刀、血に濡れ錆に塗れようと   作:変態刀

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「ただしその頃には、あんたは八つ裂きになっているだろうけどな」
―――――虚刀流七代目当主・鑢七花



序章 全刀・錆
零之話 『始ノ錆』


――――いきなりで悪いが、昔々の話をしよう。

 

 

オラリオから離れた辺境の土地、東の国に神々が降りてくるよりも昔々々々々くらい昔の話だ。

 

昔の東の国というものは戦いと争いに満ち溢れていて。

―――――――血に濡れた土地がないくらいで。

誰もが戦争が好きで、誰もが戦争が嫌いで、

誰もが戦争に退屈しないで、誰もが戦争に飽きていた。

近隣には大小の国々が出来上がり、それぞれが最強を決めるため、

民を犠牲に、自分を犠牲に血で血を洗う戦いの日々を過ごしていた。

 

策を極め、戦術を極め、卑怯卑劣を極め、

罠を極め、兵を極め、力を極め、知を極めて。

全ての国がほぼ全ての事を極め切って。

でも、たった一つだけどこの国でも極めることが出来なかったものがあった。

 

それは、「武器」であった。

 

神々が降りてくる前の世界では、武器の強さに限りがあった。

ましてや鉱山資源に乏しい東の国、争いで使い切っていては武器の発展も遅れるもの。

かの有名な魔剣はこの時代にもあっただろうが、魔剣というものには使用回数に限りがある。もし仮に所持していたとしても出し渋るに違いなく、おかげで戦況は停滞したまま。

誰もかもが何もかもを極め―――――残るは「武器」だけ。

決定打になりうる武器がないまま、何年も戦争が続いた。だらだらと、続いた。

そんな時代である。

 

しかし。ある国がとある武器を手に入れたことにより、世の中の戦況は大きく変わることになった。なって、しまった。

その武器を得た国は隣国を驚くべきことにわずか半刻の間に攻め落とし、更にはその周りを囲む国々を次々と攻め滅ぼした。

その国が手にした恐るべき武器とは、―――――「刀」であった。

だが、それは「刀」と言えるかどうかすら難しいほど、()()()()()()()()()()()()()。しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、刀であった。筆舌に尽くせぬほどの強大な力を持っていたそれは、戦局を大きく変える武器として、大いに活躍した。

しかし―――――その強大な武器を得た国は約七日の間、その刀により無双を誇っていたが。いたにも関わらず―――――消滅した。

なんてことはない。単純に、戦に負けて消滅したのである。

変わっていたのはそこではない。その国に勝利した国もまた―――――――()()()()()()()

この国は滅ぼした国からも刀を蒐集し、計二振りの刀を手にした。

しばらくしてまた、「刀」を持った国が現れた。今度は別の国だ。

またしばらくすると、刀を得た国が出てきた。これもまた別の国だった。

そんなことが数回続き―――――合計七振りの刀が戦場へと現れた。

奪い奪われ殺し殺されの戦の果てに残されたのは合計六国。その全てが、「刀」を所有していた。

やはりどれこれも「刀」としては異常な形をしており―――――どれもこれもが規格外な強さを誇っていた。その刀たちは、いつの間にか『外道変体七本刀』と名付けられていた。

 

ある者は語った。

『あれを作り出した男は異世界から来たと言っていた』

また、別の者は語った。

『男は占い師でもあり、鍛冶師だと語っていた』

そして、最後に国の王たちが語った。

『その男は―――――――四季崎記紀と名乗っていた』

 

四季崎記紀。

異世界から来たと語っていたという鍛冶師兼占い師――――。

その男は刀を七振り作り終えた後に、何処かへと去って行ってしまった。

刀を作る目的も、刀を与えている理由も誰にも語ることなく。

それこそ、置き土産のように――――。いや、置き土産なのだろう。

彼はその後、その世に姿を一切表さなかった。

けれど代わりに―――――――――「一振りの刀」(ニンゲン)を残して。

 

四季崎記紀がいなくなった後に、唐突に現れた「一振りの刀」(ニンゲン)。その者はたった一人で刀を蒐集し始めた。

近場の国を攻め、圧倒的な練度と数を誇る兵士達を殺し、邪魔になる無抵抗の民を虐殺し、泣き叫び許しを請う王を処刑し。

それまで無双を誇っていたはずの刀使いを危なげもなく撃破して―――――まず一振り。

たった一人で、その国の人間達を、()()()()()

王、兵士、老人、若人、子供、男、女―――――身分も性別も年齢も全て関係なく、皆殺しだ。

皆殺しなのでその時の姿を見たものは存在しないが―――――

彼の姿はまるで、赤い「錆」に塗れた刀の様であったとされている。

次に二振り目―――――行動を移そうとした矢先に、彼にとって予想外のことが起きた。

 

他の国が次々と、刀を手放し始めたのである。

大虐殺を起こした「一振りの刀」(ニンゲン)に対して恐怖を覚えた王たちは、大体が刀を売ってしまった。

この時代において武器というものはは高値で取引された。刀も例外なく、それもどれもが強い力を有している物ともなれば猶更であった。

どこからか噂を聞きつけたのか、東国以外にも欲しがった国や里は多く存在していたため、そんな国々に王たちは刀を売り払ったのである。

これは頭が狂った末の考えでも、やけくそになった故でも無い。誰だって命まで狙われているとなると、自分の身の安全を優先する。王たちは、自らの身を守るために、矛先を別の方向へと向けようとしたのだ。

 

