杖なんて必要ない   作:青虹

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1話が予想外の大反響で驚いています。

何ですか、1話にしてUA数1800、お気に入り70件越えって。初めて見ましたよ。評価バーにも色ついちゃったし。本当にありがとうございます!
いつのまにかバーの色が赤から黄色に変わってたから、みんな赤に戻してくれないかなぁ(チラッ

感想もお待ちしています!


二人きりでデート的な何か

 校門を出て寮のある方へ進む。先頭を歩く坂柳の横に俺もつき、早くもセットとして見られそうである。

 特別な感情があるわけでもなく、自然な流れでそのポジションについてしまうのだ。

 

「なあ、やっぱ二人付き合ってるんじゃねえのか?」

「ねぇよ」

 

 後藤がそう茶化すように話しかけてくる。当然、俺は即座に否定する。

 俺はそこまで軽い男じゃない。それに、坂柳とは彼氏彼女という関係よりも兄妹の関係の方がしっくりくる。

 だって俺ロリコンじゃないし──っ!? 

 

「中山くんはMなんですか?」

「俺何も言ってないんだけど」

 

 杖での攻撃に早くも慣れ始めている自分がいて、その事実に俺は戦慄する。

 Mの扉をノックするなどあってはならない。あくまでも俺はノーマルであり、特殊な性癖は持っていない。影が薄いから当然である。

 

「顔が気持ち悪かったのでつい」

「あーそうですね、俺はキモいんですよっと」

 

 キモいとか言われたの何気に初めてなんだけど。かっこいい方だけど、いつも『いまいちパッとしない』とか『平凡なイケメン』とか『よくいるイケメン』とか『滑り止め』って言われ続けてたからな。

 なんだよ滑り止めって。俺を勝手に保険にするんじゃねえよ。で、俺は第何希望なんですかね? 

 

「これでも、何回か我慢しているんですよ」

「そりゃどうも」

 

 坂柳から鉄槌が下るのは、おそらく気分次第だろう。

 でも、俺は何も悪くないはずなのだ。事実だから。

 

 それに、何とかして表情を崩さないようにしなければならない。邪な考えがよぎっても、表に出なければ坂柳の攻撃を受けることはない。

 

 現実逃避を兼ねて、なんとなく後ろの会話に耳を傾けてみると、今日唐突に渡された10万ポイントについて盛り上がっているようだった。

 

「ねえねえ、ショッピングセンターに着いたらいっぱい服買わない?」

「いいね、行こ行こ!」

「里中くんも行くよね?」

「うん、もちろんだよ」

 

 自己紹介の時から圧倒的イケメンの力で女子の注目を一番に集めていた里中は、ここでも女子に囲まれてキャッキャしている。

 

 当然、里中は俺から見てもイケメンだ。俺みたいな中途半端なイケメンではない。ジャ◯ーズにいてもおかしくないような、そういう人間だ。

 

 時々すれ違う女子生徒からも視線を集めているのがよく分かる。そして、すれ違ってしばらくすると『あの子かっこよくない?』などとヒソヒソ話し出すのだ。

 俺にそんな経験はない。言われるとしたら『かっこいいけど、大事な何かが足りない』である。

 

 仕方がない。俺は全てにおいて平均の少し上なのだから。よく言えばオールラウンダー、悪く言えば秀でた部分がない。

 

 自分を批評していると、坂柳に肩をつつかれた。なんだと思い坂柳の方を見ると、坂柳はある場所を指差していた。

 その行方を追うようにその方へ首を動かすと、よく見る店が。

 

「コンビニエンスストアもありますね」

「ほんとだ、セ◯ンだな。俺は◯ーソン派だから納得いかないけど」

 

 ローソ◯はいいぞ。艦◯れやバン◯リを始めとして、色々なコンテンツとコラボしてくれるし。

 それに、たまに弁当が安くなってるとテンションが上がる。

 改善点があるとしたら、ジュースのレパートリーがもう少し増えるといいねってことくらいか。

 

「はぁ? 絶対ファ◯マだろ。ファ◯チキは最高、異論は認めない」

 

 俺の意見に、森重が反旗を翻した。

 おう、やるか? 

