ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」   作:わんたんめん

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最近寒くなってきたとおもったらまた気温上がるの多いなぁ…………体調崩しそうで怖い


第105話 守られるべき中立

 

「ふぅ………………」

 

目の前に広がる光景を見て、さやかは安堵のため息をこぼしながらトランザムを解除する。

視線の先にかえでを飲み込んだドッペルは存在せず、代わりに互いの瞳に涙を浮ばせながら身を寄せ合っているかえでとレナと、そんな2人を同じような表情で側で見守っているももこの姿があった。

 

「他のドッペルの様子はどんな様子だ?見たところ直前と比べておとなしくはなっているようだが。」

 

そんな3人を尻目にさやかはみたまにドッペルの状態を聞く。

近くでドッペルの様子を観察していたみたまはさやかの方は向き直ると呆れたように両肩をすくませた。

 

「少し覗いただけだけど、格段と精神のバランスは良くなっていたわ。全く負担がないってわけではないにしろ、これならある程度はいつもの調子でやっても大して問題ないかも。」

 

みたまからその返答を聞いたさやかは満足そうに頷いた。

 

「…………八雲、君はこれからどうするつもりだ?答えを聞かせてもらおう。」

 

「…………わたしは─────」

 

十七夜の問いかけにみたまが答えを出そうとした時、大きな振動がさやかたちの体を揺らす。

突然の現象にその場で身構え、周囲を見渡す。

 

「ッ……………不味いわね、場所を移すつもりよ。」

 

「……………このフェントホープをか?一体何の必要でだ。」

 

「集めた魔女をエンブリオ・イヴに与えるには無力化して捕まえる必要があるのよ。」

 

「迎撃のための移動…………場所まではわかるのか?」

 

「……………大東区郊外の廃遊園地、といえばわかる?」

 

大東区、という単語に十七夜に視線を向けるさやか。

幸い見当がついてるのか頷く反応を見せてくれるが表情は芳しくない。

それもそのはず。理由は単純に場所が悪い。

ワルプルギスの夜の上陸予測地点は神浜市の南西地区だ。対する大東区は市の東側を占めているとはいえほとんど正反対のような場所だ。

仮にエンブリオ・イヴを止められたとしても、距離が離れているせいでワルプルギスの夜の迎撃態勢を整えられない可能性が非常に高くなってしまう。

市への被害を最小限にするために上陸そのものを防ぎたかったさやかにとってこれは非常に厳しい状況となってしまう。

 

「さやかさん、どうしましょう……………!!」

 

「……………確か里見灯花は放送で魔女を誘導するためのウワサがあると言っていた。まずはそれの破壊が最優先だ。だが、問題は居所だな。」

 

「こちらは頭数がない以上、捜索のためにわざわざこれより下手に分散させるのは悪手ということだな?」

 

「そう。向かわせるのであれば確信がほしい。」

 

揺れは収まったが、不安そうな表情のゆきかにそう言いながらさやかは誘導を行っているウワサの所在がわからないことを理由に難しい表情を浮かべる。

 

(…………中立を称しているのなら、これ以上の干渉は────)

 

調整屋は中立であればならない。

それはみたまにとって恩人であり師匠とも言える『先生』からの言葉である。

みたまが調整の代価としてグリーフシードを求めるのはひとえに彼女が戦えない魔法少女だからである。

願いを叶えなかったさやかでさえ、最低限サーベルが武器としてあったのに対し、契約した時の彼女は身を守る術さえなかった。

魔女と戦えなければグリーフシードを得られず、待っているのは魔女化による死だけ。

絶望の淵に立たされていたみたま。そんな彼女を救い上げたのが調整屋としての師匠であった。

 

そこから師匠と呼べる魔法少女から調整を教わり、こうして居を構えられ、他者依存とはいえグリーフシードを得られるまでになった。

 

(だけど、これは守るべき中立なの?)

