(私の女優業で培ったすべてのテクを使ってやる...)
執念なのか、プライドなのか、カチューシャは何かと理由をつけて大学院に通い続けた。
視察、情報交換、研究の確認。
名目はいくらでも作れた。
...だが、どれだけ通っても状況はほとんど変わらなかった。
「...ノンナ」
「はい」
「今日も空振りだったわ」
「そうですね」
作戦その一 距離を詰める
(さりげないボディタッチよ)
河野の隣に座った。
ぴったりくっつくように。
肩が触れるくらいに。
まほのデータをまとめている様子の河野は少し困惑していた。
「ここのデータ、どういう意味?」
「ああ、このグラフですね。これは縦軸が──」
河野が普通に説明を始めた。
(...気づいてないの? 噓でしょ、肩触れているのよ)
「...ねえ」
「はい?」
「何も思わないわけ?」
「あー、まあちょっと近いとは思いましたが...資料見やすいように寄ってくれてるのかと思って」
「...カチューシャ、こいつにそういうのは...」
「うるさい、もう帰る!」
「...ノンナ」
「はい」
「今日も空振りだったわ」
「そうですね」
作戦その二 手が触れるタイミングを作る
(回りくどいのはなしよ、直接触れてやるわ)
資料を渡す時、自然に。
指先が触れるくらいの角度で差し出した。
「この本、あそこに返しといて」
「ええ、それは自分でって、ああ、なるほど、ちんちくだから...」
河野が、資料の端を持った。
触れなかった。
(ぐっ...でも我慢よ)
「わ、悪いわね...もう少しこっちを持ってくれない?」
「こうですか」
「もう少し」
「こう?」
「もう少し」
「...K様、どこを持てばいいんですか」
「カチューシャ、私が返す。河野は座っていろ」
「あっ!!」
「ん?」
「...なんでもないわよ」
「ノンナ」
「はい」
「今日も空振りだったわ」
「そうですね」
作戦その三 目を合わせて長く見つめる
(...そうよ、何も接近する必要はなかったわ。私の魅力をそのままみせればいいじゃない)
顔を上げた瞬間を狙って、まっすぐ見つめた。
それだけで大抵の男は意識する。
「...河野」
「はい」
河野が顔を上げた。
私は、まっすぐ見つめた。
「...」
「...」
「...K様」
「なに」
「顔に何かついてますか」
(こいつ...なんで、というかそんなにみられるとこっちが恥ずかしい...)
「つ、ついてないわよ! いいから集中しなさい!」
「そうですか、すみません」
河野が、また資料に目を戻した。
(...私の魅力が効かない...?)
「ノンナ!」
「はい」
「今日も空振りだったわ」
「そうですね」
作戦その四 声のトーンを落として名前を呼ぶ
(いつもの声とは違うギャップ、この落差に震えなさい)
少し低く、ゆっくりと。
「...河野」
「はい」
「この部分、もう少し詳しく説明してくれない?」
「いいですけど...それより声、変ですが風邪ですか?」
「なっ...」
「体調悪いなら無理しないでくださいね」
(...気づかれないよりなんかむかつくわね)
「ノンナ」
「はい」
「今日も空振りだったわ」
「そうですね」
作戦その五 さりげなく褒める
(くそっ! これだけは使いたくなかった!)
「...河野」
「はい」
「あなた、研究のまとめ方が上手いわね」
「ありがとうございます」
「説明もわかりやすいし」
「そうですか、嬉しいです」
「そういうところ、私はす、す...好きよ、なんて」
河野が、少し止まった。
(...動いた? ついに効果あり?)
「...好きですか」
「...!(なに、なに!?)」
「K様って、戦車道だと何が一番好きなんですか」
「...え? 急に何よ」
「いや、一方的に嫌うのもなんか違うって最近思ってて。俺も少しカチュ、K様のこと知った方がいいのかなって」
「...!!」
「え、えっと...プラウダの包囲戦術、かしら」
「あー! いいですよね! じわじわ追い詰めていく感じ! 高校でも何度かやられていましたよね」
「そ、そうよ! わかる!?」
「わかります! 特にあの陣形から一気に絞り込む瞬間が好きで」
「そうそう! あそこよあそこ! あの瞬間の相手の焦りがたまらないのよ!」
「ですよね! K様もそこ好きなんですね!」
「そうよ! というか...」
しばらくして、気がついた。
(...あれ)
(私、楽しんでるわ)
(しかも普通に)
「...K様、お楽しみ中のところ申し訳ありませんが、お時間です」
「う、うるさいわね!! わかってるわよ!」
私は窓の外を向いた。
「ノンナ」
「はい」
「今日も空振りだったわ」
「...そうですね」
「でも」
「はい」
「...戦車道の話、少し楽しかったわ」
「...そうでしたね」
「あの男のせいよ」
「...そうですね」
「話を広げるんじゃないわよ、全く」
「...おっしゃる通りです」
「なんで笑うのよ」
「ふふっ...笑っておりません」
作戦その六 敵情視察(という名のストーキング)
「ノンナ」
「はい」
「作戦を変えるわ」
「...どのような」
「原因を突き止めるのよ」
「...原因、ですか」
「そうよ。周りの交友関係、好みの傾向、行動パターン。全部洗いなさい」
「...それはつまり」
「調査よ。調査」
「...それはストーキングでは」
「調査と言いなさい」
「...かしこまりました」
こうして私は、河野の行動を密かに追うことにした。
名目は情報収集。
戦略的偵察。
K様の格に相応しい、知的なアプローチだ。
断じてストーキングではない。
※
このキャラ出して欲しい、この子はこう言う設定がいい等があれば気軽にください。
参考にさせていただきます。
基本的にガルパンのキャラは全部okです!
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