閃の軌跡 〜八葉を継ぐ者〜   作:クラウンドッグ

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断章
トールズ士官学院


 

 

 

「俺をスカウトしてみないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナギト・シュバルツァーがそう言ってから、3日という時間が経過した。

 

時間にしてわずか72時間。

その短い間に貴族派──貴族連合はエレボニア帝国の約6割を統治下に置いた。

 

貴族連合の前に未だ膝を屈さぬ者共もいない事はないが、このままでは帝国は貴族派の手に落ちるのは時間の問題かと思えた。

 

 

貴族派と敵対する革新派──そのリーダーである《鉄血宰相》ギリアス・オズボーンは演説中に狙撃され胸に風穴が開き、その盟友である帝都知事カール・レーグニッツは皇族と共にカレル離宮へと軟禁された。

 

 

 

このまま内乱は貴族派の勝利で終わるのか──と、言われたらそうでもない。

 

 

 

 

《放蕩皇子》オリヴァルト・ライゼ・アルノール

《光の剣匠》ヴィクター・S・アルゼイド

 

この帝国において未だ貴族派に“保護”されていない皇族と、最強の剣士と謳われる達人の操る《紅き翼》カレイジャスが残っているのだ。

 

それだけではなく、オリヴァルト皇子と同じく未だ貴族派に“保護”されていない皇族として皇位継承権第2位の皇女アルフィン・ライゼ・アルノールもいる。

 

 

動きの取れない革新派や機甲師団に代わり、それらが『第三の風』としてどう動くかが、今後の帝国の運命を左右すると言っても過言ではない。

 

 

 

 

 

 

そして、ほんの僅かな希望ではあるが。

 

 

これまで特別実習と称して帝国各地を回り、現地の人と交流をしながらも着実に力をつけていった若者たちにも、戦乱に怯える者たちから静かな期待が寄せられていた。

 

 

 

 

貴族連合からすれば、カレイジャスや未だ保護できていない皇族と比べれば、優先順位は限りなく低い。しかし警戒には値する。

その者らは、トールズ士官学院一年Ⅶ組に所属する学生たちだった。

 

☆★

 

 

貴族派による帝都占領の電撃作戦──それは帝都近郊都市であるトリスタにも及んだ。

トリスタはかのドライケルス大帝の創設したとされるトールズ士官学院のある街として有名である。

その士官学院は何人もの有名な人物を輩出しており、教師陣にも名の売れた者が多々いた。

 

 

 

例えば、ヴァンダイク。

正規軍の名誉元帥という肩書を持つ身長2アージュ以上ある古強者。

 

例えば、ベアトリクス。

死人返し(リヴァイバー)》の異名を持つスナイパーライフルの使い手。

 

例えば、ナイトハルト。

帝国最強と囃される第四機甲師団の若きエースにして《剛撃》の異名を持ち、《放蕩皇子》の付き人たるミュラー・ヴァンダールと双璧とされる武人。

 

例えば、サラ・バレスタイン。

元最年少A級遊撃士にして、《紫電(エクレール)」の異名を大陸に轟かせる若き女教官。

 

 

 

 

 

 

その他にも、とある組織の第二位を拝命する男がいるのだ──それは割愛しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それらの武人たちとかつて《死線》を名乗った女性が帝都を占領した《機甲兵》を迎え撃つも、東口を守るⅦ組が崩れた事でトリスタは貴族派に占領される事となった。

 

 

それから時は3日経ち、その間に士官学院の関係者の大半はトリスタから逃走し、貴族連合を打倒するため各地で息を潜めている。

 

 

 

 

トールズ士官学院には貴族生徒も多く存在する。

そのため、平民生徒の大半がトリスタから逃走した今、トールズを統治下に置くのは貴族連合にとり容易いかと思われたが、他でもない貴族生徒──それも四大名門の子息パトリック・T・ハイアームズを始めとする者たちに大きく反対の意を示されていた。

 

ヴァンダイクやベアトリクスと言った重鎮クラスの者は軟禁しているとは言え、このままトールズの学院生たちを放置しておくのはまずい。

 

何とか学院生たちを指揮下に置き、あわよくば貴族連合の兵としてトールズ士官学院の管理を任せたい。

 

 

そう思ったのは貴族連合のトップの1人であるカイエン公爵。

帝国における最高の爵位“公爵”家の当主であり、同じく公爵であるヘルムート・アルバレアを抑えて貴族連合の総主催となった人物である。

 

 

 

 

 

 

 

カイエン公はその任を士官学院生にして唯一、貴族連合に与している人物に任せる事にした。

 

 

 

 

ナギト・シュバルツァー

 

トールズ士官学院一年Ⅶ組に所属する、記憶を失う以前は《剣鬼》の二つ名を持った、貴族連合においても有数の実力を持つ達人。

 

 

 

 

ナギトは静かに、しかし確かに学院の敷地へと足を踏み入れた。

実に3日ぶりの帰還だが、学院に蔓延る雰囲気は3日前とは隔絶したものだった。

 

 

