杖なんて必要ない   作:青虹

1 / 11
原作沿いもやってみたかった。ただそれだけなんです。
Aクラスにしたのは、ただの気分だよ!




原作第1巻 〜隣の美少女は杖使い〜
隣の美少女は小指キラー


 ──Love is what happens to men and women who don’t know each other.

──W.Somerset Maugham

 

(──愛とは、お互いに相手を知らない男女の間に発生するものである。

──サマセット・モーム)

 

 

 

 ー▼△△▼ー

 

 

 

 拝啓、皆様方。私、中山祐介はとっても楽しい学校生活を送っています。

 銀髪の杖ついた美少女に奴隷のごとくこき使われ、絶賛学園生活満喫中です(白目)。

 

 コツ、コツ。今日も規則的な音がオレの元へ近づいてくる。

 これは悪魔の到来を知らせるアラームだ。何があっても目を覚ましてはならない。

 俺は嘘寝をする事で乗り越えようと決めた。元から眠いし、このまま夢の国へ誘ってくれないかなぁ。

 

「祐介くん。……あら? お休みですか。せっかく私が来てあげたというのに……。えいっ」

「痛あっ!?」

「おはようございます、祐介くん」

「おはようございます、じゃねえよ! 普通に痛かったんだけど!?」

「起きていなかった祐介くんが悪いんですよ?」

「理不尽……」

 

 暴力には逆らえなかった。渋々顔を上げると、ニコニコ笑顔の坂柳さん。

 とっても楽しそうな笑顔ですね(脳死)。それと、名前呼びは恥ずかしいからやめて。

 

 俺に下るは休日出勤の命。我が社はブラック、アットホームな環境で有名です。

 週休0日、不定期かつ緊急の出勤は数え切れない。そのおかげで、予定はコンビニが営業している間全て仕事で埋まっている。

 

 どうして俺はこんなことになってしまったんでしょうね。

 嗚呼、お父様、お母様。折角ここに入学させてくれたのに、息子は既に社畜への扉を開いてしまいました。どうかお許しを。

 

「祐介くん、お願い事があります」

「もういいや……で、何?」

「フフ、ものわかりが良くて嬉しいです」

「……」

 

 外面だけ見ればすぐに男を虜にする笑顔。しかし、その内面はえげつないものだ。

 Aクラスの完全支配を目論んでいやがる。もしそうなったら、うちの代の卒業生はみんな社畜になっちゃうよ? 

 

「ねえ、坂柳──」

「有栖」

「へ?」

「名前呼びだと決めたはずですが?」

「えぇ……」

 

 全方位から無数の撃龍槍が飛んでくるから嫌なんだけど。

 

「名前で呼ばないと杖で小指を──」

「分かったから! 有栖、これでいいだろ!」

「はい」

 

 痛え。周りからの視線が痛え。だけど、そんなの気にしてたらこの先やってけないもんな! 

 

「で、有栖。何で俺だけこんなに仕事が多いの?」

「優秀で扱いやすいからですよ」

「うへぇ……」

 

 ここまで来ると、ドMたちは大喜びだろうね。

 ドMの皆様、私と同じ仕事を始めませんか? 安心してください。『社員は皆家族』が我が社のモットーですので。

 

「では、私と一緒に来てください。そうすれば仕事内容を教えてあげましょう」

「はぁ、逆らえないからいいけど」

 

 坂柳に武力を行使すればいくらでもどうにかなるのだろうが、俺はそこまで腐った人間じゃない。

 

「早く行きますよ」

「はいはい、分かったから」

 

 何故かクラスメイトに睨まれたが、どうしてだろうか。え? 君たちもドMなんですか? なら代わってあげようか? 

