閃の軌跡 〜八葉を継ぐ者〜   作:クラウンドッグ

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明日を掴むために

 

 

リヴァルとの戦いを終え、バルフレイム宮の変貌を見届けたナギトはⅦ組と合流した。

 

軟禁されていた皇帝やレーグニッツ帝都知事、エリゼなどと少しばかり言葉を交わし、変貌したバルフレイム宮──“煌魔城”へと向かう事になった。

 

 

Ⅶ組の面子がカレイジャスに戻る中、ナギトだけがその場に残る。

 

 

「ナギト?」

 

 

カレル離宮の広間からナギトを呼ぶリィンを「先に行け」としっしっ、と追い払うようにして遠ざけた後、憤怒を、悔恨を、傲慢を、憐憫を───、それらすべてをない混ぜにした静謐で皇帝ユーゲントに向き直った。

 

 

 

「皇帝ユーゲントⅢ世陛下、失礼を承知で言います」

 

 

広間にはナギトとユーゲントの他に皇妃プリシラ、帝都知事カール、TMP将校クレア、エリゼと揃っている。その全員の眼差しがナギトに向けられるが、そんな事は意にも介さずナギトは続ける。

 

 

「どうして貴方は────そんな諦めたような顔をしているんですか?」

 

 

その言葉の意味を、深く理解できた者はいない。ただ向けられたユーゲントだけがナギトの慧眼に刮目したのみだ。

 

 

「確かにこの状況、貴方が慌てふためいた所で何も変わらない。でもだからって、その顔はないでしょう…!? そんな…何もかも放棄して人任せみてぇな面……皇帝がしてちゃ士気に関わる!」

 

 

とんでもない暴言だ。国家の最高権力者に対する暴言。それに警告しようとしたクレアとカールを皇帝自らが制した。

 

 

 

「余は………」

 

 

しばらくの沈黙の後、口を開きかけたユーゲントを問うたナギト自身が待ったをかける。

 

 

「いやいい。俺がくっちゃべりたいだけだ」

 

 

皇帝の言葉を遮る──、不敬罪が適用されそうな状況下でなおナギトの決意は揺らがない。

 

 

「俺はさっき、友達を殺した。……たぶん、俺の…俺自身がつくった最初の友達だった」

 

 

リヴァル・アルヴァンス。復讐に生き、友情に死んだ男。

あいつはリィンやクロウ(憧れの存在)とは違う、ナギトにとって唯一の等身大の友達だった。

 

 

「あいつの剣を受けて俺が死ぬ未来もあった。でも俺はそれを選ばなかった。それは俺の中に明確な優先順位があったからだ」

 

 

ユーゲントをはじめ、広間の面々はナギトの独白を黙って見届ける構えだ。

 

 

「俺たちの願いのため……俺は剣を振るった。………それはきっと正しい事だ」

 

 

ナギトの内側で木霊する声。俺たちの願い。そのためにナギトは剣を振った。リヴァルの命を断った。天秤は拮抗せずに友を裁いた。

 

 

「でもそんな正しさはクソ喰らえだ」

 

 

あの時あの瞬間、他の選択肢はなかったのかもしれない。だけどナギトはあの刹那を生涯、後悔と共に忘れる事がないと確信している。

 

 

「俺はもう何も諦めたくない」

 

 

トールズも、Ⅶ組も、クロウも。その他すべて、ナギトが大切に思うすべてを。

 

 

「俺はもう何も諦めない…!」

 

 

そう決意するのが少しでも早ければ、あの友は救えただろうか。

 

 

「だから俺はこう言う」

 

 

ナギトは右拳を突き出した。そして宣言する。

それは紛れもない決意表明だった。

 

 

「運命様、上等だ!こんなクソッタレな御伽噺の結末は俺が変えてやる!」

 

 

 

☆★

 

 

「ナギト兄様……」

 

 

カレル離宮の広間から消えゆくナギトの背を見送りながら、エリゼはその名を呟いた。

 

