武人な狼奴隷とむっつりな聖女さま 作:エルフスキー三世
王都の地下迷宮
「てりゃあああああああああああああぁぁぁぁ!!」
ミスリル製の全身鎧……白銀のアーマーを纏ったラスクは咆哮をあげながら突撃する。
迷宮の長い通路に響く、女の声。
その強襲に、牛の顔と筋肉質な巨体をもつモンスター、ミノタウロスは驚き、びくりと身を竦める。
ラスクの鎧靴と右手でつかむ
低空を飛翔する鳥のような高速移動は、とても重装備とは思えない走りであった。
ラスクは左手の円形シールドを顔の前に掲げ、驚愕するミノタウロスのシックスパックに割れた腹筋に、全体重をかけたタックルをブチかました。
ズ、ズズンッ‼
重量物同士がぶつかる激しい音が鳴って地面が揺れた。
小兵のラスクと巨漢のミノタウロスが拮抗する。
しかし次の瞬間、ミノタウロスの巨体が、綺麗に真後ろにブレた。
「ブモモモモモッッッ!?」
呼吸も困難な激痛に、ミノタウロスは持っていた両手斧を床に落とし激しく咳き込んだ。
内臓破裂寸前の強打を受けた腹部を押さえ、よろよろと後退して尻もちをついたミノタウロスに、ラスクはゆっくり歩み寄る。
ラスクの豊かすぎる胸の位置に巨体のミノタウロスの頭部があった。
勝敗は僅かな時間でついた。
牛顔でも分かる怯えた表情のミノタウロス。
見下ろして微笑む聖女ラスクは、右手の両手持ちメイスを牛顔の鼻先に落とした。
「ブモゥッッ!?」
ダンッダンッと2連打する。
「ブモォォォォォォォォォ!!」
ダンッダンッダンッ、さらに3連打。
「ブモォォォォォ! ブモォォォォォンンンンンンン!!」
戦意を完全に消失し、両腕で頭を庇い赤子のようにうずくまって悲痛な泣き声をあげ続けるミノタウロス。
だが、ラスクは容赦なく冷徹に徹底的に、メイスの柄を握る右手を何度も振り上げ叩きつける。
聖女ラスクに武人の才能はない。
剣や槍での戦闘の駆け引き、相手との間合いの取り方や詰め方など、頭で理解していても実践できるだけのセンスがないのだ。
だからこそやっていることは至極単純である。
近寄ってぶん殴る。
その頭おかしいと評される頑丈さと、身体能力を生かした常人なら両手で持つのも困難な極太長大のメイスによる超重量級の打撃攻撃であった。
あまりにも一方的な暴力。
暴力こそすべてを解決すると言わんばかりの嵐のような連撃。
中堅、とよばれるレベルの冒険者たちでも苦戦する、凶悪モンスターのミノタウロス。
だがその光景は第三者がみれば「もう、やめたげて!」と叫ぶほど凄惨で理不尽なものであった。
ミノタウルスの上半身が満遍なく血塗れになって、象徴だった頭部の太い角が二本とも砕かれ、両腕はありえない方向に折れ曲がっている。
ボコボコに整形され虫の息になったミノタウロスの牛顔に、ラスクは止めとなる一撃を放った。
倒したミノタウロスの体が消失する。
そして通路の白い床に銀色の液体の詰まった瓶だけが残った。
「やりました! ミノタウロスの
手に入れた銀の治療薬を両手で掲げて、先ほどまで蛮族のような蛮行を働いていた者とは思えぬ、喜びの黄色い声をあげるラスク。
その日、ミノタウロスを37体ほど討伐したラスクは、目的であったドロップアイテムを手に入れて地上に戻ることにした。
地下迷宮から出て、王都の道をしばらく歩き、ラスクは運命の相手を迎え入れるために購入した自宅に戻ってきた。
庭もあわせて絵本の家のような外観だが、ラスクも同居人も気に入っていた。
新築ではないが状態はよく、二人暮らしには十分すぎるほどの部屋数があった。
「あと
でも、子供は三人、欲しいかな~♪
と、自作の即興歌を口ずさむラスク。
踊るようにスキップして、玄関前でぴょんと飛び跳ねると、扉を開いた。
「キリカ、ただいま戻りましたよっ!」
ラスクが弾んだ声で呼びかけると、奥からキリカが音もなく現れた。
「おかえりなさい、主殿」
洗い物をしていたのか、白いエプロンで手を拭き、その下に黒色の膝丈下のワンピースを着ける凛とした黒髪の褐色美少女。
キリカが、静かに微笑みながらラスクを出迎えてくれた。
それだけで聖女ラスクは幸福感に包まれるのだ。
「主殿。本日もお勤め、ご苦労さまでございました」
いつも通り、楚々としたお辞儀をする狼獣人のキリカ。
