閃の軌跡 〜八葉を継ぐ者〜   作:クラウンドッグ

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夢中

 

並行。分岐。類似。近似。

 

どれも近くて、どれも違う気がする。

 

どういった文字列が、自らに芽生えた違和感を解消/納得させるに足るものであるかがわからない。

 

これは“確信”レベルの違和感だ。

未知=可能性ではある。しかし既知=確定であるなら、起こった事実に説明がつかない。

 

──“何が”とは言えないが、エリゼを助けてからナギトに生じたのはそういった感覚だった。

 

 

 

☆★

 

 

「じゃ、まずはリィンとナギトのチームVSラウラとフィーのチームね」

 

 

今月の実技テストは2対2の形式をとっていた。その一戦目としてリィンとナギトの二人組とラウラとフィーの二人組で戦う事となった。

 

リィンとナギトについては言うまでもなく、Ⅶ組最高の連携力を誇る。対するラウラとフィーはお互い高い戦闘力を持ちながら連携はイマイチだ。

 

「これは……露骨な」

 

「しかし、戦闘力としては五分か」

 

「でも、連携になると…」

 

だから、こういう声が漏れるのだ。

しかしこの組み合わせで始めたサラの狙いもわかる。戦闘において連携がいかに重要かⅦ組に再認識させるつもりなのだろう。

 

かくいうナギトも先月の実技テストではラウラとフィーと組んだ結果フォローが大変だった記憶がある。

 

 

「頼むぞ」

 

「…ああ」

 

リィンにいつものように声をかけるが、返事は少しだけ重たい。先日、エリゼを助けた際に力を解放した事が尾を引いているらしい。

 

ナギトはリィンの背中を思いっきり平手打ちした。

 

「いっ…!?」

 

「気ぃ張れよ。お前に何があろうが、この場には関係ない」

 

 

制服越しでも気合いの入る一撃のあと、ナギトはいつになく真面目に言い放つ。

リィンはそれに気遣いならぬ気遣いを感じて、微笑すると太刀を抜いて構えた。

 

 

「ああ、わかってる。ありがとう」

 

 

その姿をナギトが確認するのと、サラによる「始め」の合図はほぼ同時だった。

 

 

一瞬でフィーが駆け込む。ナギトの眼前で双銃剣による連撃が──止められる。一撃目は太刀で防ぎ、次に向けられた銃口を握る手首を掴んでぶん回した後、ラウラに投げ放った。

 

 

ラウラは避けるか受け止めるか逡巡した後、受け止める事を選択した。

しかしそれは悪手であり、その隙にリィンは孤影斬を放っている。孤影斬が2人まとめて直撃するかと思ったのも束の間、フィーは空中で体勢を立て直すと、ふわりと着地。そのままリィンの孤影斬を弾き消すと、懐から何かがこぼれ落ちた。

 

 

「フラッシュ!」

 

 

それは周囲に閃光を撒き散らすフラッシュグレネード。いつの間にやらピンも抜かれており、炸裂はすぐだった。

ナギトの掛け声に気づいたリィンは慌てて目を塞ぎ、叫んだナギトは目を瞑ったまま踏み込むと孤月一閃を放つ。

 

手応えはなく、続いて聞こえたのはラウラの裂帛。

振り上げられた大剣が地面を砕く地裂斬。リィンは「ナギト」と叫びつつその身にタックル。ラウラの地裂斬を避ける事に成功した。

 

 

「無事か?」

 

「今、肘擦り剥いた」

 

「無事だな」

 

 

立ち上がりつつそんなやり取りを交わし、再び太刀を構えた。直後、フィーの制圧銃撃─クリアランスが繰り出される。

 

「お前は右!」

 

「任せろ!」

 

 

弾かれたように左右に分かれたナギトとリィンはラウラとフィーを挟撃すべく同時に疾風を繰り出した。

 

ナギトの疾風をラウラが、リィンの疾風をフィーが受け止める。鍔迫り合いの距離で、ラウラの瞳に闘志が灯ったのを見抜いたナギトだったが。

 

 

「おあずけだ」

 

 

ニヤリ。不敵に笑うと名を呼ぶまでもなく、再びリィンと示し合わせて疾風を繰り出す。走り抜ける刃はスイッチの合図。

互いの相手が切り替わる。ナギトは矛先をラウラからフィーに変え、リィンはフィーからラウラへ狙いを変える。

 

