ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」   作:わんたんめん

106 / 111
仕事忙しいよう…………(白目)


第106話 魔法少女は救われなければならない

 

「なぁ…………ここってさ、一応アイツらにとっちゃあトップレベルに大事な場所だよな?」

 

杏子の呟きに無言で頷くフェリシアたち。

さなが手に入れた情報から魔女が運搬されているレールの先にエンブリオ・イヴがいると踏んだが、結論から言えばエンブリオ・イヴはいた。

昆虫のような節のついた手足に蝶に似たような羽。

そして地上にいる杏子たちが見上げてもなお全貌が把握しきれないその白い巨体。

グロテスクな見た目ではあるが、確かにワルプルギスの夜と張り合うのであれば納得の大きさだ。何より内包している穢れも半端ではない。無数の魔女を喰らったためか、その胴体からは可視化ができてしまうのではないかと思ってしまうほどの濃さを感じる。

 

ただし、今の杏子にはそれよりも目を引くものがあった。ちょうど自分たちの目と鼻の先ほどに近い場所、エンブリオ・イヴの足元に誰かいる。

 

「フフッ…………ウフフッ…………私はいつだって蚊帳の外…………」

 

それは酔っ払い(梓みふゆ)だった。なにか高級そうな椅子に寝転びながらオレンジ色の液体、その液体から漂ってきた匂いに思わず表情を歪ませる。

アルコールの匂い。彼女が飲んでいるのは酒だ。酒は杏子にとっては嫌な思い出しかない。脳裏にトラウマともいってもいい光景がよぎるが、父親との最期のやりとりを思い返し、なんとか平静を保つ。

儚げな笑みを見せているみふゆの顔もほのかに紅くなっているから彼女が酔ってしまっているのは確実だろう。

 

「あれ絶対めんどくさい酔い方してんだろ。」

 

「佐倉さん………」

 

何があったのか知らないが、到底人に晒してはいけないような醜態に呆れた様子で見つめる。隣にいた黒江も杏子のあんまりな言い方に苦言がありそうなようだが、杏子の表情とみふゆのある意味あられもない姿に困惑する程度に留めた。そしてその杏子の声が聞こえたのか見向きもしてなかったみふゆの体がピクリと反応した。

 

「あなたたちは────」

 

初めはムッとした表情を見せていたみふゆだったが、フェリシアとさなの姿を見ると驚いたように目を丸くしたのちにどこか申し訳なさそうに沈んだ顔を見せる。

 

「お前、幸運水とかのウワサのときの!お前なら鶴乃がどこ連れてかれたとか知ってんじゃねぇのか!?」

 

フェリシアがみふゆのことを思い出すと彼女を指差しながらそう言った。

確かにみふゆは他の羽根たちとは違ってあのケープのような顔を隠すものを着ているとこを見たことがない。それは顔を隠す必要がないほど羽根たちに顔が割れているということであり、それだけ組織内で高い地位にいるということにもなる。

 

「ッ……………」

 

鶴乃のことを聞かれたみふゆはより一層申し訳なさそうに顔を俯かせる。

その反応ぶりから彼女が鶴乃の居所を知っているのは確実だろう。そして、鶴乃が極めて危険な状況に置かれていることも。

 

「こーんなところで何やってんのかは知らねえけどさ。そうやってやさぐれてんのならそれだけの理由があるんだろ。特に鶴乃のヤツに関してさ。」

 

「鶴乃さんの居場所、知っているんですか!?」

 

杏子の指摘とさなの言葉に迷うような様子をみせるみふゆ。

 

「頼む!オレたち鶴乃を助けたいんだ!!」

 

「ううっ……………」

 

フェリシアの純粋な願いにさらに気圧されるように顔を背ける。

 

(本当は、わたしがやらなければならないこと。かつての仲間をあのような有り様にしてしまったわたしの責任。ですが──────)

 

脳裏に浮かぶはマギウスが計画が最終段階に入ろうととさていることを羽根たちに告げる集会の光景。

マギウスの行う救済の演説に羽根たちは歓喜を露わにするように大歓声をマギウスに対してあげていた。

みふゆ自身、未だやちよから理解はされていないものの、救済さえ成し遂げられればいずれはまた以前のように共にいられる日が来ると思っていた。

だが、その甘い妄想は無惨にも打ち砕かれることとなる。他でもない、彼女たち羽根が信奉するマギウスによって。

 

『お前たちにとって、大事な人が自らの行いに巻き込まれた時、お前たちはどうする?』

 