 

どちらかに肩入れすればどちらかを見捨てることになる。調整屋と銘打ってはいうが、みたまのやっていることは要は商売。不評を買って利益が半減するのは彼女にとっては不利益そのものだ。

何より、副作用ありきとはいえ魔女化を避けることのできるドッペルという存在がみたまをマギウスから離れづらくしていた。

戦えない彼女にとって戦わずとも魔女化の危険が避けられるのは願ったり叶ったりだ。

だがその建前もさやかが生み出すGN粒子の光で崩れかけている。

さやかから料金の代わりとして魔力の自然回復があることを聞かされていたとはいえ、彼女はそれを他人にまで効果を拡大、あろうことか穢れの浄化までやってのけた。

 

(……………みんなに見せられる、突き詰めればそれはみんなを守ることのできる希望、っていうことなのね?)

 

 

 

 

 

「──────フェントホープの屋上、そこに誘導装置があるわ。」

 

会話に入ってきたみたまの声に目を見開くさやかたち。

ウワサの場所を教えるということは明らかにマギウスに対する利敵行為だ。

中立の立場を望んでいるみたまがその情報を伝えるということは────

 

 

「いいのか?今ならまだ聞き逃したことにしても構わないが。」

 

少し間を空けてからみたまは小さく、それでいて確かに頷いた。

その意志を受け取り、さやかは散らばっている仲間たちに念話で状況の変化と作戦目標を伝える。

 

『今の揺れはどうやらフェントホープが移動したらしい!行き先は大東区郊外の廃遊園地だ!これによりワルプルギスの夜の上陸予想地点から離れてしまう以上、迅速な計画の阻止が求められる!いろはたちマギウス担当はそのまま上を目指して魔女の誘導を行なっているウワサの破壊に専念してくれ!計画の柱を為しているだろうから、マギウスもそこにいるはずだ!』

 

『さやかさん…………!!わかりました!!』

 

念話から代表していろはの返答を聞き届け、さやかは十七夜とゆきかの2人と目を合わせ、隔離室への外へ向かおうとする。

 

「待ちなさいよ!レナたちも一緒に行くわよ!!」

 

「手を貸してくれるのは助かる。だが2人はそれでいいのか?」

 

ついてこようとするレナたち。

それにさやかは笑みで返しながらも彼女たちに、特に羽根であるかえでとももこの2人を見てそう問いかける。

 

「ドッペルに取り込まれたときに見せてくれた光、あれはさやかちゃんが今出しているものと同じなんだよね?ドッペルも確かにいろんな魔法少女の子たちにとっては救いにはなると思う。でもわたしはそれ以上にもし制御ができなくなったときにレナちゃんとか周りの人にけがをさせちゃう方がもっと怖い。だからわたしはあなたに賭けたい。沈みかけたわたしに希望を見せた光ならもっといろんな人を本当の意味で救えると思うから。」

 

そう言い切ったかえでの表情はいつぞやかに見せていた不安そうなものではなく、決意固まった精悍なものを見せていた。

 

「…………ホントはさ、アタシ知ってたんだ。魔女化のこと。」

 

「………それもそうか。安名君が確か─────」

 

ももこと十七夜が安名という魔法少女と思われる名前を出したっきり、気まずい表情で口を噤んでしまう。

おそらくももこと十七夜の共通の知り合いだったのだろう。それもレナとかえでがまるで知らないというように顔を見合わせていることから二人と出会う前、場合によってはやちよたちとも交流があったことも考えられる。

 

「その子は安名メルって言う子なんだけど、アタシがまだやちよさんたちとチームを組んでいたころの仲間だったんだ。今はもう、いないけど。」

 

目を伏せるように顔を背けたももこに全員はそのメルと言う少女が既に魔女化し、故人になってしまっていることを察してしまう。

 

 

「メルが魔女になってしまったあの時からずっと心のどこかで思ってたんだ。アタシもそのうち魔女になっちゃうのかなって。」

 

「それがイヤだったから半ば半分かえでの誘いに乗るようにマギウスの翼に入った。けど────」

 

一旦言葉を切ったももこ。視線はわずかに後ろに向けられ、ドッペルと融合してしまった魔法少女たちに向けられていた。

 