その動きについていけず、ラウラとフィーは標的を見失う。疾風が炸裂し、致命的な隙が生まれた。

 

 

「合わせるぞぃ!」

 

 

挟み込むようにポジショニングしたナギトとリィンは、これまたいつものように笑みを交わす。

リィンはナギトの言葉を受け取ると、祈るように太刀を構えた。

 

「焔よ…我が剣に集え!」

 

焔の太刀が振るわれる。一閃、ニ閃、三閃。

隙を晒したラウラとフィーに防ぐ手立てはなく、しかしまだ立っている。故にこそナギトが後詰めなのだ。

放たれた焔の剣閃を螺旋の技術で巻き取る。

 

 

「こりゃきっついわ」

 

 

さすがにリィンのSクラフトともなると、螺旋の技術で巻き取って己の力とするのも一苦労だ。

しかし、留めるならばいざ知らず、たった一瞬だけ保って解放するならばやれない事はなく。

 

 

「螺旋─焔の太刀返し」

 

 

一閃。再び焔が炸裂し、今度こそラウラとフィーは倒れたのだった。

 

 

 

 

その後、残るメンバーの実技テストも終了し、4回目となる特別実習の行き先が明かされた。

 

 

行き先は帝都ヘイムダル。A班はリィン、ナギト、エリオット、マキアス、ラウラ、フィーの6名。

ちなみにB班も帝都が実習地で、大都市であるエレボニア帝国首都を手分けして実習を行う手筈となっているらしい。

 

前回のノルド高原やブリオニア島と違い、今回の列車旅は短いものになりそうだった。

 

 

☆★

 

 

「それじゃアンタたち、しっかりやって来るようにね」

 

特別実習の朝にしては珍しく、サラがⅦ組メンバーの見送りに寮の一階まで来ていた。

A、B班のメンバーは思い思いに返事をし、サラはナギトに視線をやった。

 

 

「特にナギト、アンタはいつも大事な所で離脱してるんだから…注意しなさいよね」

 

 

「それ俺のせいです?」

 

 

一度目はブルブランに拉致され、二度目は領邦軍に逮捕、ルーファスに目をつけられ、三度目はヴァルターに強襲され……どれもナギトの選択次第で回避できたかは怪しいものだ。

 

 

「おかげで残るメンバーの実習難易度上がってるんだからね、まったく」

 

 

「いやー、俺がいなくて難易度は元通りだと思うんですけどねえ」

 

 

「どういう意味よ?」

 

 

口をついて出た言葉だったが、言ったナギト自身にも意味はわからない。ナギトがいなくて実習の難易度は元通り。意味不明だが、しっくりくる。

「さあ?」と誤魔化してから会話を終えた。

 

A、B班揃って寮を出て駅に至る。帝都行きの切符を買って列車に乗り込んだ。

流れゆく景色を眺めつつ帝都出身の2人─マキアスとエリオットから帝都ヘイムダルについて簡単な説明がなされた。

 

帝都ヘイムダル──エレボニア帝国の首都であり、人口80万人を誇る巨大都市。現皇帝たるユーゲント・ライゼ・アルノールⅢ世の住まうバルフレイム宮がある。

 

 

…とまあ、ざっくりとこんな程度の説明で、後は肌で感じるのが特別実習の慣いだ。

奇しくも夏至祭に合わせた日程であり、色々と騒がしい特別実習になりそうな予感は、全員の胸中にあった。

 

隙間時間にブレード総当たり戦を行う事になったが、普通にナギトが全勝した。

 

 

その後、列車は帝都ヘイムダル駅に到着し、Ⅶ組は揃って降りる。

案内人、というのが迎えに来るという話だったが、果たして現れたのはTMPのクレア・リーヴェルトだった。

件の案内人とやらが彼女かと思いきや、クレアは場所を提供するだけだと言う。

 

 

「丁度良かった」

 

 

そんな言葉で姿を現したのは、仕立ての良いスーツを着こなす理知的な壮年の男性。

その人物こそは《鉄血宰相》の盟友であり、平民初の帝都知事、カール・レーグニッツ。つまりはマキアスの父親だった。

 

カールとクレアに先導されるまま鉄道憲兵隊の詰所の一室に案内される。

そこで改めてカールはトールズ士官学院の3人いる常任理事の最後の1人だと名乗り、実習課題の受け渡しと宿泊場所の提供を行う旨を告げた。

 