 

「お前アホなの? か◯あげクン舐めんなよ」

「フ◯ミマはな、スイーツが上手いんだよ」

「はっ、お前女かよ。笑わせんなよ三下」

 

 ファ◯マなんて◯Kを吸収して大きくなっただけの他力本願社じゃねえか。合併前はロー◯ンの方が店舗数多かったんだぞ。

 だから痛いって坂柳。

 

「下らない争いは他でやってくださいね?」

「す、すまん」

「だから俺だけ杖で踏みつけるのやめてくれない?」

 

 今の一連の戦争において、やましい考えなど一つもなかったじゃないか。俺にするなら森重にもすべき。この世は平等にあるべきだって言われてるじゃないか。

 まあ無理だろうけど。

 

 森重、最後にこれだけは言わせてもらおう。

 

「ファ◯マは明らかにロー◯ンに劣ってるからな!」

「それはねえ!」

 

 ファ◯マを鼻で笑い飛ばした俺に、森重は顔を真っ赤にして言い返してきた。

 

「まあいい、続きは後にしよう」

「いつでも受けて立つぞ」

 

 また小指を傷つけるわけにはいかない。

 いつの間にか爪が黒く変色していたなんてことにはなりたくないからな。

 

「お、スーパーもあるな」

「こういう店は寮の近くに密集してるのか」

 

 視線を戻してすぐ、それは目に飛び込んできた。大体コンビニから100m強。お互いがはっきり見える位置にある。

 

「今日の飯どうすっかな……」

「……料理とか女子力高っ」

「スイーツ男子が出しゃばるな。ブーメランであることを自覚しろ」

 

 森重、根に持ちすぎや。料理とか男でもするから。料亭や高級ホテルのシェフとかパティシエもそうだけど、そういう人は寧ろ男の方が多いんだぞ。

 

 スーパーを過ぎると、少しずつ建物が増えてきた。

 雑貨屋や洋服店、ファミレス、カフェなどが目立つ。

 後ろの女子は今度ここのカフェ行こ、などと盛り上がっている。店内を見ても女子生徒がほとんどで、男はごく少数。それも、女子と一緒に来るのが当たり前なのか、男だけで来ている生徒は見受けられない。

 

 そんな通りを道なりに奥へ進んでいくと、巨大施設が目に飛び込んできた。

 

「ここがショッピングセンターですか。なかなか大きいですね」

「学生しか来ないのに、やけに充実してるな」

 

 全校生徒480人。全員が来ても、他の大型商業施設よりも空いているだろう。

 それなのに、規模が他のそれに負けず劣らず色々ある。宝の持ち腐れになってないといいけどな。

 

 中身としては洋服屋や雑貨屋、食品店をはじめ、カラオケやボウリング場、ゲーセンのような娯楽施設なんかもあり、非常に充実している。

 

「折角ですし、何か買って帰りませんか?」

「いいね、行こ!」

 

 坂柳の提案に、女子が即座に反応した。

 

「では、15時を目処にここに集まりましょうか」

「おっけー」

「どこ行く?」

「まずはやっぱ服っしょ!」

「だよね〜」

 

 女子たちはみんなはしゃぎながら雑踏の中に消えていった。里中はそこに巻き込まれ、ズルズル引きずられていった。

 それ以外の男たちはというと、昼ごはんを食べようという話になったらしく、エレベーターを使って上の階にあるフードコートへ向かっていった。

 

 ポツンと取り残された俺と坂柳。何か意図的なものを感じるのは気のせいかな? 

 

「さ、さて、どこへ行こうか」

「やっぱり私服は欲しいですね」

「休日の外出も制服なのはちょっと嫌だしな」

 

 目的地が決まったところで、近くにあった洋服店を目指す。

 

 男女二人きりでの外出。実質デートという状況に、俺は狼狽しながらも楽しんでいた。

 

 

 

 ー▼△△▼ー

 

 

 

 一通り服を買うと、いつの間にか1万ポイントが消えてしまっていた。

 10万ポイントあるとはいえ、無駄遣いしてはいけない。浪費し続けて金銭感覚を狂わせたくないのだ。

 

 これでも、比較的安いものを選んだはずだったのだ。それでも、持参してきた下着以外一式を揃えようとすると、どうしてもそのくらい消えてしまうものらしい。

 

「結構使っちゃったなぁ」

 

 椅子に置かれた大量の荷物を見て、そう呟かずにはいられなかった。ポイントを使い過ぎたという現実が、荷物の量となって襲いかかってくる。

 

「あまり使いすぎるのもよくありません。しばらくは大きな買い物を避けた方がいいでしょう」

「だな」

 