「たくさん見たくないものをみた。魔女を育てるために普通の人を傷つけたり、ああいう風にドッペルの使いすぎでまともでいられなくなったり。少し前にマギウスの人が挙げた集会だと、周りの魔法少女たちは救済は目前だっていう言葉に歓声を上げてたけど、根本的なところを間違えてる。」

 

ももこの目線は傍らに立つレナとかえでに移る。その目線はまるで大事な宝物でも見つめるかのような柔らかいものだった。

 

「普通の人であれ、魔法少女であれ、それまで隣にいた誰かと突然一緒にいられなくなるかもなんて間違ってる。あっちゃいけないことなんだ。だから、アタシも乗っからせてくれないかい?君の見せられる希望ってヤツにさ。」

 

「────わかった。改めてだが、こちらとしては手を貸してくれることに対して感謝の言葉以外を送るつもりはない。ありがとう。」

 

「話はまとまったみたいわね?」

 

「ああ。一応もう一度確認だが、安定化しているとはいえこの数だ。グリーフシードの予備は十分か?」

 

話がまとまったところにきたみたまに確認をとるさやか。

さやかの言う通り、GN粒子の力で安定化できているとはいえドッペルに取り込まれた状態から元に戻すには相当な労力と魔力がいるであろうことはみたまの言葉から推察できる。

 

「自腹を切るのは後にも先にこれっきりにしたいわね。」

 

みたまの様子から心配はいらないと判断したさやかは隔離室を後にしようとする。

 

「そういえば先ほど戦った魔法少女たちだが、また襲ってくるのだろうか。」

 

「そうなっては欲しくはないが、その時はその時だ。」

 

外で無力化した神楽燦たちがまた仕掛けてくるかも、という十七夜の言葉に苦笑いのような表情で仕方ないと返す。

 

「十七夜さんたちって誰かと戦っていたのか?ときどき揺れていたんだけどさ。」

 

「………教官です。羽根たちに戦闘を教えているあの鬼教官です。」

 

「えっ!?あのしごきがバカみたいにきついってウワサの!?」

 

「結構名うての魔法少女だったのか。そうであるのなら手ごわくて当然か。」

 

ゆきかの言葉に心底から驚いた表情で目を見開くももこ。

神楽燦がマギウス内でも指折りの魔法少女であったことに気づいたさやかは納得したような表情を見せる。

他の黒羽根たちの統率力を見て、かなりできる人物だとは思っていたが、教官という立場であるのなら合点がいく。

 

「────その割に貴方を止めることはまるで叶わずだったけどね。」

 

「わぁぁ!?出たぁーーー!?」

 

声の聞こえてきた入り口の扉の方を見るといつのまにか入ってきていたのか話題にあげていた神楽燦の姿があった。彼女の周りにはローラーブレードを履いた魔法少女、遊狩ミユリをはじめ、ともに防衛に出ていた羽根たちもいた。突然の来襲にお化けでも見たかのような反応を見せるももこ。

そのももこの反応を不快に感じたのか少しばかりムッとした表情を浮かべる。

 

「な、なによ……もしかしてやるつもり……!?そうならレナたちは容赦なんてしないからね……!!」

 

現れた神楽燦たちが仕掛けてくると思ったのか槍を構えるレナに彼女は少しだけあたりを見渡すようにすると首を横に振った。

どうやら今この場で戦闘を行う意思はないらしい。

どういう理由だと思っていると彼女の周りにいた黒羽根たちの表情が目についた。

顔全体が見えてるわけではないから口元しか表情を伺うことはできないが、それでも唖然とした様子で口が開いており、羽根たちの目の前に広がっている大量のドッペルが拘束されている光景に明らかにうろたえている。

 

「ちょ…調整屋さん……これ、なんなんですか……!?」

 

神楽燦の周りにいた羽根の一人が、隔離室に閉じ込められているドッペルを見て困惑した様子でみたまに説明を求める。

マギウスからドッペルの有用性は聞かされているだろうとは思っていたが、やはりその隠された危険性については知らないらしい。

羽根たちに一斉に視線を向けられたみたまはわずかに顔を俯かせたあとにさやかの方を見た。

 

