評価バーも無事真っ赤に染まりまして、軽く発狂してました。
さて皆さん、投稿日9/25は何の日か分かりますよね?
そう、よう実11.5巻発売日です。皆さん、財布の確認はしましたか?私はテストを受けてからなので書店に行けるのは昼過ぎですが、必ず手に入れます。
堂々と制服で突撃します(真顔)
あと、今回は幕問という位置付けですので、文字数が超少ないです。すいません。それと、坂柳がいません。マジですいません、許しーー(血まみれで読めない)
11/17 後半部分を差し替えました。迷惑をおかけして申し訳ありません。
誰に向けたものでもない独白
それは突拍子もなく始まった。
突然校舎裏に呼び出されたかと思えば、頰に強烈な痛みが走った。地面に倒れ臥す俺を、少年が不敵な笑みを浮かべて見下していた。
少年の右手が握りこぶしになっていた。痛くないはずがない。口が切れたのか、口内に錆びた鉄の匂いが充満する。
少年が俺の方へ一歩一歩進めるたびに、俺は這うように後ずさりした。
しかし背後は壁で、とうとう捕まってしまった。
少年は俺の胸ぐらを掴み体を起こさせると、頰を何度も殴打し始めた。
殴る、殴る、殴る、殴る……
生きている心地がしなかった。時間の感覚も失い、俺の中から痛みという概念は消滅していた。
頰は真っ赤に腫れ上がり、手で触れるたびに盛り上がっているのが感じ取れた。しかし、脳に伝わる感覚はなかった。自分に触れているはずなのに、それが自分でないような錯覚に陥っていた。
立て、そう言われた。逆らえばまた同じ目に遭う。だから俺は立ち上がった。痛みは感じなくとも、精神的苦痛は無限に襲いかかってくる。
力の入らない足で立ち上がった。生まれたての子鹿のように足は震え上がり、だっせえなと鼻で笑い飛ばされた。
次の瞬間、肺の空気が一瞬にして全て吐き出された。そして鳩尾に足裏が突き刺さり、背後の壁に激しく激突した。
酸素を求めんと激しく呼吸する。しかし、肺が運動をする度に体に激痛が走る。
そんな哀れな俺を少年は雑魚だと吐き捨て、数回死体蹴りをして去って行った。
薄暗い校舎裏の影地帯は人目につきにくく、声すら出せず助けを呼べぬまま俺は意識を失った。
そしてまた地獄は繰り返されるのだ。
景色が変わった。ごく普通の一軒家のリビングで幼い少年と少女が遊び、その親と見られる人が何やら話し込んでいる。こちらからは聞き取れないが、楽しげであることは確かだ。
ただ、二人の幼い子供たちの遊びには少し、いや、かなり違和感を感じた。幼少期の遊びといえば、鬼ごっこやかくれんぼなど活発に動き回るものが多い。
しかし、彼らはずっと室内でおままごとをしていた。それ自体はなんら不思議ではない。しかし、彼らのおままごとに終わりは見えなかった。
次第に、少年と少女は仲を深めていく。
俗に言う、幼馴染、親友、そんな関係になっているのが見て取れる。
二人の表情は靄がかかって一切見ることはできない。
しかし、楽しげな表情なのは眼に浮かぶ。
手を伸ばしても届かず、掴みとろうとしても虚空を掠めるだけ。その輪に俺の存在はなかった。
ー▼△△▼ー
人の性格を形成する要素はいくつかあると言われている。
遺伝的要因が一つ。そして、環境的要因が一つ。
遺伝的要因とは、文字通り遺伝子が性格の形成に関わるというものだ。
一方で環境的要因とは、人間関係や住む場所、家庭環境などを指す。
遺伝的要因は基本的に先天的で影響を受けにくいが、環境的要因は周囲の環境でその人の性格を大きく変えてしまう。
特に、幼少期は環境的要因が大きく影響してくる。母親が温厚で優しい性格の場合、子もその性格に近くなるし、一方で近所に住む人に悪事を働いてばかりの母親だと、子もそうなってしまう。
幼少期は周りの大人を見て育つため、子は母に似やすいのだろう。
しかし、人格の形成はそれだけではない。
例えば、親からの虐待。例えば、学校でのいじめ。あらゆるマイナス要素が幼い人間の心を深く傷つけ、トラウマとして植え付けられ、本能が保守的行動を起こす。
そしてそれらは何らかの原因で再び想起させ、当事者を永遠に苦しめ続けるのだ。
