蜘蛛の対魔忍は働きたくない   作:小狗丸

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 皆さんこんにちは。

 

 中学一年生から現役の対魔忍に混じって任務を行い、中学三年生になった今では「蜘蛛の対魔忍」と呼ばれて、上層部から非常に嬉しいこと(血涙)に高評価をいただいている五月女頼人です。

 

 しかし俺は「死にたくない」、「政府からペナルティーが恐い」、「家族の期待に応えたい」という気持ちから対魔忍の任務を行っているのだが、やっていることは上からの指示を全うして報連相をしっかりするという社会人として当然の事だ。それをしているだけで上層部から高評価を受けるのだから、他の対魔忍がどれだけ酷いのかが容易く想像できる。

 

 ぶっちゃけて言うと週に五回は「対魔忍なんか辞めて、米連辺りに亡命するか、東京キングダム辺りでフリーの情報屋になった方がいいんじゃないか?」と、真剣に自問自答している。

 

 ……まあ、本当にそんな事をすれば、最悪アサギ直々に問答無用で殺しにくるかもしれないのでやらないが。

 

 とにかく俺は今、対魔忍の頭の酷さ以外で一つの悩みを持っていた。それは先日、資料室で会った忍法が使えないと言う一人の男子生徒の事である。

 

 先日、資料室で俺が「忍法が使えないのなら体術を使えばいいじゃない」と偉そうに言った相手は、この世界の重要人物となりうる人物、「対魔忍RPG」の主人公であるふうま小太郎であったのだ。

 

 この死亡フラグ満載の世界では原作のキャラクターに接触するのは危険だと思って、すでに接触しているアサギとさくら以外の原作キャラクターとの接触を避けていたのに、まさか主役級のキャラクターが向こうからやって来るとは予想外だった。……というか最初に見た時に気づけよ、俺の馬鹿。

 

 そしてその小太郎君はと言うと、俺の言葉を真に受けて、現在は体術のスペシャリストになるべく死物狂いで体術の修行をしているそうだ。

 

 何故俺がそれを知っているのかというと、小太郎君の関係者に連続で礼を言われているからだ。

 

 二日前は、先日資料室に小太郎君を探しにきた対魔忍の女性、彼の異母姉からは「貴方のお陰でお館様が修行にやる気を出してくれました」と涙ながらに礼を言われ、

 

 昨日は、俺の同級生で小太郎君が兄のように慕っている男子生徒から「小太郎様を励ましてくれてありがとうございます」と優雅に礼を言われ、

 

 そして今日は、学校の廊下を歩いている時に、小太郎君の親友である赤髪の後輩に「アイツが世話になったな」とすれ違いざまに礼を言われた。

 

「なんか一気に原作キャラクターの知り合いが増えたな。……っ!?」

 

 

【オメデトウゴザイマス。転生特典強化ボーナスノ発動条件ガ達成サレマシタ】

 

 

 俺が内心でため息を吐きながら学生寮に戻ろうとしたその時、突然脳内にどこかで聞いたことある声が聞こえてきた。

 

「だ、誰だ!? それにこの声、どこかで……?」

 

【転生特典強化ボーナスノ発動条件「この世界の歴史の中心人物五名との接触」ノ達成ヲ確認。ヨッテ、転生先ヲランダムニシタ事デ得タ、転生特典強化ボーナスヲコレヨリ与エマス】

 

 そうだ思い出した! この機械みたいなカタコト喋り、俺がこの世界に転生する前に会ったあの光の玉だ!

 

 というか転生特典強化ボーナスって何!? 俺、電磁蜘蛛……転生特典を強化してくれるって言うから転生先をランダムにして結果この世界に来たのに、今まで強化無しで任務をやっていたのかよ!?

 

 一体どういうことだと俺は脳内の声の主、あの光の玉に問い詰めようと思ったのだが、それより先に両目に激痛が走りそれどころではなくなった。

 

「……………っ!?」

 

【コレデ貴方ノ魂ノ特異性ハ無クナリ、次ノ死亡デ貴方ノ魂ハ輪廻ノ輪二組ミ込マレルデショウ。デハ、今ノ一生ヲ懸命二生キテクダサイ】

 

「ま、て……!」

 

 光の玉のその言葉を最後に、俺は両目の激痛で意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして次に目覚めた時、俺は……「邪眼」を手に入れていた。


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