同級生に誘われホイホイ参加したライブで狡知ソング唄ったらアイドルバンドに目をつけられた   作:オパール

1 / 2
Q.なんでこんなの書いたの?
A.知らない

Q.ベリアル好き?
A.いっぱいちゅき

Q.原作知識は?
A.二期だけ

そっ閉じ推奨


ワンナイト狡知

氷川日菜。高校二年生。

現役アイドル兼バンドのギター担当。

アイドルだけあって容姿は抜群。スタイルも良く、全国レベルの頭脳を持ち運動も大得意という、天から二物どころか二十物くらい与えられたんじゃねーのかこの人、と言わんばかりのハイスペック美少女。

 

彼女は現在、とあるライブハウスで行われているイベントに観客の一人として訪れている。

高校生とはいえ芸能人である彼女がおいそれとこんなとこに来て良いのか? と思う者もいるだろうが、生憎とこのジーニアスガールはそんな感性は持ち合わせていない。

 

この場にいる理由としては、同バンドのメンバーである大和麻弥に誘われてのこと。

何でも、このイベントに参加するバンドの一組に、珍しいというか超が付くほどレア物の楽器を用いているチームがあるらしく、技術もそれなりに高いらしい。

ぶっちゃけ日菜的には死ぬほど興味無い案件だが、あまりにも熱心に同伴を頼んでくるので、そこまで言うなら、と渋々ながらも了承した次第である(なお、他のメンバーは都合がつかなかったそうな)。

 

で。

 

「………」ムスー

「ひ、日菜さん……次、次ですからっ」

「ぜーんぜん、るんって来ない……」

「あわわ……」

 

隣で汗を流しながらアタフタ慌てるその姿に少しだけ溜飲は下がったが、ぶっちゃけ退屈極まりない。

言ってしまえば『似たり寄ったり』

自分達【Pastel*Palettes】も未だ発展途上ではあるが、それでもまだこちらのが全体的に上だと思うし、姉が所属している【Roselia】や高校の後輩達のチームである【Afterglow】に比べれば月とスッポンどころの話じゃない。没個性なバンドが多すぎる。

 

(麻弥ちゃんには悪いけど帰ろっかなー……おねーちゃんに会いたいし)

 

欠伸を噛み殺しながら、胸中でそうごちる。

残すバンドは一組。麻弥の目的のバンドだけだが、正直どうでもいいというのが本音だった。

 

それから少しの時間も経たず、ステージ上に例のバンドが姿を見せる。が、少々客席にてどよめきが起きた。

 

「……あれ?」

「? どしたの?」

「ああ、いえ。ボーカルの方が普段と違くて……」

 

その言葉に釣られてステージを見やる。

ボーカル、ギター、ベース、ドラムにキーボード。ごくごく一般的な構成のチームであるが、特に中央に立つボーカルの青年が目をひく。

整髪剤でガチガチに固められ、トサカかと思うほどに逆立てられた黒髪。吊り上がり気味な目付きと紅い瞳。整った顔立ちには薄く化粧も施されている。

が、それよりも気になったのは、こちらを見下しているような視線と蔑むような笑み。

 

この時点で日菜の中では「るんっ♪」と来ないどころか「どゅんっ…」という感覚が満ちていた。つまるところ最悪である。

 

そうこうしている間にバンドメンバー達が次々と自己紹介を終えていき、最後となったのはその「どゅんっ」男。

メンバー達からの催促の視線を背中に、観客からの好奇の視線を正面から浴びること十秒前後。

ざわめいていたホール内が静寂に包まれたのを見計らって、男は静かに、口角を吊り上げたその憎たらしい笑みのまま、口を開いた。

 

「……やれやれ、やっと静かになってくれた。アンタら、発情期か何かなのかい?」

 

ブーイング。当然だ。

 

「ッハハハ! オイオイ、図星だからってそうイキりたつなよ。……でもまぁ、ああは言ったけど、こんなとこに暇潰しに来るような連中なんだ。それくらい盛っててくれないと面白くない」

 

煽り立てるような言葉に罵声がより強くなる。

演奏隊の面々から「やめろ」と言わんばかりの視線が飛んでいるが、男はまったく意に介していない。

 

「でもまぁ、あんまり鳴かれ続けても萎えちまう。もっと静かな、抑えようとしても、どうしても漏れちまう声ってのもオツ(・・)なもんだ。そう思わないか?」

 

隣の麻弥の顔が何故か赤くなっているが、日菜としては何を言ってるかさっぱりわからない。というか―――わかりたくない(・・・・・・・)

 

「ん、オレの名前? 別にいいだろ。どうせオレが歌うなんて、この一回だけなんだ。一晩だけ、行きずりの関係なんてのも素敵だろう?」

 

どこまでもこちらを見下し、こき下ろすような言葉と表情に会場内のボルテージとフラストレーションは嫌でも上がっていく。

それすら面白いと感じているのか、男はそこから何も言わず、投げつけられるブーイングをニヤつきながら受け流していた。

 

「―――イイね。イイ塩梅だ」

 

そう言って、男は演奏隊へと目配せを。

呆れ返った顔をした各々が楽器を構え、準備は出来てると暗に告げる。

 

 

 

「―――オーケィ。ヤろうか……!」

 

 

 

そして

 

狂った宴(Parade's lust)が、始まる

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

―――全てが、最低最悪に狂っ(イカれ)ていた

 

静かな、だが力強い立ち上がりと同時に始まったその歌は、英語歌詞。

なるほど確かに、麻弥の言葉通り個人個人の技術は、このイベントに出ていたどのバンドよりも頭一つ抜けているように思える。

 

―――ただ、それら全てをただの添え物にしてしまうほどの歌唱力があった

 