「はは、クロウじゃないが随分と遠くに来ちまった感じはする」

 

 

 

彼のそれはもちろん独り言ではなく、隣を歩く兵士へ向かってのものである。

 

 

 

「学院生に同情などをしても裏切るな。俺はそのための監視だ。わかってるな?」

 

 

 

それは《帝国解放戦線》の幹部だ。

《R》の隠し名で幾度かⅦ組と対峙し、《剣鬼》と偽った事でナギトの心を大きく掻き乱した存在。名をリヴァル。

 

 

 

「わかってますよ。同情するなと言わない分だけマシなのか酷なのか……」

 

 

「俺にはお前の心を縛る術はないからな」

 

 

リヴァルの返答にナギトはため息を吐く。生真面目なのか、あるいはツッコミ待ちか。おそらく前者だろうと思いつつ、目の前に立っていた学院生に「よう」と声をかけた。

 

 

それで、ようやく固まっていたその人物は動き出した。学院を守る意思を見せつつも、眼前の光景が理解できていなかった。それは戦闘においては致命的。しかしナギトは武器を向ける事はしなかった。

 

それは偏に貴族連合の使者として来た身で、問答無用で貴族生徒を傷つけるわけにはいかなかったからである。

 

 

 

「ナ…ナギト・シュバルツァー……どうして、君がそこに……?」

 

 

 

腰に騎士剣を提げ金髪を中央でわけて、整った顔つきに冷や汗を──嘘だと言ってくれと表情で表しながら、言った。

 

 

それにナギトは乾いた笑いをこぼしながら返事をする。

 

 

「は。わかりきってる答えを聞くのは、あんまりお前らしくないんじゃないか、パトリック?」

 

 

 

 

カイエン公がナギトにこの任を与えた理由はいくつかある。

 

まず一つは信用のため。

《剣鬼》であった彼を“不確定要素”と断じて《帝国解放戦線》に始末するよう依頼したのはカイエン公であった。

すでにその事実は露見し、それでも「気にしてない」と口ではそう言うナギトを信用するためのものだ。

 

それでは何故、この任務でナギトを信用する事ができるようになるのか、というと。

それはナギトの居場所であったトールズ士官学院を、彼自らの手で貴族連合の元に帰順させるからである。

彼自らの手で居場所を、敵として見ている貴族連合に売り渡す行為はまさに裏切りであり、居場所を失わせる事で、帰る場所を取り除こうとする打算だ。

 

 

 

しかしカイエン公の誤算は、たった3日前にナギトとパトリックが交わした言葉にあった。

 

 

 

 

「……嘘、ではなさそうだな。では、君は貴族連合の手の者としてここを陥落させに来たのか」

 

 

 

「まさしくその通り。あえて反論するなら、陥落とは人聞きの悪い。話し合いで解決できそうな問題を、お前たちが拗らせてるから俺が出張るハメになったんだよ」

 

 

 

「フン、悪いが貴族連合に与する気はない。貴族の誇りを蔑ろにするようなやり方に僕は、僕たちは賛同できない」

 

 

 

「そう言うだろうって思ったからさ、お前たちが貴族連合の元でトールズを管理できるだけの名分は考えて来た」

 

 

“名分”──その言葉に青筋を立てるパトリック。ナギトの──貴族連合の言い分はつまり“ハリボテの反逆などせずとも、君たちが我らの側に立つだけの理由を用意してある”という事だ。

 

 

 

「今のこの情勢において各地は混乱の極みにあり、このトリスタの地も例外ではなく、いつ暴徒が襲って来るかわからない状況である。

しからば貴族連合はそれに対応すべく学院に兵を置きたいのだが、何せまだ機甲師団などの襲撃にも気をつけねばならず、いざと言う時に動けない可能性もなきにしもあらず。

なれば士官学院の生徒による、卓越した技量にてトールズ、ひいてはトリスタを守る騎士団として動いてもらいたい」

 

 

 

 

眼前で冷や汗を垂らす少年を値踏みするように「どうかな?」と問うナギト。

その様子は紛れもなく貴族連合の一員であり、隣のリヴァルもその身の翻しように舌を巻く思いだった。

 

それに対して、パトリックは憤慨する。

 

 

「ふざけるのもいい加減にしたまえ!僕らが貴族連合に与する大義名分に尻尾を振ってついて来るとでも思っていたのか!?」

 

 

 

ナギト・シュバルツァーの、貴族連合の、人を虚仮にする言い分にパトリックはNoと答える。

そう返されたナギトは驚くように顔を伏せ─俺を悪巧みする時の顔で「グッド」と呟く。

 

 

 

「良い啖呵だよパトリック。なら、いつものやり方でいこう」

 

 

 

「ああ、いいだろう。ここで勝ってライバルは解消だ」

 

 

 

 

売り言葉に買い言葉。ナギトの言葉にパトリックは当然のようにその言葉を返した。

 

 

十数分後、グラウンドに学院に残ったほぼ全員が集った。

 

その中でも特に腕に自信のある──と言うか実技の成績の良い者たちがナギトの前で構えた。

 

