「んっ...あれ...ここは...」
俺は目を覚ますと、知らない場所の知らない布団で眠っていた。寝ぼけ眼をこすってしばらくして、ハッと我に返って起き上がる。キョロキョロと周りを見渡すとどうやらここは大きな和室のようだった。
「えーっと...昨日はみんなとお酒飲んで、後から西住さんがきて...うっ」
やけに鈍い頭痛、そして体験したことのないような気持ち悪さが全身を覆った。どうやら昨日は初めてのくせに相当飲んでしまったようだ。そうか、これが二日酔いというやつか...。しかし...ここはどこだ。だめだ、頭が回らない。
「あ、起きたんだ。おはよう」
襖がすっと開かれて入ってきたのは西住さんだった。膝をつき自分と目線を合わせるとそのままぎゅっと自分の手を握った。
「昨日はありがとね。...私本当に嬉しかったよ。怪我は痛まない?」
「き、昨日? すみません、自分何かしました?...全然何も覚えてなくて」
「ええ!? 覚えてないの!? 君、めちゃくちゃボコボコにされてたよ!?」
「....ボコボコにされてたんですか!?」
こめかみに人差し指を押し込み、考え込む。思い出せ、思い出すんだ...。昨日自分は何をしたんだ...。
「そう! ボロボロになりながら!もうすごかったんだから!」
こう、お腹の辺りをボンって蹴られてね!とジェスチャーを交えつつ嬉々として詳細を説明する西住さんに少し恐怖を覚えた。だが彼女のいうことは事実のようで、確かに自分の体は包帯やら絆創膏やらでひどい状態だった。なるほど、彼女の話で大体昨日の出来事はわかった。
「...あの、でもそれって話を聞く限り俺は何も..ただ虚勢を張って負けただけですよ」
「私はそれが嬉しかった。その”虚勢”がどれだけ人を勇気づけられるか...思い出せたんだから」
『何かあったのか』そんな疑問がふっと浮かんだが、もう一度強く手を握った彼女の目は、何か迷いを捨て去ったような、そんな凛とした目をしていて、聞くのは野暮な気がしてそっと心にしまった。
「入るぞ。みほ、朝食ができている。そろそろ食べないと遅刻するぞ。客人の具合はどうだ」
「あ、お姉ちゃん、ごめんね、朝ごはん手伝えなくて。行こう河野さん...ん?どうしたのお姉ちゃんのこと見つめて...」
間違いない。電車で助けてもらった女性だ。でも、どう声をかけよう...相手が覚えていなかったら...。そんなことをぐるぐると考えている間の沈黙に耐えかねたのか、西住さんが話し始めた。
「ど、どうしたの二人とも...知り合いなの?」
「え...ま、まあ名前もわからない程度だが一度あったことは覚えている。...だが」
「あの時はありがとうございました。一度お礼したいと思ってて...まさかこんなところで」
「お礼...? 私に...?」
そういうと彼女は人差し指でこめかみをぐっと押し、すまん... ちょっと待て...。とつぶやきながら考え込んでいた。あれ、このパターンは...
「すまん、あったことは微かに覚えているのだが...なんかその...すまん」
バツが悪そうに私を見つめる彼女。どうやらこの人とは似た者同士らしかった。
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食卓に連れられ、部屋に入ると朝ごはんとは思えないような豪華な和食がずらりと並んでいた。話だと西住さん自身、実家に帰ることが珍しいらしく、事情はわからないが、ご両親は不在とのことで姉が朝から張り切ってしまったらしい。
「本当、作りすぎだよね、お姉ちゃん。こんなに食べ切れないよ、ふふっ」
言葉とは裏腹にそう言って笑っていた彼女は心の底から嬉しそうだった。
「「ご馳走様でした」」
「ん、お粗末様でした。みほは準備しなさい。後片付けはいいから」
「で、でも... 悪いよ。泊めてもらった上に朝食も作ってくれたのに...」
「気にするな、ここはお前実家だ。たまには姉らしいことをさせてくれ。...高校ではあまり構ってやれなかったからな」
「お姉ちゃん...」
「それに、今日は久々の休みでな!何かしてないと落ち着かないんだ。...だから気にするな」
「...うん、わかった。ありがとうお姉ちゃん」
「あ、ちょっと待て」
「ん?どうしたの?」
「おかえり、みほ。またいつでも連絡してこい」
「うん....ただいま!...じゃあ準備してくる!」
嬉しそうに洗面所に走っていくみほさんの姿と入れ替わるように、自分は無意識に洗い場に立っていた。
「あ、あの! 俺も手伝います! せめて自分の分だけでも!」
「なっ、何を言っている。君は客人だろ。いいから君も準備しなさい、学校はないのか?」
「手伝います! 俺も今日何もないんで!! 何かしてないと落ち着かないので!!」
事情を知っているわけでもない、この人のこともよく知らないが、なぜかその時は彼女の役に立ちたいと思った。
間髪入れずに、強引に皿を洗い始める。西住のお姉さんも自分と同じ言い訳をされてしまい、返す言葉がないのか「じゃあ、皿洗いだけだぞ...」となし崩し的に許可してくれた。
テーブルの食器類は全て洗い場に移動され、洗い場で二人、並ぶ形で後片付けをしていた。しばらくは無言で洗い続けていて彼女だったが、ポツリと自分に話を振り始めた。
「昨日の件は感謝する。妹のことを救ってくれてありがとう」
「へ? いやいや! だから自分何もしてないですって!...あんまり覚えてないけどボコボコにされてただけですし...百歩譲ってみほさんの引き立て役ができたくらいですよほんと!」
「...いや、君は救った。確かに妹をな...私にはできなかった」
「....妹さんと何かあったんですか?」
食器を洗う手が少し止まり、悲しそうに俯く。できなかったという言葉をポツリと呟いた彼女は、またしばらく無言にな離、食器を洗い直し始めたが、またしばらくして一呼吸を置いた。
「...西住家の身の上話になる。湿っぽくなってしまうかもしれないが...聞いてくれるか」
ははっと慣れていないのか、ぎこちなく笑った彼女はゆっくりと語り出した。
みほさんは背景がアレなので、話も重くなってしまう...
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〇〇出して欲しい、〇〇はこう言う設定がいい等も嬉しいです。
参考にさせていただきます。
基本的にガルパンのキャラは全部okです。
この先出して欲しいキャラ
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元大洗
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元他校