いつぞやかに聞いたさやかの言葉がみふゆの心でくり返される。

ここでみふゆは気づいた。さやかは誰かの犠牲ありきでは誰も救われないことがとっくにわかっていた。だから綺麗事だとわかっていても、それを目指している。そこにしかハッピーエンドなんかないことが見えていたから。

 

対する自分はどうだ?ソウルジェムが砕かれる(雪野かなえ)さまを見て恐怖し、魔女化(安名メル)を目の当たりにして絶望して、親友であるやちよと喧嘩別れまでして見えてきた現実はあまりにも無情。

 

『誰かの犠牲の上に立てるほど、私たちの魔法少女の心はできていない。』

 

「場所は…………おそらく灯花さん、マギウスの子達と行動を共にしているでしょう。ですが、今のあの子の状態は…………確実に正気ではありません。」

 

気づけばみふゆの口は鶴乃の居場所とおかれている状況を吐露しまっていた。

完全に無意識と呼んでもいい、溢れるように出た言葉に思わずハッとなるみふゆ。酒を口にしていたことで思考が鈍っていたのか。それとも鶴乃の命を危険にさらしているという罪悪感がそうさせたのか。ともかく飛び出た言葉に自身はここまで弱気になっていたのかと戦慄する。

 

「………………正気じゃないねぇ……具体的にはどういう状態なんだ?」

 

「あ、あの………今のは────」

 

「アンタ、今アタシらに鶴乃の居場所教えたよな?ってことは少なからずあいつを助けたいっていう本心はあるってわけだ。んだけど正直言ってそれができるかどうかはぶっちゃけ厳しめ。そうだろ?」

 

割り込むように言われた杏子の言葉にそれは、と声を詰まらせる。

助けたい、という気持ちならある。だが決起集会で見た鶴乃を思い起こすと、どこか虚な瞳でただ一言───

 

魔法少女は救われなければならない

 

その一言だけを壊れたスピーカーのように繰り返すその姿とすれ違った時に一瞬だけ見えた、髪と服装が晴れやかなオレンジから冷え切ったような青白い後ろ姿。

それと同時にみふゆの記憶の中の鶴乃が剥離していくような橙色の細かな光。

みふゆは悟る。鶴乃はマギウスによって壊されかけていると。

助けるべきだ。他ならない巻き込んだ自分自身が助けなければならない。

だが、微かに見えたあの光。あの鶴乃のように明るい色のはずなのに、妖しいとさえ感じさせてしまうあの輝き、見間違いでなければあれは────

 

「─────わたしは、一体どうすれば良かったのでしょうか?」

 

無謀。無力感。仲間を死なせたくないがために願ったのに、その願いのために他ならない仲間を死に追いやり、あろうことかそれを助けに行くことができない自身の情けなさにみふゆは懺悔するように目の前の杏子たちを見据える。

 

「…………………やっちまったことはもうどうにもならねぇ。過ぎた過去はもう二度と戻ってこないみたいにな。」

 

知らないと一蹴してもよかった。例えばフェントホープにやってきたのはグリーフシードを盗みに来た程度であれば、彼女の疑問に答える必要も義務もない。しかし、今の杏子は彼女らマギウスの翼を止めるために来た。そして自らの行いを後悔しているみふゆを見て、杏子は自分と重ねた。

かつて魔法を使ったが故に本意ではない結果を招いてしまった自分に。

 

「だからたぶん、アンタが考えるべきはどうすれば『良かった』じゃなくてどうすれば『良い』かだ。そうすりゃあ自然と身体は動く。」

 

杏子にそう言われ、みふゆは考える。

これまでではなく、これからを考える。

 

「私は─────」

 

みふゆは灯花たちマギウスから計画の真実を聞かされていなかった。

それはおそらく彼女たちから計画の詳細を聞かされたときに犠牲を多く出すこのやり方を是としないだろうことを見抜かれていたからか。

ならば自身のやるべきことは────

 

「止めます。止めに行きます。やはり犠牲を多く強いるこのやり方を見過ごすことはできません。私がそうすることをあの子たちに見透かされていたとしても、その真意がどうであれ、あえて私がそのように動くことであの子たちの心が救われると信じて。」

 

「! なら────」

 

「はい。今更と思われるかもしれませんがどうか、私もあなた方に協力させてください。」

 

「みふゆさん………!!」

 

フェリシアの期待に応えるように頷くみふゆに嬉しそうに表情をはにかませるさな。

 

「協力してくれるのはありがたいんだけどさ。アンタはまずやちよのヤツと話すことが先だろうな。あんま詳しくは聞いてねぇけど相当揉めたんだろ?」

 

