蜘蛛の対魔忍は働きたくない   作:小狗丸

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 悟空の修行で潜在能力を引き出したことにより、俺の忍法と邪眼の能力は大きく向上した。

 

 その中で一番目立った成長は、やはり右の邪眼が目覚めてラシュラを呼び出せるようになったことだろう。ラシュラは周囲から吸収した対魔粒子や霊力と言った霊的物質やエネルギーを使って自らを雷にする能力に加え、ライトイーターと同じく電磁蜘蛛の視界から呼び出す事が出来る。これによって俺は今までの戦い方を変える事なく戦力を大幅に上がった。

 

 ライトイーターも成長している。あの修行のお陰で一度に二匹のライトイーターを呼び出せるようになったし、俺か電磁蜘蛛が意識して見た敵を最優先に倒したり電磁蜘蛛と接触している対象は襲わなかったりと、ある程度だがターゲットの指定が出来るようになっていた。

 

 そして電磁蜘蛛。正直俺はコイツの成長が一番大きいと思う。能力自体は修行前と大して変わっておらず、仮想空間でのように自我に目覚めたわけでもない。向上したのは射程距離だけなのだが、最大射程距離三キロが五キロと二倍近く延びたのはとてつもなく大きい。

 

 元々俺の戦い方は電磁蜘蛛を使っての遠距離からの偵察と暗殺なのだ。だから電磁蜘蛛の射程距離が延びれば、それだけ任務で取れる行動が増えるということだ。

 

 このように悟空の修行で強化された忍法と邪眼の効果はどれもチート級で、これらの組み合わせは凶悪の一言に尽きた。

 

 実際ラシュラ(HP無限、ドレイン能力有、物理・特殊攻撃無効、超高速行動化)とライトイーター(HP無限、光属性の自己強化能力有)二匹と戦いながら、生き残るには中継機である五センチ程の透明になれる電磁蜘蛛を倒すか、半径五キロの何処かにいる術者(護衛有)を倒せだなんて、俺が敵だったら即座にキレる難易度である。

 

 ……だが、こんなチート能力を複数持っていても、この対魔忍とGS美神が一つになった、下手したら世界を滅ぼす敵や、それらとの戦いに当然のように巻き込む味方や、危険極まる任務を平気で押し付けてくる上司がゴロゴロいる世界では「最低限自分の身を守れるようになった」レベルの安心感しか感じられないんだよなぁ……。

 

 ちなみに俺と銀華は、悟空の修行でパワーアップした内容を全て報告していない。俺はラシュラのドレイン能力とライトイーターが二匹になった情報のみを、銀華は忌神が彼女を守る行動をするようになった情報のみを報告している。

 

 何故パワーアップの情報を一部しか報告していないのかというと、全て報告すれば必ず今以上に危険な任務を大量に押し付けられるからだ。ただでさえ労働基準法に真正面から喧嘩を売っているブラックな労働環境なのに、これ以上酷くなるのはごめんである。これには銀華も真剣な顔で頷いて賛同してくれた。

 

 とりあえずこれで修行を終えて妙神山を下山した俺達は新学期を迎え、俺は高校一年に、銀華は中学三年に進学した。そしてそれから更に半年後……。

 

 

 

 

 

「頼人、何をグズグズしているの? 貴方は私達の隊長なんだからもっとしっかりしてよね」

 

「頼人……早く行こう……」

 

「二人とも、そんなに隊長さんを急かさなくてもいいじゃ……ヒックッ! アハハ~、いい感じに酔いが回ってきた~♪」

 

 俺は、俺と銀華を含めて五人の小隊の隊長になっていた。しかも俺以外の四人は全員女性の対魔忍である。

 

 ……一体全体、どうしてこうなった?


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