Lobotomy Corporation~Unbekannt Unterabteilung~   作:御鏡

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黄衣の管理人

「………入るぜ、管理人。」

 

ゆっくりとした足取りで歩を進め、管理人室の前に辿り着いたロンドンと桔梗だが、ロンドンは暫し扉を開けるのを躊躇った様子を見せていた。しかし、意を決した様子で扉をノックし、中に向かって声を掛ける。

すると、どうした事か扉は自動で開いた。一歩入室した桔梗は、異様な雰囲気を放つ人物を見た。

 

「……………」

 

黄衣を纏い、【X】と書かれた雑布を顔に貼り付けた人物を。

 

「新人を連れて来たぜ。倒れた方だ……んじゃ、最終確認的な奴だからさ。俺は部屋の前で待ってるよ。」

「はい、解りました。」

 

ロンドンが退室すると、管理人と呼ばれた人物は桔梗の目の前の椅子を、細く長い指で指す。

座れ、と言う事だろう。恐る恐る、緊張した様子で腰を下ろす桔梗に、管理人は名刺を差し出した。

 

【管理人X ハスター

 

職業と名前以外書いていない、素朴な名刺。桔梗がそれを胸ポケットに仕舞う頃には、管理人は既に桔梗の履歴書を取り出し、それを眺めていた。沈黙が二人を包む中、不意に管理人が口を開く。

 

「小日向桔梗……時に、音楽は好きか?クラシックが望ましいが。」

 

低く掠れた男の声が、その場に響く。少し遅れて、桔梗はこれが管理人の声であると言う事を理解した。

桔梗が首を縦に振るのを見て、管理人は満足そうに息を吐く。

 

「…暫くは安泰だな。小日向桔梗、貴様にとあるアブノーマリティの担当を命じる。」

「い、いきなり担当とか付けられるんですか…!?」

「エージェントが何人いようとデメリットはない。それに、担当を任せたいアブノーマリティを担当している職員が一人しかいない今、お前の力が必要なのだ。やってくれるな?」

 

有無を言わせぬ静かな声に、桔梗の身体は動かなくなる。まるで、金縛りにでもあったかのように。

僅かに捲れた雑布の下で、管理人は口角を上げて言った。

 

「エージェント桔梗。只今を以て【T-01-31:The Silent Orchestra】の担当を命ずる。職務は明日より開始、本日はマニュアルを読んで休まれたし。」

 

モニター下の棚から"新人用"と書かれた冊子を取り出し、桔梗に手渡すと、管理人は桔梗に背を向けモニターを見上げながら言った。

 

「……もう良いぞ。」

「…あっ、はい。失礼しました。」

 

管理人室を出て行く桔梗の耳に、微かに声が聞こえた。「私は彼を満足させ過ぎたようです。」と。扉が閉まると、それきり何も聞こえなくなった。

 

 

「私は彼を満足させ過ぎたようです。今は演奏会(コンサート)の準備をしているようですので、管理人は指示をお願いします。」

 

インカム越しに伝えると、彼は武器として支給された鎌を握り締めて感嘆の息を吐いた。

 

「まさか、これをアナタに振るう日が来るとは思いませんでしたよ。」

 

その背中からは悲壮感が漂うものの、狂喜に満ちた声を発し、不気味な笑みを浮かべている。しかし、彼はそれを自覚していない。

何故なら、彼は(ルーカス)であって、(ルークス)ではないのだから。




・ハスター=ド=カルト[ハスター] AGE:?? GEN:Man Management
黄衣に身を包み、【X】と書かれた雑布を顔に貼り付けている。本名はハスター・ド・カルトと言うが、大概の職員に"管理人"と呼ばれているのを見るに、知られていない可能性が高い。
他の支部の管理人が職員の死に嘆き悲しむのに対し、「弱さは罪。死は己を裁く罪であり救済だ。」と切り捨てる非道さを持つ。職員を蔑ろにする方が慣れている所為か、アンジェラとの関係は良好。

・収容違反中のアブノーマリティ
 ・【T-01-??:???】

・職員:今日の一言
 ・ロンドン「何でこんな時に限ってアイツが脱走するんだ?新人が"退社"しないと良いんだが…」
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