※この世界の戦車道について補足
プレイヤー(実際に大会にでる、戦車に乗る)の人口についてはかなり多いが、メインプレイヤーである女性が応援したり、観戦する人数については大学ではそこまで多くない。
そういった立ち回りに主に男性がメインとなる影響も大きい。
ケイさんとの一連の役目を終え、河野の周りには妙な平穏が訪れている。
いや、正確には「訪れていた」と過去形で言うべきだろう。
「河野くん! うちのサークルに来てよ!」
「いやいや、河野くんはテニスサークルの方が似合うって!」
「演劇部なんてどう? 河野くんの可愛い顔なら、主役確定だよ!」
大学の廊下を歩くたびに、この調子だ。
入学以降、サークルに入らずにいた僕を狙って、各サークルが激しい勧誘合戦を繰り広げている。
「あ、あの...俺、いくとこあって...」
「ちょっとだけ!ちょっとだけだからさ!」
「ちょっと待って、横取りしないでよ! ねー河野さん! お願い! 会費とかは私が負担するからさ!」
「あー!それは反則でしょ!!」
「うるさいな! お前こそどっか行けよ!」
女子たちの目が、まるで獲物を狙う肉食獣のように輝いている。
(怖い怖い怖い...!)
この世界に来てから何度目かわからない恐怖を感じながら、僕は何とか人混みから逃げ出した。
息を切らして、僕は大学の旧校舎の階段にたどり着いた。
ここまで来れば、さすがに追ってこないだろう。
「はぁ...はぁ...なんでこんなに疲れるんだ...」
壁に寄りかかって休んでいると、階段の掲示板に一枚の張り紙が目に入った。
『戦車道同好会 部員募集中』
白い紙に黒い文字で書かれただけの、とても地味な張り紙だ。
他のサークルのカラフルなポスターに比べると、目立たなさすぎて逆に目を引く。
戦車道...
(あ、そうだ! 思い出した!確か前、武部さんたちに紹介してもらったサークルがあった! なんやかんやあって入ってなかったけど、顔見知りもいるしあそこにしよう!)
僕の心臓が、少しだけ高鳴った。
乙女の戦車道から少し、そういった方面に興味を持っている。
漫画の中で出た戦車とかなら人より詳しい自信も有る。
もちろん本筋の人には勝てないが、いろいろと面白い話を聞けるかもしれない。
そう思い張り紙に目を通すと活動場所が書かれていた。
『旧校舎3階 第二資料室』
(...よし、ここしかない、正式に参加しよう)
俺そう思い立ち、活動場所に向かうのだった。
ーー第二資料室
今日は部室には私一人だった。
普段よくいるメンツはここ数日現地取材だなんだで忙しく、最近はあまり顔を出していない。まあ、集まったところでゲームとかしか選択肢はないが...。
窓から差し込む午後の光の中、私は『月刊戦車道』の最新号を読んでいた。今月号はクルスクの戦いの特集。ソ連軍とドイツ軍の戦車戦術の対比が、実に興味深い内容だ。
「ふむふむ...やはりT-34の機動力がドイツ軍の重戦車を翻弄したわけですね...」
壁には私が集めた戦車のポスターがびっしりと貼られ、棚には精巧な模型が並んでいる。特に自作のⅣ号戦車F2型は、我ながら会心の出来だった。
その時、扉の前に人の気配を感じた。
でも、ノックの音はしない。
私は雑誌に集中していたので、最初は気づかなかった。
「あ、あの...」
小さな声。
でも、まだ私の意識は記事の中のクルスクの戦場にあった。
「あの...すみません」
もう少し大きな声。
「ふぇ?」
私はようやく顔を上げた。
「あ...えっと...ご、ごめんなさい。お取込み中でしたか...?」
私は慌てて立ち上がった。
雑誌を落としそうになりながら、どうにか彼の方に近づく。
ふわりと男子特有の柔軟剤のようなにおいがする。
「い、いえ! 大丈夫です! その...ははっ、お久しぶりですね...」
顔が熱くなる。
初対面ではないとはいえ、最初にあった時はほかにも人がいたし、あの時は緊張してしまい、紹介した後はほとんど話していない。
唐突に二人きりのこの状況に、そもそもそこまでいままで男性に縁がなかった私が冷静を装えるわけもなかった。
(落ち着いて、落ち着いて...)
