あべこべ道! 乙女が強き世界にて   作:マロンex

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サンダース大学
自由な校風が売りの進学校。入学費用が高い分、巨大なキャンパス内には映画館、ボーリング場、野球場など、ありとあらゆる娯楽が入っている。全寮制で学年別に分かれている。
何をしても基本的に自由な校風な一方で、入学後のスパルタ教育と実力主義、そして単位の習得難易度の高さから、4年間で1/4はリタイアしてしまう恐ろしい場所でもある


第22話 ミスサンダースの頼み事

―ここサンダース大学では毎年行われている外部向けの大型イベント開催に伴い海外から多数の著名人が参加しており・・・

 

島田さんと出会ってから数日が立ったある朝、弟とテレビを見ながら食事をしていると、大学特集として、リポーターがサンダース大学を取り上げていた。

嬉々として声を張るリポーターの後ろにはきらびやかにレッドカーペットが敷かれたパーティ会場ではセレブ達が所狭しとイベントを楽しんでいる様子が映っていた。

 

「...相変わらずド派手だねぇ、この大学は。パーティー会場だけで兄ちゃんの大学くらいありそう」

 

「へえ、戦車道大会でちょっと見たことあったけど、こんな大きな大学だったんだ」

 

「大きいなんてもんじゃないよ! 普通の大学の10倍はあるって話だよ。なんと構内で電車が通ってるって噂もあるくらいで」

 

「...随分詳しいんだな。俺はさっぱりだな、なんか興味を引くものでも?」

 

普段からあまり感情を表に出さない弟が割と興奮気味に話していることから察するに、

 

「ふふっ。当たり前じゃん。なんてったってこの大学は超エリート育成大学だもん! 超大金持ち、有名人、インフルエンサーを多数輩出してる実績もあるんだよ!この大学の人と在学中にお付き合いでもできようものならそれはもう玉の輿!将来安定間違いなし! くうぅ! 誰でもいいからお近づきになれないかなぁ!」

 

普段からあまり感情を表に出さない弟が割と興奮気味に話していることから察するに、将来のパートナーとして優良物件この上ない人材があふれている..要は、元の世界でいうイケメン高学歴高収入男が集まっている大学といった感じのようだ。

 

「サンダース大学ねえ..」

 

頬付けをつきながら、スマホでサンダース大学について検索をしていると、テレビが金髪のある女性のインタビューに移った。美しい外見もさることながら、自信満々なその立ち振る舞いはまさにカリスマ性を絵にかいたような姿だった。

 

ーさて、今年のミスサンダースに最も近いといわれているケイさん!先日も戦車道では素晴らしい活躍でしたね!まずはその強さの秘訣から...

 

「..ミスサンダース? なんだろう、学校代表的な奴かな?」

 

「ほう、兄ちゃん、ミスサンダースに興味を持つとはお目が高い。流石、血は争えないって奴かな?」

 

「...別に目を引いただけで興味は...」

 

「こら!龍弥! いつまで飯食ってんの!高校遅れるわよ!」

 

「うわ! やばいもうこんな時間だ!! 行ってきます!」

 

「...結局なんなんだ、ミスサンダースって..」

 

テレビをリビングで見ていた母の怒号が飛び、弟は急いで家を飛び出してしまった。あまり気になってはいなかったが、生殺しになってしまった分、ちょっともやもやしながらもいつも通りの時間に大学に向かうのだった。

 

「...なんだ? やけに騒がしいな...」

 

キャンパスに入ろうと正門に向かうと、そこには大量の生徒で人だかりができていた。

中心ではスマホで写真を撮る音や歓声が聞こえるため、どうやらまたいつぞの時のように有名人が来ているようだ。

 

(うーん、早く教室に行きたいんだけど...思いのほか人が多いな...)

 

人混みが嫌いなのとさして興味もないため、通ろうと左へ右へルートを探したがどうにも人が多く、通れない。

 

(あ、よかった! 端っこは人が少なそうだ 人が増えないうちに急いで...)「うわっ!!」バキッ

 

人だかりを無理やり抜けようと通った際、ほかの生徒の足に引っ掛かり、大きな鈍い音を立て、抱えていたトートバックの中身をぶちまけながら器用にこけてしまった。

その瞬間、先ほどまで騒いでいた生徒たちの視線は一気に自分のほうに集中した。

 

「ってぇ...最悪...恥ずかしくて死にそう...ううっ」

 

「...何やってんだお前...ったく」

 

恥ずかしさと痛みで悶絶している自分の横で手慣れた手つき拾い上げる女性。

涙目になりながらも顔を上げるとよく見知った顔がそこにはあった。

 

「あ、すみません、ありがとうござ...って、ち、ちーちゃん!? え? なんでここに?」

 

「私も呼ばれたんだよ、あそこの馬鹿に...てか顔、鼻血出てるぞ ほれ」

 

