「...なるほど、事情は分かった。つまりお前はまだミスサンダースの一歩手前の候補生で、今度の試験に合格して初めてミスサンダースになれると」
「そう!さっすが千代美ね!むかしから飲み込みだけは早いね! 正確にいうと試験っていうより、普段の行いからふるいにかけていくって感じだけどね」
「お前は毎回一言余計なんだよ」
「あ、あの、すみません...話の腰を折ってしまって申し訳ないんですがそもそもミスサンダースって何でしょうか?」
「OH! ごめんね! そっか、知らないよね! じゃあ軽く説明するね!」
―ミスサンダース
あらゆる分野においてトップクラスのエリートが集まる学生の中で学力、カリスマ性、影響力、人望などを総合的に評価され、大学側から公式に授与される名誉ある称号。
「候補生」はこの称号を得る最終試験の資格を持つ生徒の総称で、この選抜試験に合格することで、晴れて正式にミスサンダースとなる。
「とまあ、こんな感じ! ミスサンダース自体は大学全体でも1人~2人レベルの話だけど、現状、私みたいな候補生だったら学年でも10人くらいはいるからね、かなり熾烈な争いにはなるかな」
「...で? それとさっきの恋人役の話と何の関係があるんだ?」
「いい質問ね! 実は、私も最近知ったんだけどね...」
そういってケイさんはカバンから1枚のチラシらしき紙を取り出して机に広げた。
「ラブソングコンテスト?」
「...自分の恋人に向けた普段の感謝や愛の告白を歌にしてみんなに自慢しよう...審査員にはサンダース大学関係者が多数出席...大学側のイベントにしてはずいぶん攻めた内容ですね」
「そう! そこなの! 私も最近知ったんだけど、公にはされていないけど、上位入賞することがミスサンダースの条件って噂が立つくらい、歴代のミスサンダースはこの大会で目立った成績を残してるの」
「...な、なるほど。そう聞くと関係者多数って注釈もわざわざいれているみたいに感じますね」
「でしょ! まあ、噂が独り歩きしている可能性もあるけどね。少しでも可能性があるところはつぶしておきたいんだ」
「...まあ、なんとなく事情は分かった。だが、それにしたってなんでこいつなんだよ。違う学校でばれにくからか? それなら別にこいつじゃなくても...」
「まあ、学校が違うのもそうだけど...人選的にこの子が適任って理由が1つあるわ。...私の友人でカチューシャってやつがいるんだけど...河野さん、あなたご存じよね?」
「カチューシャ..? あっ、ああ..まあ、知ってますけど...」
「ふふっ、いい反応ね! 実は私結構カチューシャと仲良くてね。あなたのこともカチューシャから聞いたの! とぉっても面白い男がいるってね!」
「...えっと、一応聞きますけど、彼女はなんて?」
「私史上最高のツンデレ男..とか、私をだますほどの演技派...とか言ってたかな? あんなにうれしそうなカチューシャ、私も初めて見たわ! あとはね!」
(...あのちんちくりんめ、好き勝手言いやがって...)