 そう思いながら、坂柳の手をとって階段を一歩一歩少しずつ下っていく。

 

 ああ、どうしてこうなってしまったのだろうか。一介の高校生が社畜になってしまうなんて。俺の人生はまだこれからだというのに。

 

 

 

 ー▼△△▼ー

 

 

 

 その少女と出会ったのは、偶然であり必然だった。

 

 東京都高度育成高等学校に進学した俺は、Aクラスの配属となり、その教室に向かっていた。

 中学校でもそうだったが、一年生の教室は最上階にある。小学校の時は逆だったのになぁ。

 

 そんな不満を抱きながら、えっちらおっちら階段を上っていく。

 俺は3階の踊り場で一人の少女に遭遇した。その少女は杖をつき、階段を登ることに苦労しているように見えた。

 何食わぬ顔で横を通り過ぎるという選択肢はなかった。生憎、俺はそんなに非情な心は持ち合わせていなかったのだ。

 

「えっと、大丈夫?」

「ええ。この生活にはもう慣れていますので」

「ならいいけど」

 

 それにしても、かわいいなぁ、この子。え? 高1? うせやん。絶対中2位でしょ。こういう子こそ、意外と右手が疼く、とか闇の力が、とか言ってるんだよ。

 あれだね、ギャップ萌えだね──ッ!? 

 

「痛っ!?」

 

 杖で小指突き刺すとかアホじゃねえの!? さてはお前、タンスの角に小指をぶつける痛みを知らないのか? ああん? しかも、それは初めてあった人にしちゃダメなことって分かってる!? 

 

「変なことを考えていませんでしたか?」

「イ、イイエマッタク」

「片言なのが気になりますが、今回は許しましょう。ですが、次はありませんよ?」

「アッハイ」

 

 覚えとけよこのロリめ……! 

 あれか、初見殺しとはまさにこのことなのかっ!? 

 

「私は坂柳有栖と言います。あなたの名前は?」

「俺は中山祐介だ。Aクラスだったぞ」

「奇遇ですね、私もです」

「えぇ……」

 

 うせやん。やな予感しかしないんだけど。

 若干ビビりながら階段をゆっくり上がっていく。

 4階に到達したところで、『1-A』と示された教室を視界に捉えた。

 

「おっ、ここみたいだな」

 

 坂柳の後に続き、教室に入る。この俺がレディーファーストを忘れるはずがなかろう。

 机にはそれぞれの名字が書かれていて、誰がどこに座るかが分かりやすくなっている。

 更には、ホワイトボードには机列表が貼られている。

 

「どうやら隣同士みたいですね」

「マジか」

 

 廊下側最後列、右端が坂柳、その隣に俺が座るという構図に。

 既に来ていたクラスメイトと思われる生徒から、ちらほら嫉妬の視線を送られてるし。お前ら一目惚れすんなよ。確かに坂柳は可愛いけど。ただし、俺はロリコンではない。俺の守備範囲はプラマイ2歳(見た目)だ。たとえ同級生でも、坂柳のような華奢で慎ましい体つきじゃちょっと無理だなぁあっ!? 

 

「杖で足を突き刺すのやめろよ!?」

「すみません、中山くんの足元に蚊が止まっていたもので」

「な訳ないやん」

 

 はぁ、とため息を零す。

 なんて面倒な奴と隣の席になってしまったのだろうか。

 俺の心は簡単に読み取られ、少しでもやましい思考になると杖であしを踏み潰される。

 

 見かけによらずヤベー奴なんだな、きっと。

 

「この学校は、進学率、就職率100%と謳われていますが、中山くんは本当だと思いますか?」

「そんな都合のいい話はないだろうさ。出来ることなら本当であってほしいけどな」

 

 もしそれが本当なら、この学校に紛れた能力の低い人も管理職に就いてしまう可能性もある。

 全員が優秀な人間であるなら話は別だが、それでも胡散臭いと思わずにはいられない。

 

 他にも、外部との連絡や敷地外への外出が禁止されていたり、その代わりに敷地内には街のようなエリアがあり、ショッピングセンターをはじめとした娯楽が揃っている。

 

 それだけでも十分情報量は多い。それでも、この学校においては()()()()()()()。謎の多くが未だにヴェールに包まれたままだ。

 

 しばらく坂柳との雑談に耽っていると、続々と学生が入ってきて、最後に一人の男性教師が姿を見せた。

 

「はじめまして、Aクラスの諸君。私がこのクラスの担任となった真嶋智也だ。担当教科は現代文だ。この学校では、クラス替えは存在しないので、君たちとは3年間の付き合いになる」

 

 デデドン(絶望)! 

