車が走り出してしばらく経った頃
「ノンナ」
「はい」
「...負けたわ」
ノンナが、少し間を置いた。
「何にですか」
「全部よ。愛里寿にも、千代美にも」
「...なぜそうお考えを」
「あの男が研究室以外で見せる笑顔、一度も引き出せなかった。私の前のあいつは本物じゃない」
「それは...そうですね」
カチューシャは窓の外を見たまま、続けた。
「...最初はむかついてたのよ」
「はい」
「認めさせてやるって、それだけだったわ。プライドの問題」
「...そうでしたね」
「でも」
カチューシャが、少し黙った。
「...なんか、違うのよ」
「違う、とは」
「あいつと戦車道の話をしてた時」
「はい」
「気づいたら、楽しかったのよ」
ノンナが、静かに聞いていた。
「むかつくのは変わらないわよ。いけ好かないのも。でも...話してると、なんか、楽しいのよ。なんでかしら」
「...」
「あいつ、ちゃんと話を聞くのよ。私のことをK様として見るんじゃなくて、ただの話し相手として」
「...はい」
「なんでかしら、こんな気持ち久しぶりというか」
カチューシャが、窓の外を見たまま言葉を止めた。
「...新鮮なのかしら。そういう人間が周りにいなかったから」
「...そうですね」
「もっと知りたいのよ」
「河野さんを、ですか」
「そうよ。何が好きで、何が嫌いで、どういう時に笑って、どういう時に本気になるのか」
「...」
「でも研究室じゃ、あいつは絶対に緩まない。私がいる限り」
「...おっしゃる通りですね」
「二人きりで、もっと時間が取れればいいんだけど」
カチューシャが、少しため息をついた。
「でも理由がないと、さすがにあの男も不審がるでしょうし...どうしたものかしら」
しばらく沈黙が続いた。
ノンナが、静かに口を開いた。
「...カチューシャ様」
「なに」
「そういえば私、最近旅行に行きたいと思っていて」
「...急にどうしたのよ」
「北欧の方に、少し」
「里帰り? 別にいいけど」
「ありがとうございます。ただ、私が不在の間、女優業のマネージャーを誰かに代わってもらわないといけなくて」
「...そうね、じゃあその代役を...」
カチューシャが、ノンナを見た。
「...ノンナ、あんたまさか」
「...河野さんあたりはいかがでしょうか。フットワークが軽そうですし、信頼もできそうですし」
「...」
「撮影現場への同行、スケジュール管理、移動の手配。覚えることは多いですが、傍についていれば自然と距離も縮まるかと」
「...なるほど」
「二人きりの時間も、必然的に増えますね」
カチューシャは、しばらく黙っていた。
「ノンナ」
「はい」
「旅行、いつ行くの」
「明後日から二週間ほど」
「急ね」
「はい」
「...本当に旅行に行くつもりなの」
ノンナが、少し間を置いた。
「...北欧は寒いですから、準備が必要で」
「答えになってないわよ」
「...よい旅になりそうです」
カチューシャが、窓の外に視線を戻した。
少し間があった。
「...その提案、乗るわ」
「かしこまりました」
「ただし」
「はい」
「絶対に旅行なんて行ってないわよね、あなた」
「...北欧は寒いですから」
「答えなさい」
「...よい旅になりそうです」
「...ふん、あんたも賢くなったわね」
カチューシャは、深くため息をついた。
でも、口元が緩んでいた。
「...まあ、いいわ」
しばらく、車内に沈黙が流れた。
「私、あの男のことが気になってるのかしら」
ノンナが、静かに前を向いたまま答えた。
「...どう思われますか」
「わからないわ、正直、今でもむかつく奴って印象は変わらないわ」
「はい」
「...でも話してると楽しいし、もっと知りたいとも思う、これも変わらない」
「はい」
「これって、なんなのかしら」
ノンナが、少し間を置いた。
「...カチューシャ様」
「なに」
「今まで、誰かのことをもっと知りたいと思ったことは?」
カチューシャが、少し考えた。
「...ないわよ、私以外興味ないもの」
「誰かと話して、楽しいと思ったことは」
「...異性は...ないかも」
「そうですか」
「...なんなのよ、急に」
「いえ」
ノンナが、静かに微笑んだ。
「...でも少し安心しました」
「どういう意味よ」
「ようやくカチューシャ様を動かすほどの人に出会えましたね」
「動かすって...別に動かされてないわよ。ただ、気になってるだけで」
「はい」
「知りたいだけで」
「はい」
「楽しいと思ってるだけで」
「そうですね」
「...それだけよ、なに笑ってるのよ」
「...いえ、失礼しました」
ノンナは、それ以上何も言わなかった。
ただ、静かに微笑んでいた。
カチューシャは、また窓の外に視線を戻した。
(...なんなのかしら、本当に)
夜の街が、流れていった。
その答えに、カチューシャはまだ気づいていなかった。
※
このキャラ出して欲しい、この子はこう言う設定がいい等があれば気軽にください。
参考にさせていただきます。
基本的にガルパンのキャラは全部okです!
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