「そ、それは………やっちゃん、受け入れてくれるでしょうか?あんな喧嘩別れにも等しいことをしていたのに…………」

 

「それは会ってからのお楽しみってヤツだな。ま、中々そういう機会が作れなくても察したお人よしが引っ張ってくれるだろうさ。」

 

「確かに…………あの人は話し合うことをとっても大事に見ていますからね。」

 

そう言った杏子のお人よしというのに心当たりがあったフェリシアはうんうんと頷き、隣のさなも似たような反応を見せる。

 

(やってしまったことはもうどうしようもならない、か。)

 

4人を少し遠巻きに見ていた黒江は表情を曇らせ、まるで眩しいものでも見るかのように俯く。

 

(話すことも大事だとしても、謝りたいと思っても、もう話すことができない相手なら、わたしはどうしたらいいの?)

 

黒江の足元からモヤのように黒い煙が立ち上る。

 

『そう。お前は彼女たちは違う。お前にはもうやり直す機会なんてない。』

 

「ッ!?!」

 

脳裏に響くようなくぐもった声に黒江は恐怖するように身体を竦ませる。

辺りを見渡すが、声の主と思えるような人影はどこにもない。

 

「……………黒江?」

 

そんな様子を見せた姿がたまたま目に入ったのか不思議に思った杏子が彼女に声をかける。

 

「は、はい!?だ、大丈夫です!!」

 

「……………………」

 

突然声をかけられたことに対してなのか、挙動不審な黒江に首を傾げる杏子。

 

「大丈夫ならいいんだけどさ、あんまアタシらから離れるなよ?この状況だから一回はぐれると最悪な目に遭うかもだぜ?」

 

「さ、最悪……………ご、ごめんなさい。」

 

杏子の言う最悪な目。

確かに一回でもはぐれて仮に一人にでもなってしまえば強くない黒江は羽根たちからの袋叩きは免れない。

ドッペルを行使すれば逃れられなくもないだろうが、ドッペルを多用すればどうなるかは前回のゆきかの件から想像に難くない。

 

「あー……………いや、言葉が悪かった。ともかくなんか気にしてることあんなら言っとけよ。できること、もしかしたらあるかもしれねぇからさ。」

 

黒江の青くなった表情を見て余計に怖がらせたことを察した杏子は申し訳なさそうに頭をさすりながらそう語りかける。

 

「……………わかりました。それと、すみません。気を使わせてしまって。」

 

「気にすんなって。魔法少女に大なり小なり後ろ暗い何かあんのは今に始まったもんじゃあねぇ。さやかぐらいだろうな、そういうのがさらっさらないのは。」

 

「そこまで…なんですか?あまり彼女のことを知らない私が言ったところでなんでしょうが………」

 

「だってアイツ筋金入りのバカだし。」

 

「………多分さ、さやかみたいなヤツのことを頭のいいバカって言うんだと思う。」

 

「二人とも酷い言いぐさですね………」

 

ふとさやかの人となりを聞いてきたみふゆに対する杏子とフェリシアの呆れたような物言いに苦笑いするさな。

 

「…………うし!とりあえずこいつ(エンブリオ・イヴ)つぶすのは後回しだ。ほったらかしにすんのは気が引けるが、この人数じゃあこんなでかいやつを相手すんのは無理な以上、これでアタシらはお役目ごめんってやつだ。さてどうしたもんか……」

 

「みふゆさん、結局鶴乃さんは今いったいどういう状態なんですか?」

 

「っと、そうだった。肝心要なことを聞き忘れるところだった。」

 

これからの行動を考えようとしたときにさながみふゆに鶴乃の状態を詳細を尋ねた。

その質問に少し思い詰めた顔を見せるみふゆだったが、やがて意を決した顔で杏子たちに向き直る。

 

 

「……………鶴乃さんはウワサと融合させられてしまったんです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが地上へ出る正面玄関か。」

 

ドッペル隔離室から出たさやかたちはフェントホープの正面玄関まで来ていた。

音楽ホールのような荘厳な印象を受ける煌びやかな空間だが、そこに今のところ羽根たちの姿はなかった。

 

「アイのおかげでだいぶスムーズに来ることができた。ありがとう。」

 

『フェントホープ内のマッピングは八割がた完了しています。お時間をいただいたのでこれくらいは問題ありません。』

 

さやかが懐から取り出したスマホからアイの姿が投影される。

 

『しかし、この先にはウワサによるセキュリティシステムが存在します。証であるあのペンダントをかざせば通過するには差し支えないと思われますが…………』

 