カールは帝都知事という立場もあってか忙しいようで、足早に去っていく。しかしこれまでの実習で邂逅したユーシスの父やアリサの母と比べると、かなりいいイメージを残して行ったのだった。

事実、オズボーン宰相と比較しても貴族派との軋轢も少ないようで、それすらも擬態ではないかという話も持ち上がったが、長居するわけにもいかず、クレアに案内されて駅の出口まで向かった。

 

 

カールの話によると、今回の実習は広い帝都を東西に分けて担当するという事らしい。その東西の分かれ目となるのが、駅を出て真っ直ぐドライケルス広場まで続く目抜き通り…ヴァンクール大通りだ。

 

駅を出てクレアといくつか言葉を交わして、別れるかと思ったが。

クレアはナギトと目が合うと悪戯に微笑んだ。

 

 

「ナギトさん……連絡をいただけず、残念です。私、待っていたんですよ?」

 

 

乙女チックに肩を抱いて視線は斜め下。その様子は完全に“待ちぼうけの幸薄美人”であり、つまるところクレア・リーヴェルトの役者っぷりが際立ち、ナギトは崖っぷちというわけだ。

 

それにナギトは絶句。事情を知らぬ4月のB班メンバーは目を白黒させ、事情を知るA班も視線を逸らすのみ。

 

 

「……すみません。えっとぉ…その件につきましては…目下反省中でして……」

 

 

何も良い文句が思い浮かばず、その場凌ぎの言霊を紡ぐ。

言ってから気づく。そもARCUSでの通信などまだまだ普及してないのだから、連絡しても通じないのが常のはずなのだ。それをクレアはいかにも「よよよ」と言わんばかりに演じて……

 

次の瞬間、クレアはくすりと笑うといつもの将校然とした佇まいに戻り、敬礼した。

 

 

「皆さんにとってこの実習が実りあるものである事を祈ります」

 

 

そんな定型文のような挨拶をして去っていく。

 

クレアの姿が駅に消え、Ⅶ組だけが取り残される。クレアのエリート感というか、スマート感に圧倒されていたⅦ組はようやく自我を取り戻した。

まず一声をあげたのはナギト。

 

 

「せめて誤解を解いて行ってくれればなあ!」

 

 

☆★

 

 

その後、懇切丁寧に誤解を解いてからB班と別れ、宿泊施設のあるアルト通りにトラムで移動する。

アルト通りにはエリオットの実家があるという事で、先にそちらに行く方針となった。

 

クレイグ宅ではエリオットが姉フィオナに暖かく帰宅を迎え入れられたり、音楽一家である事が明かされたり、父親が《紅毛のクレイグ》と渾名される帝国正規軍最強の中将である事が判明したが、特筆すべき事はなく茶をいただいた。

 

フィオナによると、A班の宿泊施設となる住所はどうやら活動停止している遊撃士協会支部のようで、今回の実習ではそこを仮宿に予定されていた。

宿泊施設の前まで行くと、そこが遊撃士協会支部であった事がわかる。しかしすでに支える籠手のエンブレムは外されており、寂れた建物のように見えた。

しかし外見は整っていて、理由としては2年程前に火事だかテロだかで建物が焼失しており、立て直したのだが、結局1年以上前に遊撃士協会は撤退したのだと。

 

 

「ああ、帝国遊撃士協会支部連続襲撃事件か」

 

 

「知ってるのか?」

 

 

ふと口に出た言葉だったそれを、リィンが追求した。

 

 

「あ……いや。なんだろな……俺の失われた記憶が関係してるのかも」

 

 

ナギトはそれを適当に躱した。可能性としてはありえるだろう。しかし……

その事件がリベール王国でクーデターを起こす前準備としてカシウス・ブライトを誘き寄せるための《身喰らう蛇》の罠である事。

この事件を理由として宰相オズボーンが遊撃士であるカシウスを帝国に入国させる事由を封殺するために遊撃士協会を撤退に追い込んだ事など、どうして知っているのだ。

 

 

不思議に思い/思われながらも、A班は宿泊施設に荷物を置くと、本日分の実習課題に取り組む事になった。

 

さまざまな街区をトラムで移動し、課題─依頼を解決していく。地下に降りて手配魔獣を討伐する際にはやはりラウラとフィーの連携が上手くいかず、決して良い雰囲気とは言えないままに夜を迎えた。

 