ラスクは喜びと照れくささが入り混じった何とも甘酸っぱい気分になる。
「ええっとですね! 今日は成果がありましたよ!」
「おぉ、それは、流石は主殿です」
ラスクが脱いだ兜をキリカが
そのキリカの動きは自然である。
ラスク一人でも鎧を着脱することはできるのだが、ここ一か月ほどでキリカが手伝うのがすっかり当たり前になっていた。
ラスクからは腰をかがめたキリカの癖のない綺麗に切りそろえられた黒髪と狼耳、そしてポニーテールとうなじが見える。
「なんだかいいですね、こういうの(夫婦みたいで)」
「なにがでございましょう?」
「あ、いいえ、なんでもないです」
「ふふ、おかしな主殿ですな」
にっこりと笑うキリカの首元にはリボン状のチョーカー。
それは奴隷の証。
キリカには支配の刻印(お腹に刻むのはえっちです!)は施さなかったので、その代わりの所有者証明のようなモノだ。
別に家にいるときは外していてもよいのだが、キリカはアクセサリーのように常時着けているのだ……ラスクはそのことを何故か嬉しく感じてしまう。
「キリカ、腕と足の具合はどうですか?」
「まだ違和感が少し残ってますが、生活する分にはなにも不自由はありません」
キリカはスカートの布地を再生した右手でつかむと、右足の腱を見せるかのように、わずかにかかとを浮かせて軽く振ってみせた。
ややつり目がちの瞳を細めて、悪戯っ子のような表情で微笑みながらだ。
(……くふっ!? な、なんですか、なんなんですか、この可愛い生き物はっ!?)
「キ、キ、キ、キリカ……な、何か欲しいものはありませんか? 宝石とかドレスとか、名剣とか? あ、よかったら私とおそろいの全身ミスリル鎧でも作りますか?」
「い、いいえ……主殿。拙者、今の生活で十分満足でござるよ……」
なぜか中腰になって指をワナワナとさせている聖女の勢いに、戸惑う表情を見せる狼獣人の褐色美少女。
これが清楚な美貌をもつ聖女じゃなく、脂ぎった太っちょキモ中年だったら絵面的にアウトであった。
そんな謙虚(ラスク視点)なキリカにぞっこんで、最近のラスクはすっかりと脳内ピンクの駄目な人になっていた。
(結婚した冒険者の知り合いが、家に帰るのが本当に楽しみで楽しみで仕方ないと嬉しそうにノロケて、ふーんっと話半分で聞いていましたが、今なら分かります! ええ、分かりますともよ!!)
ラスクは王都中を走り回り、この気持ちを多くの王都市民にオペラ風にララララと歌いながら伝えたい気分である。
迷惑だから止めてください。
「主殿。先に汗を流しますか? それとも食事にしますか?」
「あ、キリカ。その前に、今から時間をもらってよろしいですか?」
キリカから濡れタオルを受け取ると、ラスクは軽く首元などを拭きながら彼女を自室に誘った。
「それで主殿。用事とは?」
「ええっとですね、今日ようやく銀の治療薬を手に入れまして」
キリカを手に入れたとき、傷や打撲は店売りの治療薬でも治すことができたのだが、欠損や深く切断している部位の治癒までは不可能だった。
唯一効果のある治療薬があらゆるケガや病を一瞬で治すとされる伝説のエリクサー。
あとはそれよりも効果が落ちるが、ミノタウロスが低確率で落とす銀の治療薬であった。
知り合いや王都の商店を巡って銀の治療薬をなんとか2個は確保できたのだが、キリカの切断され欠損した腕の再生と、足の健をつなぎ治すのに全部使用してしまい、獣人の誇りと言われる尻尾は後回しになっていたのだ。
「ここ最近、主殿が迷宮に籠っていたのは……拙者のためでござったか?」
「はい、一刻もはやくキリカの尻尾を治したかったのですが、中々でなかったものですから」
「……」
「時間がかかってしまい、ごめんなさいね」
キリカは突然、ラスクの前で膝をつくと、さめざめと泣きだした。
「え、ええ!?」
「なんと、なんと……勿体ない……」
突然のことにラスクは驚いてしまう。
「拙者は果報者にござる。これほど素晴らしい、主殿にお仕えることができるのですから」
「キリカ……」
「しかし、それ故に、その治療薬は使えぬでござる!」
「ど、どうしてですか?」
「魔女殿にお聞きしました……銀の治療薬は1本、金貨二百枚以上もする高額なものであると」
……あん、魔女がぁ~よけいなことをっ!!