 

 

 

パトリックは騎士剣を。

ヴィンセントは槍を。

フェリスは弓を。

ランベルトは大剣を。

エーデルは魔導杖を。

フリーデルもまた騎士剣を。

 

 

 

 

 

 

その6人は学院でも有数の強者である。

 

幼少の頃から英才教育を施されて来たパトリック。

そのふざけた言動からは想像もつかない華麗な槍さばきをみせるヴィンセント。

良きライバルを持ち、自身も努力を怠らぬフェリス。

大きな体格から繰り出される剣技は大地を抉るとまで言われるランベルト。

おっとりとした性格ながらも苛烈なアーツ使いである事で有名エーデル。

名門と謳われるトールズの最高学年に於いて最強の剣士とされるフリーデル。

 

 

 

 

 

間違いなく、間違いようもなくこの6人は学院の誇る強者である。それこそ、この6人がやられたのならトールズ残留組は貴族連合に降っても仕方ないと思わせるほどに。

 

《帝国解放戦線》の幹部クラスの実力者でさえ、この6人を同時に相手取るとなると手傷を負うことは間違いない。

 

 

「アンタは見てろ。これは俺のケジメのはずだろ」

 

 

ただでさえ多勢に無勢。6対1という状況で、助力しようとしたリヴァルを押し留める暴挙。

リヴァルは「そうか」と抜きかけた剣を納める。

 

 

「改めて聞くが───いいんだな?」

 

 

問うパトリック。その意味は当然、6対1という状況を良しとするのか、という事だ。さらに付け加えるなら、この6人は学院でも有数の実力者。本来ならナギトは1対1でも苦戦するような相手だ。少なくとも、3日前までのナギトなら。

 

 

「むしろ願ったり叶ったりさ。名門トールズの実力者6名を蹂躙し従属させる。俺という価値のプレゼンと、貴族連合に服従する手土産としてな」

 

 

しかし、この状況はむしろナギトが願ったものだった。

もしパトリックがサシの勝負でナギトに負けても、トールズにはまだフリーデルがいる。フリーデルが負けても誰かはいる。───そうした希望を摘み取るための、トールズの学院生たちの反逆の芽を摘むための、実力者をまとめて叩き潰すというパフォーマンスだ。

 

 

「君は……!?」

 

 

と言いかけたパトリックを遮ったのはフリーデルだ。キッと眼光でナギトを貫く。

 

 

「残念だわ、ナギトくん。君とこんな形で相対する事になるなんて」

 

 

「俺もですよ先輩。しかしまあ、こうなっちまったもんは仕方ない。俺の願いのために、ここは大人しくやられて下さいな」

 

 

抜く。ぬらりとした動作。雰囲気。剣呑─ではない、獲物を前に舌なめずりする蛇のような。

 

そんなナギトの問題無用な雰囲気を感じ取った6人も得物を構えた。

 

 

「アリサの学友……聞いていた話とずいぶん違いますのね」

 

 

呟いたのはフェリス。魔導杖を構える彼女はナギトのクラスメイトであるアリサの部活動仲間だ。

 

 

「ああ、君がフェリスか。…アリサはああ見えて寂しがり屋だからな。これからも良き友人であってやってほしい」

 

 

「どの口で……!」

 

 

その他の面子も、Ⅶ組のクラスメイトを通じて縁のある者ばかりだ。しかし、ナギトに憐憫の情はなく、リヴァルの無機質な「始め」の合図に続く言葉はかき消された。

 

 

 

「──鬼気解放」

 

 

ぶわりと溢れ出す緋色の闘気。それは殺気を伴って、ナギトと相対する6人を一瞬だけ硬直させる。

 

 

「迅雷」

 

 

そこに、雷速の斬り込み。対象とされたエーデルは迫る刃を魔導杖で防ぐが、続く蹴りに腹筋を穿たれて吹き飛んでいく。

 

舞うように太刀を回転させたナギトが打ったのはエーデルの隣にいたランベルトの首筋。峰打ちしてその意識を奪う。──否、奪えていない。踏ん張って耐えたランベルトの耐久性をナギトは侮っていた。

一瞬遅れてパトリック、フリーデル、ヴィンセントの突きがナギトを貫いた───かと思われたが、その姿は揺らめいて消える。残像だ。

 

 

「剣鬼七式、三ノ太刀」

 

 

声が聞こえたのは上。ナギトは3者の突きを跳躍して躱していた。そして、

 

 

「破空」

 

 

圧縮。解放される闘気の波動。ナギトを中心に広がるエネルギーは周囲を圧殺する力そのものだ。

それは地に這う虫を踏み潰すが如き一撃だった。それを。

 

 

「ぬ、うおおおぉぉぉぉぉおおおお!」

 

 

首筋への一撃で昏倒寸前だったランベルトが受け止める。大剣を振り抜いて、圧力という打撃を相殺し───それでようやくリタイアした。

 

 

