Lobotomy Corporation~Unbekannt Unterabteilung~   作:御鏡

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案山子

今日、新しい人間がこの寮に来るって聞いたから、出迎えてやろうと思うんだ。

 

 

桔梗が立ち竦み、静止したままでいるのには、二つ程理由があった。

一つは、ロンドン達を助けたい一心で放った矢が静かなオーケストラに当たり、そのまま鎮圧出来てしまった事への驚きから。

そして、もう一つは…鎮圧される瞬間、静かなオーケストラの指揮者が微笑んだように見えた事から。

彼女は以前の職場の所為もあり、非常に疲れているのだ。だから、有り得ない筈のものが見える。

 

そう言えば、人には見えないものが私にだけ見えた事もあったな…まさか、ね。

 

「おーい、生きとりますー?」

「え…はい。あの、えっと…武器、すみませんでした。」

「いや、それあんさんにやるわ。管理人の命令やし。」

 

青髪の男が桔梗の眼の前で手を振り、彼女は意識をその場に戻す。そして、奪ってしまった武器を返そうとした。しかし、彼はもう良いのだと言い、煙草を吸い始める。同時に、アナウンスが響き渡る。

 

「本日の業務は終了だ。寮に戻って休むが良い。」

 

管理人がそう言うと、アナウンスはブツリと音を立てて切れた。

青髪の男が、スマホを取り出してメインルーム内の写真を撮り始める。

 

「あの、何してるんですか?」

「おん?嗚呼、被害状況の確認用や。寮で研究会開かれるし……せや、自己紹介しとこか。僕は瑠璃川累言います。累でええよ。寮監の親友やから、何かあったら相談し。ほな、また寮で会いましょや。」

 

累と名乗った男は、軽く頭を下げるとその場を去った。

 

「相変わらず自由人ですね。累さんらしくて素敵だとは思いますが……」

「いや、自由過ぎても問題だけどな?」

 

ルークスは微笑みながら呟くが、ロンドンは溜息を吐きやれやれと首を振る。ぱん、とルークスが軽く手を叩いて口を開いた。

 

「では、我々も帰りましょうか。桔梗さんを寮に案内して差し上げましょう!」

 

 

研究施設から離れた森の中には、大体研究施設と同じくらいの大きさの建物が佇んでいる。そこは、職員達が日常的に暮らす寮。ある程度は自給自足出来るように、整えられた場所だ。

 

「寮と言うより、ホテルみたいですね。」

「解る。俺も最初同じ事言ったわ。」

「私…私は、正直こんな広々とした場所に、私なんかが住んで良いのかと……驚愕しましたね。」

 

入口付近の畑の前で、三人は寮を見上げる。各々が思った事を口に出していると、不意に何処からともなく声が響き渡った。

 

Do you know who I am…♪

「…来たか。」

「来ましたねぇ…」

「な、何が始まるんですか…!?」

 

不安そうな声を漏らす桔梗に、ロンドンとルークスは同時に桔梗の方を向き、口角を上げ、息をピタリと合わせて言った。

 

「「新人を迎えるための、洗礼の儀。」」

ウケケケケケ!新人、新人、お前の名前は何かなァ!?僕はKing!即ち王だ!!

「ひっ…!」

 

畑の中に立っていた南瓜頭の案山子が、不気味な笑い声を上げながら桔梗の前に躍り出る。腰を抜かしたのか、彼女はその場にぺたりと座り込んだ。

 

怖がる事ねぇだろ?だって、僕等はもう―――同じ穴の狢じゃねぇか。

「ち、違います…!こ、怖いので、止めてくださ…い!!」

そこまでです。あの時の痛みを今一度味わいたいのならば、続けて戴いて構いませんが。

 

ルークスの纏う雰囲気が突如変化し、案山子の首に【Da Capo】を添える。案山子が笑うのを止めた。

 

「……悪かったな、新人。僕はジャック・ザ・パンプキング。パンプキングって呼んでくれよ。ハロウィンキングで南瓜の王だ。覚えとけ。」

「は、はい…私は桔梗、です……あの…な、何で南瓜を被ってるんですか…?」

「だって…僕に頭とか必要ねぇし。」

 

そう言って、パンプキングは渇いた笑い声をあげた。因みに、こう見えて彼は寮監である。ロンドンは、ルークスとパンプキングに対し、哀れみにも似た視線を送っていた。未だに悪夢から解放されていないのか、と。




・ジャック=ザ=パンプキング[パンプキング] AGE:15 GEN:Man Dormitory Supervisor
頭に南瓜を被った奇妙な少年。漆黒のマントに身を包みながら、その下はオーバーオールを着ている。
子供でありながら寮監を務めているのは、ハスターに拾われた孤児であるから。
南瓜の中身は誰も見た事がない。互いに「大親友だ」と言い合う、エージェント累でさえも。

・収容違反中のアブノーマリティ
 ・【Nothing】

・職員:今日の一言
 ・ルークス「私も彼も、悪夢から逃げる事は出来ないのです。何故なら、それらは我々の心の奥底に、根深く寄生してしまっているのですから。」
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