だが、加害者側に罪があるとは限らない。引っ越し、クラス替えが原因のものは予測不可能であり、仕方のないことだ。
許せないのはもう一方。悪意ある言動、行動によって人間の人格を狂わせて、その後の人生をも捻じ曲げてしまう悪質な人間だ。
絶対に許してはならない。たとえ、それが嘘でも真でも。
その男と対面したのは何年振りだろうか。この男がこの学校に来ているとは夢にも思わなかった。
再会は本当に偶然だった。俺と相対するそいつは、あの時と同じ憎たらしい笑みを浮かべて、喉を鳴らしていた。
俺がその男の名前を忘れるはずがない。あの日、俺の精神を完膚なきまでに叩きのめし、破壊した男。
もう出会うことはないと思っていた男に恐怖を覚える。
あの時とは違う、そう思っても、本能が警鐘を鳴らす。心臓が鳴らす鼓動は時が進むたびに加速する。
足は震え、地に根を張ったように硬直する。喉は乾ききって、呼吸のたびに喉が痛みを訴える。
男は何もせず、ポケットに手を突っ込んだまま俺を見て嘲笑うだけ。それでも、俺にとってそれが嵐の前の静けさにしか見えず、思考がショートしてしまう。
こうして俺とこいつが再会してしまったのも、全て俺のせいなのだ。当然、誰のせいでもない。再会するなど思いもしなかったのだから。
だが、どんなに悪夢が繰り返されようとも、俺はこの男を許さない。
幸い、この学校は実力主義だ。実力を測る指標ならいくらでもある。
過去を断ち切るために。俺が俺であるために。俺はこの男に復讐しなければならない。
俺は憎しみを込めて、その名を震えてしゃがれた声で叫ぶ。
ー▼△△▼ー
「ふぅ……」
コンビニの中にある休憩スペースで、俺はアイスコーヒーを一口だけ飲む。
ここには俺以外いない。とても静かで、コーヒーを飲む音やコップを置く音がいつもよりもはっきりと耳に残る。
「本当ならカフェに行きたかったんだけどな……」
珍しく、坂柳は他のクラスメイトと遊びに行くらしい。何をするのかと疑問に思ったが、追求することはしなかった。遊びに行くと言っているのに、他クラスの調査なんじゃないかと聞いたらそれこそ失礼だと思ったからだ。
「やっぱり一人は落ち着く」
朝から変な夢を見てしまったせいで、思い出したくないことまで思い出してしまった。
あの時の痣はもう消えている。小学生の時だから当然だが。
一体、今あの男は何をしているのやら。中学校卒業以来顔を見ていない。
とはいえ、この学校に進学していないとも限らない。学校の敷地は広いのだ。教室は近いとはいえ、今まで偶然会っていなかっただけなのかもしれない。
「……んなわけないか」
流石にそれは思い込みが過ぎたか。入学して1ヶ月半、あれだけ目立つ男を今まで一度も見ていないなどあり得ない。どうせ別の学校に進んでいるのだろう。
「やめだやめだ」
そこまで考えて首を横に振る。
思い出したくもないことをここで自ら思い出すという愚行をするわけにはいかないからだ。
あれは過ぎ去ったこと。完全に過去の話だ。あれから色々なことがあったが、今俺はここにいる。それでいいじゃないか。
坂柳という美少女に出会ってそれなりに充実した学校生活を送っている。まとわりつく足枷はないし、毎月大量に支給されるポイントのおかげで生活にも困らない。これ以上を求める必要はない。
ちびちびと飲み進めていたコーヒーの残りを飲み干す。
いつまでもここに居続けるわけにはいかない。そう思って出口に向かった所で、見知った顔に出会う。
「あっ、中山くん」
「一之瀬か」
6月が迫り、気温が上がってくる頃だ。一之瀬は清涼感溢れる白のワンピースに身を包んでいた。
本人がどれくらい意識しているのか知らないが、男にとっては相当危険である。少しでも下に視線を向ければ、凶器を目に映すことになる。
「中山くんは何してたの?」
「たまには一人でいたいと思って、そこでコーヒー飲みながらぼーっとしてた」
「あー、坂柳さん?」
「当たり」
一緒にいる時間が至福であるのは紛れもない事実なのだが、たまには一人でいたいと思うこともある。
「一之瀬は何しに来たんだ?」
「今日暑いでしょ? だからアイス食べたいな、って思って」