王たちの一つの狙いでもあった通りに、刀は何処かへと散らばっていき、

東の国からは「一振りの刀」(ニンゲン)が持っている刀以外が無くなってしまった。

これで彼が国を狙う理由は無くなった―――――そう、思っていた。

彼は虐殺をやめなかった。それどころか―――――より、酷くなった。別方向へと向かうはずだった矛先は依然として王に向けられていた。更には、虐殺は人間だけではなくなり、獣や草木、土地に至るまで破戒の限りを尽くし。そうして、刀を所有していた国全てを消滅させてようやく―――――行方不明となった。

ぱったり、綺麗さっぱり、何もそこにはもとより無かったように。

何も無くなったのである。彼は何だったのか、彼の目的は何だったのかは、今となっては誰一人として知らない。あるのは、残されたのは少しの文献と命からがら逃げだせたわずかな人間の言葉だけ。その出来事は、その資料を基にして後に、『東国粛清の大虐殺』として世に語り継がれるのであった。

 

その後、荒れた地を元に戻すために、その土地へと人間が移り住んだ。

その移り住んだ人間の子孫が、今現在東国に住んでいる者だという。

そしてその地に神々が降臨し、現在へと至る。

 

さて、昔話もここで一旦終わりとさせて頂く。

この時点でわかることは、四季崎記紀により、

天下と歴史を変えかねない「八振りの刀」が作られたということである。

 

 

さて、時は巻き戻り。

ある盗賊の砦にて、若い男が一人佇んでいた。

男はかなり若いように見えたが―――いや、実際若いのだろう。

彼の顔つきにはまだ幼さが見え隠れし、整った顔立ちをより一層引き立てていた。

淡い水色と白色が混ざり合った髪色は空を注いだようで、眼の色もまたその色であった。肌色も白に近いながら、意外と体の肉付きはしっかりとしている。

そんな見目麗しい彼を取り囲むのは、見目汚らしい蛮族達。

目を血走らせ、憤怒の形相で各々が武器を構え、ジリジリと間合いを詰めつつ、視線の先に居る男に向かって、今にも武器を振りかぶって襲いかからんとしている。

しかし、そんな状況であっても彼は落ち着いており、逆に蛮族達に落ち着きが無いようだった。

腰に携えた「刀」すら構えず、ただ自然体でそこに突っ立っているだけの彼に対し、蛮族達は必要以上に、かなりの警戒心を抱いていた。

ふぅ、と彼が不意にため息をつく。ただ、それだけで蛮族達の肩が跳ねあがる。

そんな蛮族達の様子に、飽きれた顔で彼は、落ち着きのある口調で喋りだした。

 

「―――どうした?先に挑んできたのは其方達の筈だ。早くかかってくるがいい。

そうでなければこの「刀」、奪うことすら叶わぬぞ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・っ」

 

しかし、蛮族達は動かない。

彼の催促にすら警戒心を強め、武器を持つ手の力をより一層強めただけ。

表情と筋肉は強張り、武器からはミシリ・・・という鈍い音が小さく鳴る。

極度の緊張にで、武器を握る力が籠りすぎている。タラリ、と汗が自然と流れて、武器の先が震えだす。何を怯えている、自分たちに恐れるものはない。そう小さな声でブツブツと、自分を鼓舞しているの者もいるのにも関わらず、彼らはこの有様であった。

そんな蛮族達の様子を見て、彼は口元に余裕だと言わんばかりに―――実際に余裕ではあるのだが―――笑みを浮かべる。

 

「其方達がその気なら、こちらから行かせてもらおう。どの道此処で散る命だ。

ならば―――――せめて私に酔いしれて死ぬがいい。」

「~~~~~~~~っ!」

 

彼が動き出そうとする素振りを見せたその瞬間に蛮族達が一斉に咆哮をあげ、武器を振り上げて。

―――――――――そのまま絶命した。

彼の手元にはいつの間にやら抜身の刀が握られていた。

見るもの全ての目を釘付けにして魅了させるような、赤と黒の刀。

随所随所に施された黒い水玉模様。

それは、「刀」にしては異なる様な刀身ではあった。

しかしそんな刀で彼は、眼にもとまらぬ速さでもって―――全員を一瞬で斬り捨てた。

 

「私に――――酔いしれてもらえたか?」

「よ、酔いしれた・・・」

 

恍惚の表情を浮かべながら絶命した蛮族達に目も向けず、彼は刀を鞘へと収める。

碌な台詞すらなかった蛮族達を斬り捨てた彼の名は、『錆白刃』。

かの有名な『東国粛清の大虐殺』を引き起こした張本人―――の子孫であり。

四季崎記紀の残していった刀、『外道変体七本刀』の内の一本。

 

―――天刀『欽』の持ち主であった。

 




どうも、始めまして『変態刀』です。
こんな駄文読んでくださってありがとうございます。
小説を書き起こすのはこれが初めてです。
ただ、『ダンまち』と『刀語』への愛だけで書いてみた―――
なんて言ったら嘘になります。はい。
色々な人の書いてる小説読み漁ってどんな書き方してるんだろうとか、
どんな主人公が好まれるんだろうとかって考えるんです。
で、書いてみると何となくその小説の主人公みたいになっちゃうんですよ。
コレジャナイ感がやっぱりあって。でも主人公書きにくくて。
だから、『刀語』で情報が少ない錆白兵を元に書いてみました。
そしたら何となく自分の中でしっくり来て書けました。

まあ、挨拶が長くなりました。
不定期更新の身ですが、何とか長くても1か月に1回は更新してみたいです。
応援よろしくおねがいします。
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