 ポイントが尽きて、振り込まれるまで極貧生活とか死んでも御免だ。フードコートにあった丸◯製麺のぶっかけうどんをすすりながらそう思った。こんな上手いうどんを食べられなくなるとか考えられん。

 

「それに、来月に10万ポイントが振り込まれるとは限りませんし」

「ん? どういうことだ?」

 

 うどんを掴む箸が止まった。うどんはするすると滑り落ち、出汁の中へ戻っていった。

 

「真嶋先生は『毎月ポイントが振り込まれる』と言っただけで『毎月1()0()()ポイントが振り込まれる』とは一言も言ってませんでしたが」

「あー、なんかそういうようなこと言ってたな。10万ポイント貰えたって事のインパクトが大きすぎて、はっきり覚えてないけど」

 

 坂柳は箸を置くと、饒舌に話し始めた。

 いつの間にか、俺も自然と箸を下ろしていた。

 

「それが学校側の狙いでしょう。10万ポイントという大金を、リスクなしで私たちにプレゼントする事で舞い上がらせる。そこにややこしい言い回しで毎月ポイントが振り込まれると説明する事で『毎月10万ポイントが振り込まれる』と思い込ませておく」

「うっわぁ、えげつないなぁ」

 

 学校側も学校側だけど、それを一瞬で見抜く坂柳も大概だって。

 ただ、そこで一つの疑問が浮かぶ。

 

「ということは、貰えるポイントが上下するってことだろ? その条件は何だ?」

「さすがにそこまでは分かりません。ですが、真面目に授業を受けるなど模範的な行動を取っておけば、突然大量に引かれることはないでしょう」

 

 授業中に私語をしたりとか、端末を触ったりとか、遅刻したりとか、そういうことをしない。マナーをきちんと守る。

 あまりにも当たり前なことだ。どのクラスもポイントを激減させることはないだろう。ましてや、0ポイントになってしまうなどあり得ない。

 

「この学校のことがよく分かっていない以上、変に事を荒立てない方がいいな」

「そうですね」

 

 それを俺たち二人だけが気をつけたところで、そう簡単に状況が変わるわけがない。

 

「どっかのタイミングでクラスメイトに伝えとかないとダメなんじゃないか?」

「そうですね。ですが、それはまた後日にしましょうか」

「出来るだけ早い方が良いんだろうけど、何か考えがあるならそれで良いんじゃないか?」

 

 俺たちは再び箸を手に取ると、残りを食べ始める。

 

 荒々しく麺をすする俺とは対照的に、目の前の少女は上品に食べ進めていた。

 

 俺がただのロリ美少女だと思っていた少女は、本当はめちゃくちゃ頭のキレる天才なのかもしれない。

 もしかしたら、他のやつよりちょっとだけ出来るだけの俺とは一線を画している可能性だってある。

 

 杖で俺を痛めつけるだけの厄介な少女は、表面のほんの一部分に過ぎない。

 俺は坂柳のことを何も知らない。それは坂柳だって同じはずなのだ。なのに、時々俺の方を見ては微笑む姿を見ると、どうしても全てを見透かされているような錯覚に陥ってしまう。

 

 俺は目の前の少女に今まで感じた事のない恐怖を覚えていた。

 

「どうしましたか? 手が止まっていますが」

「ああ、いや何でもない」

 

 いつの間にか、俺はただの屍になってしまっていたらしい。気がつけば坂柳は完食していた。

 それを見て、俺は完食に向けて急いで食べ進める。坂柳を待たせるわけにはいかないからな。

 

「よし、ごちそうさまでしたっと。あ、食器は持ってくからここで待っててくれ」

「ありがとうございます」

 

 坂柳の食器を右手に、俺の食器を左手に持ち、それぞれが注文した店の返却口へ食器を戻しに向かった。

 

 身軽になった身体で俺を待つ坂柳の元へ戻る。

 

「おまたせ。時間はまだあるし、もう少し回るか?」

「そうしましょう。中山くんは、行きたいところはありますか?」

「んー、雑貨見てみたいな。部屋が無機質ってのも嫌だし」

「分かりました。エスコート、よろしくお願いしますね?」

「お、おう」

 

 坂柳は上目遣いで俺に迫り、挙げ句の果てには杖を持っていない方の手で、俺の左手を握る。

 

 可愛いなぁ。もうロリコンでいいや──あっ!? 

