例えばこんな長谷川千雨の生きる道   作:紅シズク

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96 世界の秘密編 第3話 厄ネタミーティング

 

「さて…まずは前提の共有だ」

聡美、茶々丸、ネギ、ハルナ、朝倉、ノドカ、そしてラカンのおっさんを前にして私は言った。

「この世界は何者か…おそらくは始まりの魔法使いによって火星の裏界として作られた人造異界で…いつかは崩壊する…コレが前提だ…あっているな?おっさん」

「ああ」

おっさんが私の言葉を短く肯定した。

「マジ…なんだね?」

「うっひゃぁー確かにこりゃぁ厄ネタだねぇ…」

「た、大変ですー」

「やはり…」

私の言葉に皆が反応を返す。

「で…コレがちょっとした厄ネタにすぎない筈だったのは…『なぜ火星の裏界たる魔法世界は崩壊するのか』という点にある…ネギ、なぜそうなる?」

「厳密には色々な理由がありますが…尤も顕著かつ現実的スパンで問題となるのは魔力問題です。表世界からの魔力供給が期待できない火星ではおそらく現実世界での二、三千年程度が世界の寿命という事になります」

「ちょ、ちょっと待った、それだと魔法世界ってもう崩壊していないとおかしくなくない!?一応歴史的には5千年程度は有史として確認されているんだよ!?」

「そ、そうですよ、遺跡でも3000年よりも古い年代のモノは多数あります」

ネギの回答に朝倉とノドカが反論を返す。

「それは…おそらくだがダイオラマ球と同じ原理さ…現実世界とゲートによって定期的に連結されていない限り、時間差が生ずると考えればそこは解決できる…ゲートによって頻繁に接続されてこなかった時代の歴史が加速された歴史だとすれば一応矛盾はねぇ…拳闘士の言い回しに『ローマの昔』って言葉があるんだがこの世界の始まった頃、って意味らしいからこの推論も荒唐無稽って程ではねぇ」

