優花里さんの実家から借りたSUVをいじる麻子さん。
「...で、場所はどこだ。とにかく急ぐぞ」
沙織が助手席に乗り込んだ。
後部座席に、みほと華が乗り込んだ。
「場所は私が大体特定してるよ! ナビする!」
「...わかった」
エンジンをかけた。
「次、右!!」
「...うむ」
「もっとスピード出して!!」
「法定速度がある」
「緊急事態だよ!!」
「...法律は守る」
「麻子は真面目!!」
「おい、誰だこいつ連れてきたの!!」
不安だったが、なぜかこのメンバーは安心感があった。
(大丈夫、みんながいる)
信頼は不安を打ち消し、勇気に変わっていくのを感じた。
しばらく走った。
工業地帯に入った。
倉庫街が見えてきた。
「あそこ!! GPSの反応が一致してる!」
黒い車が、倉庫の前に止まっていた。
手前で車を止めた。
全員で、倉庫に近づいた。
扉の前まで来た。
みほが扉に手をかけた。
その瞬間。
だが、倉庫の中で気配が動いた。
「ちっ...たぶん気づかれたな」
「え!?」
「逃げる気のようですよ」
倉庫の裏から、エンジン音がした。
黒い車が、倉庫の裏から飛び出してきた。
「麻子さん、追って!!」
「言われなくても!」
全員が車に戻った。
アクセルを踏んだ。
麻子視点――山道
黒い車は、山道に入った。
細い道だった。
カーブが続いた。
「麻子、追いつける!?」
「...やってみる」
ハンドルを握り直した。
カーブに入った。
タイヤが鳴った。
「きゃあ!!」
「...うるさい、黙れ」
「だって横転しそう!!」
「...お前ほんとうるさいな!」
カーブを抜けた。
だが、ハンドリングでうまく横につく。
入り組んだ山道では曲道での減速が多い。
少しずづ距離を詰められていた。
それを察したのか、黒い車も加速する。
「...させない」
また、カーブが来た。
今度は右だった。
車体が、大きく傾いた。
「あら」
「きゃあ!!!」
「黙れ、女みたいな声出すな」
「女だよ!」
タイヤを路面に押さえつけた。
車体が戻った。
(...いけるっ)
前の黒い車との距離が縮まった。
「麻子すごい!!!」
「うるさい」
「本当にすごい!!!」
「頼む...集中させてくれ」
山頂に向かって、道が広くなってきた。
ひらけた場所が見えた。
「あそこで仕留める」
みほが言った。
「華さん、一つお願いがあります」
「えっ...?」
華視点 ―― 砲手の勘
山頂のひらけた場所に出た。
黒い車が前を走っていた。
距離はまだ少しある。
「麻子さん、もう少し詰められますか」
「...ああ」
アクセルが踏まれた。
距離が縮まった。
「だが、どうする。このまま追い続けてもらちが明かないぞ」
みほが言った。
「何か決定的に減速させる方法があれば...」
「うーん、何かないかなぁ」
沙織が、後部座席の後ろの荷物に手を伸ばした。
「えっ! 何これ!! 銃があったよ!」
「...モデルガン...いやおもちゃの銃でしょうか」
「なんで優花里ちゃんの車に...いや、この際どうでもいいか、華さん!」
「これでタイヤ打ってください! 弾はおそらく1~2発しかないです」
「えっ...私ですか?」
「そうだよ!元砲手でしょ!!」
「それは戦車道での話で...しかもしばらくブランクも...」
「大丈夫! 華ならできるって!!」
「速度の出ている車のタイヤを正確になんて」
「華さん!! お願いします!河野さんを救いましょう!」
「...わかり...ました」
華はエアガンを見た。
(...無茶振りにもほどがある)
(戦車の砲手と、これは全然違う)
(失敗したら河野さんが...でも)
その時、頭の中に顔が浮かんだ。
河野さんの顔だった。
困り顔で、でも笑っている顔が。
(...成功すれば助けられる)
「...麻子さん、可能な限り車を近づけてください。そのタイミングで体を出して狙います」
「わかった。...無茶するなよ」
エアガンを受け取った。
麻子さんが無言でアクセルを踏んだ。
「...今!」
窓を開けた。
風が吹き込んだ。
車が揺れた。
(...落ち着け)
息を吸った。
車の揺れを読んだ。
タイヤの位置を追った。
距離を測った。
角度を計算した。
(花を生けるときのように...集中して)
引き金を引いた。
乾いた音がした。
後輪が、ぺしゃんとへこんだ。
黒い車がふらついた。
「もう一本!!」
前輪を狙った。
揺れが来た。
一拍待った。
(...集中...ここ!)