 

「せめて加減しよう?」

「中山くんが邪な考えをしなければいいだけではないですか?」

「まあそうだけどさ」

 

 この少女はどこまで計算しているというのだ。

 

 左手に今までとは違う類の人肌の温もりを感じながら、俺の世界を彩ろうとしている小道具たちを探しに向かう。

 

「これはどうですか?」

「お、本棚の上に置いたらいい感じになりそうだ」

 

 坂柳が手に取ったのは、可愛らしい木製の犬の置物。本棚の上でもいいと言ったが、勉強机の上でもいいかもしれない。

 

「この杖はどうでしょうか。勉強中、眠くなった時にこれで小指を殴りつければ、眠気が覚めると思いますよ」

「たしかに眠気覚ましは欲しい。だけど杖で叩き起こすのだけは御免だ。そのうち小指を切断する羽目になる」

 

 坂柳に何度も痛めつけられた小指を、自ら追い討ちしようとは思わない。

 そもそも健常者の俺が杖を買えるかどうかってところからだ。

 

 その後も何店舗か回り、いくつか買うことが出来た。今日だけで1万5000ポイント弱も使ってしまっているので、これ以上は買う気にならない。

 

 俺の用事も済み2時半を回ったこともあり、そろそろ待ち合わせ場所に戻ろうということになり、1階へ降りる。

 

 その途中で、坂柳の視線がある一点に向いていることに気づいた。

 その方を見ると、そこにはアイスクリーム屋があった。坂柳も女の子。甘いものには目がないのだろう。

 

「食べてくのか? シャーベット」

「……では買っていきましょうか」

 

 若干顔を俯かせている坂柳を連れて、アイスクリーム屋に向かう。

 

「いらっしゃいませ、カップルですか?」

「違います」

 

 当然、即座に否定する。男女二人組で、しかも手を繋いでいればそう思われても仕方がなくない。俺もそういう人を見れば、リア充爆ぜろと思わずにはいられない。

 

「チョコを一つください」

「はい、かしこまりました! 彼氏さんの方は──」

「あ、結構です。それに彼氏じゃないです」

「かしこまりました〜」

 

 お願いだから信じて? 俺たちそんな関係じゃないって。

 店員さんがニヤニヤしながら、ショーケースの中のチョコアイスをカップ一つ分取ってスポーンを一つ刺すと、坂柳に渡す。カップに収まりきってないのは何故でしょうか。

 

「はい、チョコ一つで250ポイントです」

 

 坂柳が学生証カードを提示し、支払いを済ませる。

 

「彼氏さんも食べると思って少し増量しておきましたよ。私からのサービスです」

「余計なお世話ですね」

 

 絶対からかうためにやってるだろこの人。

 

 急ぎ足でその場を離れ、近くのベンチに腰を下ろす。

 時間はあまりないが、アイスを食べる時間は十分ある。それに、坂柳も歩きっぱなしで疲れていたようだし。

 

「あー、疲れた」

「どこかの誰かさんが私の心配もせずにあちこち連れ回したせいで足が限界です」

「そう言いながら結構はしゃいでたのはどこの誰でしょうね?」

「……」

「黙ってりゃ誤魔化せるなんて思わないでね!?」

 

 疲れた、本当に。二人分の荷物を抱えて歩き回るとかいつぶりだよって話。親に荷物持ち係として連れまわされた時と同じくらい疲れたんだけど。

 

 ……それはないかな。楽しかったのは事実だし。いつも、こういうところに来るのは親と一緒のことが多い。

 そのせいで、俺としてはあまり楽しくないし、予定よりも長引かせるせいでいつも以上に足が疲れてしまうのだ。

 

 今日も疲れているのは事実なのだが、それ以上に楽しかったからだろうか。足の疲れは思ったよりない。

 

「その……食べますか?」

「いや、いいよ。坂柳が自分で買ったやつだろ? それに、俺のスプーン無いし」

 

 そう言って断ったのだが、坂柳は諦める様子がない。

 

「私はこんなにも食べられません。なので、少し食べて欲しいんです」

 

 あの店員め。小悪魔のような笑顔が頭をよぎるでは無いか。

 

「ならいいけどさ……スプーン取って来るから待っててくれないか?」

 

 そう言って立ち上がろうとした。流石に間接キスはまずいと思ったのだ。

 しかし、それは叶わなかった。坂柳が服の裾を掴み、俺の行動が制限されたからだ。振り払うこともできたが、そうする気にはならなかった。

 