それに反応したのは皇帝ユーゲントだ。

 

 

「そうか……彼が………」

 

 

ユーゲントは当然、ナギトがかつて《剣鬼》と呼ばれた男だという事を知っている。その彼が息子が理事長を務めるトールズ士官学院で飼われている事も。

だが聞いた話と、先程の青年の印象はまるで違っていた。

 

 

「“運命様、上等だ”……か」

 

 

ユーゲントは口の中だけで唱えたのはナギトの言葉だ。あまりにも青臭く、魅力的に聞こえるセリフだ。

「陛下」とプリシラが不安げにユーゲントを見つめた。しかし見上げたユーゲントの頬には微かな笑み。

 

 

「フフ……久しく感じなかった熱を覚えたぞ」

 

 

ユーゲントはもう喪ったはずの熱を確かに感じていた。

《放蕩皇子》と揶揄される息子よりなお破天荒だった皇太子ユーゲントだった頃の記憶。何だってできる、何にだってなれると思っていたあの頃を。

 

 

「これも師の薫陶か……いや彼生来の資質……」

 

 

「その全てでしょう。師の教え、生来の在り方……そして、トールズで得たものも」

 

 

ユーゲントの思考を答えに導いたのはカールだった。帝都知事にしてトールズ士官学院の常任理事であるカール・レーグニッツは息子マキアスを通してナギトを知っている。

 

 

「そう思うのは理事の欲目かもしれませんが」

 

 

カールが強かに笑うとユーゲントもまた笑んで、消えたナギトの姿を思い浮かべた。

 

 

「──良き巡り合わせを得たのだろうな。……ナギト・シュバルツァーか…」

 

 

 

こうして密かに、確かに、縁は結ばれたのだった。

 

 

 

 

☆★

 

 

 

 

「神気合一─────!」

 

 

リィンが使いこなした“鬼の力”は騎神にまで影響を及ぼした。神気の発露と共にヴァリマールから噴出したのは金色の霊力。

溢れ出る力の波はすでに超級で、その一刀をもって煌魔城の門扉を両断。Ⅶ組一行は煌魔城に乗り込んだ。

 

 

 

煌魔城出現の影響でドライケルス広場に出現した魔煌兵は士官学院の生徒と教員に任せ、Ⅶ組メンバーは煌魔城に突入する。

 

 

カレイジャスから飛び降りたヴァリマールは煌魔城の城門を容易く切り裂く。がその下に霊的な障壁が現れ、道を阻んだ。障壁は城門を切り裂くヴァリマールの一撃をはじき返し、Ⅶ組の入城を拒む。

 

しかし、神気を解放して力を上乗せしたリィン──ヴァリマールの一太刀で障壁もを突破してⅦ組一行は煌魔城に入った。

 

 

 

「障壁は閉じられたみたいだな……」

 


ナギトはすでに遠くなった城門の方向を見て呟く。当然のように返事をする者はいない。

引き返す事はできないって事だ。もとより最初から引き返すつもりもないのだが。とナギトはひとりごちる。
もうわかっているのだ。ここに来ることがナギト・シュバルツァーの運命だったのだと。

 

 

 

 

───────運命を変えろ───────

 

 


運命を変える事こそが、自分に課せられた使命……運命であったのだと。誰の運命なのか、など考えればすぐにわかる事だ。

 

 

 

 


ヴァリマールは予見の通り動けなくなり、オルディーネ──クロウとの決戦に備える事となる。


ダンジョンの攻略前にやる事と言えば一つだ。ナギトはしばらく単独行動ばかりしていたから聞くのは久しぶりとなる。

 


「トールズ士官学院、特科クラス《Ⅶ組》───これより異変を食い止めるべく、《煌魔城》の探索を開始する。それぞれの明日を掴むため……何よりも俺たちが《Ⅶ組》として培ってきたものをクロウたちに証明するために。今はただ、ひたすらに前へ進もう。状況開始───各自、全力を尽くしてくれ!」

