目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。 作:ただのポケモン好き
「待ってたわよ! 悪夢姫! 燃べられる覚悟はある?」
ナナは朝食を食べて、すぐにテレポートをして真っ先にジムに向かった。完全に朝一での殴り込みだ。そしてジムリーダーは赤髪の少女だ。聞いた話だと去年ジムリーダーになったばかりの新人だとか。またジムリーダーの中でも一番弱いと巷で囁かれている。
「悪夢姫。ジムバッジはいくつ?」
「三つよ」
「それなら私達の各自判断ね。なら私は六体フルで使うね」
「……は?」
「そもそもジムリーダーなんて初見で勝つのが異常。普通なら何度も敗北を重ねて攻略法を考えるのがジム戦。今回はそれを体験してもらうよ」
これ完全に勝たせる気はないな。そもそも彼女がやろうとしてることは弱いといえどジムバッジ7つ集めたトレーナーに対する処置と同じだ。もしもナナが突破したら事実上の実力としては8つ持ちと同じということになる。
しかし明らかに理不尽だ。そんなことが許されるわけがない。ジム教会にかけあって適切な処置をしてもらおう。そっちの方がいい。
「……面白いじゃない。もしもあなたに勝ったら私達は今の何倍も強くなれる」
「そういうこと!」
「受けて立つ!」
だがナナは完全にやる気だ。僕もナナが六体なら文句は言わない。だがナナの手持ちは五体。つまり一体少ない状態で戦わなければならないのだ。それも格上のジムリーダーに。そして二人とも持ち場につく。間もなくバトルが始まる。
「改めてジムリーダーアザレア! 炎タイプの使い手として悪夢姫ナナの前に立ちふさがる! そして最初はこの子! お願い! ガラガラ!」
「ガラッ(応!)」
繰り出されるのはガラガラ。しかもアローラの姿だ。ナナはそれに対してどう戦うのだろうか。無難にいくなら僕が行くべきだが……
「お願い! ツタージャ!」
「タジャ!(うん!)」
やっぱり予定通りツタージャか。それに対してアザレアが少し驚いた表情を見せる。
「草タイプ! 本気なの?」
「いくわよ! リーフストーム!」
そしてナナは有無を言わせずに技を撃つ。それが合図となり、バトルが始まる。まず草の嵐がガラガラを包み込む。しかしガラガラは炎を纏った骨であっさりと嵐を焼き尽くし突破する。しかしツタージャは嵐に紛れて、ガラガラの懐に潜り込んでいた。
「ツタージャ! メロメロ!」
「タジャ!(任せて!)」
「しまった!」
それでガラガラが一気にツタージャに魅了される。目がハートになって体が完全にふらついている。ナナもガラガラに出来た隙を見逃さない。
「アイアンテールからのリーフストーム!」
一気に二つの指示。だけどツタージャもナナの思考を完全に理解する。まずはアイアンテールでガラガラを吹き飛ばす。そして先程よりも威力が倍近く高いリーフストームで追撃していく。草の嵐はアイアンテールで怯んだガラガラに見事に命中して相当なダメージを与えていく。そして草の嵐が去った時にはボロボロのガラガラがいた。
「ここは退くわよ!」
「くろいまなざし」
ツタージャが力強く睨む。ボールの光も弾かれて、交代も出来ない。それに対してアザレアが下唇を噛む。
「フレアドライブをやって!」
ガラガラに指示を出すが、ガラガラは目がハートにいなっていてアザレアの指示が耳に届いていない。完全にこちらが有利だ。
「そのままリーフストームで押し切りなさい」
「タジャャャャ!(決めるわよ!)」
そして今度はフィールド全体を覆う草の台風がガラガラを草で切り裂きつつ、吹き飛ばした。それによりガラガラは完全に戦闘不能。
「なに……今の威力……Zワザ? ううん、それ以上……」
アザレアは啞然としている。それに対してナナは元気にツタージャとハイタッチをしている。どうやら明らかに異常な威力のリーフストームみたいだ。
「それにリーフストームは撃てば威力が下がる技……まさか! あまのじゃく!」
「正解よ。リーフストームは既に三回撃った。威力は最大。撃てば相性不利の炎ポケモンも問答無用で吹き飛ばすわよ」
「色違い……メス……あまのじゃく。よくそこまで珍しいツタージャを手に入れたものね」
「続けましょう」
「そうね! お願い! ファイアロー!」
無言で出てくるファイアロー。そのポケモンは赤色の火山地帯にいそうな鳥でバサバサと飛んで、こちらを力強く睨んでいる。
「ツタージャ! リー……」
「アクロバット」
気付いた時にはツタージャは背後を奪われて、空中に巻き上げられていた。そして何度もファイアローの翼で叩かれていく。
「技の威力が協力なら打たせる隙を与えなければいい。それを私のファイアローなら出来る」
「……はやてのつばさね」
「博識ね。私のファイアローは特性はやてのつばさで飛行技を撃つときだけ目にも止まらぬ速さになる」
今度はナナが下唇を噛みながら睨む。指示を出しているが、完全にお手玉になっているツタージャに声は届かない。そのままではジリ貧でツタージャがやられてしまう。なにか手は!