 頭の中でこんなBGMが流れ出した。理由はただ一つ。

 俺の右隣にいる銀髪ロリ(貧乳)と3年も一緒に過ごさなきゃいけないからだ──っ!? 

 

「〜〜っ?!」

 

 声にならない悲鳴をあげる。この女に躊躇いという言葉はないのか!? 

 

「これから、この学校の資料と学生証カードを配る。資料に関しては、入学案内とともに配布されているので、細かい説明はしない」

 

 一度読んだ資料を机の端に置き、その後に回ってきた学生証カードを受け取る。

 

 ぱっと見では、どこにでもありそうなポイントカードだ。イ◯ンとかで使っても違和感なさそう。

 

「このカードには、pr(プライベートポイント)が振り込んである。prは1ポイントで1円の価値があり、毎月1日に振り込まれる。今、そこには10万ポイントが支給されているはずだ。我々からの入学祝いだと思ってありがたく受け取ってくれ」

 

 はえー、10万ポイントか……って、じゅうまん!? 

 俺たちは今10万円をただで貰ったってこと!? 

 

「めっちゃ大金やん、いいの? こんなに貰っちゃって」

「学校がいいと言うのですから、ありがたく貰っておきましょう」

「だな」

 

 ただ、逆に怖いのも事実。ただの高校生に()()()()()()()()()()()10万ポイントを渡すのだろうか。

 謎が多いこの学校において、疑わざるを得ないのは明白だった。

 

「このポイントは卒業後には回収される。貯めておいても無駄だぞ」

 

 ポイントを貯めまくって、卒業後の資金にはできない、と。

 わざわざそんな回りくどいことをする必要はあるのだろうか。

 

「私からの話は以上だ。質問があれば受け付けるが」

 

 一度教室を見渡し、手を挙げる人がいないことを確認すると、真嶋先生は再び口を開いた。

 

「入学式は1時間弱後に行われる。それまでは自由時間だ。お前たちは今日から3年間の付き合いになる。この時間にお互いのことを知っておいた方がいいだろう」

 

 そう言い残し、真嶋先生は教室を去って行った。

 それを確認すると、隣の坂柳が立ち上がる。当然、坂柳に注目が集まる。

 

「先生の言ったように、私たちは3年間同じクラスになります。お互いのことを知っておくことは重要だと思うので、この時間に自己紹介してはどうでしょう」

 

 坂柳がそう言うと、あちこちから賛成の声が上がる。

 

「そうだな。3年間も同じクラスの仲間として生活するのに、全く知らないのは良くない」

 

 誰だと思い、声の主へ視線を向ける。

 ……うっ、目が、目がぁ! 

 何だよあいつ。常時バルス発動してるのか? 

 

「では私から。私は坂柳有栖といいます。生まれつき疾患持ちで、日常生活には杖が欠かせませんし、当然運動は出来ません。ですが、皆さん仲良くしてくださると嬉しいです。3年間よろしくお願いします」

 

 当たり障りのない自己紹介だ。述べたことは全て見れば分かることばかり。

 それでも大きな歓声(主に男)が上がっているのは、やはり坂柳という少女が美少女という枠組みに当てはまるからだろう。それとも、ただのロリコンか。

 

 歓声が収まると、バルス持ちの男が立ち上がる。だから眩しいって。俺はムス◯じゃねえ。

 

「俺の名前は葛城康平。生徒会に所属していたことがあるので、ここでも生徒会に所属しようと思っている。見た目だけに近寄り難いと思われがちだが、そうではないので気軽に話しかけてほしい」

 

 拍手が沸き起こる。

 生徒会ね、俺は興味ないけど。だって面倒そうじゃん。仕事多そうだし。

 

「中山くん、あなたの番ですよ」

「お、おう……」

 

 坂柳に促され、立ち上がる。

 

「俺は中山祐介。これといった特徴はないけど、楽しい学校生活にしたいので、気軽に話しかけてください」

 

 取り敢えず笑顔を振りまいておく。自己紹介で爆死したくないし。

 

「中山と坂柳って付き合ってるのか?」

「……は?」

 

 俺と坂柳が付き合ってる? な訳ないだろ、今日出会ったばっかだぞ。出会い厨じゃないんだから、そんな冗談やめてくれよな。

 

