あべこべ道! 乙女が強き世界にて   作:マロンex

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第13話 英国淑女

「...これでよし。...ほれ携帯返すぞ、河野」

 

「ちょっ、これ大丈夫なの?」

 

「平気平気!お互い勝利の報酬がある方が燃えるってもんよ!」

 

「報酬って...ただ俺とご飯食べに行くだけじゃん...あ! もしかして!」

 

「いや!べ、別に下心とかあるわけじゃ...」

 

「夕食代!俺に奢らせようとしてるでしょ!? 今月ピンチなのに勘弁だよ!?」

 

「...まあ、期待はしてなかったけどここまでずれた反応されるとなぁ...」

 

ガマ口ザイフを開き、残金を確認しているとちーちゃんは何故か肩をガックリと落とし、ため息をついていた。

 

「いいか! 2人きりで食事ってのはなぁ! 特別な間柄の...」

 

<アンツィオ大学の皆様、まもなく試合前合同ミーティングに入ります。まだお集まりでない選手の皆様は至急控え室の方へ...

 

「あ、呼ばれてるみたいだよ」

 

「ぐ...タイミングのわるい...と、とにかくだ!河野! 今日は私のカッコいい姿と!私と何を食いたいか!これだけ考えて観戦してろ! いいな! 」

 

「はいはい、頑張ってねー」

 

控え室に走り去ったちーちゃんを見送り、先ほど聞いた観戦場へ向かう。観戦場に着くとまだ人はまばらだった。

前の方の席を陣取り、ベンチに座って大きな会場をぼーっと眺めていた。

 

(まぁ、まだ朝だしな。 とりあえず席は大丈夫そうだし、屋台でも見てこうかな。あ、でもまだ準備中かなぁ...)

 

「お隣よろしいかしら」

 

「えっ、あ、はい。どうぞ」

 

突然話しかけられてびっくりして振り返ると、赤いジャケットをきた、金髪で青い瞳の女性が立っていた。

「ごめんあそばせ」と現代離れしたお嬢様言葉?を使った彼女はなぜか閑散とした観客席で自分の隣に座ってきた。

 

「...あなた、お名前はなんていうの?」

 

「えっ?...えっと、河野です...。河野ひろです」

(なんか近いなこの人...)

 

「ひろさんですか。美しいお名前ですこと...」

 

「あ、ありがとうございます...。ところであなたは...」

 

「ふふっ、名乗るほどのものでも無いですわ。強いて言えば美しい花に誘われた蜂、とでも言っておきましょうか」ギュッ

 

「は、はぁ...。そう、ですか」 スッ

 

よくわからないことを言いながら、ナチュラルに手を握ってきた謎の女性の手を軽く払い除ける。やばい、この人、マジで苦手なタイプかもしれない。

 

「ふふっ奥手なところも可愛らしいわ。...今日はお一人で?」

 

「え、えっと...まあ、一人...ですけど」

 

「あら! それは寂しい! それなら私と一緒に見ませんこと? 専用の席でおいしい紅茶をご馳走いたしますわ」ギュッ

 

「ちょ、どこに! まだ一緒に見るなんて..」

(な、なんだこの力! 全然抵抗できない!)

 

「安心なさって、こう見えてわたくし戦車道と紅茶の知識には自信がありますの。きっとあなたも楽しめますわ」

 

座っていた席からグッと腕を引っ張られ、無理やり連れて行かれそうになる。抵抗しようにも、自分が非力なのか全然振り解けず、なすがままに引っ張られそうになった時、後ろから声がした。

 

「おい、河野に何をしている」

 

「ま、まほさん!」

 

「...あら、西住まほさん。お久しぶりですわ。...悪いんですが今取り込み中なの。邪魔しないでくださいます?」

 

「だったらその子から手を離せ、これは警告だ。二度目は無いぞ」

 

普段から凛とした表情をした彼女にさらに凄みがかかり、金髪の女性を睨みつける。少し怯んだのか掴んだ手が離れる。

少しの静寂の後、再び元の表情に戻って話始める。

 

「...ふーん。そういうことですか。流石西住流、こういうところも手が早いんですわね」

 

「どう思われようと構わんが...。お前こそずいぶん手癖が悪くなったな...聖グロリアーナ女学院2番隊車長、ダージリン。最近の言動を鑑みると、ここには来ないと思っていたのだがな」

 

「あら、ずいぶんわたくしにお詳しいんですわね。わたくし不要な練習は省いて効率化する主義にしましたの。美しい男性方に会う時間はいくらあっても足りないですから」

 

「...だから他校の練習試合に来てまで男漁りか? ずいぶん高尚な時間の使い方をするようになったな」

 

「へえ、いうじゃありませんか」

 

自分を挟んで睨み合いを続けている二人にの後方からまたしても誰かの声。

 

「あー! いたいた! もう! またダージリン様はこんなところでほっつき歩いて! 行きますよ! 皆さん心配してます、よ!」

 

ダージリンさんよりも小柄に見えるその女性はすごい剣幕で彼女の首ねっこを掴み、手慣れた動きでズルズル運ぶ。

 

「あ、ペコ...ちょっとお待ちに。まだ話は...ヒ、ヒロさん! ポケットに連絡先を入れておきましたの! あなたからのご連絡待ってますわねー!」

 

「げっ...ほんとだ。いつの間に...」

 

「ちょっと!ダージリン様うるさいです!...そこの方々!すみません!! お手数おかけしました!! すみません!!」

 

引っ張られていったダージリンさんを眺め、嵐が過ぎ去ったことを悟った俺は思わず尻餅をついてしまった。

まほさんは「大丈夫か」と手をひいてくれた上、持っていた飲み物を一つ自分に渡し落ち着くまで待っていてくれた。

 

「す、すみません。飲み物までいただいちゃって...」

 

「気にするな。元々それはお前に買ってきたやつだからな。それより落ち着いたか?...すまなかったな、怖かっただろう」

 

「ま、まほさんが謝ることじゃ無いです! それに俺もちゃんと断らなかったのも悪いと思ってますし...」

 

「あいつも悪い奴じゃ無いんだが...少々欲望に忠実すぎる部分が大学では目立ってな...」

 

「あー...確かにそんな感じですねぇ...あ、そういえばどうしてここにまほさんが? 今日観戦するつもりだったら朝一緒に行けば...」

 

「あー、いや、私も別の会場の視察に行く予定だったのだがな、友人になぜか今日の試合どうしても見に来て欲しいとせがまれてな...」

 

<まもなく、選手入場です。本日の試合は大洗大学対アンツィオ大学です。ルールは戦車道公式大会に基づいた殲滅戦、制限時間は...

 

「あ! 始まりましたね! うわー! 楽しみー!」

 

「なぜだろう...どうも嫌な予感がする...」

 

ー会場某所

 

「会長、西住まほさん、来てます。...隣には...誰でしょうか? 見慣れない男性がいます」

 

「あーほんとだねぇ、誰だあのかわい子ちゃん、彼氏とか? ...まっ、いいよいいよ。その方が面白そうだし」

 

「...かしこまりました。では計画通りに」

 

「にっししっ! さーて! 西住まほ! 練習試合、盛り上げてくれー!」

 

 

つづく




感想、ご意見気軽にください。励みにします。

今回はアンケート結果を反映して、元グロリアーナを初登場させました。
今後もガンガン出る予定ですのでご期待ください。
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