「なるほどな」
一之瀬がアイス売り場の方へ向かったので、俺もそれについて行く。
チョコアイスからあずき、ソーダのものまで様々だ。
一之瀬がどれがいいかな、と独り言を漏らしながら決めるのを待っているのだが、それを見ていると俺まで食べたい気分になってくる。
カリカリ君でいいか。安いし。
「「あっ……」」
そう思って伸ばした手が重なった。俺が触れたのは冷たいアイスではなく、暖かく柔らかな肌だった。
俺は慌てて手をどかす。その時に手をぶつけてしまったようで、手のひらがヒリヒリと痛む。
「ご、ごめん」
「いいよいいよ」
頭が混乱した俺は、とりあえず謝罪の言葉を並べた。
胸の前で手を振って、一之瀬は許してくれたが──俺たちは一体何をしているんだ。
これじゃまるで両思いだけど告白に踏み出せていない初心なカップルじゃないか。一之瀬の顔が赤いが、それは俺も同じだろう。今、とても顔が熱い。
「とりあえず買おっか」
「お、おう」
一之瀬からカリカリ君を受け取り、レジへ向かう。
平静を保とうとしても、定期的にあの光景が一之瀬の柔らかな手の感覚と共に襲ってくる。
そのたびに、顔がゆでだこと化すのを感じるのだ。
会計を済ませ、休憩スペースに逆戻りする。
さっき俺が一人で居た時と同じようにすごく静かで、カリカリ君をかじる音しか聞こえてこない。
男とならば会話が弾むのだろうが、今隣にいるのは坂柳と違うベクトルの美少女。
さっきの一件も相まって、気まずい雰囲気が流れている。そのせいで、なかなか話し出しにくい状況が生まれている。
俺はさっさと食べ終わってしまったが、一之瀬はゆっくり食べる派のようで、カリカリ君を少しだけかじったり舐めたりしている。
そんなことをしていると、アイスはあっという間に溶け出してしまう。
「一之瀬、垂れてるぞ」
「あっ」
俺が教えてやると、一之瀬は側にあったティッシュを取ってアイスを拭き取る。
そのあとは流石にかじって食べていた。これ以上被害を広げない方がいいと思ったのだろう。
……それにしても、なぜ一之瀬はこんなにも無防備なのだろうか。
誤って路地裏にでも入ってしまえば120%連れ去られるし、海に行けば何回もナンパされることだろう。
今も二つの凶器が暴れまわっている。
そういうことに気を使わないと、いつか痛い目に遭うぞ。
視線を外に向けると、籠の世界が広がっている。
俺が見知ったコンビニは、外にポストがあった。しかし、あまり必要性がないからか設置されていない。
小学校時代、遠くにいる誰かに向けてよく手紙を送ったものだ。
その人とは関わりが深かったのだろうが、今では記憶が薄れていて思い出すことができない。
今思えば、なんで俺はあんなに躍起になって何度も何度も手紙を送りつけていたのだろうか。その人と俺はそんなに親密な関係にあったのか?
「中山くん」
あの人は今どこで何をしているのだろうか。今朝の夢が関係していそうだが、思い出すことはできなさそうだ。
「中山くん」
「ん?」
どうやら、一之瀬が声をかけ続けていたらしい。肩を叩かれてようやく我に返った。
「全然反応してくれないから心配になっちゃうよ」
「ごめんごめん。気づかなかった」
一之瀬は一瞬頰を膨らませて不機嫌そうな顔をしたが、席を立つ。
「私は友達と遊ぶ用事があるから行くね」
「おう」
「中山くんも来る?」
「……いや、やめておくよ。Bクラスばかりだろ? その中に俺がいたら周りになんと思われるか分かったもんじゃないからな。気持ちだけ受け取っておくよ」
本当なら一緒に行っても良かったんだが、この学校の特殊な環境がそうはさせてくれない。断腸の思いで誘いを断った。
「こっちこそごめんね」
「いいっていいって」
じゃあね、と手を振る一之瀬に俺も振り返し、再び一人になる。
もともと帰るつもりだった。だから、一之瀬の姿が見えなくなったのを確認して俺も席を立つ。
アイスのゴミを捨て、自動ドアを潜る。
少しばかり進んで振り替えると、そこには見慣れたコンビニが佇んでいるだけだった。しかし、どこにもポストはない。俺の思い出はもうどこにもなかった。