私は指を絡ませて、もじもじしながら声を絞り出した。
「あの...戦車道同好会に、興味が...あるんですか? あ、もしかして正式に?」
そう、これはチャンスかもしれない。
もし彼が入ってくれたら、同好会から部への昇格も夢じゃない。
そんな期待が、胸の中で膨らんだ。
「はい。張り紙を見て...あの、今日は秋山さん一人なんですか?」
「そうなんです。今日は他のメンバーがみんな用事で...今日は私一人ですかね」
「なるほど、そうなんですか」
彼が部屋を見回している。
私の大切な戦車のコレクション。
他の人から見たら、ただのオタク部屋かもしれない。
(うわあ...引かれてないかな...)
でも、彼の目が、ある模型の前で止まった。
「あの...この模型、すごく精巧ですね」
え?
私の自作のⅣ号戦車F2型を見て、そう言ってくれた。
「わかりますか!? これ、私が作ったんです!」
思わず声が大きくなってしまった。
「えっ、秋山さんが? すごい...砲身の長さとか、車体の傾斜角度とか、完璧じゃないですか」
心臓が高鳴る。
この模型の細部まで見てくれている。
ということは、もしかして...
「本当ですか!? あ、あの...河野くん、もしかして戦車、詳しいんですか?」
期待を込めて尋ねると、彼は少し照れくさそうに答えた。
「えっと、あははっ...実はちょっと好きなんです、戦車。昔好きだった漫画がきっかけで...あ、でも全然にわかですけどね!」
その瞬間、私の心は一気に弾けた。
(え!? 戦車好き!? しかもドイツとソ連!?)
「私もです! 特にⅣ号戦車の発展史とか、T-34の傾斜装甲の革新性とか...!」
もう抑えられなかった。
私の大好きな話題について、この人と話せるかもしれない。
「T-34は本当に画期的でしたよね。あの傾斜装甲で実質的な防御力を高めて、しかも生産性も考慮した設計で...」
「そうなんです! それでいてディーゼルエンジンを採用して、航続距離も...」
気づけば、私たちは夢中で戦車談義を始めていた。
彼はⅣ号戦車の発展過程について詳しく、私はT-34の生産システムについて熱く語った。
「パンターのシャハト式転輪は整備性に難があったって言われますけど...」
「でも、あの滑らかな走行性能は他にないですよね!」
「わかります! あの設計思想、本当に美しいですよね」
彼も、わかってくれる。
戦車の設計思想の美しさを。
こんなに話が合う人、初めてだ。
時間を忘れて、私たちは模型を手に取りながら、ああでもない、こうでもないと議論を交わした。
ふと時計を見ると、もう1時間以上経っていた。
「あ...ご、ごめんなさい。つい熱くなって...」
我に返って、恥ずかしくなった。
無我夢中でいきなり戦車の話を延々としてしまった。
きっと、引かれてしまったかもしれない。
「いえ、僕も楽しかったです。こんなに戦車の話ができたの、初めてです」
「本当ですか...?」
彼の言葉に、胸が温かくなった。
嘘じゃない。
本当に楽しんでくれている。
その笑顔が、とても優しくて。
(この人と...もっと話したい)
「その...河野くん、サークル入りませんか?」
勇気を出して、誘ってみた。
もし断られたら、どうしよう。
でも、この人となら、きっと楽しい戦車道ができる気がする。
「はい、ぜひ。もともと入るつもりでここに来ましたので!」
即答だった。
私は嬉しくて、思わず笑顔がこぼれた。
こうして、私の戦車道同好会での日々は、新しい色を帯び始めた。
河野くんという、かけがえのない仲間ができた。
いや、仲間...だけなのだろうか。
私にはまだ、その答えがわからなかった。
ゆかりさんの話はかいていてすごく楽しいですね。
こういうキャラが好きなのかもしれません
感想、ご意見気軽にください。励みにします。
〇〇出して欲しい、〇〇はこう言う設定がいい等も嬉しいです。
参考にさせていただきます。
基本的にガルパンのキャラは全部okです。