着地したナギトは「やるな」とランベルトを賞賛。迫るヴィンセントの槍撃を掴み取り、螺旋の技術で使用者ごと回転させる。背中から地面に激突したヴィンセントは受け身さえ取れず、咳き込んだところにナギトの殴打が腹部にめり込む。気絶。

 

 

「はい、これで半分」

 

 

30秒にも満たぬやり取りである。このままトールズの実力者たちがなす術もなくナギトの前に屈するのか──と、問われればそうでもない。

 

残った3人はエーデルとランベルトを瞬殺したナギトの手腕を見て作戦を変えていた。

 

 

「フォルテ、クレスト、クロノドライブ。ひとまずこれだけあれば十分ね」

 

 

3人は互いに補助アーツを掛け合っていた。攻撃力、防御力、速度を向上させるアーツ。おそらくヴィンセントはそうするための時間稼ぎを買ってでたのだろう。

 

 

「よろしくお願いします!」

 

 

「任せたまえ!」

 

 

フェリスの言葉にパトリックが猛々しく答え、フリーデルとタイミングを合わせてナギトに肉薄する。

 

 

「剣鬼七式、外ノ太刀 早贄」

 

 

 

剣鬼七式とは、そもそも《剣鬼》が八葉一刀流を超えるべく考案した七つの剣技。

外ノ太刀とは、七式に数えられなかったもの。“迅雷”や“雷神烈破”を含む“雷の型”も、この外ノ太刀になる。

 

そしてこの“早贄”は。

 

 

「気をつけろ。そこには罠があるぞ」

 

 

「──ッ!?」

 

 

斬撃を、その場に留まらせる技だった。

 

斬撃を放つのではなく、罠としてその場に留める。惜しくも七式から選考漏れしてしまった“早贄”であったが、守る分には使い勝手の良い戦技だった。

 

 

ナギトの忠告で踏み留まったパトリックより一足先にフリーデルが騎士剣を振り下ろす。力の乗った一撃を、同じく力を乗せた一撃でカチ上げる。パワーなら《剣鬼》当時の力を出せるナギトに分があった。

──しかし、それを読んでいたフリーデルは宙返りして勢いを逃すに留まらず、サマーソルトでナギトの顎を蹴り上げていく。

 

一瞬、明滅する視界と意識。そこに、

 

 

「はぁああ!」

 

 

切り込む、パトリックの剣。

誰が見ても致命的なそれを、その刃を、ナギトは素手で掴み取った。

 

 

「な───素手で……っ!?」

 

 

「──掌破」

 

 

驚愕するパトリックに、無情にも炸裂する衝撃。それは容易くパトリックの意識を刈り取り──

 

 

「あー、痛って……血ぃ出てるじゃん」

 

 

パトリックの騎士剣を放り捨てて、それを受け止めた自らの手を眺めるナギト。掌からはうっすら血が出ていた。

 

 

「…今、何をしたの?」

 

 

しかし、本来なら血が出るどころでは済まない。指が飛んでなお止まらぬはずの威力があった。故にフリーデルの疑問はそこにあった。

 

 

「別に普通の事ですよ。闘気を纏って防御とした。まあ」

 

 

瞬間、左手から解放された緋色のそれは。

凡百の武人が生涯でようやく到達できる闘気の総量をゆうに超えていた。

 

「これくらい、ですがね」

 

それだけの闘気を纏えば、そりゃあ並の攻撃なんて通じない。

 

「んで、これを攻撃に転用すれば」

 

 

アーツを発動させようと駆動していたフェリスに向かって左手を振る。それだけで。

 

 

「きゃあっ!」

 

 

地面を抉る闘気の波動がフェリスを直撃して吹き飛ばす。

 

 

「こうなります。……もうおわかりですよね、フリーデル先輩。…幕です」

 

 

ナギトが示したのは圧倒的な力の差だった。闘気の総量がそのまま戦闘の結果に直結するわけではないが、今のナギトには勝利するビジョンが浮かばないフリーデルであった。

 

 

「……今まで手を抜かれてたって事かしら?」

 

 

「いやいや。ただ、力の使い方を思い出してきてるだけです。たぶん技量だけならまだ俺が負けてますよ」

 

 

「そう」とナギトの戯言を受け取ったフリーデルは己の騎士剣にありったけの力を込める。

 

 

「私の全力、受け止めてちょうだい」

 

 

 

白く立ち昇る闘気を、斬撃に乗せて飛ばす。

白鳥が翼を広げるようにしてナギトに迫る。

 

 

「三ノ太刀改メ 破空 : 突」

 

 

闘気が太刀に装填される。一瞬あとに撃ち放たれた圧力は斬撃の白鳥をかき消してフリーデルを直撃した。

大きく威力は減衰されたものの、フリーデルは倒れ伏し───この勝負は、ナギト・シュバルツァーの勝利で閉幕した。

 

 

 

☆★

 

 

 

 

未だ気絶から覚めぬライバルに、バケツに汲んで来た水をぶっかけて強制的に覚醒させる。

 

 

 

 

 

 

「プハッ!?な、なにをする!?」

 

 

 

 

 