「タジャャャ!(さっきからしつこいわね!)」
その時だった。ツタージャが尻尾に水を纏ってファイアローを叩いた。あれはアクアテール! この土壇場で覚えたのか!
「タジャ……(今のは……)」
「やったわね! ツタージャ! でも戻って!」
ナナはツタージャをボールに戻す。見たところアクアテールでも大したダメージになっていない。これは別のポケモンの方が良いのは明白だ。
「やっちゃえ! ムンナ!」
「ンナッ!(任せろ!)
「ファイアロー! そのままアクロバット!」
「まもる! がんせきふうじ!」
ムンナが見事なタイミングでまもるを使って攻撃を防ぎ、念力で岩石を落としていく。岩は見事にファイアローに当たり、大きなダメージを与える。
「……ここまでまもるを完璧なタイミングで撃てるものなの! そんなの無敵じゃない!」
「一気に決めるよ! おんがえし!」
「ンンナッ!(とりゃぁ!)」
ムンナがファイアローを吹き飛ばす。それによりファイアローが戦闘不能。ムンナが見事なドヤ顔をしている。
「う、嘘でしょ……二体やられて私は一体も……倒せてない? 相性が悪いわけじゃない……それどころかエースのダークライも出てない……それなのに……」
アザレアの顔色が一気に悪くなる。あれは完全に追い詰められている顔だ。無理もない。ジムリーダーになるまで相当の経験を積んで、必死に育て上げたポケモンだ。それが旅を始めて間もないトレーナーにいいようにやられているのだ。取り乱すなという方が無理な話。
「ううん! まだよ! まだ負けてない! いくわよ! ガオガエン」
「戻ってムンナ。それじゃあ頼むわよ。ダークライ!」
ガオガエンは炎と悪の複合タイプ。さすがにムンナじゃ分が悪いと判断したのだろう。僕は静かにフィールドに出る。それにより辺りは緊迫した空気になる。アザレアも僕のことを相当警戒している。
「……ガオガエン! DDラリアット!」
「がオッ!(ふんっ!)」
ガオガエンが手に炎を纏ってルグルと回しながら駒のようにこちらに近づいてくる。僕は手を振るい、あやしいかぜを起こしてDDラリアットの勢いを殺す。そしてガオガエンに近づき、腹を蹴り飛ばして、アザレアの方にガオガエンを吹き飛ばす。これで準備運動になった。そろそろ気合を入れていくか。僕はやみのエネルギーを今よりも強く体に纏う。
――ナイトメアシフト12%だ。
「……いくらなんでも強すぎね。ここは退くわよ。とんぼがえり!」
ガオガエンが僕の裏を軽く、殴ってボールに戻っていく。少し痛いが大きなダメージではない。気にすることでもないか。次はなにが出てくるのか……
「頼んだわよ! ゴウカザル!」
「カッザル!(俺の出番か!)」
いきなり僕の頬に拳が飛んでくる。僕は反射的にそれをシャドークローで受け止める。なんて力と速さ。少しでも反応が遅れたらやられていた……
「カザル……(ほう……)」
「オカエシだ」
そして僕は足でゴウカザルを蹴って払う。ゴウカザルは少し吹き飛ぶも体制を整えて、こちらを力強く睨んでいる。このゴウカザル。恐らく相手のエースだな。相当強いぞ。
「ダークライ。相性は不利だけど、そのまま戦う? それとも戻る?」
「戦ウ!」
「了解」
このゴウカザルは僕が倒す。そうしなければ他のポケモンに負担が増える。ここで止めなければ下手したら全滅もありえる。相手は格闘で不利だが、技が通用しないわけではないはずだ。それなら勝算は充分にあるはず。
「二秒後にマッハパンチ」
僕はナナに言われたタイミングが体を捻る。それによりゴウカザルのマッハパンチを見事に避ける。それからナナが手を叩く。音がするタイミングで僕は体をズラす。何故なら手が叩くタイミングでマッハパンチが飛んでくるからだ。口で言わず、手で伝えるのは言葉にしたら間に合わないから。そしてナナのタイミングは完璧で全ての攻撃を危なげなく避けれる。
「……完全に見切られてる!」
「ダークライ。私は攻撃の来るタイミングだけ伝えるから適当に攻撃しなさい」
それはありがたい! つまり自分の判断で動いて構わないということだな! そして攻撃が来るタイミングは完全に分かってる。それなら危なげなく戦える。
「ウキっ!(なにっ!)」
背後から飛んできてマッハパンチを避けて、ゴウカザルの手首を掴み、そのまま背負い投げして地面に叩きつける。そして手をゴウカザルの顔に添えてエネルギーを集める。
ドカンという音と共に軽く砂煙が舞う。やったのは簡単なことだ。ゼロ距離であくのはどうを撃って、ゴウカザルに攻撃を仕掛けた。さすがにゴウカザルといえど今のは致命傷に匹敵すると思うが……
「ナ、ナニッ!」
しかしゴウカザルの姿はなかった。地面を見ると穴が空いている。ゴウカザルは技を撃つ少し前に地面に穴を掘って、攻撃から逃れたのか。それならどこから……
「後ろよ」
「ウキッ!(もらった!)」
回避は間に合わない。僕は瞬時に体を透かせてゴウカザルの一撃を流す。そして上に飛んで手に電気を纏い。それを放出する。10まんボルトをフィールド全体に走らせたのだ。しかしゴウカザルは器用に動き回りながら回避。そして手を振りかぶってこちらに飛んでくる。
これはチャンスだ。ここならゴウカザルも攻撃を避けられない。こちらもダメージを受けることになるが、それを差し引いても、この技を当てられるメリットは大きい。
「インファイト!」
ゴウカザルの連続した拳が僕に叩き込まれる。まるでガトリング砲で殴られてるようだ。一撃が重い。少しでも気を抜いたら意識が飛びそうだ。でも僕はここで決める!