アイの言葉に釣られるように証を所持しているゆきかたちがそれを取り出すが、その表情は芳しくない。

金色だったはずのペンダントがまるでその資格をなくしたかのように霞んだ黒へと変色していた。

 

「杏子から聞いてはいたが、おそらくこれは使えなくされているだろう。」

 

「ということはこのままでは我々は外へは出られないと?」

 

「いや、とりあえず使ってみよう。仮にダメでもこっちにはマスターキーがある。」

 

さやかの言うマスターキーにまるで聞いたことがないと言うような顔を見せる元羽根たち。

その中でレナだけはどこか察したように呆れたような目線でさやかを見ていた。

そのまま出入り口に近づいていくと、突然黒い人形のような外見をしたウワサが投影されたディスプレイがさやかたちの前に立ち塞がる。

 

『ただ今マギウスによるセキュリティ強化が行われていマス。ここをお通りの際は、シンボルをおかざしくだサイ。』

 

ウワサからそう伝えられ、一旦顔を見合わせる一同。

 

「どうする?とりあえず従ってみる?レナはどっちでもいいけど。」

 

「穏便に済むのならそれに越したことはない。」

 

さやかからそう言われ、レナは懐から黒くなったシンボルを取り出し、ウワサの前にかざす。

するとウワサはレナの持つシンボルを取り囲み、取り調べをするように隅々までチェックしていく。そして─────

 

『警告!警告!このシンボルでは認証できまセン!』

 

案の定、ウワサは暴れ始め、けたたましい警報音を打ち鳴らす。

 

「やっぱりか。」

 

「こうなるの、ホントはわかってたんでしょ?」

 

「想像に難くないというだけだ。」

 

警報音が出たことで周囲の羽根たちが集まってくるなか、レナは用済みになったシンボルを捨て、焦った様子を少しも見せずにさやかから距離を取る。

 

「じゃ、後よろしく。」

 

「ああ。」

 

「……………マスターキーとはそういうことか。」

 

レナとさやかのやりとりを見てようやく合点がいったのか、苦笑しながら十七夜はももことかえでとゆきかの3人を引きずるように距離を取る。

 

「え、えっ!?十七夜さん、あっちは羽根の魔法少女たちでいっぱい────」

 

包囲網を形成しつつある羽根たちの方に敢えて近寄っていく十七夜にももこが何か言おうとした時、オーライザーの両バインダーと二振りのGNソードⅡを向けたさやかが極太のビームを発射し、セキュリティ用のウワサごと玄関をぶち抜いた。

 

「全く、つぐつぐ君は自分を飽きさせないな。」

 

「これが一番速いと思うからな。」

 

「うっわ〜………………」

 

眩い光に一瞬目が眩んだかと思えば、さっきまで玄関のあった場所に大穴が空き、外の様子が見えてしまっていた。

1人の魔法少女が出すにはあまりにも法外な火力に唖然とした反応を隠しきれないももこたち。

 

「ほら、ぼさっとしてないでさっさと行くわよ。アイツが空けた穴が塞がり始めてるんだから。」

 

「っていうかレナはなんでそんな平然と────」

 

さやかの火力を目の当たりにしても動揺一つ見せないレナを疑問に思いつつも彼女の言う通り、空けた穴が閉じ始めていることに気づいたももこは先行くレナの後を追うようにその先へと向かっていく。

 

「ぴゃう〜……………さやかちゃんって魔法少女じゃなくて魔砲少女だったんだねぇ…………」

 

「私は確かに魔法少女だが…………もしかしてそれは火力の話か?」

 

いまいちかえでの言葉にピンと来ず、首を傾げるさやかだったが、時間を浪している余裕もないため、追手の羽根たちの様子すら一瞥せずにかえでと一緒に穴を潜り抜けていく。

 

最後に残ったゆきかと十七夜も同じように空けた穴から脱出し、残されたのは呆然とした様子で見送ることしかできなかった羽根たち。

 

「た、ただでさえ代表者の人たち全員が向こうについているって聞いたのに、あんなバカにならない火力の魔法少女までいるなんて……………」

 

さやかの火力を初めて目の当たりにし、圧倒的なまでの差を見せつけられたことに思わず隣にいた他の羽根と顔を合わせる。

視線を向けられた他の羽根はそのニュアンスとさやかと戦えるかどうかと捉えたのか、びっくりした表情で全力で首を横に振るのだった。

 




ある意味鶴乃ちゃんが最強になると思う。
ま、ご本人それ目指してたからいっか!!(暗黒微笑)

マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………

  • ガンダムだ
  • ガンダムではない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。