「あ、ありがとう...」

 

「まったく...世話の焼ける...」

 

ぶつくさ言いながらも、イケメンムーブでハンカチを貸してくれたちーちゃんは、再びしゃがみこんで残りの俺の荷物を拾ってくれた。

 

「えへへ、ちーちゃんって優しいね」

 

「..っるさい! 急に変なこと言うな! 女として当然だ!」

 

「えー? なんで怒ってるの?」

 

「あっ! ごめんね! ごめんね! サインはまた今度でね! ...ごっめーん!千代美!おまたせ!」

 

ちーちゃんとやり取りをしていると後ろから金髪の女性が近づいてきた。

遠巻きに見ていたのでわからないが、人だかりが移動しているところを見るとおそらく中心にいた人物であろう。

 

「ほんとだよ! なんだこの騒ぎは!」

 

「アハハっ! ごめんごめん! 人探ししてたら思いのほか人が集まっちゃて...ほら私最近ちょろっと有名人だからさ」

 

「はぁ...お前といるとほんとに疲れる...」

 

「ごめんごめん! 私もこんなことになるとは思わなくて! あっ君もごめんね! えっと...名前は」

 

「か、河野です。ちーちゃ..安斎さんとは幼馴染で...」

 

「河野...? OH! あなたが河野さんね! ラッキー!探す手間が省けたわ! ここじゃなんだから、ちょっと近くのカフェまで行きましょ! どうしても頼みたいことがあって! 千代美もほら早くー!」

 

「お、おい!」

 

急に近づいてきたかと思うと鬼のような速さで俺の手をひいた彼女は、近くのカフェまで半ば強制的に連れてかれた。

 

「え、えっと...はじめまして...河野って言います」

(といいつつ...なーんか見たことある気がするんだよなぁ)

 

「初めまして! サンダース大学のケイっていうわ! よろしくね!」

 

ぐいっっと手を握られ、強引に上下にぶんぶんと手を動かす彼女。よく言えばフランク、悪く言えばなれなれしいが、そこまで嫌な感じがしないのは彼女の人柄だろう。

 

「...で、河野に何の用だ。私や西住はともかく、お前はこいつに面識ないだろう」ズズッ

 

「あっはは! 私も初対面だよ! ...でもあなたについてちょろっと噂を聞いてね。もしそれが本当なら頼みたいことがあってね!」

 

「頼みたいこと?」

 

「そうそう...あ、でもその前に念のため二人に一つ確認したいことがあって」

 

「?」

 

「えっと、二人は付き合ってたりするのかしら?」

 

「ブッ! ゴホッゴホ...きゅ、急に何を言い出すんだお前は! そんなわけないだろ!」

 

「ち、ちーちゃん!? 大丈夫!?」

 

確かに急な質問に驚いたが、それ以上にちーちゃんは動揺したようで、飲んでいたコーヒーを思いっきり噴き出してせき込んでいた。

 

「えー!そうなの!?  随分仲良さそうだからてっきり!」

 

「ま、まあ昔からの旧知の仲ではあるし? ただの友達って感じでもないよな?」

 

ちーちゃんは、せき込んだせいか涙目になりながらも、こぼしたコーヒーをハンカチで拭きながらちらりとこちらを一瞥した。不安そうだが少し期待したようなそんな不思議な表情をしていた。

 

(そ、そうか。これは助けを求めているんだ! とりあえず恋人関係ではないことを強調しないと!)

 

「そうなの? えっと河野さん?」

 

「はい! ちーちゃんとはその..いうなら大親友みたいなものです! まったくそれ以上はありません!」

 

「うっ」

 

「ちーちゃんは昔から異性とは思えないですし!」

 

「ぐっ」

 

「で、でも仲良くはあるので、、えっと親戚の姉みたいな、、それ以上はないですが!」

 

「ぐはっ!!」

 

再びコーヒーを吹き出したちーちゃんはまた、テーブルに顔を突っ伏した。

ぶつぶつと何かをつぶやきながら、なぜかちょっと泣いていた。

 

「お、OKOK! 河野さん! もう大丈夫! よくわかったから! う、疑って悪かったわね..千代美。 え、えっと、本当にごめんなさい..」

 

「いやいや...納得してくれてよかった..ほんとに..」

 

ちーちゃんはよくわからないが、とりあえず丸く収まったようだ。

 

「え、えっとそれで、、頼み事ってなんですか?」

 

「そ、そうそう! 河野さんにちょっとお願いしたいことがあって..」

 

そういって先ほどのように私の手をぎゅっと握ると、じっと俺の目を見つめ、こう続けた。

 

「私の恋人役になってくれないかしら?」

 

再び、テーブルに頭をぶつけるちーちゃんの音が静かなカフェに響くのだった。

 

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