「いきなり何を言うのです!?」
総督の答えは困惑交じりのそんな言葉だった。
「ですから、あなたの本当の目的ですよ…確か『世界を救う』と言いましたね」
そう、そしてその言葉は厳密には噓になる…だって、総督は『魔法世界』を救うプランを持っていないのだから…
「…なるほど、その件ですか…ですが、それを君のプランで…とは?どういう意味ですか?」
「そのままの意味ですよ、総督」
「いえ、その目的を君は知らない筈だ」
「…前提の共有をしましょう…貴方達が、そして僕たちのプランが解決すべき問題…それはこの『魔法世界』すなわち…『火星に築かれた人造異界』の『崩壊の危機』…で間違いありませんね?」
そのネギの言葉に合わせて私は砕け散る火星のイメージ図を投影する。
「…なっ!?な…なぜ君が…そのことを…っ…この件についてはほとんど誰も…まさか、アルビレオ・イマが…!?」
「いえ、違います、僕独自の情報源…それに推論です」
…まあラカンのおっさんによる答え合わせ付ではあるが。
「む…う…」
戸惑う提督に、ネギはさらに畳み掛ける
「提督のお話はたっぷり聞かせていただきましたので次は僕たちの話を聞いて頂きますよ…千雨さん」
崩壊する火星の投影で私がすでにこの部屋を掌握していることに気付いたネギがそう声をかけてきた。
「はいよ」
「なっ…まさかこの部屋のセキリティーを…」
そう言うと私は魔法世界と火星の立体映像を投影する…当然総督は驚いている。
「さて、まずは前提の確認からいきましょう…魔法世界崩壊…その原因は魔法力の枯渇にあります。そしてあなた方のプランはその崩壊から救い出せる人々…僕たちは仮に移民組と呼んでいますが…その移民組の純血の子孫のみを救い出すという計画で…その数6700万人と言う事になります…そうですね」
ネギの言葉に合わせて私は追加で地球を投影し、魔法世界から地球へと矢印を伸ばして6700万人と表示させた。
「…その通りです、その言い草からすると残りの人々を救えぬ理由もわかっているのですね?」
「ええ、被創造組…世界と共に造られた人々の血を引いている人類は特別な処理を行った場合以外は魔法世界と同じ存在…すなわち魔法世界崩壊と共に消えてしまう」
「その通り、ですから、魔法世界から救える全ての人類を救おうというのが我々のプランです…それよりも君のプランは優れているとでも言うのですか!」
そう、ある種妥協的でかつ夢想的な計画…救える人は一人残らず救って見せるという計画、それが総督たちのプランである。
「ええ、文字通り『世界を救え』ば残りの人たちも消えずに済む…違いますか?」
「何をっ…いや…まさか…まさか君は魔法世界の崩壊自体を止めようとでも言うのですか!?」
「ええ、その通りです…規模は大きいですが案外単純な計画ですよ…こうすればいいんです」
と、ネギは指を鳴らす…と共に火星の表面がどんどんと緑化されていき…地球のような星と化した。
「火星の緑化…?いえ、テラフォーミング…それが一体…あぁっ…魔法力の供給ですか!」
「ええ、その通り…単純かつあまりにも壮大なので限られたお偉方だけで議論していては気づかなかったのかもしれませんが…人造異界の研究者に問えば一発で出てくるはずです、どうすれば人造異界を長持ちさせることが出来るか、と」
「…いえ、我々の研究者も魔法力の供給までは考えました…しかし、その為には地球の魔力を搾り尽くす位の事が必要だと言う事で断念していました…言われてみれば単純かつ合理的です…火星を地球のような生命溢れる星にすればよい、とは…しかし可能なのですか?制限時間は有限かつ不明瞭ですよ?」
「かなりの難事業になるとは思われますが…時間としては余裕を見て、五年から十年程度で延命程度の緑化が、半世紀あれば火星を魔法世界を永続的に支えられるだけの生命溢れる星に出来る計算ではあります」
「わかりました、詳しい話を聞きましょうか…賭けるに値する内容であればネギ君、我々の計画に君のプランを採用しましょう」
「…いいえ、総督…前提が違います、僕が提督の計画に参加するのではなく、提督が僕の計画に参加するんです…僕にはもう仲間がいます…そして復讐を目的とはしていませんので…貴方の仲間にはなりません」
ネギは、そう言い切った。
「なにをっ!?どういうことですかっ」
「世界を救う…その志を共にする僕達と貴方達はきっと手を取り合えます…しかし、メガロメセンブリア元老院に復讐をするつもりは…ありません」
「大事の前の小事…だからアリカ様達の名誉も何もかもを諦めろ…そう言いたいのですか?」
「いいえ、そこまでは言いません…しかし、母の名誉回復は後回しでもきっと僕の両親は許してくれるはずです」
「…少し…考えさせてください…システムも掌握されてしまったようですし、構わないでしょう?」
「ええ、いくらでも…と言いたいところですがとりあえず3分間待ちます、と言う事で」
「いいでしょう」
そして、総督は駆け寄ってきた少年従者…迷彩がかかっていたが私が解いた…と何事かを話し合い始めた。
「一応形勢逆転…です?」
と、ノドカ
「イヤ…なんだかんだでネギ君が世界救済計画に関与する方向には話が行っちゃったから…まずくない?」
と、朝倉が続く。
「…ですけど、見捨てる訳にはいかないじゃないですか…魔法世界」
そう、ネギが言い訳をする。
「はぁ…まったく…私達と日常に戻るって話はどこへ行った?」
「まー新たな日常と言い切ってしまえばーそれはそれでー」
と、私と聡美がツッコミとフォローを入れる…そして…3分が経過したその時、外部から緊急通信が入った。
『総督!緊急事態です!』
『何事ですか』
と、私は合成した総督の画像と声で応答した。
『テロです!大規模召喚が行われ、艦隊が攻撃を受けると共に舞踏会会場にも大量の召喚獣が!』
『っ…』
流石に私がどうこうできる問題ではないので急いで総督に通信を繋ぐ。
「非常事態だ、召喚テロで艦隊と舞踏会会場が攻撃を受けているらしい」
「何ですって!?」
『総督…総督!?』
「警備兵で直ちに対応を、招待客を避難させるのです!すぐに指揮所に向かいます」
『了解しましたっ』
「というわけです、ネギ君、話はまた後でいたしましょう…できれば舞踏会会場の応援をお願いします…お嬢さん、幻想空間の解除を」
「はいはい」
と、いう訳で提督とのお話はそこで一度終わりとなった。