寝耳に水、ならぬ寝顔に水だ。

まさしく飛び起きたパトリックにナギトは軽く笑みを浮かべた。

 

 

「寝起きで悪いけど、約束は守ってね」

 

 

 

それは勝負前に行われた取り決めだ。

 

ナギト・シュバルツァーがパトリック・ハイアームズ含む学院生に勝利した際にはパトリック含む学院生が『騎士団』として貴族連合からトールズ士官学院の管理を任される、というものだ。

 

 

 

「く……ナギト、貴様はそんな人間だったのか?趨勢を見て勝ちそうな方に尻尾を振るような、そんな人間だったのか!? 答えろ、ナギト・シュバルツァー!!」

 

 

 

 

 

這い蹲り、ナギトを見上げるようにしてパトリックは叫ぶ。

貴様はそんな人間じゃないはずだ。

いかなる時でも不敵に笑い、自分の信念を貫くような、そんな男のはずだ。

なにより、自分が認めたライバルは断じて貴族連合に尻尾を振るような人間ではない。

 

 

そんな悲痛な叫びだ。自分が認めた男はそんな奴では断じてない、とパトリックはそう叫んでいる。

 

 

 

 

 

 

それを、嘲笑う。

 

 

「お前は、俺を仲間だとでも思ってたのか?」

 

 

見下すように。ナギトは嘲笑を浮かべて言い放った。

 

 

「その足りない頭で考えろよ。今、この状況で俺がどの勢力に属しているのか、お前にとって俺が仲間なのか敵なのか……考えたその答えが、正解だからよ」

 

 

 

 

それは、明確な敵対宣言ではない。

 

しかし“これ以上言わなければわからないのか”と相手を馬鹿にした言葉であり、同時にこれ以上敵としての発言をさせるな、という友情を慮った欺瞞であった。

 

 

 

リヴァルはその言葉に友情を感じられた。

しかしそれは、この場で何ら作用するものでなく、例え友情があろうとも“敵”ならば容赦なく斬る──という割り切ったプロの考えを見せつけられた気分になった。

 

身震いを覚える豹変である。

《剣鬼》と呼ばれたこの男がするぶんには何も問題はない。

しかし、目の前にいるのは《剣鬼》の記憶を失ったただの“ナギト・シュバルツァー”だ。

それが、半年とはいえ友情を築いた学友を、その友情など関係なしに斬るという心構えに身震いする。

 

 

ナギトとパトリックの間に確かな友情は存在するだろう。それでも、友情を感じながらでも“敵”ならば容赦しない、そういうスタンスをナギトは取ったのだ。

 

 

 

 

 

 

それは明確な敵対宣言ではない故の、これ以上ない明確な敵対宣言だ。

 

リヴァルは少なくともそう受け取り、ナギトの裏切りの監視の任は見届けた思いになった。

 

 

ナギトが裏切るタイミングと言えば、今ここトールズ士官学院に踏み入った瞬間であり、残った学院生と腕っ節の立つ教官たちを引き連れて、守備の薄くなった帝都を電撃作戦をもって解放する──そのタイミングは今ここでしかありえなかった。

 

しかし、それは当然ながら危惧されており、帝国全土へ広げていた戦力を一時的に帝都に呼び戻す事をカイエン公は行っていた。

 

 

ナギトはここでトールズを真の意味で占領するしかなかったのだ。そういう選択肢しか、取れないようにされていた。

 

 

ナギトはリヴァルを連れて士官学院を出る。

 

 

 

パトリックは約束は守るだろう。

貴族の誇りと矜恃にかけて騎士団として、貴族連合の下でトールズ士官学院の管理をする事だろう。

 

 

 

 

 

それは、いい事だ。

 

学院生が蜂起して貴族連合に牙を剥き、犠牲になるよりは。

 

 

 

カイエン公爵によるトールズ士官学院の占領命令。

 

その命が下されたからここまですべてがナギト・シュバルツァーの思い描いた通りであった事は誰も知る由もない。

 

 

☆★

 

 

戦艦 “パンタグリュエル”──250アージュという破格の大きさを持つ、貴族連合の飛行戦艦だ。

 

外装は白銀にて光を反射し、金色の線がいくつか走っている。内装はやはり、貴族趣味なだけはあって豪華である。調度品も見るからに高級なもので揃えられており、これだけでいくらミラがかかっているのか想像もつかない。

 

 

 

ナギトは、そんな場所をあまり好ましくは思っていなかった。

 

内装はいい。調度品も揃ってる。食事も美味い。ただ、乗艦しているメンバーが曲者揃いなのだ。

 

 

 

 

まず《帝国解放戦線》の幹部。

《R》──リヴァル

《V》──ヴァルカン

《S》──スカーレット

《C》──クロウ・アームブラスト

 

 

 

《西風の旅団》の連隊長。

《罠使い》ゼノ

《破壊獣》レオニダス

 

 

 

ミリアムに似た謎の傀儡使い。

《黒兎》アルティナ・オライオン

 

 

 