ちなみに、その途中で有名なオペラ歌手であるヴィータ・クロチルダに遭遇したのだが、エリオットとマキアスが思わぬミーハーを発揮。ナギトは「また会いましたね」というナンパムーブをかましたのだが、ヴィータが覚えておらずリィンに「夢と混同するな」とツッコミを入れられる始末だった。

 

 

 

夕飯はクレイグ宅で世話になり、そのあとはエリオットの部屋で駄弁る流れに。

エリオットの部屋には様々な楽器が飾ってあり、店でも開けそうなラインナップだ。実際、エリオットの姉フィオナはこのクレイグ宅で音楽教室をやっているらしい。亡くなった母も音楽をやっていたという話だ。

まさに音楽一家というやつだ。エリオットも本当は音楽院に通いたかったそうだが、軍人である父親オーラフ・クレイグの猛反対にあい断念。せめて吹奏楽部のあるトールズ士官学院に入学する事にしたのだと。

 

しかし、そんな妥協で選んだトールズ士官学院に入学した事を後悔する事はないとエリオットは語る。

特別実習というカリキュラムもあり、視野が広げられそうな事もあり、漠然と音楽院に進むより、自分自身で自分の進む道を決める事ができるからだと。

 

 

「それに君たち──Ⅶ組のみんなと出会えたからね」

 

 

聞いてるだけでも赤面もののセリフに騒然となるA班一同だったが、

 

 

「でもナギトも先月の実習で、良い事を言ったらしいね?」

 

 

エリオットの大物感を讃える流れだったはずなのに、矛先は突如としてナギトに向いた。

エリオットの言う事に心当たりはある。実習2日目、夜の出来事だ。ノルドの夜空に魅せられてらしくない事を口走った気がする。

 

 

「それを誰に──ユーシスかあのやろうコロス」

 

 

エリオットに情報をリークしたであろうユーシスへの殺意を募らせる事で注意を逸らそうとしたが、興味深々な視線は止む事を知らず。ついにナギトは観念した。

 

 

「ま、思い出って大切だよねって話さ。それにエリオットじゃないけど、俺もⅦ組のみんなに出会えたのは幸福に感じてんだぜ?」

 

 

あまり深掘りされたくはないため、話をエリオットの名言に沿っていく事にした。

 

 

「幸福とはまた…大袈裟だな」

 

 

「ちっとも大袈裟なんかじゃないとも、マキアス。……前にリィンには言ったかな。俺はお前らと出会えて嬉しいんだ、楽しいんだ。だから浮かれてるんだ。俺は本来クールなキャラなんだよ?それが浮かれてるせいで失言が多くなってボケキャラみたいに認知されてるだけで」

 

 

「ナギト…それは無理がある」

 

 

「クール、とは物静かな者に使う言葉だったはずだが…?」

 

 

「君たちそういうとこばっか息ぴったしだなコンチクショウ!」

 

 

フィーとラウラの苦言にナギトがツッコミを入れる。こんな日常が幸福なのだと。こんなやり取りさえ幸福なのだとナギトは語ったのだ。

 

その後、しばらくやり取りをしてからクレイグ宅を出る。エリオットを除いて宿泊施設に戻り、レポートをまとめる時間だ。

 

 

しかし、物憂げに夜空を見つめるラウラとフィーは示し合わせたように「戦おう」と言い出した。

どうやらエリオットの名言に感化され、いつまでもこのままでいいわけがないと悟ったらしい。

 

それで一戦交える事にするというのが、どうしてもこの2人らしかった。

 

 

 

☆★

 

 

 

ラウラとフィーの立ち合いはマーテル公園で行う事になった。夜間ともなれば人気もなく、多少の騒音は許容できるだろうと。

 

フィーと10歩ほど距離を取ったラウラは言う。この勝負で勝ったらフィーの過去を教えてほしいと。自分がフィーを認められなかったのは、猟兵の在り方を邪道だと思っていたからだと。しかしそれは勘違いであり、すでに心ではフィーを信頼できる仲間として認めていたと。だが騎士の在り方を正道とするラウラの頭がそれを認められず、その矛盾がARCUSでの戦術リンクが上手く行かなかった原因だと。

 

言い切ったラウラを正面に見据え、フィーは言う。ラウラの正道の在り方が、自分を受け容れられないと諦めていた事を。

続けてフィーは問う。どうして自分の過去が知りたいのかと。

 

