蜘蛛の対魔忍は働きたくない   作:小狗丸

3 / 45
002

 東京キングダムでの捜索任務から三日後。今日は対魔忍の任務も無いし、五車学園も休みの完全なオフの日だ。

 

 こんな日は何も考えずにただひたすら寝ていたいのが俺の本音だ。だが五車学園に転校してから俺は、休日の時間の大半を体力作りと武術の修練にあてていて、今も走り込みをしている真っ最中だったりする。

 

 何故そんなことをしているのかというと、これも全てはこの世界で生き残るためである。

 

 俺は対魔忍の任務は嫌だが、それ以上に死ぬのが嫌だ。だから国からのペナルティーを避ける為に対魔忍の任務を実行して、対魔忍の任務についた以上、最低でも自分で自分の身くらいは守れるようになろうと、体力作りと武術の修練に励んでいるのだ。

 

 幸い、この五車学園には古今東西の格闘術や武術の知識、そしてそれらの武術で使用する武器が揃っている。その中には近距離の敵と戦うことを想定した弓術というものもあり、これは弓矢を使っている俺にはありがたかった。

 

 俺の忍法「獣遁・電磁蜘蛛」は、目が届く近くで蜘蛛を操るならともかく、遠くで蜘蛛を操るには意識を集中させる必要があるので、その隙を突かれて敵に接近される危険がある。もしもの為の接近戦の備えはしておいて損はないだろう。

 

 しかし……うん。ありがたいと言えばありがたいのだが、俺はこの武術の知識と武器の豊富さも、対魔忍が脳筋となった原因なのだと思う。

 

 だってさ? 弓矢をメインウェポンにしている俺が言うのも何だけど、五車学園が揃えている武器って、大半が忍者らしくない武器ばかりじゃないか?

 

 日本刀や小太刀、手裏剣といった刀剣類は分かる。

 

 拳銃を初めとする銃器類もまだ納得出来る。

 

 しかし身の丈以上の巨大なバトルアックスやらバズーカといった武器は忍者が使う武器とは思えない。これっぽっちも忍んでいないじゃないか。ピッチリスーツの対魔忍スーツを着てそんな巨大な武器で武装していたら、忍ぶどころか目立ちまくりじゃないか。

 

 というか、強力な忍法や武器を使って、敵と正面からのド派手な戦闘しか出来ない脳筋の対魔忍達は、対魔忍の「忍」の文字の意味を辞書で調べた方がいいと思う。

 

 同じド派手な戦闘をしていても、NARUT◯のキャラクターは戦闘になる前にちゃんと敵に気づかれないように任務を遂行して、戦闘になってもチームの事やらこれから先の事を戦いながら考えて頭を使っているぞ?

 

 そして同じピッチリスーツを着ていても、普段は左の義手に◯イコガンを隠しているキャプテン・◯ブラの方がまだ忍びらしいぞ? キャプテン・コブ◯は超人的な体力の持ち主だし、潜入技術も超一流だし、サイコガ◯を使った暗殺から強大な敵の抹殺までなんでもありだし、対魔忍よりも対魔忍らしいし。

 

 アレ? と言うことは対魔忍の理想って◯ARUTOのキャラクターか◯ャプテン・コブラってこと?

 

 考えてみれば原作の対魔忍シリーズって、最後の方になるとNA◯UTOやキャプテン・コ◯ラ並みに凄まじい戦いを繰り広げていて、作品によっては世界が一度終わるようなトンデモ展開があったような……?

 

 ………。

 

 ……………。

 

 …………………うん。深く考えるのはやめよう。これ以上考えても怖くなるだけで何の意味もないし、考えるのはここまでにしよう。

 

 そう結論付けた俺は、今行なっている走り込みに意識を集中させることにした。

 

 はぁ……。もう対魔忍の世界で働きたくない。

 

 というか、いい加減対魔忍の任務減らないかな? 俺、一応まだ中等部の対魔忍見習いなんだぞ?

 

 しかし残念ながらこの俺の願いは叶うことはなかった。

 

 この日、偶々国の高官が五車学園の視察に来ていて、偶然その高官は自主練をしている若い対魔忍……つまり俺の姿を見たらしい。それによって興味を覚えた高官は俺の資料を見て「すでに実績を出しているのに、それに驕らず自主練に励むとは、若いながら素晴らしい人材だ!」と、非常にありがた迷惑な高評価を出してくれたそうだ。

 

 そしてその高官のお言葉で俺の名前は国の上層部に少しだけ知られてしまったらしく、結果として俺の所にやって来る対魔忍の任務は更に増える事になり、それを後で知った俺は絶望した。

 

 生存率を少しでも上げる為に自主練をしていたのに、何でそのせいで対魔忍の任務、命の危険度が増えるんだよ!?


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。