Lobotomy Corporation~Unbekannt Unterabteilung~   作:御鏡

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鎮圧作業

一方、桔梗は抽出チームのメインルームにいた。部屋の隅に押しやられ、どうすれば良いのかと考えている。

 

「なぁ管理人。僕も鎮圧行きたいねんけど。え?第三楽章までに鎮圧せなあかんのやし、寧ろええと思うんやけど…」

 

インカム越しに管理人と話す、青髪の男を見付けた。手にはクロスボウらしきものを持っている。

 

「遠距離攻撃なら…もしかしたら、力になれるかも知れない。」

 

自然と桔梗の口から言葉が零れた。しかし、誰もが"死にたくない"と叫喚する部屋の中では、悲鳴に掻き消され何も聞こえない。

桔梗は、青髪の男の背後から静かに歩み寄り、素早くその手の中の武器を奪った。

男が会話を中断し、振り返る。驚愕と焦り、そしてもう一つ、言葉に出来ないような感情の籠った目で、桔梗を見た。

 

ロンドン=シュレディンガーを救いたいのならば走れ、小日向桔梗。

 

管理人が、嘲笑を零した気がした。今の今まで、     

流され続けた身体が、自由に動く。

桔梗は素早く人波を掻き分け、ロンドンと別れた場所に向かった。後ろから、武器の本来の持ち主が追いかけて来る。

 

「ちょっと待てや!君、僕の武器奪って何処行きはりよる気や!?」

「ロンドン先輩を助けに行くだけです!しかし私は新入社員、強い武器なんて持ってません…だからごめんなさい、少し借ります。先輩を助けたら、すぐ返しますから!!」

「ふざっけんな責任取らされるんは僕なんやぞ!?」

 

桔梗の逃走劇は続く。

 

 

そして、静かなオーケストラの演奏も続く。

 

「ルーカス、そろそろ第三楽章だ。とっとと鎮圧すんぞ。」

「ええ、ええ。解っております。しかしながら、もっと音楽を聴いていたい欲求に駆られているのです。」

「お前の音楽に対する執着心は相変わらず凄ぇな。呆れる通り越して尊敬するわ。」

「皆々狂気に呑まれているのは、重々承知の筈ですが?」

「ッフフ、それもそうだな。」

「せやから待て言うとるやろ!?考え直せ!君はまだ新人なんやから!!」

 

ロンドンとルークスが、メインルームに繋がる扉の前に座り込み会話を交えていると、聞き覚えのある声と足音が響いてきた。

反対側の扉が開く。扉の向こうから姿を現した人物に、ロンドンは絶句した。

 

「ッ…桔梗、何で戻って来た。逃げろって言ったじゃねぇか…!」

「先輩が心配だからですっ!」

「僕も一応君の先輩に当たるんやけど!?」

 

扉の向こうから、先程までとは違う曲調が、微かに響いた。

ふらふらと立ち上がったルークスが扉を開け放ち、【Da Capo】を構えてメインルームの中へ突入すると、嬉しそうな声が、桔梗の耳にも届く。

 

お帰りなさい、ルークスさん。聴衆を増やしていてくださったのですね。私達の音楽を聴きたいと仰る方々を呼んできてくださった。

「別段そう言う訳ではありません…よっ!」

 

ルークスが【Da Capo】を静かなオーケストラの指揮者に振り下ろすと、彼は微かに顔を歪めた。否、実際にはそんな事は無い。

何故なら、彼はマネキンなのだから。しかし、桔梗の眼にはそう見えた。

 

演奏が始まるより先に幾分かダメージを与えていた所為か、管理人室のモニターに映し出された彼の体力ゲージは残り僅かになった。

静かなオーケストラの指揮者が、少し拍を置いて指揮棒を振り上げ、高らかに言う。

 

さあ、新たな聴衆へ、歓迎の曲を。第四楽章と終曲を!

「あと少し。なのに、間に合わな…っ!?」

 

突如音楽が鳴り止み、ルークスが再び振り下ろした鎌は宙を斬る。静かなオーケストラの鎮圧が完了したのだ。

彼は一先ず胸を撫で下ろしたが、ふとある事に気が付いた。止めを刺したのは一体誰だったのかと。

 

私の攻撃はオーケストラさんが消えた後。ロンドンさんの武器では既にダメージを与えられない。新人と思われる女性を追って乱入して来た累さんの手に武器は無い…

では、先刻やって来た新人らしき女性はどうでしょう?

 

様々な事を考えながら扉の方を向いたルークスは、思わず目を見開いた。

何故なら、そこには【Reverberation】から矢を発射した体制のまま、静止している桔梗の姿があったのだから。




・瑠璃川 累[ルリカワ ルイ] AGE:29 GEN:Man TEAM:Security
桔梗の後を追って静かなオーケストラの前まで来たエージェント。日本人に見える。青い髪が特徴的。
一応オールアラウンドヘルパーと無名の胎児の担当だが、別段苦手な作業やアブノーマリティもいないため、事実上全てのアブノーマリティの担当をしている。
時折彼は妙な言動をする事がある。例えば、普段の一人称は「僕」であり、口調も関西弁なのだが、それが「ウチ」で良く語尾を伸ばして喋る時の彼は彼らしからぬと思う。
そう言えば、彼は確か一人の兄を亡くしていたが、「兄さんは何時でも僕と一緒におるんやで」等と言っていた事もあった。
そして、もう一つ不可解な事に……職員の名簿には、彼の名前は何処にも無いのである。代わりに、「"憂鬱"の鬱」と言う、存在しない筈の職員の名がそこにあるのである。
(関西弁はガバガバです。)

・収容違反中のアブノーマリティ
 ・【Nothing】

・職員:今日の一言
 ・累「言うて僕自己紹介まだしてへんけど…まぁ、宜しゅう頼んますわ。」
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