Lobotomy Corporation~Unbekannt Unterabteilung~ 作:御鏡
施設内に警報が響き渡った。あるエージェントは武器を片手に廊下を駆け抜け、あるエージェントは逃げ惑うオフィサー達を誘導し避難させ、そしてまた、ロンドンと言うエージェントはどうしたものかと頭を抱える。
「何で今日に限って彼奴が脱走するかなぁ…」
「あの、どうかしたんですか?」
「…お前、管理人に何かしらアブノマの担当任せられただろ?あ、アブノマってアブノーマリティな?まあ、アブノマは結構な数がいる訳なんだが…中でも特に驚異的な力を持つ奴が脱走しちまったんだ。」
「…えぇ!?そ、それって大丈夫なんですか!?」
桔梗の言葉に、ロンドンは首を横に振り背中の【Justitia】を手に持つ。しかし、一向にその場から動こうとはしない。
どうしたのだろうと、桔梗が声を掛けようとした刹那、彼女の方をゆっくりと見てロンドンは口を開いた。
「…新人。お前の名前は?あ、俺はロンドンな。何か知らんが教育係任されたからヨロシク。」
「宜しくお願いします。私は桔梗と言いますが…」
「解った、桔梗な。お前は兎に角避難してる奴等に着いて行け。それだけで良い。俺と共に行動する必要はねぇんだ。」
「ッロンドン先輩!?」
人波の中に桔梗を突き飛ばすと、ロンドンは逆側へ向かって走り出す。扉を二枚程挟んですぐそこにいる、静かなオーケストラの元へ。
「誰も死なせない。絶対に。そんな事をさせるものか。」
一人小さく呟くと、ロンドンは扉を開き、標的であるアブノーマリティに斬り掛かった。静かなオーケストラの指揮者は指揮棒を持ち、今にも演奏を始めようとしている。
既に静かなオーケストラと交戦していたルークスは、【Da Capo】で何度も何度も彼を斬り付けている。
「―――遅かったですね、ロンドンさん。あなたに来て戴けなかったらどうしようかと思っていましたよ。」
「お前の心配は無用なんだよ。音楽狂が…!第一楽章来るぞ、下がってろ!」
眼を爛々と輝かせて笑うルークスに、ロンドンは多少の怒りを交えた声で言った。直後、二人以外の声が響き、それに続いて、柔らかく緩やかな音楽が。
『そんなに怒りを露にしては、何を楽しむ事も出来ませんよ。もっと気を落ち着かせては如何ですか?例えばそう、私達の音楽を聴けば気も収まるでしょう?』
「残念、今の俺はWHITE吸収…全部お前のお陰だけどな!」
「嗚呼、音楽、美しい音、全てを魅了する音色。私が私であるために必要なもの……美しい…!」
ロンドンは静かなオーケストラの指揮者を何度も斬り付けるが、元よりALEPHであるそれを一人で鎮圧するのは至難の業。
そうこうしている内に、彼が奏でる交響曲は第二楽章に突入し、ロンドンの攻撃も彼には通用しなくなった。舌打ちを一つ残し、彼女は音楽に陶酔するルークスの襟首を掴んで一度部屋を出る。
後に残された静かなオーケストラの指揮者は、指揮棒を振るいながら哀しげな声を漏らした。
『嗚呼、何故。何故行ってしまうのです。私達はただ、皆様に音楽を提供し、喜んで戴きたいだけなのに…』
感情とは、生きとし生ける者全てが持つ、その身の一部。如何に姿形が違えども、人もアブノーマリティも大差は無いのだと言う事を、彼は証明しているのだ。
余談ですけど、この話が初めて投稿された10月27日ってルークスの誕生日なんですよね。
ロンドン「ルークス、おたおめ。」
ルークス(ロンドンさんっておたおめとか言うんですね…ちょっと意外でした。)
・収容違反中のアブノーマリティ
・【T-01-31:The Silent Orchestra】
・職員:今日の一言
・桔梗「ロンドン先輩…どうして、一人で行っちゃうんですか…もし、アブノーマリティさんを倒せなかったら、先輩がっ…」