「……おそらく私たちが話すより、羽根のみんなから信用のあるお前に話してもらった方が受け入れやすいと思う。もしくは実体験を持っているかえでにだが。」

 

意見を求められたさやかがそういうとみたまは少しだけ考えるようにそうね、とつぶやき、ドッペルに隠された副作用を明かした。

魔女化の恐怖から逃れるためにやってきたというのに結局は同じように使いすぎによる弊害が存在していたことに羽根たちは動揺を隠せない様子だ。中には呆然とした様子で力なく座り込んでしまうものもいるほどだ。

 

「………ドッペルの力を行使しすぎるとドッペルと融合してしまい、元に戻れなくなってしまう。それもあの状態から回復する手法もなければ兆候もなし、ですか………」

 

みたまの話を一通り聞いた神楽も口元を手で覆い隠し、険しい表情を見せる。隣で立っているミユリもどこか不安そうな顔を神楽に向けていた。

 

「もちろん、マギウスの行いすべてを否定するつもりはない。少なからずドッペルが魔法少女たちを救えていたのは確かだ。だが、私にはいささか答えを急ぎすぎているように思えて仕方ない。」

 

「それが、貴方の言う希望なのね。閉じていたはずの扉からでも見えた、貴方が生み出すあの光が。」

 

どうやら彼女はドッペルに取り込まれたかえでを救い出す一部始終を見ていたようだ。

 

「……メインは魔力回復や穢れの浄化だ。ドッペルから引きはがすのは調整屋である彼女がいなければ結局は不可能だ。」

 

魔力回復と穢れの浄化。さやかは何げなく淡々とした様子でそれを言葉にしたが、その破格の能力に神楽も大きく目を見開いて驚きを隠せない。

 

「………戦うつもりがないのは確からしいな。行こう、みんな。」

 

神楽の雰囲気からさやかたちを止める意志がないことを察したさやかは十七夜たちを連れ添って隔離室をあとにする。

すれ違うときに微妙に気後れした表情を見せるかえでとももこだったが、それを神楽はわずかに笑みだけを見せて送り出した。

残されたのはドッペルに取り込まれた魔法少女を助けるために残ったみたまと神楽たちだけ。

 

 

「…………あのさ、みたまさんだけ残して大丈夫だったのか?」

 

「今の彼女に敵意や害する気はなかった。手荒なマネはしないはずだ。いくらこちらに与してくれることを決めたとはいえ、中立として少なからず貢献していたであろう彼女を独断で何かするとは考えづらい。」

 

 

隔離室を出たあとの心配そうなももこの言葉にそう返す。

とはいえそうさやかから断言されたとしてもももこはさやかみたいに人の感情に機敏なわけではない以上、不安の種が消えることはない。

 

「とはいえ、さすがに状況の確認がしたいな。特に外の様子をだが。」

 

「確かにそうですね。例の魔女を誘導するウワサが起動したのなら無数の魔女たちがフェントホープに集結してしまうわけです。ほかの羽根の魔法少女にも危険が及んでしまう可能性も…………」

 

十七夜とゆきかの言葉にさやかは少し考えを巡らせたあとに頷く。

 

「…………私たちの行動はこの先は特に定めていなかった。杏子たちかいろはたちどちらかと合流することも考えたが────」

 

 

「私たちはいったんフェントホープ外へ移動。そこから集まってくる魔女の迎撃をする。魔女の捕縛をする計画の邪魔も出来るし、何より羽根の魔法少女の援護もできる。」

 

「まったく、これでは一体どちらの味方をしているんだ、などとか言われてしまいそうだ。」

 

さやかの決断に呆れたような口ぶりの十七夜だが、表情にそのようなものは見えない。

ほかのゆきかたちも羽根たちを助けるという方針に乗り気なのか自身の得物を構えなおしたりして気合十分といった様子。

さやかたちは建物の外へ出るためにフェントホープの正面入り口へと向かう。

 

 

 




評価とかお気に入りとかが増えたり、感想くれると嬉しいよな…………(承認欲求モンスター)

マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………

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