結社《身喰らう蛇》。

《鉄機隊》筆頭隊士《神速》のデュバリィ

《執行者》No.Ⅹ《怪盗紳士》ブルブラン

《執行者》No.Ⅰ《劫焔》のマクバーン

《蛇の使徒》第二柱《蒼の深淵》ヴィータ・クロチルダ

 

 

貴族連合総参謀、ルーファス・アルバレア

 

 

そして、それらを束ねる貴族連合の総主催、クロワール・ド・カイエン。

 

 

強烈過ぎる面子に目眩を覚えるほどである。ヴァルカンやスカーレットがまだとっつき易いと言えるレベルだ。

 

しかしだからと言ってコミュニケーションを欠くわけにもいかず、ちょくちょく喋るのだが、まあどいつもこいつもキャラが濃い。

特にぶっ飛んでるのが結社の執行者No.Ⅰのマクバーンだ。話をしていると意外にも教養は感じられるのだが、それを上塗りするだけの威圧感、違和感、異物感が凄い。さすがは結社最強などと言われているだけはあった。

軽く聞いた話によると、結社はクロスベルの問題にも首を突っ込んでいるらしく、そちらを担当する使徒は《鋼の聖女》で、一段落したら帝国入りするそうだ。結社最強の男と女が揃うとは、中々大掛かりな物語になってきた。

 

 

 

「すでに通信で報告はしている。が、口頭で再度報告を求められるだろう」

 

 

パンダグリュエルのデッキに通じる扉の前でリヴァルはそう言った。「了解」とナギトは答えて、その扉を開ける。

 

その一室に足を踏み入れると、そこで待っていたのはクロウとルーファス、それにカイエン公だった。

 

 

 

「フフフ……よくぞ戻った、ナギトくん。それでは報告を聞こう」

 

 

《剣鬼》の自陣への参入の確信にこみ上げる笑いを抑えきれないカイエン公はナギトを歓迎するように両腕を開いた。

 

このカイエン公とは“わかりあえない”とナギトは結論していた。 というのも、オルディスでの実習の際に遭遇したテロ。あれも要は貴族派と《帝国解放戦線》に繋がりがない事を示唆するためだけのものだった。

ナギトとしてはそのカモフラージュよりも、テロを未然に防げなかった不明の方が費用対効果として大きいと思っていたため、カイエン公爵家と《帝国解放戦線》に繋がりはないと考えていたのだ。

しかし、事実としてカイエン公はただ戦線との繋がりの否定──というカモフラージュのためにあのテロを起こした。 それはカイエン公としてはタダ同然で実行できる撹乱だったのだ。なんせ費用なんてものはない。街の破壊も市民からの税収で賄える。市民の反発など公爵家様には何の痛痒もない。───そんな、平民を税収の道具としてか見ない視点を、ナギトは理解できても納得できなかった。嫌悪が勝るのだ。

 

が、そんな嫌悪感をおくびにも出さず、ナギトは薄く笑んで敬礼の姿勢を取る。

 

 

「はい、報告します。我らが貴族連合総主催、カイエン公爵殿。トールズ士官学院は我らに帰順しました。貴族生徒の大半が残る学院で“騎士団”として指揮を取るのはハイアームズ侯爵家四男パトリック・ハイアームズとなります」

 

 

恭しく報告するナギトにカイエン公はますます笑みを深めた。《剣鬼》が自らの配下となった実感が、その全能感を助長している。

 

 

 

「よく私の信頼に応えてくれた。ささやかだが、贈り物を用意してある。受け取りたまえ」

 

 

信頼には褒賞を──という事か、カイエン公が指示すると、室内の兵士が箱を持ってきて、それをナギトの前で開ける。丁寧に梱包されていたものは導力器──次世代戦術オーブメント“ARCUS”であった。

 

 

 

それを見た瞬間、ナギトにはカイエン公の考えが読めた。

この新しいARCUSを与える事でナギトのARCUS──クラスメイトの連絡先の登録してあるそれを回収し破棄。あわよくばⅦ組の誰かを釣ろうという魂胆だろう。

 

 

 

「戦術オーブメントARCUS。それは君たちが試験運用していたものとは違う、言わば『製品版』ARCUSだ。とは言っても性能は変わらないがね。しかし、君の今使っているARCUSは戦術リンクの効果を発揮するためにアーツの効果が下がっていると聞いた」

 

 

 

それは、ナギトのARCUSの適合の低さのデメリットだ。ARCUSの適合が低ければ戦術リンクは使えず、それを強引に使えるよう作ったため、アーツの効果が低くなってしまっている。

 

それはすでに聞き及んだ話であったが、ならばこの製品版ARCUSは適正が低くとも使用になんら不都合はないのだろう。

 

 

「この製品版ARCUSは、そのような欠点はなく誰でも使えるようになっている。君の旧ARCUSにあったアーツの効果が薄くなる…などという事はない。これを機に変えてみてはどうかね?」

 

 

それは提案のようでもあるが、その実は強制的なものだった。

 

この提案により、ナギトにはなんらデメリットはない。せいぜい、袂を分かった仲間との連絡が途絶えるくらいだ。今のナギトには痛手はない──そう振る舞わなくてはならない。