「俺たちは付き合ってないぞ」

「そうか」

 

 あっさりと納得し、そのままその人の自己紹介が始まる。後藤輝樹という名前らしい。どこぞの塾長とは関係ないようだが、なぜか似たものを感じる。

 

 半数が終わった頃だろうか。一人の少女の自己紹介が始まろうとしていた。

 

 茶髪をポニーテールでまとめ上げ、瞳はエメラルドに輝いている。首から視線を少し下に落とすと、二つのオリンポス山が制服を押し上げていた。あ、オリンポス山は火星にある標高20000m越えの山だよ! 童貞の観察眼によると、小さく見積もってF、もしかしたらGやHに到達している可能性もあるとのこと。

 

 お隣さんは全体的にちんちくりんだが、この少女は肉付きがよく、男が集りそうな体つきをしている。

 

「田中加奈子といいます。小、中と水泳部に所属していたので、高校でも水泳を続けようと思っています!」

『うおおおおおおおっっっ!』

「痛っ!」

 

 おかしい、俺のした行動は間違っていないはずだ。

 巨乳で、明るく活発な美少女がピチピチの競泳用水着を着て泳いでるところを妄想しただけだ! 俺は悪くない、えっちいのが悪い! 

 

 後で連絡先を交換してもらおう。これは天命なり。

 

 全員の自己紹介が終わると、入学式まで残りわずかとという時間になっていた。

 それを見て、俺たちも移動を始める。

 

「大丈夫か?」

「はい、慣れていますので」

 

 それでも、どこか危なっかしいのだ。

 男なら、空いている方の手を握ってあげるんだけど、それが女子、しかも美少女となるとどうしても躊躇われてしまう。

 

 他の生徒が先に行ってしまう中、俺と坂柳はゆっくり階段を降りていく。

 既にAクラスの生徒は遥か向こうに行ってしまった。

 

「中山くんは優しいんですね。私に合わせてくれるなんて」

「そんなに危なっかしく降りられると不安になるだろ」

 

 それに、ぼっちってなんか嫌だし。他の人と話したことないし。だから、これは仕方がないんだ。

 

「きゃっ!?」

「ちょっ!」

 

 残り4段というところで坂柳が躓いてしまった。慌てて体を支えようとするも、狭い足場で耐えきれるはずもなく、転がり落ちていく。

 

「痛ぇ……」

「すみません……」

 

 上手いこと俺が下になったお陰で、坂柳は無傷で済んだ。代わりに、俺は全身を痛めることになったが。

 って、近い! 顔近い! 

 

「中山くん、顔が近いです!」

「そう思うなら退こうな?」

 

 あたふたする坂柳かわいい。とりあえずごちそうさまです。

 

「ごめんなさい、中山くん」

「いいって、これくらい」

 

 だから危なっかしいと言ったのだ。もし俺がいなかったら、大怪我をしていたかもしれない。

 それに、坂柳は疾患を患っていると言っていた。それも相まって、危険な状態に陥っていた可能性もあるのだ。

 

「そんなことより、早く行かないと遅れるぞ」

「そうですね」

 

 そうは言ったものの、坂柳に合わせてゆっくり進む。時計を見ると、開始まであと5分を切ったくらい。

 

「間に合うか?」

「ちょっと微妙かもしれませんね」

「おぶって行こうか?」

「そ、それは……」

 

 坂柳は、そのまま口を閉ざしてしまった。

 俺から目を逸らし、そっぽを向いてしまった。口を開いたのは、それからしばらくしてからだった。その間、俺たちはその場に留まったまま。少し時間を無駄にしてしまった。

 

「中山くん、おんぶしてもらってもいいですか?」

「あ、ああ」

 

 美少女が頰を朱に染めて、恥じらいながら瞳を潤ませて上目遣いでお願いしてくるのは卑怯すぎるわ! 

 一瞬思考が停止してしまった。もうロリコンでいいかもしれない……っ! 