 

 


今は聞きなれた / 懐かしいリィンの号令。
それにⅦ組メンバーは「おおっ!」と応える。

Ⅶ組は煌魔城の探索に乗り出した。

 

 

☆★

 

 

第一層、ブルブランとデュバリィを突破し。

 

第二層、ゼノとレオニダスを突破し。

 

第三層、《却炎》を────

 

 

 

「「纏の太刀、青龍!」」

 

 

 

《却炎》を、突破─────

 

 

 

「いいんじゃねえか?……お前ら」

 

 

 

───突破、できない。

 

 

《却炎》のマクバーン───結社《身喰らう蛇》最強の男。

結社《身喰らう蛇》最強の女アリアンロードが武の化身なら、マクバーンは暴の化身。

 

その彼が本気を出した姿は《火焔魔人》と呼ばれ、その名の通り人間離れした力を発揮した。

 

 

 

 

 

「はっ……はっ………くっ……」

 

 

ナギトがいる事はⅦ組にとって必ずしもプラスに働くわけではない。

今回の場合で言えば、第一層と第二層の守護者であった結社の猛者2名と《西風の旅団》連隊長2名は、Ⅶ組が意地を見せてそれぞれ下してきた。

 

しかしこの第三層の番人たるマクバーンは格が違った。

ナギトがいるせいで本来より早く《却炎》を突破してしまったせいで、その真価たる《火焔魔人》としての威容を解放させてしまったのだ。

 

 

その圧倒的な焔の前にⅦ組一行は平伏した。剣を杖にダウンを拒否したナギトも肩で息をする有様で、他のメンバーはそれより尚ひどい状況だった。

 

 

リィンはそんな状況を鑑みて騎神を呼び出そうとする。

 

 

「待て……」

 

 

「だが……ナギト…!」

 

 

その行為を止めたナギトに、リィンは悲痛な顔を見せる。リィンとてわかっているのだ。騎神を持ち出した所でマクバーンに勝てる保証はなく、よしんば勝てたとしても次に控えるクロウとの戦いに響く事を。

 

 

「まあ……任せてみろよ」

 

 

軽々に言って見せるナギトはようやく息を整えて前に出た。

 

 

 

「鬼気合一!」

 

 

ナギトにとってそれは最早、あまり意味のない自己暗示だった。前までは《剣鬼》往時の実力を取り戻す絶招としてナギトの奥義であったが、《剣鬼》としての実力を取り戻したナギトは今や常時“鬼気合一”状態にあると言っても過言ではない。

しかし、言霊を紡ぐ事で当時を───帝国最強を謳われる《光の剣匠》と伍した当時の無敵感を思い出す事ができる。

 

ナギトは鬼気を解放するとそれを自身に這わせるように圧縮した。“真気統一”劣化バージョンだ。

 

 

「そうか……まだお前がいたな、《剣鬼》」

 

 

それを目にしたマクバーンは、変異した魔剣アングバールを振るう。黒焔が斬撃となってナギトに迫った。

 

 

「残月」

 

 

一刀両断。迫る焔を一太刀で霧散させたナギトにマクバーンは目を輝かせた。

 

 

「やるじゃねえか……さては力を隠してやがったな?」

 

 

「合わせてた…ってのが正しいな。今の俺は少し……違い過ぎる」

 

 

ナギトの絶招“鬼気合一”は5度目の特別実習の際、ヴィクターの言葉を受けてナギトが自身の《剣鬼》としての力を受け入れて発揮したもので、その実習の最後アリアンロードの槍技で怪我をした後、失ったものである。

 

その後《剣鬼》としての記憶を取り戻して鬼気の解放が可能となり、《剣鬼》の実力を取り戻して鬼気を自身に合一するまでに至った。

 

 