「私は間接キスでも構いませんよ?」

「割とはっきり口にするのな」

 

 もっと恥じらうものだと思っていた。しかし、坂柳がそう言うのであれば遠慮する必要はない。

 

「んじゃいただこうかな」

 

 俺は坂柳からスプーンを受け取ろうとした。

 しかし、スプーンを掴みとろうとする俺の手をひょいひょいとかわし、掴み取らせてくれない。

 坂柳の謎の行動に疑問を抱いていると、アイスをすくって俺へ差し出した。

 これってもしかして……

 

「あーん」

「……」

 

 それここですんの? 他の生徒がいるんだよ? ましてや、うちのクラスの誰かが見てるかもしれないんだよ? 

 

「あーん」

「……」

 

 本気なんですか、この人。メンタルどうなってんねん。疾患とか嘘なんじゃないのって思わせられるんだけど。

 

「早くしないと溶けてしまいます。口を開けてください」

「はぁ──むぐっ!?」

 

 ため息を漏らすと、坂柳はその僅かに開いた口にスプーンを滑り込ませてきた。

 それと同時にチョコの甘さが口いっぱいに広がる。

 

「美味しいですか?」

「美味いな」

 

 その後も、坂柳は何食わぬ顔でアイスを食べ進める。口の中に広がる甘さはチョコによるものだけではない気がした。

 きっと、俺の顔は羞恥心で真っ赤に染まっていることだろう。アイスを食べたはずなのに、やけに顔が熱い。スプーンを押し付けられるまではなんともなかったのだから、疲れたから、で誤魔化せるはずがなかった。

 

 坂柳がアイスを完食した頃には、待ち合わせ時間まで残り5分と迫っていた。恐らく既にみんな集まっている頃だろう。

 

 そう思ってそこまで行くと、案の定俺たち以外は揃っていた。

 

「お待たせしてすいません。それでは帰りましょうか」

 

 遅れたことを反省する様子もないけど、原因は坂柳自身であることを自覚しているのかな? 

 そう思ったが、誰も気に留めていない模様。時間には間に合ったし、深く気にする必要はないか。

 

 ショッピングセンターを出た辺りで、後藤が俺の耳元で口を開いた。

 

「随分とお楽しみだったみたいだな」

「まあ、それなりには」

「あーんしてもらってたもんなぁ。羨ましい!」

「──!?」

 

 は? ちょっ、どっから見てた!? 

 

「実を言うと、俺たちずっとお前たちを尾行してたんだよね」

「何してくれてやがるストーカー」

「チッチッチ、俺たちはストーカーをしていたのではない。お前たちを見守っていたんだ」

「はぁ?」

 

 尾行している時点でストーカーなのは確定なんだけど? 

 

「初日から随分仲良くしていたからな。気にならないわけがないだろ!」

「子供かお前ら」

「ちなみに、女子たちもみんないたぜ」

「嘘やん」

「マジマジ」

 

 これ完全に詰みですね。周りに坂柳と俺が付き合ってるって誤解される流れですね。しかも、付き合うのが早いから、変な噂が流れてもおかしくない。

 

「これあーんしてもらってた時の写真。お前いい表情してるなぁ」

「今すぐ消せ。そして広めるな」

「すまん、もうみんなに送っちゃった」

 

 そう言って、後藤は頭に軽く拳を打ち付けた。いやそのあざとい仕草をお前がやってもキモいだけだから。かわいい子がやって初めて成立するやつだから。

 

「すまん、軽い気持ちで坂柳を狙おうとしてた俺たちが悪かった。お前には敵わねえわ」

「だから付き合ってねえって」

「でも、もうすぐで付き合っちゃうんじゃないの?」

「それはない……と思うけど」

「なんだ、今の間?」

「……何でもねえよ」

 

 これ以上こいつと話していても埒があかない。

 後藤から離れて、坂柳の隣を行く。

 

 坂柳と付き合う、ねぇ。坂柳は誰が見ても美少女なんだけど、体つきがちょっと残念っていうか──っ!? 

 

「やっぱ仲良いなぁ」

「俺暴力振るわれてるんだけど!? 今のに仲良い要素あったか!?」

「逆に仲良い要素しかねえだろ」

 

 ありえん。俺と坂柳が付き合うなど。

 

 何故なら、坂柳は杖で人の小指を容赦なく痛めつける謎の多い少女だからだ。

 

 だから付き合うことはない。絶対に。

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