「ダークホールよ!」
ナナもやりたいことを察してくれて叫ぶ。やっぱり技名は叫んでもらわないと締まらないよな! 闇の玉を作り、そのままゴウカザルの腹に押し付ける。ゴウカザルは深い眠りに落ちて地面に墜落する。これでゴウカザルは無力化出来た! 一気にここで決めたいところだ! いくぞ! ナナ!
「そのまま抜け出すことのない絶望に打ちひしがれなさい! 私達もゼンリョクでいくわよ!」
ナナのZクリスタルが光る。僕の力もみなぎってくる。禍々しい力だ。一点にその
力を集めていく。生まれくるブラックホール。ありとあらゆる物を飲み込み、破壊する。その一撃は必殺技と呼ぶに相応しい!
「ブラックホールイクリプス!」
ゴウカザルがブラックホールに吸い込まれる。そして気が付いた時には戦闘不能で倒れているゴウカザルがいた、それと同時に僕も体から力が抜けていく。さすがにインファイトを受けたらキツイな。
「ダークライ。いける?」
「……」
「無理ね。お疲れ様。それとありがとね」
そして僕が戦闘不能という扱いでボールに戻される。アザレアは残り三体。それに対してナナが残り四体。最初はアザレアの方が有利だったが、今はナナの方が有利だな。
「強い。私が本気で挑んでも互角以上に……ううん、私が押されてる。認めるよ。悪夢姫ナナ。あなたの実力は既に私を超えている」
「……そんな過大評価されても困るのだけど」
「悪夢姫なら……」
彼女の目が変わった。まるでナナに助かを乞うような目だ。彼女はなにをする気だ?
「……また頼むわ。お願い! ツタージャ!」
「タジャ!(うん!)」
「今の私に使いこなせるか分からない。私のいうことを聞いてくれるか分からない。だけど悪夢姫なら……」
アザレアが首飾りにしていた七つ目のボールに触れる。あれは飾りではなかったのか? そして彼女がボールを握ると同時に物凄いプレッシャーを感じる。これはマズい。明らかにゴウカザル以上の化け物が出てくる流れだ。しかも彼女の口ぶりからして使う気はなかったみたいだ。
「お願い! ヒードラン!」
「ゴフフフフフフッ?(あ? 俺を出して何様のつもりだ?)」
ヒードランと呼ばれたポケモンはゴキブリのような姿をしているが明らかに今までのポケモンとは違う。次元が違うという言葉すら相応しいポケモン……
「ゴフッ……ゴフッ……(ポケモンバトル……くだらねぇ……)」
「ツタージャ! アクアテール!」
「タジャ!(了解!)」
ツタージャがアクアテールをヒードランに放つ。しかしヒードランはビクともしない。それからツタージャは必死に何度も殴る。
「ゴフッ……(うぜぇ……)」
「タジャ!(え!)」
ヒードランが咳をするように炎を撒き散らす。それにツタージャが吹き飛ばされる。吹き飛ばされたツタージャは起きる素振りも見せない。たった一撃。それがツタージャを戦闘不能に追い込んだ。実力差は火を見るよりも明らかだった。
「……なんて強さ。楽しくなってきたわね!」
しかしナナは絶望することもなかった。それどころか強いポケモンと戦えることを心の底から楽しんでいるかのような表情を見せていた。ナナは笑顔でボールを投げる。出てきたのはムンナ。ムンナもやる気だ。
「アザレア! あなた最高ね! でも勝つのは私達よ!」
「……うん。そしてナナ! ヒードランを助けて!」
「は?」
ナナはアザレアの一言に啞然とするしかなかった。そしてナナ怒りがヒートアップしていく。まるで先程の喜びが噓のようだ。
「……ふざけるんじゃないわよ。ジムリーダーなら自分のポケモンの問題くらい自分で解決しなさいよ!」
ナナから出た言葉は先程とは噓のように冷たいものだった。
ナナは本気でキレていた。
ナナ手持ち
ダークライ(戦闘不能)
ムンナ
スピアー
ツタージャ(戦闘不能)
ドラミドロ
――
アザレア手持ち
ゴウカザル(戦闘不能)
ガオガエン
ファイアロー(戦闘不能)
Aガラガラ(戦闘不能)
?????→ヒードラン
?????