そうして《剣鬼》往時に限りなく近づいたナギトの実力はⅦ組でも隔絶したものだ。辛うじてついて来れるとするなら、教官であるサラと神気合一したリィンに加えて、ナギトと立ち会った際に覚醒したラウラくらいのものだった。

 

だからナギトは力を抑えていた。Ⅶ組のメンバーと連携をとるために。Ⅶ組の一員として在るために。

 

 

だが事ここに至り、実力を隠す真似はしない。

 

 

 

「はっ、そうかよ……じゃあその力…見せてもらおうじゃねえか!」

 

 

マクバーンは言うと、魔剣を振るって先程と同じ焔斬撃を飛ばす。いくつもの焔がナギトに肉薄する。それはⅦ組を殲滅して余りある熱量だ。

 

 

「剣鬼七式、二ノ太刀」

 

 

しかし、それを前にしたナギトには一片の恐怖もなく。

 

 

「絶刃壁」

 

 

太刀を縦横無尽に振るって刃の壁と成す。その斬撃の壁の前にはいかな焔も煙となって──否、煙さえ斬り刻まれて消え去るのみ。

 

 

「剣鬼七式、六ノ太刀」

 

 

マクバーンが目を見張った一瞬で今度はナギトが攻めた。

 

 

「閃行嵐舞」

 

 

 

《閃嵐の騎士》──その異名を基に開発した戦技。それが“閃行嵐舞”だ。閃きの如く踏み込み、嵐の如き斬撃を刻む。

隔絶した剣速は刹那で無数の斬撃を成し、それをもって斬撃の嵐とした。

 

 

「ハハッ…!──アングバール!」

 

 

絶死のはずの斬撃の檻をものともしないマクバーン。《火焔魔人》は魔剣を掲げると焔を凝縮させて一刀のもとに解き放った。斬撃の嵐を焼き尽くして焔はナギトに迫る。

 

 

「螺旋───魔剣返し!」

 

 

迫る焔を巻き上げてマクバーンに返却する。ナギトの剣圧が上乗せされた焔は再度、絶死の形相だ。

 

 

「いいじゃねえかッ───!!」

 

 

それを嬉々として受け止めるマクバーン。まだまだ。もっともっと。アツくなれる。

 

 

「ジリオン───」

 

 

右手の魔剣で返された焔を受け止めつつ、空いた左手に却炎を集約させる。

 

 

「奥義──応龍裂破」

 

 

そこに刻まれるのは龍の爪に見立てた三閃。重く鋭い斬撃にマクバーンはたたらを踏んだ。

 

 

ナギトはたたみかける。太刀を構えて戦技を装填していく。

 

 

大刀錬、衝刀練、剣妙斂─────

 

三つの斬撃を一太刀で結ぶ。故に───

 

 

「三明一け────」

 

 

 

 

 

「───ハザードォ!」

 

 

 

ナギトが太刀を振り抜くより先に、マクバーンが却炎を撃ち放った。

 

 

「─────っ!」

 

 

ナギトの心には油断があった。マクバーンを“暴の化身”と評した事もそうだ。マクバーンは体勢を崩されて尚、戦技を継続できる技量があるとは思っていなかった。

 

たたみかける、なんて表現がそも自分が押しているという錯覚────

 

 

「超過式────」

 

 

ナギトの太刀から解放された闘気が周囲に拡散した。収束する時間は瞬きの程しかなく。

 

 

「八卦覇掌!」

 

 

その一瞬で闘気は掌を形作ると、8つの防壁となってジリオンハザードを阻むが、それらは脆くも破られていく。しかしその威力は大きく減衰された。

 

ナギトは“三明一結”のために集約した闘気を別の戦技に切り替える。

 

 

「神威残月────!」

 

 

神速の剣閃はジリオンハザードを2つに断ち、そのままマクバーンに直撃した。

 

 

「くっ…!」

 

 

真っ二つになったジリオンハザードはその場で爆ぜて、解き放たれた焔がナギトを煽る。

 

 