 

 

ここでこの提案を跳ね除ければカイエン公はナギトへの警戒を高めるだろう。

 

 

故にナギトは。

 

 

 

「喜んで頂きます、カイエン公爵」

 

 

そう言って低頭した。

 

 

「なによりだ。では君の旧ARCUSだが、こちらで処理しておこう」

 

 

そら来た。とナギトは思った。ここで旧ARCUSをカイエン公に渡すと、ロクでもない事が起こるのは目に見えている。

 

さてどうしたものか──と、悩む一瞬。

 

 

「私の方で処分しておきましょう。カイエン公爵も、それでよろしいですか?」

 

 

カイエン公が次のセリフを紡ぐ前に口を挟んだのはルーファスだった。「うむ」と認めたカイエン公を尻目に、ナギトは目を細めてその真意を推し測ろうとするが、どうにもわからない。

 

 

「さあ、渡したまえ」

 

手を伸ばすルーファスに、にこやかに。ただ含みを持たせるようにして、旧ARCUSを手渡した。

 

 

「ええ、よろしくお願いします。ルーファス理事」

 

 

ルーファス・アルバレアはトールズ士官学院の常任理事だ。今回はその縁に賭けてみる事にした。

「おっと、つい前の癖で」と自らの“理事”と呼んだ事にフォローする。

 

 

「構わないさ。しかし今の私は貴族連合の総参謀──今後はそう呼んでくれ」

 

 

「承知いたしました、ルーファス・アルバレア総参謀殿」

 

 

これまた恭しく礼をして三文芝居を切り上げる。ルーファスは預かったナギトの旧ARCUSを懐に仕舞い込むと。

 

 

 

「それと、ARCUSの他にも褒美がある。それについては──」

 

 

 

 

「それについては、私が案内させてもらいます」

 

 

 

ルーファスの言葉を継いだのはリヴァルだった。

ナギトの監視の命令は、トールズ占領だけでなく、その命令を下したカイエン公が「もういい」と言うまで続くのだ。

 

 

ナギトは貴族連合にスカウトされてからと言うもの、このリヴァルと最も長い時間を過ごしていた。

 

 

 

 

 

「俺が着いてくぜ。説明には俺がいた方が楽だと思うからな」

 

 

 

そう言ったのはクロウだ。それらの言葉から騎神関係なのではないかと、ナギトは思案を巡らせる。

 

 

「ではよろしく頼むよ」

 

 

ルーファスに見送られて、ナギトは部屋を出る。

前には案内人兼監視人のリヴァル。横には元学友のクロウだ。

 

 

 

「案内って事はあんまり安易に持ち出せるものじゃないと見た。もしかして機甲兵か?」

 

 

 

「それについちゃ、見てからのお楽しみってやつだ」

 

 

クロウのはぐらかした答えに、ナギトは「ふぅ」と吐息した。

トールズ士官学院のクロウ・アームブラストと《帝国解放戦線》の《C》ではキャラクターとして大差ない。もう《C》の仮面を被る必要がないとは言え、学院でのクロウの道化師のような表情は失っていないのだ。

 

 

 

 

 

「それにしても、俺は《灰の騎神》の《起動者》になるのはお前だと思ってたぜ、ナギト」

 

 

 

「そう?キャラクター的にはリィンがピッタシだと思うけど」

 

 

 

「はっ、よく言うぜ。あの異界の戦場で、お前にも《灰の騎神》の名前は見えてたくせによ」

 

 

 

「それ、お前にも見えてたのかよ」

 

 

 

「一応、俺も騎神の《起動者》だからな。はっきりとは見えてなくても、お前とリィンに名前が見えてたって事はわかってた」

 

 

 

「そうか。まあ、俺が《起動者》になる未来もあったんだろうがよ……なんとなく、それはやり過ぎだと思ったんだ」

 

 

 

「やり過ぎ?」

 

 

 

「直感だよ。あの場面でそこまで歯車をズラすのはまずい。そう思っただけ」

 

 

 

「そりゃ、いったい──」

 

 

 

 

 

「到着だ、クロウ、ナギト」

 

 

 

2人の会話に割って入ったのはリヴァルだった。

同時にエレベーターの扉が開き、パンタグリュエルの最下層区画──機甲兵の降下装置のある場所へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

その奥に、それは安置されていた。

 

埃が積もらないように布が被せてあり、動かないようにワイヤーで各所が止められている。

 

 

ワイヤーを外し、布を一息に引き取り──その威容は現れた。

 

 

 

 

それはクロウの《蒼の騎神》に酷似した機体。

色が塗られておらず、また飛翔ユニットが取り外された《蒼の騎神》がそこにいた。

 

 

 

 

「こいつは、オルディーネ・イミテーション。正式な名称がねえからそう呼んでるだけだが。機甲兵プロジェクトが立ち上がった際にオルディーネにできるだけ性能を近づけようとしてできた機甲兵がこいつだ」

 

 

 