「それで…どうしてちょっとした厄ネタでしかないはず、って事になるわけ?千雨ちゃん」

脱線しかけた議論をハルナが元に戻してくれた。

「超によれば、火星は将来的にテラフォーミングされるらしいんだよな…そーなるとどうなる?」

「あ…そうか…火星が生命溢れる星となったのであれば…程度によりますが魔法世界は安定するはずです」

「一応、宇宙工学の倫理としては無茶苦茶にもほどがあるんですがー仕方ないですよねー」

「…まあ微生物汚染どころか地球産の生態系持ち込むって言っているんだからそれはな…」

…生命の起源とかの研究的にはアレではあるが、世界一つの運命がかかっているので何とかするしかない話ではある。

「なるほど…ネギの目から見てもテラフォーミング計画は適正って事だな?」

静観していたおっさんがネギに問う。

「はい、時間が問題ではありますが…世界崩壊を防ぐにはそれがもっとも単純かつ確実な解法かと」

「…と言うおっさんの言葉でわかるように実はこの厄ネタ、上層部には知られてはいたが対応策は得られていなかった…んだな?」

「おう、俺様の知る限り、この世界の上層部は世界脱出計画的な方面で秘密裏に検討を進めている筈だぜ」

「…南の民っつうかヘラス帝国も?」

「おう」

と、おっさんは答える…そうなると

「って事は、南の民も少なくとも支配階級…ヘラス族は移民組か…てっきり被創造組かとおもったんだが」

「被創造組?」

ハルナが問う。

「そうそう、世界と共に造られた生命…ある種の幻想って奴さね…」

「…人類を創造するというのはいささか信じがたいですが…確かにそう言う研究もありますね…ですが理論上は脱出可能ですよね?」

「だが…被創造組だと支配階級だけ脱出するにしても非現実的な規模の話になってくるぞ?」

そのネギと私の会話は核地雷原でのタップダンスだと、おっさんのその言葉まで気づかなかった。

「…だから移民計画実験体なんてモノを作って一部だけでも逃がそうってしていた訳さ」

「…は?って事は…南の民って…」

「おう、魔法世界と同じモノらしいぜ、俺達は…あ、ちなみに北の民も過半つうか大半は混血だぞ」

そう、おっさんは核地雷級の…正真正銘核地雷級のネタをぶつけてきた。

「マテや…おっさん!涼しい顔で何を言ってんだ!つまり、魔法世界人の殆どは…」

「殆どがー幻の存在ーという事ですかぁ?」

「えっ…どういうこと…?」

「ま、幻って…」

「…マジ?」

面々が…一部はがくがくと震えながら…言った。

「それが…世界の秘密?父さんと母さんが挑んだって言う…」

「ああ…だが、その戦いもチサメ嬢ちゃんのおかげで道筋ができた…世界崩壊という前提を阻止できるならば…何とかなるんじゃね?」

「…一応言っとくが、私は救世主的なのに祭り上げられるのはごめんだからな?」

「あーまあ俺様の人脈的にゃ…セラス辺りに押し付けとけばいいんじゃね?」

「えー千雨ちゃん、せっかくの功績なんでしょ?」

ハルナが暢気に言う。

「どー考えても政治的にメンドクサイ事に巻き込まれる未来しか見えねーよ…私は自由な研究者でいたいんだ」

「偶然切っ掛けになったくらいならともかくーズバリ答えを提示しちゃったとかーいろいろめんどくさそうですよねー」

と、聡美。

「英雄っていう意味では千雨ちゃん色々と力不足だからね」

と、朝倉…どー言う意味だ。

「ええっと…とにかく…世界崩壊と言うのは回避できる…んですよね?」

と、ノドカ。

「ええ、恐らくは…時間だけが問題ですが…計算してみないとわかりませんが、現実世界の地球側からだけでなく魔法世界側からも協力すれば十数年から数十年のスパンで緑化は可能だと思います」

「そうだな…魔法と科学の融合での技術レベルの飛躍を計算に入れても地球側からだけのテラフォーミングには世論工作込々で余裕を見るなら半世紀は欲しい所だからな…そんなもんだろう」

「ゲームとかみたいにー文明のリソースを結集してーとかだともう少し短縮出来ると思うんですけどねー」

「よし、わかった。時間がない所、悪いがネギ、チウ、それとハカセ嬢ちゃん、向こうに帰る前に概論だけでも論文にまとめてくれや、俺がそれをセラスに押し付ける…その代わりにゲート行きは俺も同行してやるぜ」

「ハイ」「おう」「了解ですー」

こうしておっさんのゲートへの同行が決まった。

 

 

 

その後、三人で話し合って纏めた最低限の概略を書きなぐった概論…それでも然るべき人物に渡れば意図は伝わるようにまとめてある…をおっさんに手付(もう少しマトモに纏めたのをゲート行きの船内で書き上げる予定である)として預けると、私達は舞踏会に向かう時間になった。

「うひゃあ~なんかセレブって感じだねぇ」

「おーう、早く来いや」

たじろぐ皆をおっさんが早く来いと促す。

「あ、髪下ろしたんですね、アスナさん。いいですね、似合ってますよ」

「な…何よ」

「うん、似合うとるえ、ホンマにお姫様みたいやなぁ」

「も、もうこのかまで…アンタのほうが似合ってんじゃんーって?何着てるんですか、刹那さんー!?」

「へ?」

と、唐突かつ今更の突込みをアスナが刹那に入れる。

「せっかくの舞踏会なのにボディガードみたいなスーツ」

「なー」

「実際、私はお嬢様のボディガードですし、何かあったとき動きやすい恰好が…と言うかそれを言うなら千雨もズボンですし…」

「いいんだよ、私のは…先方から指定されてるやつだし、拳闘士チウとして来ているんだからな…それに軍人用とはいえ、お前の程、武骨じゃねーし」

と、私用にと指定された本来、女性軍人用らしい礼装を見せつける。

「ちなみにそのスーツにOK出してたのコイツやで、確かに動きやすいですねーとか言って」

と、コタローがネギを売る…自分もうんうんと頷いていたのを棚に上げて。そこからぎゃあぎゃあとじゃれ合いが始まる…が。

 

「さて…ネギ、最後通牒のお時間だ」

「へ?どうされました?千雨さん」

突然の私の問いかけにネギがそんなとぼけた返事をする。

「思うんだけどよ…舞踏会に行く必要ってあるんだろうか」

「な、何をいまさら?」

「いやさ…さっきの厄ネタミーティングでてめぇの両親が戦い挑んだ秘密…らしきものは知れたし、その答えもおっさんに託して陰ながら世界を救う手筈も整えた…それ以上何を望むんだって言う事だよ」

「そ、それは」

「さっきから考えていたんだが…ゲーデル総督は何かしらの目的があって、その手段としてテメェを政治の世界に引きずり込んで駒にする事が目的に思えて仕方がない…そこにのこのこ乗り込むだけの理由…あるか?今から踵返しておっさんの護衛付きでゲート直行で麻帆良へ…で良いんじゃね?と思えてきた」

「そ、それは…そうですが…」

でも、行きたい、少しでも多く両親のことを知りたい…そうネギの顔に書いてあった。

「で…どうする?ネギ先生」

そう、魔法の言葉で畳み掛ける…それを振り切ってまで行きたいと言うのであれば全力で応援はしてやるが…

「そう…ですね…確かにその通りです、千雨さん…その案で行きましょう」

周囲に落胆の雰囲気が広がる…まあお楽しみが取り上げられたのだから仕方がないか。

「…と言うべきなんでしょうけれど…スイマセン、行かせてください。総督が紅き翼の一員だったというのであれば…そしてその志を継いでいるのであれば…会談の肝は『厄ネタ』である筈です」

