彼は世界の夢を見る。そうして冒険者になったのだから

雪国のコタリス村に別れを告げて5年間冒険をしていた少年 ヴィオン・エデルガルトは旅の途中でメルヴェイユを訪れる。だが宿に泊まろうにも金銭的に余裕のない彼は次の街まで困窮していた。そんな彼は思いもよらない出来事が起きる事を知らなかった。



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僕らは素晴らしき今を生きている。

俺は走る、ようやく見えた新たな街。ゲートに入るとそこには多くの人たちが集うアダレット王国の小さな街、メルヴェイユへと足を踏み入れた。

ヴィオン「ここが‥‥‥メルヴェイユ。村とは大違いだ‥‥‥」

俺はヴィオン・エデルガルト。17歳の冒険者、祖父の跡を継いで旅に出た彼はメルヴェイユの街で羽休めをするためにやって来た。

ヴィオン「さて、宿を探さないとな」

財布を見たが‥‥‥

ヴィオン「嘘だろ‥‥‥6000‥‥‥これじゃあ宿は取れないな」

まあせいぜい飲食は出来るが‥‥‥

 

ここから俺の宿無し生活が始まった。常に歩き回るか座るかの生活。幸い広場に雨風がしのげる程度の大樹があったのでその下で眠っている。大切な荷物や装備品は透明化マントをかぶせてある。食事も最低限且つ安く済ませる。本当はもっと食べたいけどこれも生活の為である。明らかにホームレスだが近いうちには街を出るつもりだ。そうすれば誰からも何も言われなくて済む。それまではもう少しの辛抱だ。

ヴィオン「綺麗な月だな‥‥‥」

空に手を伸ばし、3日間の事を思いながら眠りについた。

 

4日目の朝

ヴィオン「ん‥‥‥」

目を開き、左を見ると‥‥‥

ヴィオン「え‥‥‥ええええ!!」

突然二人の女の子がヴィオンの隣で眠っていた。

ヴィオン「だ、誰だよこの子‥‥‥」

俺の声に反応したのか二人は目を覚ます。

???「はぁ、良く寝た」

???「外で寝るのも悪くないね、君も目覚めたんだね」

ヴィオン「あ、ああ、それより君たちは‥‥‥」

???「私はリディー」

???「妹のスールだよ。錬金術師なんだ」

ヴィオン「錬金術師‥‥‥」

スール「君は?」

ヴィオン「ヴィオン・エデルガルト、冒険者だ」

リディー「冒険者かあ、どこの出身?」

ヴィオン「コタリスの村、雪国の村だよ」

リディー「雪国!!いいなあ、メルヴェイユは雪が降らないから羨ましいよ」

ヴィオン「そう言ってもらえると嬉しいよ」

スール「それよりも早くヴィオン君連れて行こうよ」

ヴィオン「え、どこへ?」

リディー「私達のアトリエ兼自宅。ベッドも食事も用意するよ」

ヴィオン「い、いいの!!」

スール「もちろんだよ、まあ、お姉ちゃんがヴィオン君見て乙女に‥‥‥」

リディー「そ、それ言っちゃダメええええええ!!」

顔を赤くして手を振る彼女を見て俺は理解してはいけないと心に感じていた。

 

朝9時 アトリエ前に到着

リディー「ただいまー!!」

スール「助けてきたよー!!」

すると部屋の奥からメガネの男性が出てきた。

???「君が例の冒険者か、外での生活は大変だったろうね。ああ、自己紹介が遅れたね。父親のロジェだ。しばらくの間はよろしく」

ヴィオン「ヴィオン・エデルガルトです。とは言え1泊ですがよろしくお願いします」

 

そして‥‥‥

ヴィオン「おおー!!」

目の前に出されたチーズサンドとコーヒーに俺は涙が出そうだった。ここ数日余りいい物を食べていなかったが故に‥‥‥

ヴィオン「いただいてもいいかな?」

リディー「いいよ、自信作だから」

俺はチーズサンドを齧るとその美味しさに出てきた言葉がこれだった。

ヴィオン「うまい、今までの食生活に耐えてよかった。そう思える」

ロジェ「冒険者の身の上で金欠とは何があったんだい?」

ヴィオン「マネーカードゲームに巻き込まれて‥‥‥」

ロジェ「お金ぐらい大切に使いなよー」

リディー「父さんも大概だよ!!」

スール「どの口が言うんだか」

ロジェ「それよりも、冒険者なんだから色々面白い冒険の話あるんじゃないか?ぜひ聞かせてほしいものだね」

リディー「聞かせてよ、ヴィオン君の冒険の事」

ヴィオン「それじゃあ、語らせてもらおうかな?」

 

冒険の事を語り、一緒に街を走って仕事をこなす。チェスに興じる事もあれば夕飯のメニューを一緒に考えて手伝ったり。俺は今日の1日は凄く充実していた。

 

そんな夜の事‥‥‥

ヴィオン「こんなに楽しいって思ったの、いつ以来だろう。じいちゃんに世界の事を教えてもらって、旅に出て5年。気が付けば冒険に新しさを感じなくなっていた。でも、こうやって人に頼られたり、こうして自分が助けられるのも‥‥‥悪くないな」

眠りにつく俺の心は少し複雑だった。明日にはここを出なければならないから。

 

翌朝

ヴィオン「短い間でしたが、お世話になりました」

ロジェ「旅は長いぞ、この先も君は大きく世界を見るだろう。その時はまた面白い話を期待してるよ。」

スール「ヴィオン君と別れるのは少し悲しいけど、次の街までにお金は大切にね」

ヴィオン「もうホームレス生活をする気はないよ。リディーは何かないのか?」

リディー「ヴィオン君、驚くかもしれないけど‥‥‥」

ヴィオン「?」

ダッ!!

ヴィオン「のわあ!!」

突然リディーに抱きしめられた俺はリディーから本心を聞く。

リディー「ヴィオン君が街に来て、あの広場で眠るヴィオン君を‥‥‥私はずっと見ていたんだ。ヴィオン君を助けようと思ったのは‥‥‥ヴィオン君が苦しんでほしくなかったから。私は、気付いたんだ。ヴィオン君に惹かれいる事が。」

ヴィオン「なっ!!」

リディー「ヴィオン君、私は遠くに行ってもヴィオン君がまたメルヴェイユに、このアトリエに戻って来るって信じてるから。その時は、私を貰って欲しい。待ってるから」

涙に濡れるリディーの頬を撫でて俺は誓った。

ヴィオン「必ず迎えに行くよ、俺もリディーが好きだ」

リディー「うん、大好き!!」

 

新たな想いを胸に、俺はメルヴェイユに別れを告げる。俺は必ず、リディーを迎えに行く。誓って見上げる空は、青く澄んでいた。

 

 


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