危険ですね…」
「確かに艦隊となると勝てるか否かは別にして、かなりの脅威だな…」
私を含め、皆が口々に言う。
「明日にはゲートポートです、先生、ここは無視するのが最善手かと……先生?」
それらをまとめるように刹那がネギに言う…が
「…いえ、決めました僕が一人で会いに行ってきます、皆さんは先に下に降りてください」
と、ネギは作戦の繰り上げと単独での総督府行きを提示した。
「えええ~ッ!?一人でぇ!!?」
「だダだダメです、ネギ先生ーッ」
「アカンてネギ君」
「無謀だぜ、ぼーず!」
「そうだぜ、奴の狙いは兄貴なんだぜ?」
「ずるいですよーネギ先生ー」
「ああ、一人では行かせねぇぞ」
口々にネギに反対意見が上がる…まあ、私たちは連れて行け、という意図なのだが。
「これは僕だけの問題ですから、みんなを巻き込むわけには…それに…もう決めたことです。僕が一人で行けば皆の時間稼ぎにもなりまぽおぅ!?」
…とのネギの寝言にアスナの鉄拳が炸裂する。
「こんの、バカネギ。一人で!ですって!?何回同じコト言わせれば…ったくもー今の私達があんたを一人で行かせるとかある訳ないでしょ、あんたが行くなら当然私も行くわよ!!」
「で…でも…」
「…面白くなって来たじゃねぇか。俺もついて行ってやるぜ、タダ飯食えるしな、それならお嬢ちゃん達も安心だろ」
「ラカンさん!」
「決まりね!言ったでしょ、地獄の底まで助けに行くって!」
「アスナ…さん…」
ということで話はすませ、全員の招集とドレスの受け渡しの手配をすることになった。
総督の剣技…神鳴流の斬魔剣 弐の太刀に関する一幕…ラカンのおっさんが再現し、ネギが危うく死ぬ所だった…が済んだ頃、ドレスと皆が到着し、ドレス争奪戦が始まった…私はチウ用にとドレスが添えてあったので不参加、聡美も子供モード用があったのでソレにするという事で不参加である。
「ど、どーもみなさん」
ネギ達がナギ・コジロー姿で燕尾服を着て登場する。
「おおーっと!?ナギコジコンビじゃんかーッ!?」
「うひょひょーッ有名人降臨じゃん、また見れるとは思わなかったよー」
「ん~なかなかいいねぇ、お二人さん」
「私、ファンだったんだよねーサイン頂戴、サイン」
「コジロー君もカッコイイよぉ」
「とてもコタロー君とは思えないよ、ホント」
「んーそーなん?」
と、ナギコジがうちの面子にもまれる…思わぬコタロー人気に夏美は不満そうであるが。
「行かなくていいのか?コタローは私のですって」
「にゃっ…言えにゃいよ!そんな事っ!」
「でも、お好きなんでしょうー?コジローさんもといコタロー君のことー」
「…うぅ…多分…そうだけど…でもさー」
いつぞやの浴場での女子会の成果であるが、まあ実ってはいない様子である。
「で、でも全員で行く…なんて参りましたね。僕は刹那さんや楓さんに千雨さんのような何か起きても大丈夫な人達だけで行くつもりだったんですが…」
と、ネギがこの期に及んで寝言を言う…と言うか、逃げられると思ってか。
「あんたらだけでそんな楽しいトコ行かせる訳があるかああぁッ!!!このバカチンがあああッ!!!」
案の定、ハルナが吼える。
「ええーっ?」
「うんうん、こんなカワイイドレスだって着れるしぃ~」
「豪華ディナー食べ放題だろうしね~」
「それに、総督主催の舞踏会なら各国上流階級そろい踏み、パーティ会場は人脈の宝庫よ!
いずれこの魔法界を席巻する大文…いや、大漫豪!!!パル・サオトメ様の飛躍の足掛かりとするのよぉ〜!!!」
「そんなコト考えてたんだー…」
「ハルナならでけそーなきするけどー」
…ハルナの野望が今、明らかになった。
「まあまあ、あのラカンさんがついて来てくれるんだし、総督さんも昔のお父さんの仲間だったんでしょ?大丈夫っしょ」
朝倉が楽観論を述べてネギを説得しようとする。
「しかし…」
「それに…コレこそがこの旅の本来の目的のハズじゃん、ネギ君?その総督って人…ネギ君のお父さんやお母さんの話だけじゃなく、この世界の秘密まで教えてくれるって話なんだよね?この真実の報道者、朝倉和美を置いてこうなんて甘い考えよ。
それに私も独自に調べたけどどうもにおうんだよねぇ…巨悪のにおいって奴さ」
「そうだな、ネギ…ここまで来たら最後まで付き合わせてもらうぜ?」
「…ハイ、千雨さん」
と、ここまで真面目な話が続いた…が
「そうねぇ、それに…祭りの夜の宮殿での舞踏会かぁ、花火に照らされた二人きりのテラス…星空の下の花咲き乱れる中庭…これ以上ロマンチックなシチュは…二度とないかもねぇ~」
とのハルナの煽りにドレス争奪戦は激化の一途を見せるのであった…
「…千雨さーん、やっぱり私も大人モードで行ってもいいですかぁ?」
「ん…わかった、じゃあ変身させるな」
聡美は大人狼獣人モードに変身すると、ドレス争奪戦に参戦しに行った。
「で、どーするよ、おっさん、予定の厄ネタミーティング」
「そーだなぁ…まあ最悪道中にしようや」
急いで闘技場に挨拶に行った後、着替えたラカンのおっさんとそんな話をしていると…
「火星!!!そして魔法世界!!!つまり!!我々が魔法世界と思い込んでいた場所は実は火星だったんだよ!!」
「「「なっ…何だってぇーっ!?」」」
そんなやり取りが聞こえてきた。
「…おっと?これは気づいたかな?」
「…ネギは気づくだろうさ、そこまでつながりゃあな」
騒いでいる連中を突っ切って世界地図前のネギに近づいていく。
「造られた世界…」
強化された聴覚でそうネギが青い顔をして呟いたのを捕らえる、そして思考の海を泳ぐ私たちのような様子で重要ワードを呟いていく…ビンゴである。
「先生?」
「ネギ君、何ブツブツ言い始めたん?あぶないえ?」
「あ…スミマセン、考えごとを…刹那さん、火星と聞いて何か思い出しませんか?」
「え…ええ…超鈴音…ですね」
「あー」
「し、しかし先生、コレが一体どういう意味を持つのか私には…」
「僕にもまだわかりません…ですがどうやらこの世界の全ての事は繋がっている…父さんの達のことも、超さんのことも…あと一つ…そうあと一つ重要なピースが揃えば全てがハッキリする…そんな気がするんです」
そう言ってネギが振り返る。
「ああ、丁度よかった、千雨さん!スイマセンがミーティングはキャンセルさせてください、大事な話があります!」
「いや、その必要はねぇ…ソレこそが議題だからな…メンバー集めろ、始めるぞ、ミーティング」
「へ?…あっ!」
「ほら議題はちょっとした厄ネタ…だったはずの核地雷かもしれない世界の秘密…だったろ?」
そう言って、私はにっこりと笑った。