「そうだな」

「で、あるならば…同志は一人でも多い方が良いはずです…と言うのはダメでしょうか」

「…ダメだな、テメェ自身を納得させられていない理論で他人を納得させられると思うなよ?」

そう言って私はネギを睨みつける。

「ちょ、ちょっと、千雨ちゃん、ネギ君もみんなも頑張ったんだし、ちょっと位ご褒美と言うかお楽しみがあってもいいんじゃない?」

ハルナが会話に割り込んできて助け船を出す…と言うか自分の欲望が主のような気もするが。それに対して私はただ、だんまりを決め込んでネギを見つめる。

「…千雨さん。ごめんなさい、せっかくの助言ですが今回は無視させてください。いかせてください、僕は父と母の生き様を知りたいんです、お願いします」

そう言ってネギは私に頭を下げた。そして私の答えは…

「うん、了解」

「「「「「へ?」」」」」

短く答えるとネギたちはそんな声を上げた。

「元々この旅の目的はソレだし、ネギも頑張ったんだからご褒美の一つもねぇとな、ハルナの言うとおりに」

「ちょ、じゃあ何で舞踏会行くのやめようとか言いだしたのよ、千雨ちゃん」

そうハルナが詰め寄ってくる。

「んー?さっきの厄ネタミーティングで前提が変わっていることの確認をしただけだ。私はネギの決定に従うつもりだったぞ…ネギ、お前は多少はわがままを覚えるべきだ…それに私達は地獄の底まで付き合うんだろう?なあ、アスナ」

そう言って私はネギの頭をなでながらアスナに話を振った。

「あ…う、うん、そうよね!ネギだってがんばったんだから!」

そう言ってアスナはうんうんと頷いた。

「フフ…ハハハハハハ」

と、ラカンのおっさんの笑い声が聞こえると共に殺気を飛ばされる。

私は咄嗟にその場を飛びのく事で、ネギはのけぞる事でおっさんのキックを避けた。続いて

おっさんはネギに追撃のパンチをかますがネギはそれをうまく流してしのいだ…結果、おっさんの気弾が射線上の建物に着弾した。

「うむ」

「うむ、じゃないですよッ!?なにやってるんですかぁあッ!?」

「フ…術式装填なしで俺の蹴りと拳を避けたじゃねぇか、自分ですげぇと思わねぇか?」

「あ…」

今の不意打ちはネギの力試しという事だったらしい。

「ハハッ、いい感じに成長してんな、どんだけ相性いいんだ、テメェは。引き出す力も加速度的に大きくなってるだろうが負担も大きいだろ」

と、おっさんはネギのマギア・エレベアの紋様を見ていった。

「だがまあ、大丈夫だ。あと3回程度の本格戦闘は問題ないだろ、帰ったらエヴァに診てもらえよ」

「は、はい」

「うむ…マジで俺が教える事はもうねぇな免許皆伝だ!ラカン3級をやろう」

「いりません」

というとおっさんはどこかから賞状を取り出してネギに授与しようとするがネギに拒絶された。

「まあ、なんだ、なんにせよお前はもう――力を手にした一人前の男だ。男だったら女を守れ、そして世界を救え」

「――!」

「自分の為じゃなくな、それが男の力の使い道…ってもんだぜ、コレ豆知識な」

「よく言うぜ、金の亡者のおっさんがよ」

気づけば私はそんな言葉を吐いていた。

「ハハハハハハハ…さすが千雨ちゃん、毒舌」

と、おっさんは笑ってごまかした…刹那、一瞬だけ真面目な表情を見せたような気がした。

「つー訳で俺、トイレ」

「え…ラカンさん」

「あーそうそう、お前の母親な、アリカで間違いねぇから」

「えっ…」

「ほんでありゃいい女だった、俺もちょい惚れてたぜ」

「ちょ…」

と、爆弾発言をして立ち去ろうとした。

「え゛…」

「いい女で、見事な女だった、誇っていいぜ?お前の親父が惚れるのも納得よ」

「ラ、ラカンさん、そんな大事な話はもっとちゃんと…そんなテキトーな顔でテキトーに」

「あー後で後で、てゆーか今から会う総督の方が詳しいだろうしよ、つか俺の話はこのくらいでいーんじゃね?昔話うぜーだりー」

「えーっ、約束したのに」

「ああ、お前ら先行ってていいぜ、何しろ小じゃなく大。俺のは長ぇぞ?」

その発言に皆からとっとと行けと言うような趣旨の発言が飛び交い、おっさんはトイレに向かっていった。

「もー…」

「オモロイおじさんやなあ」

「ホラホラ、アホなおじさんは放っといていきましょ、後で話してくれるらしいし、ゆえちゃんとの待ち合わせもあるし」

アスナにそう促されて、私達は花火が夜空を照らす中、舞踏会会場へ向かうのだった。

 

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