オルディーネ・イミテーション

《蒼の騎神》──機甲兵の元となった伝説の巨いなる騎士。それのコピーを作ろうとして、できたのがこいつ。

 

しかしそれが量産されず、この場で眠っている事には理由があるのだろう。

 

 

 

「性能自体はオルディーネと互角──とは言え“奥の手”を出したオルディーネには敵わないが──そのオーバースペックに乗りこなせるやつが1人もいなくてな」

 

 

「クロウもか?」

 

 

 

「んにゃ、俺は除く、だ。性能としては近々開発の終わるヴァルカンとスカーレットの専用機以上のパワーとスピードを備え持つ」

 

 

 

 

クロウ以外には乗りこなせない──、それは少なからずナギトに衝撃を与えた。

《身喰らう蛇》の面々は機甲兵に乗りそうにないとはいえ、他にも貴族連合には強力なメンツが揃ってるはずだ。それこそ《剣鬼》時代のナギトでも対決に尻込みするような強者が。

 

そんな連中でさえ、乗りこなせない機甲兵──、とそこでナギトはふと疑問を覚えた。

 

 

貴族連合の強力な面子──例を挙げれば《黄金の羅刹》や《黒旋風》など。

彼ら彼女らの強さはおそらくクロウを上回る。

達人級になればなるほど機甲兵を乗りこなすの法則から考えれば、彼らが乗りこなせない機甲兵をクロウが操れる──というのは違和感がある。

 

 

となると──、導き出される結論は限られる。

 

 

 

「操縦方法まで騎神に近づけちまいましたでござる──って所かな」

 

 

 

 

「ご明察。なにしろモデルがオルディーネしかなかったからな。まあ、このオルディーネ・イミテーションの教訓を活かして、その後の機甲兵の操縦方法はわりと簡易なものになったんだが」

 

 

 

クロウが動かせた理由は、やはりそれだった。

《蒼の騎神》に似通った操縦方法のオルディーネ・イミテーション。そのオーバースペック/操縦方法ゆえに他の操縦士を寄せ付けない暴れ馬……と言った所か。

 

 

 

「で、さっきも言った通りお前は騎神の《起動者》の資格を持ってる。起動者になった瞬間に騎神の操縦方法は頭にぶち込まれるから、このオルディーネ・イミテーションも操れるんじゃねぇか?──ってのが今回の本題なわけだ」

 

 

 

起動者になった瞬間に騎神の操縦方法を頭にぶち込まれる──クロウのその言葉に、ナギトは脳内で“騎神の操縦方法”の検索をかける。

するとその知識はあっさりと見つかった。

異界の戦場から今までどうして思い浮かばなかったのかわからないくらい、あっさりと。

 

 

 

「そうは言っても…俺の知識にある騎神の操縦方法は《灰の騎神》のものだぞ」

 

 

 

 

「騎神の操縦方法は《灰》だろうが《蒼》だろうがたいして変わりゃしねえ。とりあえず、お前が乗るって言っちまえばこいつはお前のもんだ」

 

 

クロウのその言葉にナギトは幾分か悩む。

たしかにオルディーネ・イミテーションは強大な力だ。得れば多大な恩恵をナギトに齎すだろう。

しかし、これを得てしまえば《蒼の騎士》クロウと並んで貴族連合の広告塔としてカイエン公に利用されるだろう。

そうなれば、仲間の元に戻るのは今より少し難儀になる。

しかし、《剣鬼》を正しく運用するなら、その役割は“暗殺者”としてのもの。

広告塔の方がイメージはマシだろう。

 

 

 

「ちなみにナギトが乗らなかった場合、オルディーネ・イミテーションの操縦士は俺になる」

 

 

唐突にそう告げたのはリヴァルだ。

その声音から判断するに、もうすぐ実戦で使えるレベルまでオルディーネ・イミテーションを操縦できるようになっている事が理解できた。

 

急かせるようなタイミングの発言にしかし、ナギトは焦らない。すでに結論は出ている。

 

 

「乗るよ、こいつに。オルディーネ・イミテーションに」

 

 

 

 

《蒼の騎神》のコピーであるオルディーネ・イミテーション。

そのオーバースペックと操縦方法の難解さに幾人もの達人たちが匙を投げてきた色無しの機甲兵。

それのパイロットとなる事をナギトは決意したのだった。

 

 

 

これを機にナギトの異名は《蒼の騎士》と並ぶ双璧として帝国全土に広まっていく事になる。




ここからはリメイク前のやつの文章をちょこちょこ変えるだけの作業になるので更新頻度は上がる予定!
ただ少し本筋とは関係ないところでエピソードが増える事もあるのでリメイク前を読んだ方も必見となります。

注意!
この『閃の軌跡〜八葉を継ぐ者〜』は閃の軌跡Ⅲ発売前に考えたストーリーですので、原作閃の軌跡とは設定が乖離している箇所があります。
例:原作では機甲兵はフランツが発明したもの→拙作では機甲兵はモデルをオルディーネとしてシュミットが開発したもの……等。
その点ご承知置きください。
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