引き金を引いた。
前輪が、へこんだ。
黒い車が、止まった。
「...止まった。完全に走行不能だ」
「華ーーーー!!!!!!」
沙織が叫んだ。
「すごい!!!! やっぱり華はすごいよ!!」
「ありがとう...ございます」
エアガンを置いた。
手が、少し震えていた。
でも、不思議と高揚感があった。懐かしい感覚だった。
(今、行きます)
――包囲
黒い車のドアが開いた。
女性たちが出てきた。
「くそっ...なんだこいつら、本当に大学生!?...だが、お嬢様のためにも降参するわけには」
その時だった。
複数の車が、山頂のひらけた場所に入ってきた。
何十台もの黒塗りの高級車が、犯人の車を囲って止まった。
降りてきた人を見て、みほは固まった。
「お母様...」
西住しほが、立っていた。
「...これ以上抵抗する場合、こちらとしても容赦しない」
「くっ...なんでここに」
「西住家の総力をもって対抗させてもらう」
「...あら、案外敵は少なかったわね。私たちは要らなかったかしら」
二台目の車からは島田家当主、島田千代が降りてきた。
「...珍しいですね。西住家に協力してくださるなんて」
しほが静かに言った。
隣の女性が、少し困った顔で言った。
「...娘の頼みですから、しかたなく。これは親としてです」
「...ありがとうございます」
しほが頷いた。
西住家と島田家のスタッフが、女性たちを完全に囲んだ。
戦力差は歴然だった。
「...」
女性たちが、顔を見合わせた。
「降参...するわ。...申し訳ありません●●お嬢様」
誰かの名前を言ったようだが、サイレンの音がかき消した。
優花里ちゃんが呼んだ警察が、到着したようだった。
全員が、一息ついた。
「みほ!!」
まほが、真っ直ぐこちらに歩いてきた。
「お姉ちゃん!」
まほが、みほを抱きしめた。
「...よかった...本当によかった」
小さく、でもはっきりと聞こえた。
「お姉ちゃん...」
「怪我はないか」
「うん、ないよ」
「そうか」
まほが、少し強く抱きしめた。
「...お姉ちゃん」
「なんだ」
「ありがとう」
「姉として当然だ。あんまり心配させないでくれ」
警察が犯人たちを取り押さえると、つかまっていた河野さんが解放された。
「河野さん!」
みほが駆け寄った。
河野は無事だった。
「みなさん...ありがとうございます」
「大丈夫ですか!?」
「はい、なんかすごく丁寧に扱われて...よくわかりませんでした」
「そうなんだ。...よかった」
「あの」
河野さんが、全員を見た。
「みなさん、来てくれたんですか」
「当たり前だよ!!」
沙織が叫んだ。
「無論だ」
麻子が言った。
「当然です」
華さんが言った。
息を切らして、優花里ちゃんが走ってきた。
「か、河野くん! 無事ですか!?」
「秋山さん!大丈夫ですよ、警察への連絡ありがとうございます」
「よ、よかった...!」
優花里ちゃんが、へたり込んだ。
河野さんが、また全員を見た。
「...みなさん、ほんとに、ありがとうございます。本当に...なんとお礼を言ったらいいか...」
その顔が、いつもの笑顔と少し違った。
本当に、驚いていて。
本当に、嬉しそうで。
(...この人はほんとに)
みほは思った。
(でも、こういう顔を、見られてよかった)
まほが、河野さんを見た。
「まほさんもありがとうございます...ほんと助けられてばかりで」
「気にするな。無事でよかった」
「でもどうして」
「みほが連絡してくれたからな」
まほが、少し目を逸らした。
「礼なら...みほにしてやってくれ、あいつがみんなを動かしたんだ」
「そうですか...でも」
「?」
「駆けつけてきてくれたのは嬉しかったです」
河野さんが、ふわっと笑った。
「ありがとうございます、まほさん」
まほの耳が、少し赤くなった。
夜の山頂に星が出ていた。
風が、静かに吹いた。
ーみほ視点
三人を見た。
(それぞれの力を最大限に生かしていた)
(それぞれの力で、1つのチームだった)
ーその原動力は
河野さんが、またふわっと笑っていた。
全員に、ありがとうと言いながら。
全員に、気づかないまま。
(...もう)
みほは小さく笑った。
まほが隣に来た。
「みほ」
「はい」
「...今回の件を聞いた時お母様が相当心配していた、私が驚くくらい狼狽していた」
「そ、そうだったんですか」
「...今回の隊を動かしたのもお母さまの強行だ」
「お母様...てっきり嫌われてるのかと」
まほが、また前を向いた。
「...みほ」
「うん」
「たまには実家に帰って顔を見せろ。私たちはいつでも歓迎するぞ」
みほが、少し間を置いた。
「...近いうちに」
夜の山頂に、風が吹いた。
星が、きれいだった。
謎の外国人軍団とお嬢様はまだ出ません。
※
このキャラ出して欲しい、この子はこう言う設定がいい等があれば気軽にください。
参考にさせていただきます。
基本的にガルパンのキャラは全部okです!
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