「...ふん、まあ、あいつ昔から自分が都合いいように解釈する癖があるからな。...どうせ一方的にぐいぐい迫った時の不愛想な態度が逆に気に入ったんだろうよ。...こいつほんとに女に興味ないからな」
そういってなぜか少し不機嫌そうなちーちゃんは頬杖を突きながらコーヒーをすすっていた。
「そう! まさにそこよ! 私があなたに頼みたい理由は! カチューシャや私の前でも眉一つ動かさないその淡泊な態度! そして圧倒的な異性への興味のなさ! うーん!やっぱりパーフェクトよ、あなた!」
「え、えっと...つまりどういうことでしょうか」
「...偽の彼女に最高に都合がいいってことだよ。変なことで取り乱さないから恋人って紹介しても違和感はない。その上恋愛感情にも乏しいから大会が終わったらこじれることなくさっぱり終えられる。...そんなとこだろ?」
「な、なるほど...。うーん...」
ちーちゃんも少し意地の悪い言い方ではあったが、要約すると確かにそういうことだ。どうしたものかと少しテーブルを見つめて考えていると、先ほどよりトーンを落としたケイさんが話し始める。
「...嘘をつくことだって、一男性にこんなことさせることだってよくないってわかってるわ。だからこそこれはお願いよ。望む報酬は支払うし、期間中もあなたの意思次第で途中でやめたっていい。どんなことがあっても絶対に無理強いはしないこと、そして何かトラブルがあれば一切の責任は私がとることを約束するわ。...どうかしら?この条件なら」
先ほどまでの少しおちゃらけた雰囲気がなくなり、ケイさんのまなざしは真剣だった。きっと、正義感も責任感も人一倍にある人なんだろう。自責の念を感じているそんな言葉に少しそんな彼女の性格が見えた。
「...えっと、どうしてそこまでしてミスサンダースになりたいんでしょうか?...なんだかとっても辛そうですし...」
「私も少しそこは引っかかるな。ミスサンダースが幾分栄誉あることなのはわかるが...周りを騙してまで固執なんて、お前らしくないぞ」
「...ふふっ。やっぱ慣れないことはするもんじゃないわね」
ふーっと、思い切り腕を伸ばしたケイさんは、つきものが落ちたようなすっきりとした顔で、事の経緯を話し始めるのだった。
―――――――サンダース大学 戦車道練習場
「はーい! みんな注目! ミスサンダースの大会も近いってことで、今日から少しの間、前紹介した私の彼女がこのチームのマネージャーを務めることになったわ! みんな仲良くしてね!」
「か、河野原って言います!短い間ですか、精いっぱい頑張りますのでよろしくお願いします!」
「うおー! 金髪美少年きたー!」
「テンション上がるー!」
「ううっ...このチームで本当に良かった...」
チームの指揮はまさに最高潮といった感じだ。
派手な金髪に染まった整えられた髪と全身をブランド物で仕立て上げられた服を着た俺は、慣れない上げ底の靴で懸命に歩き、恐る恐る挨拶をした。
「彼は前言った通り、河野原財閥の御曹司よ。彼自身、海外でしばらく生活してたから、まだ日本に慣れてないこともあるわ。マネージャーだけど、そこらへんは優しく教えてあげてね!」
(ううっ...視線が痛い...怪しまれてないかな)
好奇なものを見るような全身を嘗め回すような視線を一身に浴びて少し冷汗が出た。ケイさんほどではないが、俺も嘘をつくのは苦手だ。目線が泳ぎまくっている俺を不思議そうに見ているケイさんは補足するように話し始めた。
「...彼は財閥のたった一人の跡継ぎの息子よ。変なことあったら私もろとも首が飛ぶと思っていいわ。まっ、そうじゃなくたって私の彼氏よ。下手なこと考えるんじゃないよ! はい、返事!」
「「「イエッサー!」」」
「うんうん、聞き分けのいい子たちは好きよ!...じゃ、さっそく練習開始! あー、河野原はちょっと裏まで来てね、今日の練習の準備手伝ってもらうから」
「りょ、了解です」
―部室倉庫前
「ちょ、ちょっと! 御曹司って話はしましたけど、変に設定盛らないで下さいよ!ただでさえ違和感あるのに...」
「いいのいいの! 血気盛んなあの女郎どもにはこれくらい脅しとかないと、あいつとの約束守れないかもだしね! 多少ぼろ出ちゃっても私がカバーするからさ! それに...」
「...?」
「正直全く違和感ないわよ? まあ、素材もよかったかもだけど、そこら辺のお坊ちゃまよりよっぽど気品があって私はむしろ驚いているわ。自信持ちなさい!」
「そ、そういう問題では...」
「あー!ごめん! もう練習始まるから続きは後でね! じゃあ作戦通りに頼むわねー!!」
「あ!ちょ!」
(...どうしてこうなった)
そういって、グラウンドに走り出したケイさん。追いつこうとするも慣れない靴で走れず、取り残された俺。ちーちゃんの奇策により、このレンタル彼女作戦は思いもよらぬ方向に走り出したのだった。
次回以降で、奇策については触れます。
※
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参考にさせていただきます。
基本的にガルパンのキャラは全部okです。