「ぐうっ!」

 

 

 

マクバーンは魔剣で神威残月をガードし、ナギトはジリオンハザードをそもそも受けてない。爆炎の煽りを受けただけ。互いにノーダメージ。

それなのに、憔悴の度合いではナギトが先を行っている。

 

 

ブルブランにしろデュバリィにしろゼノにしろレオニダスにしろ、ここまで煌魔城を駆け上がって来るのに突破してきた敵たちは、正直言って強いが、度が過ぎているわけではない。

 

だがこのマクバーンだけは格が違った。未だに底が見えない。敗北の2文字が頭を掠め───、あるいは戦いを見守っているⅦ組を先行させるかと思案する。

 

 

「ククク………いいぜ《剣鬼》──いやナギト・シュバルツァー! ここまで愉しませてくれたのはあの阿呆以来だ」

 

 

その選択肢だけはありえない。

ナギトを除くⅦ組で煌魔城最上層に行けばそれはこれまでの焼き増しに過ぎない。

 

だからこそ、ナギトはここでマクバーンを下さなければならない。

 

 

「喜んでくれて何より。………ふぅ、仕方ない。これはまだ未完成だが────」

 

 

ナギトの強みは、闘気の総量にある。それを用いてSクラフト級の戦技を連発して相手を圧倒するのが───見せかけのスタイル。

本来は技術で翻弄するのがナギトのスタイルだ。

 

そしてこの新たな戦技は、その2つのいいとこ取りを目的に考案したもの。

 

 

 

「───周天・緋浴連理の陣」

 

 

 

ナギトの闘気が拡散した。ナギトを中心に半径5アージュほどの半球場にドームが広がる。それはきらきらとした緋色の欠片が舞う空間だ。

 

 

それは言ってしまえば、ナギトの闘気の領域。

 

 

 

「へぇ……?」

 

 

 

マクバーンは、その意味を理解していない。しかし興味は惹かれた。

あの《剣帝》と同じくらいに自分を愉しませてくれる男が、未完成ながら披露する代物だ。これならマクバーンに対抗できると踏んだ戦技だ。

 

 

「さあ!もっと俺をアツくさせてみろ!」

 

 

「来い…《火炎魔人》!俺の結界を───」

 

 

 

 

 

 

「───その必要はない」

 

 

 

声が。

 

 

マクバーンの足元に展開する2つの魔法陣。それは一瞬で形を成して滅光を立ち上らせる。

 

飛び退いて躱したマクバーンを絡め取ったのは鋼糸。その五体を縛り付ける《死線》。

 

 

そして、そこに刻まれるのは────

 

 

 

「───奥義・洸凰剣!」

 

 

 

アルゼイドの絶技。光が収束した極限の一振り。帝国最強を謳われる《光の剣匠》の宝剣。

 

 

 

「おおっ……!」

 

 

魔人マクバーンは斬撃に押されるようにして柱に背中を打ちつけて膝をついた。ここまでナギトができなかったマクバーンにダメージを与えるという事柄をやってのけたのは4人の勇士。

 

それがⅦ組を守るようにしてマクバーンと対峙している。

 

 

「待たせたね君たち。真打登場…といったところかな?」

 

 

「殿下!」

 

 

《放蕩皇子》オリヴァルト・ライゼ・アルノール。銃の腕前もさる事ながら卓越したアーツ使い。

 

 

 

「遅くなったが……何とか間に合ったみてぇだな」

 

 

「トヴァル!?」

 

 

 

《零駆動》トヴァル・ランドナー。その異名の通りアーツの扱いがずば抜けた遊撃士。

 

 

 

「ええ。…どうやらナギト様が気張ってくれたご様子。Ⅶ組の皆様も…もう安心ですわ」

 

 

 

「シャ、シャシャ…シャロン!?」

 

 

《死線》シャロン・クルーガー。《身喰らう蛇》執行者No.Ⅸの座を頂く暗殺者にしてラインフォルト家に仕えるスーパーメイド。

 

