眠い。
眠い。
眠い。
今日もベンチに向かった。
(...来てるかな)
自然と笑みがこぼれる。
またいたらうれしいなと思ってしまった。
(私は何を...別に、どっちでもいいだろ)
近づいた。
ーいた
河野が、また資料を胸に乗せてすうすうと寝ていた。
(...来てた)
なぜか、少し安心した。
隣に座った。
河野が物音に気が付いたのか、目を開けた。
「あ、冷泉さん」
「...すまん起こしたか」
「いえ...あっ今日も来たんですね、ふふっ」
「っ...て、定位置だ」
(寝起きの顔で笑うな...可愛すぎて心臓に悪い)
「あー...ふふっ、そうですね」
河野が起き上がって、資料を広げた。
私は目を閉じた。
しばらく、静かだった。
風が吹いた。
悪くなかった。
「冷泉さん」
「...なんだ」
「話しやすいですよね、冷泉さんって」
「...そうか。正直初めていわれた」
「うーん、まあおしゃべりって感じではないですね。変に気を使ってこないので楽っていうか、心地いいというか」
「...お前といる時はな」
言ってから、少し後悔した。
(...わ、私は急に何を言っている!)
河野が、少し目を丸くした。
それから、ふわっと笑った。
「えへへ、そうですか。なんか...ありがとうございます」
「...別に」
「冷泉さん、大丈夫ですが、顔赤いですが風邪ですか?」
「...日差しのせいだ」
「今日は日陰ですよ、ここ」
「...うるさい」
「すみません」
河野が謝った。
全然反省していない顔で。
(...こいつ、わざとじゃないよな)
しばらく、また静かだった。
「冷泉さん」
「...なんだ」
「また明日も来ますか」
「...定位置だから」
「ふふっ...そうでしたね」
河野が、また笑った。
(...だから笑うな)
私は目を閉じた。
(...明日も来よう)
定位置だから。
それだけだ。
ー翌日
私たちは何の気なしに集まり、それは日常となっていた。
だが、そんな二人の平穏は長く続かなかった。
足音が聞こえた。
遠くからだが、妙に速い。
(...この騒がしい足音は...)
予感がした。
「あそこだ!!」
沙織だ...。
「河野さーん!!」
やはり。
走ってきた。派手な服にリボンが揺れていた。
息を切らしていたがそれでも笑顔だった。
あいつはいつもそうだ。
「た、武部さん、どうかしましたか?」
河野が困り顔をした。
私は目を逸らした。
「どうもしてないですけど! 会いに来ました!!」
(...そういう理由で走れるんだな)
心の中でだけ思った。
口には出さなかった。
「LINEに返事してくれないから!!」
「えっ...あ、すみません。気づかなくて」
河野が頭を下げた。
素直すぎる。
「ぜんっぜんいいよぉ! 麻子! 隣、座っていいですか!!」
私を見た。
別に許可制じゃないが...まあ、確認のつもりだったのかもしれない。
私はただ、無言で見返した。
「相変わらずうるさいやつだな。...別に気にしてない」
「もー! うるさくないよ!!」
そのまま座った。河野の反対側に。
図々しさで言えば武部の右に出るものはいない。
「あー、やっと会えたよぉ。河野さん!」
「あー...あははっ...」
河野が私をちらりと見た。
申し訳なさそうに。
(...別にいい)
思っただけで言わなかった。
「...図々しいやつだな。このベンチ二人用だぞ」
「えー、麻子冷たいなぁ」
「ったく...」
「いやぁ、ここいい場所だね! 静かで、その...いい雰囲気!」
「...ここ落ち着きますよね。麻子さんが気に入るのもわかります」
「ま、麻子って...なんで下の名前で!?」
「あっ...武部さんにつられちゃいました」
「えー! ずるい! 私も沙織でいいよ♡」
「うーん...武部さんは武部さんというか...」
私は正面を向いたまま、視界の端でそれを見ていた。
(...こいつは)
また、こういうことをする。
狙っていないのはわかっているのにドキッとする。
だが...悪くない。そんな優越感を味わっていた。
「沙織さん」
角から五十鈴さんの声がした。
今日は全員来るつもりか。
「こんなところにいたのですね。探したましたよ...あら、ふふっ...あらあら」
五十鈴が河野の正面に座った。
優雅に。計算しているのか天然なのか、未だにわからない。
これで三方向に囲まれた。
左に沙織。右に私。正面に五十鈴さん。
河野が真ん中で、困り顔をしていた。
(...慣れればいいのに)
でも慣れないのが河野だということも、わかっていた。
「河野さん」
武部が口を開いた。
「ぶっちゃけさぁ、私たちってどう?」
「沙織さん!?」
五十鈴さんが素に戻った。
「え? どう...って?」
河野が固まった。
何かを考えるように。
「うーん...そうですね」
「うんうん」
「一緒にいて楽しいのが武部さん、安心するのが五十鈴さん、落ち着くのが麻子さんって感じですかね」
河野が言った。
まっすぐ。普通の顔で。
三人が黙った。
「...河野、おまえ...いや、これは沙織が悪いか」
気づいたら声が出ていた。
「...え、えっと変なこと言ったつもりは」
「ふふっ...安心しますか...ふふっ」
「うれしいぃ、河野さん、やっぱ好きぃ」
「麻子さん...これは...あっすみません、冷泉さん」
「うるさい...あと、麻子でいい」
目を逸らした。
それ以上は言わなかった。
黙っていた。
沙織は口に手をあて、ずっとかみしめている。
五十鈴は、普段よりさらにニコニコしている。
河野が困り顔を続けていた。
私はただ、正面を向いていた。
(全員やられてる)
最初にそう思ったのが誰なのかは、知らない。
(まあ、私もか)
小さく、息を吐いた。
誰にも聞こえないように。
ーみほ視点
練習から帰る途中。
あんこうチームのグループLINEが騒がしかった。
最近はそんなに動いていなかったから新鮮だった。
『今日ベンチで河野くん発見! 捕まえた♡』
(写真)
『河野さん、本当にいい人ですね』
『沙織がほんとにうるさかった。もう二度と来るな、邪魔だ』
『あー、やっぱりお邪魔でしたぁ?』
(スタンプ)
『おまえ、あしたぜったいぶんなぐる』
『何があったんですか!! 詳しく! 詳しくお願いします!!』
『えー? 秘密』
(スタンプ)
『そんなぁ(しょんぼり)』
私はスマホを見ながら、少し笑った。
(...賑やかになったなこのラインも)
ポロンッ
まほお姉ちゃんからLINEが来た。
『みほ、最近どうだ』
私は少し考えて、返信した。
『河野さんの周りが、どんどん賑やかになってます。楽しそうでよかった』
そういって先ほどの写真を送った。
無断だったけどよかったかな...
しばらくして、返事が来た。
『そうか』
一拍おいて、続きが来た。
『お前はどうなんだ、今は楽しいか』
私は少し、止まった。
(...私は)
『まだわかりません、でも...なんか昔みたいで懐かしい』
送った。
お姉ちゃんから、すぐ返事が来た。
『そうか』
それだけだった。
でも、温かかった。
スマホを閉じた。
明日も練習だ。
三人がまた河野さんを囲んで、騒がしくなる。
相変わらず河野さんが困り顔をして、でも笑っている。
そんな写真をみて、思わず笑みがこぼれた。
(...ふふっ、まったく、人の気も知らないで)
でも、悪くない気もした。
※
このキャラ出して欲しい、この子はこう言う設定がいい等があれば気軽にください。
参考にさせていただきます。
基本的にガルパンのキャラは全部okです!
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