英語が得意なのかどうかは知らないが、発音や息継ぎ等、全てがハイレベル。声だけ聞けば外人が歌っているのではと勘違いしてしまいそうなほどに。

気付けば、ブーイングを送っていた観客は皆、その演奏と歌声に耳を傾けている。

これだけならば、もしかしたら自分と同級生の、姉がいるバンドのボーカルと張れるのでは、と錯覚してしまいそうだった。

 

―――そんな思いを蹴り殺して唾を吐くかのような、最悪な歌詞

 

世に出回るポジティブな歌や創作を真っ向から虚仮にして否定するような内容。件の男は、それをさも楽しそうに歌っているのだから始末に負えない。

目線はどこまでも上からで、歌詞に合わせて変わる表情からは一切の『熱』を感じない。

平然と他者を騙すようなこす『狡』さと、それだけ出来る『知』恵の回りの良さ。

姉と家族、友人知人以外の他人には必要以上に興味を持てない日菜が、心から『嫌い』と思ってしまうナニカがそこにはあった。

 

そして、一気に曲の流れが変わる

 

 

 

―――達する、達する!!

 

 

 

もう聴いていたくなかった。

先に述べた通り、氷川日菜は天才だ。

数桁暗算なんて欠伸しながら出来るし、英文どころか他の国の言語での文章の和訳なんて朝飯前だ。

 

だから、英語で放たれるその最低最悪な、品性の欠片も無いワードとスラングの連続が、日本人にハッキリ理解できる言葉となって、耳から脳へと叩き込まれる。

隣の麻弥が心配しているようだが、脳内に反響する声と音と言葉がそれへの反応を許してくれない。

そして当然、観客の内の誰か一人が項垂れてようが、演奏を止めるような善人もいなければ、むしろ気付く者すらこの場にはいない。

 

彼女達以外の観客は、いつの間にかこの一曲に酔いしれてしまっていた。

 

 

 

気付いた時には、曲が始まってから数分が経過していたが、日菜にとっては地獄のように長く感じた数分だった。

ステージで演奏を続けるバンド。曲も終わりに差し掛かり、全員がミスをするまいと額に汗を浮かべながらそれぞれの楽器を掻き鳴らしている。

ボーカルの男も例外ではない。スタンドからマイクを取り外し、掌で額から流れ落ちている整髪剤混じりの汗を髪と共にかき上げ、終わりに向けてのフレーズを口遊んだ。

 

 

 

 

 

 

 

―――オレと姦淫しないか?

 

 

 

 

 

 

 

吐き気を抑えきれず、逃げるように人混みを掻き分ける。

後ろから誰かが声をかけてくるが、そんなの気にしていられない。一秒でも早くこの場から立ち去りたかった。

ホールを出る直前、室内を揺るがす甲高いシャウトと共に演奏が途切れ。

直後、男が発した言葉が嫌に耳にこびりついた。

 

 

 

「―――では、良いシュウマツを」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

その後はどうやって帰ったのか覚えていない。

気付けば自宅、自室のベッドで横になっていた。

スマホの通知を見れば、麻弥から心配と謝罪をする旨の文が送られてきていた。

震える指で何とか文章を打ち、それに返信する。

時間を見たが、もうとっくに日付を跨いだ時刻。

 

胃の奥でナニカがぐるぐる渦巻いている気がする。

元々、家族と仕事関係以外で交流のある異性などいないが、それでもああいうタイプは今まで見たことも無い。

他人の気持ちを察することに関しては人一倍疎い日菜だが、それを差し引いたとしてもあれは理解に苦しむ。理解したくないと言った方が正確だろうか。

 

(……ムカムカする)

 

結局その日は眠れず。

次の日、学校は休みだったが仕事も休む羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後。

 

「おっはよー!」

 

体調は快復し、教室のドアを開きながら大声で叫ぶ。

何人かが日菜に視線を向け、何人かは挨拶を返してくれた。

 

「おはよ、ヒナ」

「おはようございます日菜さんっ」

「あっ、リサちー! 麻弥ちゃんもおはよー!」

 

かけられた声に振り返れば、そこには柔らかく微笑む、自身と姉の共通の友人。【Roselia】の今井リサが麻弥を連れて立っていた。

 

「紗夜から聞いたけど、体調悪かったんだって?」

「んー、ちょっとね。でももう大丈夫だから!」

「あの、すみませんでした日菜さん。ジブンが無理に誘ってしまったばっかりに……」

「ううん、もういいよ。それにね、久しぶりにおねーちゃんが優しくしてくれて、すっごいるんっ♪ てしたから!」

「アッハハ☆ まぁ紗夜も何だかんだ言ってたけど、練習に集中できないくらい心配してたみたいだしねー」

「ほんと!?」

「ほんとほんと。リサ姉ウソつかない」

「ん~~~~……るんっ♪」

「あ、あはは……まぁ、元気になったようで何よりです。彩さんも千聖さんも、もちろんイヴさんも心配していましたし」

「あー、そっかー。みんなにも謝んないとね」

「はいっ」

 

 

 

「……それで、そんなに凄かったの? そのボーカル」

「ええ、まぁ。サポート、というか、臨時で入ったあの一回限りとのことらしいですが、歌はとても上手でした。MCもされたのですが……その、まぁ。ちょっと過激、と言いましょうか……」

「ふぅん? ……ん?」

「リサさん? ……ああ、映像も出回ってるんでしたね。そうそう、この方です」

「……んー。なーんか見覚えあるような……」

「お知り合いですか?」

「いや、同じバイトにいる人と似てるような気がしなくもないっていうか……いや、違うかな」

「そうですか……日菜さん?」

 

「……あたし、その人キライ」




続きます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。