なぜこんなことになったのだろうか。
「なんでこんなことに…」
口に出しても誰も答えることはない。何せ私の周りにいる彼女たちは動くことはできないのだから。
「なんで、だれが、こんな、こんな酷い事を…」
私は帰ってこないと分かっていても問うことしかできなかった。それほど私にとってこれは衝撃的なことなのだ。
「だれが、ね。可笑しなことを言うのね。」
声が聞こえた。声は私の目の前から聞こえた。目の前にはいつの間にかフードをかぶった人影が現れていた。
「だれ、いつからそこにいたの。」
私は即座に臨戦態勢をとり問いかけた。
「ふふ、そんなことはあなたが一番わかっているはず。今更私のことを忘れたふりをするなど愚かしいにもほどがあるわね。」
「何を言って…」
「あなたは罪を犯した。それは決して許されるものではない。あなたはそれを忘れてはいけない。彼のいなくなったこの世界で、あなたは永久に生き続ける。あなたはもう人間ではない、この世界そのもの、この世界の罪、この世界のありとあらゆる悪なの。」
目の前の人物の言葉をきっかけに、脳裏に知らない記憶が生み出されていく。それは、足元に横たわっている友人たちの生前の出来事、彼女らは私を睨みつけて攻撃をしてきた。彼女達の眼は友人に向けられるものではなかった、それは憎むべき怨敵へと向けるそれだ。何が起きているのかわからない、わたしは彼女たちの攻撃を避けながら彼女達へと語りかけた。しかし彼女たちは私の言葉に聞く耳を持たなかった。
そして攻撃はより一層過激になってゆき、このままでは殺されてしまうというところで、世界が止まった。それは体感的な出来事だったのだろう。瞬く間に私の腕に呪印が浮かび上がった。そして私は…私は…彼女たちを殺した。
「あ、ああ、私が…殺したの?」
「どうやら思い出したようだ。そうだ、君が、お前が、彼女たちを、私たちを殺した。そして、私が生かされ、生まれた。」
目の前の人物の声には、親しみの感情と、憎しみの感情が渦巻いていた。私は、直感で目の前それの正体に気が付いた。
それは普段からそれにかかわっていた私だからこそ気がつけたものなのだろう。
「あんたは、幻想郷そのもの、だというの?」
目の前の人物がフードをめくった。フードの中から現れた顔は、私と瓜二つの見た目をしていた。
「大体そんな感じだよ。でも、私はそれだけじゃない、君と、彼が生み出した私は、この世界の一部ではあるけど、この世界から逸脱している。私はこの世界の管理者となったが、同時には会社でもある。彼は私を止めるために、過去の別世界へと向かったようだけど、無駄だ。過去へと向かった彼はこの世界の記憶を失う。そして、己の力のほとんどが心の奥底へと封じられる。彼にとっての誤算は、私が過去へと介入できないと思い込んだことだろうね。私を殺したいのなら、この世界を滅ぼすべきだった。まぁ、彼は甘い人間だから、そんなことはできないだろうけどね。」
目の前の存在の言っていることは私にとってほとんど内容が理解できなかった。そして相手もそれは分かっているのだろう。相手は私に語るのではなく、どこか遠くへと向かって語り掛けているようだった。
「私がなぜ生まれたのか、彼もきっと謎に思っているだろう。でも、それもきっとわかるだろう、それを理解したならば、彼の取る行動は一つだけだ。自らの存在を消し去るのだろう。そうすれば解決すると思って。だけど、私は過去へと鑑賞できる。同一世界の過去へはさすがの私も鑑賞できない、矛盾が生じてしまうのだから。しかしそれが別世界となれば話は変わる。別世界へ私の趣旨を送り込めば間接的に出会っても鑑賞することはできる。そうすればその世界でも私が生まれる事だろう。そうなってしまえばあとはこちらのもの、その後ん世界でも私は生まれる。そして、破壊と再生を行い続けるだろう。これはこの隔離された世界だけではない。外の世界でも同様だ。私はこの世界そのもの、外から中を隠す事が出来ている、その力があれば外へと鑑賞が出来る。唯一の懸念点は、蓬莱人だが、それも隔離さえできてしまえば問題はないだろう。」
「あなたの目的は、なんなの。」
私はかろうじてそれだけが言葉にできた。
「私の目的? そんなものは決まっているとも、世界の滅亡だよ。この憎しみは理不尽な世界そのもの、私を生み出した世界は許されるべきではない。その因となった君と彼もまた同じだ。だから壊すんだよ。さて、お話はここまでとしよう、それでは良い夢を……せめて夢の中ではお幸せに…おやすみなさい…博麗霊夢。」
声を聴くや否や抗いがたい睡魔に襲われ、私の意識は闇に閉じた。