あべこべ道! 乙女が強き世界にて   作:マロンex

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第45話 あんこうチームの恋模様 Ⅱ

眠い。

眠い。

眠い。

 

大学近くのベンチ。

入学当初からいろいろな場所で昼寝をした結果見つけた最適解。

南向きで日当たりがよく、木陰になっていて、人通りが少ない。

 

このベンチが私の定位置だ。

 

(ふふっ...今日は半日は寝られるぞ...ってあれ)

 

「すぅ...すぅ...」

 

先客がいた。

男性が一人、戦車道の資料を胸の上に乗せたまま、気持ちよさそうに寝ていた。

サラサラの髪が寝顔が、かわいかった。

 

(...こんなとこで一人...不用心な男だ...)

 

(...変に思われるのも嫌だし...どくまで待つか)

 

少し考えた。

でも待つのも面倒だ。

別の場所を探した。

 

中庭のベンチ。

だめだ、日当たりが悪い。

 

図書館前のベンチ。

うるさい、人通りが多い。

 

学食前のベンチ。

論外、学食のにおいで気が散る。

 

(...やっぱり、あそこしかないな...もういないだろう)

 

戻ってきた。

だが、望みとは裏腹に男がまだ寝ていた。

寝顔が、まだかわいかった。

 

(...まあ、スペースはあるし...いいか)

 

(起こすわけじゃない)

 

謎の緊張感に包まれながら、見ず知らずの男性の隣に座った。

だが、定位置ということもあり、目を閉じればすぐに熟睡できた。

南向きの日差しが、温かかった。

 

(...やはりこの場所が至高...)

 

どのくらい眠っただろう。

何か温かいものが頭の下にある。

 

(...柔らかい)

 

ほのかに、いい匂いがする。

 

(...ん、なんだこの感覚)

 

目を開けた。

空が見えた。

 

それから、上下逆さまの顔が視界に入ってきた。

少し困ったような、でも穏やかな顔をしていた。

 

「あ、起きましたか」

 

「なっ....」

 

「すみません、気が付いたら膝で寝てて...起こすのもかわいそうかなって」

 

「なっ...へえ!?」

 

「す、すみません! びっくりしましたよね!」

 

(...な、なんだこの状況は)

 

見知らぬ男の膝の上に、頭が乗っている。

そうか、先ほどの隣にいた...だがどうして

 

起き上がらないといけない。

わかっている。

 

ーでも

温かくて。

柔らかくて。

いい匂いがして。

 

(膝枕ってこんな心地よいものなのだな...初めてだ)

 

普段、人の体温を近くに感じることなんてない。

誰かにこんなふうに触れてもらうことも。

 

(……悪くない」

 

「えっと...えへへ、それはよかったです」

 

正直に思った。

思ってしまったことは口に出ていた。

 

「す、すまん! いまのなひ!」

 

起き上がった。

 

良く分からない嚙み方をした。

少し、声も上ずった気がした。

 

(くっ...情けない。というか恥ずかしい...)

 

男の顔を、ちゃんと見た。

 

(...まじか)

 

かわいい顔をしていた。

整った顔立ちで、こちらを見てふわっと笑った。

 

眠気が、完全に飛んだ。

心臓が、少し跳ねた。

 

「あ、あの、大丈夫でしたか」

 

「えっ...あ、ああ」

 

声が変だった。

自分でもわかった。

 

(...落ち着け。余裕のある女性を演じるんだ)

 

「その、なんだ...まだ状況が飲み込めないが...迷惑をかけた」

 

「いえ! 全然ですよ」

 

男が、穏やかに言った。

 

「そんな時間もたってないですので、お気になさらず」

 

「...そうか」

 

「...ここ、いいですね。日当たりよくて静かで...お昼寝には最適なベンチですね」

 

「そうだろう...私が見つけた至高の昼寝場所だ」

 

「ふふっ...そうですね」

 

男が頷いた。

馬鹿にするわけでも、からかうでもなく

屈託のない笑顔で私を肯定してくれた。

 

(...変な奴だ)

 

(知らない女性が急に膝に触れてきたんだぞ、普通こう...怖いというかなんというか)

 

「その資料、戦車道のか」

 

「あ、はい。読んでたら寝てしまって...ちょっと自分には難しかったです」

 

「...そうか」

 

「あなた...えっと」

 

「冷泉だ」

 

「あ、ありがとうございます。...冷泉さんも戦車道やるんですか?」

 

「...なぜそう思った」

 

「この資料見て、戦車道ってわかるのは経験者ですよ」

 

「...なるほど」

 

(なんていうかすさまじいコミュ力を感じる...これが陽キャってやつか)

 

私はうまく話せていない。

声が上ずったり、言葉が短くなったり。

そもそも男性と二人で話すことがこれまでの人生でほとんどなかった。

こんなに近くで顔を見たことも。

 

(...落ち着け、千載一遇のチャンスだ...普通に話すんだ。女子高だったことを悟られないように...)

 

「あの...」

 

「ん? なんでしょうか!」

 

「...お、お名前は」

 

「え? あ、すみません、申し遅れました。自分は河野っていいます」

 

「河野か、よ、よろしくな」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

河野が、またふわっと笑った。

その笑顔が、また心臓に来た。

 

(...やめろ)

 

(そんな顔をするな)

 

「あの...」

 

何か言おうとした。

何を言おうとしたのか、自分でもわからなかった。

 

「はい?」

 

河野が、こちらを向いた。

まっすぐ、こちらを見た。

 

(...目を見て話すタイプ...陽キャスキルも上級っ...)

 

「...な、なんでもない」

 

「? ...そうですか」

 

河野が、また穏やかに頷いた。

挙動不審な私を、変に見ていない。

ただ、普通に接している。

 

(...なんだ、この人は)

 

「じゃあ、自分はこの辺で」

 

河野がぺこっと頭を下げた。

そのまま、歩き出した。

 

(...あ)

 

(待て...もう少し)

 

声が出なかった。

足も動かなかった。

男の背中が遠くなっていった。

いい匂いがゆっくり薄れていった。

 

(...普通に話せなかった...でも)

 

「...楽しかったな」

 

頬が、少し熱かった。

 

(....明日も来るかな)

 

来るといいな。

そう思った。

今度は、もう少しちゃんと話せるようになる。

そう、決意もした。





このキャラ出して欲しい、この子はこう言う設定がいい等があれば気軽にください。
参考にさせていただきます。
基本的にガルパンのキャラは全部okです!

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