ラスクは古い友人の魔女を呪った。
銀の治療薬の値段をキリカには黙っていたのだ。
キリカと一か月ほど同居生活をする中で、ラスクは彼女の真面目で律儀すぎる性格を把握しており、こうなることが目に見えていたからである。
「今でさえ、主殿には大きなご恩があるというのに、これ以上は受けられぬでござる……今の拙者には、返せるものが何もありませぬ」
え、じゃあ、子作りさせて、今すぐ⁉
と、危うく言いかけた聖女ラスクは歯を食いしばった。
同時にエロい気持ちになった聖女の聖女棒が目覚めかけて「はうぁっ!?」とさらに歯を食いしばった。
「え、えっと……キリカ、これは私が好きでやっていることですから気にしないでください。あなたのために何かすることが今の私にとって喜びなのですよ」
「主殿……」
「あなたの体を治すことは、あなたの主人である私の体面のためでもあるのです。ですから、ね、この薬をあなたに使わせてください」
ラスクはキリカの頬に手を添えると優しく指で涙をぬぐってあげた。
涙目の上目使いで見上げるキリカに、ラスクはぐびぐびと喉を鳴らしながら必死で平常心を保つ。
「拙者如きに、なんとお優しい言葉……」
やがてキリカは、キッと目を細めると静かにうなずく。
「主殿のご厚意、有り難く受けさせて頂くでござる‼」
ラスクは安堵して溜息をついた。
「それで拙者は、どのようにすればよいですか?」
「えっと、尻尾……ですから」
尻尾……つまりお尻の上についているわけで。
そこまで考えてラスクの下腹部がムズムズした。
「衣服を全て脱ぎますか?」
そう言いながらキリカは前掛けエプロンを外し、ワンピースを脱ごうとした。
というか、すでに首元までワンピースを捲り上げていた。
ラスクが選んだ、獣人用のローレグ縞パンツと同色のブラジャーが見え、褐色肌の巨乳がぶるんと揺れた。
キリカは小柄ではあるが、お尻にも十分肉のついた女性らしい体、いわゆるトランジスターグラマーである。
「ままままままま、まって、待ってくださいキリカ! 脱がないでいいから! それ以上は危険で危ないから! 私が今晩も槍使いに転職してオッスオッスしてしまいますから!」
「槍使い……おっすおっす……?」
「ええええええっと! とりあえずベッドでうつ伏せ! うつ伏せで寝て、スカートを捲くるだけでいいですから!!」
ラスクは失言を慌ててごまかし、全裸になろうとするキリカを止めた。
「あ、そうでござるか、これは失礼致しました」
「え、ええ……いいですか、私は後ろ向いていますからね? 薬を塗る準備ができたら教えてくださいね?」
「はっ! 主殿、承知致しました!」
後ろを向いたラスクは前かがみになった。
鎧用のぴっちりとしたズボンの中で体積が増えていたのだ。
聖女棒が目覚めたのだ。
(ひいいぃぃぃぃん……こ、こんなときにぃ!!)
ベッドのほうではガサガサとキリカが準備する音が聞こえる。
何とも収まりの悪い股間の聖女棒のポジショニングを微調整しながらラスクは煩悩退散とばかりに脳内暗算をしだした。
(これも……キリカが可愛すぎるからいけないのです! ひぃぃぃぃぃぃん、あいたたぁっ!?)
ズボンに締め付けられ、ますます猛り硬くなった……。
そうやってラスクが『荒ぶる内なる神よ静まりたまえ』を必死にしているとキリカから声が掛かった。
「主殿、準備できました」
「ええ、わかりました」
なんとか、おさめることに成功したラスクは微笑みながら振りかえった。
「はうぁ!?」
そしてラスクは驚愕した。
ベッドにうつ伏せで寝ているキリカ。
ラスクの指示どおり、ワンピースのスカートを腰まで捲り上げている。
だがそれだけではない、キリカはナニを思ったのか、ローレグの縞パンツを太ももの中程までおろし、プリンっとした形のいいお尻が丸見えになっていたのだ。
安産型な褐色のデカケツ。
背徳的で、危険なほどのエロさだった。
「では、お願いするでござる、主殿」
邪念の欠片もなく、本当に生真面目な口調のキリカ。
ラスクは心の中で大絶叫した。
(こ、こ、こ、こん、小娘が、そんなに私の今晩の『おかず』にされたいのかぁぁぁ♡)
ラズ神族の最後の生き残り聖女ラスク。
ヘタレな彼女は狼獣人の少女キリカのお尻に、ひぃんひぃん泣きながら前かがみになって、銀の治療薬を必死に塗り続けたのであった。
キリカ:主殿のためにナニかできることはないのかなぁ
ラスク:思い出しキリカ(お尻)で8回致した。