 

「だから小指を狙うな!」

「ふふっ」

「笑い事じゃないんですけど!? これからお前をおぶって行かなきゃいけないの分かってる!?」

「分かってますよ。だから早くしゃがんでください」

「その上から目線やめい」

 

 色々言いたいことを飲み込み、大人しくしゃがむ。その上に坂柳が乗りかかってくる。柔らかな感触は微塵も感じられませんね! ていうか軽っ。本当にちゃんと飯食ってるのか? 坂柳は小柄な方だけど、ここまで軽いとは思わなかった。

 中身気体なんじゃねえの? 

 

「ふふっ、頑張って下さい」

「お前なぁ……」

 

 本当は走りたいが、坂柳を気遣い、振動を少なくするために大股で早歩きしているのだ。それが意外と疲れる。目指せリニア! 

 

「中山くんは面白い人ですね」

「何を言うか。俺の小中のあだ名は『黒子』だったんだぞ。もちろん、特になんの面白みのないことで有名だったんだからな」

「ああ、あの影の薄い……」

「そうそう。バスケのやつ」

 

 俺の存在はあってもなくても変わらない。誰よりも影が薄かったのだ。クラスメイトとは分け隔てなく会話をし、遊びに誘われれば出向いていた。

 当然ながら、特技と言えるものは何一つない。強いて言うなら、ここへの入学が決まってから始めた料理くらい。小中の頃は本当に何もなかったのだ。

 中山祐介といえば、と言われてもぱっと浮かぶものが何一つない。それが俺なのだ。

 

 鰹節並みに薄い小中学生活を振り返りながら体育館の方へ進んでいくと、徐々に喧騒が大きくなってくる。

 

「そろそろ降りた方がいいんじゃないか?」

「……そうですね。ありがとうございます」

 

 なぜか一瞬嫌がってた気がするのは勘違いってことでいいかな? 

 

 体育館を奥へ進み、自分の席に座ると、隣の奴が食い入るように聞いてきた。確か、中岡とかいう名前だった気がする。

 

「坂柳と何してたんだ」

「いや、何もしてないぞ」

 

 おんぶしてきたなんて口が裂けても言えるかっての。

 

「嘘つけ。あんな美少女と二人きりで何もないはずがないだろっ!」

「だから何もねえって」

「分かった、本当はあったけど恥ずかしくて言えないんだな!」

「違うって」

 

 当たってんじゃん。もしかして、こいつ意外と賢い? 俺の黒歴史誕生を覚悟したが、中岡はそこで詮索を止めて壇上へ向き直った。ニヤニヤしたままだったが。

 俺もそれに倣って顔を前に向けると、ちょうど入学式が始まるところだった。いつも通りありがたく興味のない話を聞いただけだったが、理事長の名字が坂柳だったのは気になった。何かしらの血縁関係があるのだろうか。

 

 それが終わると、再び教室に戻る。とは言っても、荷物を取りに行くだけだが。今度も、二人でゆっくり慎重に登る。

 

 国立の最新設備が整ってるなら、バリアフリーをもっと考えてくれてもいいと思うんだけどね。

 

 教室へ荷物を取りに戻り、真嶋先生から簡単な話を聞く。

 それで今日は解散となり、既に何人かのグループが作られ始めた。当然、隣人にも人がわらわら集まってくる。

 

 ほう、心なしか男が多い気がするな。やましい感情をお持ちなら、これからそいつをロリコン呼ばわりしてあげよう。

 悪口? いやいや、ロリコンとは称号なのだ。むしろ喜ぶべきだ。

 

「えいっ」

「だから止めろよ!」

「中山くんの表情が面白いので、それは出来ません」

「酷いこと言うなお前!」

「イチャイチャするんじゃねえ中山!」

「イチャイチャしてねえって!」

 

 杖なんてなきゃいいのに。そうすれば、ちょっとは俺にも平穏が訪れるんじゃないか。

 

「それで、これからどこに行くんだ?」

「商業施設を回りましょうか。どこに何があるか把握しておくべきだと思うので」

「それでいいんじゃないか」

 

 集団の一番前を坂柳と二人で進む。他の人とも会話するのだが、坂柳と話している時が一番楽しい。理由は分からないが、自然と会話が弾む。

 

 坂柳有栖は杖で俺の小指を痛めつける奴だ。正直言って気に食わない。

 だけど、憎めない奴なのだ。




私はロリコンではない。年下が好きなだけだ(確信犯)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。