 

ラウラはフィーの事が好きだからだと言った。

ラウラの自己分析によると、見込んだ相手や気に入った相手の事を理解しないと気が済まないらしい。

 

 

「あれ、俺ってあんまり詮索されてねーよーな」

 

「はいはい、黙りなさい」

 

 

小声でボケて小声で流される。ナギト的には少しショックである。そういう意味で、ラウラはあまりナギトを理解しようとしていない。

 

 

やがてリィンを立ち合い人としてラウラとフィーの勝負は始まった。

互いに全力を尽くし、戦技も振り絞った結果──引き分けに終わる。

 

しかしフィーは自分の負けだと認めた。夜間戦闘は猟兵の十八番であり、フラッシュグレネードを使ってさえ引き分けだったからだと理由を語る。

 

そして、約束を果たした。

孤児だったフィーを拾ったのは『西風の旅団』という猟兵団で、そこで仕事をしている内に《西風の妖精》と呼ばれるようになった事。

団長《猟兵王》ルトガー・クラウゼルが、西風の旅団と双璧と言われる『赤い星座』の団長《闘神》と相討ち、団長という大黒柱を失った西風の旅団のメンバーはどこかへと去り、独りとなったフィーを、サラが拾って今に至る、と。

 

「聞かれなかったから黙ってた」なんて言ったフィーだったが、語り終えた後はどこか清々しい表情をしていた。過去でも何でも隠し事があるのはストレスがかかるのだろう。

 

スッキリした表情をしていたのはフィーだけでなくラウラも一緒だ。2人は幾許かの後、立ち上がるとそれぞれ得物を構えた。

 

 

 

 

 

「はっ!いいね、追試といくか!」

 

 

その意図にまず気づいたのはナギト。ラウラとフィーが望むのは実技テストのリベンジだ。

 

 

「まったく、仕方がないな!」

 

 

そう言いつつもリィンも乗り気であり、マキアスに審判を任せると、夜の公園で再び刃が閃いた。

 

 

 

最初に仕掛けたのはフィーだった。風のような軽やかさでナギトに肉薄する。それは実技テストの焼き直しのように思える。

 

「芸がない──」

 

 

芸がないな、と言うつもりだった口角が歪む。フィーの迎撃に走らせた太刀は空を切り、その先から現れたのはラウラ。

 

これは実技テストでナギトとリィンがやってみせたスイッチ──その簡易版だ。

 

 

ラウラの鉄砕刃が打ちつけられる。フィーにつられた体勢では受け流す事も出来ずに体ごと弾き飛ばされた。

 

続けてラウラは豪快に剣を振り抜き地裂斬を放つ。

 

「そりゃ甘いでしょ!」

 

孤影斬を放って打ち消し、反撃に──

 

 

「ナギト!」

 

「うぇ?」

 

 

閃光、炸裂。

 

 

───反撃に、移れない。

 

リィンもフラッシュだ、とか言ってくれれば良かったのに。なんて心の中で愚痴りつつ視界を灼かれたままに太刀を振るう。孤月一閃。

 

 

 

「それは前に見た」

 

 

フィーの声で気づく。フラッシュグレネードを投げられてから反撃までの流れが一緒だと。

 

 

「ラウラ!」

 

「任せるがよい!」

 

 

2人の攻撃が重なる。ナギトはそれでK.O.だ。

リィンも2人の攻勢には勝てず、制圧される。

 

実技テストの追試は、ラウラとフィーに軍配が上がった。

 

 

 

帝都の夜空を見上げながらため息をつく。

 

 

「は〜あ。負けちったよ」

 

 

実力が発揮できなかったなんて、言い訳だ。実力を発揮させる前にラウラとフィーが勝ったのだ。

疲労のせいか、同じように寝転がっていたラウラは立ち上がると、ナギトに手を差し伸べる。

 

 

「ほら、いつまで寝転がっているつもりだ?」

 

 

「ああ、ありがと」

 

 

ナギトはそう言ってラウラの手を借りて立ち上がる。それと同時に夜の公園に警笛が鳴り響いた。

 

騒ぎを聞きつけた衛兵が駆けつけたのだ。迷惑のかからない公園を選んだつもりだったが、それでも誰かが通報しているものなのだろう。

その後、ナギトらA班(エリオット除く)はこってり2時間ほどしぼられてから宿泊施設に戻るのだった。

 

 

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