 

 

「よくぞ粘り、耐え忍んだ。ここは我らに任せるが良い」

 

 

「ち、父上!」

 

 

 

《光の剣匠》ヴィクター・S・アルゼイド。

 

 

 

その4人が、救援にやってきていた。

 

 

 

「よくやってくれたナギト……また成長したな」

 

 

そう言ってナギトの肩を叩き、その前に出てマクバーンと相対したヴィクターは宝剣ガランシャールを構えた。

 

 

 

「………待ち侘びましたよ」

 

 

ナギトは安心の一息と共に“周天・緋浴連理の陣”を解く。

 

 

ヴィクターと対峙するマクバーンはすでに立ち上がり、剣を担いで余裕は崩れない。

 

 

「ハハッ、勢揃いだな。こりゃあそいつらや《剣鬼》一人よりよっぽど俺をアツくさせてくれそうじゃねえか。……だがその面子でも俺は倒せない……それは《光の剣匠》───アンタも判ってるんだろう?」

 

 

マクバーンはすでに洸凰剣で受けた傷を修復しており、その全身、魔剣から立ち上る焔はナギトと戦っていた時より熱く燃え上がっている。空間すら焼け爛れていると錯覚するほどの炎熱がマクバーンの周囲を渦巻いていた。

 

 

「さて…始めるとするか? ま、この力の前には抗うだけ無駄だと思うがな」

 

 

そこに存在するだけで世界を灼く《火焔魔人》の有様を前には、確かにこの面子と言えど勝利をもぎ取るのは至難に思えた。

それがナギトの直感で、近しい実力のヴィクターも同じ見解だろうと視線をやる。

 

しかし。

 

 

「───若いな」

 

 

ヴィクターはその不安を一蹴した。直後、吹き出す闘気は練達のもの。

 

 

「“剣”や“力”は“己”の続きにあるものに過ぎぬ。その尋常ならざる力、確かに私を凌駕しているだろうが───、振るうのはあくまで“己”の魂と意志────最後にはそれがすべてを決する!」

 

 

宝剣が極光を放つ。それはヴァンダール流と並んで帝国の双璧とされるアルゼイド流最強の剣。“光の翼”だ。

 

 

 

「子爵閣下の言う通りさ───、我々はそれをこの内戦で示してきた……《第三の風》として!」

 

 

 

ヴィクターに続いてマクバーンの前に立ったのはオリヴァルトだった。魔人に銃口を向ける金髪の美丈夫は、それこそ《光の剣匠》に勝るとも劣らぬ気迫を秘めていた。

 

 

「《放蕩皇子》だったか……たしかアンタはリベールの異変で………」

 

 

「ああ、あの《剣帝》と戦った事もある。その僕から言わせてもらえば………君より彼の方が強いよ………ずっとね」

 

 

オリヴァルトのそれはもちろんヴィクターの論に則った判定だ。《剣帝》レオンハルトは剣の腕もその異名に違わぬものだったが、何より強かったのはその魂と意志であった。

 

ヴィクターとオリヴァルトの言葉を受けてマクバーンは大笑した。

 

 

「ハハ、いいだろう!だったらアンタらの魂と意志、灼き尽くしてやるぜ!」

 

 

 

 

こうして《火焔魔人》マクバーンとヴィクターをはじめとする猛者4人によるバトルが始まった。

 

そこはもはやⅦ組の立ち入る事のできる領域ではなく、隙を見てヴィクターが道を切り拓いた。

 

 

 

 

「さあ、征くがいい───! そなたたちの本懐を遂げるために!」

 

 

 

 

 

 

魔人の焔に晒されながら、ヴィクターらは一歩も引かずにⅦ組に明日を託した。

 

 

その想いに応えるためにも、Ⅶ組は先に進む。

 

 

 

 

そして煌魔城最上層《緋の玉座》に辿り着く。

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