ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」   作:わんたんめん

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ようやっとこの作品でやりたかったことの一つができた気がする


第107話 フルアームドさやか

「うわわ……………!!」

 

「今の衝撃……………」

 

突然起こったフェントホープ全体を揺らすような轟音と振動に反射的に身構えるマギウスの灯花とねむ。

何事かと思ったが、一瞬視界に映ったビームのような光に誰がやったのかを察しながらも被害確認のために一旦魔女を誘導しているウワサから離れ、建物を見下ろす。

 

先ほどのビームの被害はフェントホープの建物に大きな空洞を作っていた。

少ししてその穴から何人かの魔法少女たちが出てくる。

羽根であることを示すケープを誰1人として被ってないため、侵入してきた魔法少女、もしくは羽根であることをやめた魔法少女たちであるのは明白だろう。

そして、その彼女たちを率いるかのように翠色に輝く粒子を出しながら空を飛ぶさやかの姿が目に映る。

 

「あれが、美樹さやか……………!!!」

 

飛翔するさやかの姿を見て、歯噛みするかのような表情を見せる灯花。

現状、計画を遂行するにあたって一番の障壁となっている美樹さやかという魔法少女。

さやかはフェントホープの周りの現状を確認するように一通り周囲を見渡したあとに2人の視線に気づいたのか上を向き、目線を合わせた。

時間にして数秒だったが、自分たちを見つけたことでこっちに向かってくるかもしれないと思い、灯花とねむの2人に緊張が走る。

 

「………………」

 

しかしさやかは不意に視線を外すと向かってくることはなく、そのままフェントホープと融合した廃遊園地の正門へと飛んでいった。

 

(……………今のが里見灯花と柊ねむ、残りのマギウスか。)

 

まさかホントに小学生とはな、と心の中で驚きを露わにする。

いろはから2人のことについてはあらかじめ聞いてはいたが、実際に会ってみるとそれはそれで驚いてしまう。

 

(二人を止めるのは、いろはの役目だ。私は私にできることをやるだけだ。)

 

二人の近くにあった巨大なアンテナのようなものが例の魔女を誘導させているウワサなのだろうが、さやかの火力ではおそらく近くにいる二人を傷つける可能性が高い。

そう結論づけたさやかは廃遊園地の正門を見据える。

敷地を囲うように築かれた壁と巨大な扉は半端な覚悟を持った者たちをまるで寄せ付けないかのような威容を誇っている。

正門の周りには警備のために配置されているであろう白羽根と黒羽根たちがいたが、接近するさやかに気づくと慌てた様子で魔力弾による攻撃をしてくる。

 

「こちらにお前たちに危害を加える気はない、と言ったところでな。」

 

一旦こちらに敵意はないことを現したかったが、彼女たちの希望である救済を阻みに来ている時点で聞く耳を持ってくれないとするとさやかは攻撃を回避しながらオーライザーの両バインダー部からGNマイクロミサイルを発射する。

 

「ミサイルだ!巻き込まれたくなかったらそこをどいてくれ!」

 

GN粒子を放出しながら飛んでいくミサイルは羽根たちのはるか頭上で正門に突き刺さり爆発を起こす。

爆音とともにガラガラと崩れたような音が響いたが貫通までには至らなかったのか凹みを残すだけにとどまる。

 

「流石にでかいだけはあるか…………」

 

火力を出すだけならもっと出せる。それこそ立ちはだかる正門をぶち抜けるくらいには。

しかし、さやかがその砲火を向ける先には羽根の魔法少女たちがいる。

 

「さやかさん!!」

 

その時、先行くさやかに追いついてきたゆきかたちがやってくる。

さやかが振り向くとそこには大きく諸手を振りながら駆け寄ってくるゆきかの姿が。

 

「わたしが行きます!任せてください!」

 

「────了解!頼んだ!」

 

高度を下げ、ゆきかに近づいていくさやかの姿を見て、何かしてくると感じた羽根たちが具体的に何をしてくるかは分からないながらもとにかく好きにさせるわけには行かないと妨害に走る。

 

「悪いが、お引き取り願おうか。」

 

近接武器を持って接近してきた羽根を追いついた十七夜が阻み、そのまま力ずくで押し返す。

さらにその後ろでさやかとすれ違うようにレナとももこが前へ躍り出る。

 

「レナ!!」

 

「わかってる!!」

 

ももこから請われるようにレナの手がももこの手に重ねられる。

瞬間、コネクトが発動し、レナの力がももこに移ったように彼女の持つ大剣に水色の魔力が付与される。

 

「いっけぇぇぇぇッ!!!!!」

 

大きく振り上げた大剣を力強く地面に叩きつけるももこ。

派手な音と共に地面にヒビが入るがそのヒビは意思を持ったかのように羽根たちの足元まで広がる。

次の瞬間、ヒビ割れた地面から水が間欠泉のように勢いよく吹き上がり近くにいた羽根たちをまとめて蹴散らした。

 

「それぇ〜!!」

 

さらにかえでが若干気が抜けるような間延びした声で杖を振うと、ももこが作ったヒビを中心に木々が生い茂り、互いに互いを絡めとるような動きでさやかが作った凹みへジャンプ台を形成する。

 

「これは……………!!」

 

「優しい君のことだ。あまり火力の出る攻撃は周囲に誰かしらいる状況ではしないと思ってな。」

 

自分と十咎君とで考えたと十七夜がそう伝えると、さやかとのコネクトで再び真紅の装甲を身に纏ったゆきかが瞬間的に風が吹き荒れるほどのスピードでまっすぐ一直線に扉へ向かって突撃を開始する。

 

「これ、結構反動が凄まじいんですよねぇ…………」

 

独白のように呟きながらゆきかは自身の右腕に手を添える。

彼女の右腕には一つの鉄杭が装着されていた。いわゆるパイルバンカーと呼ばれる打突武器だが、その鉄杭の後ろに弾倉の入ったリボルバーが見える。

ちょうど弾倉が撃鉄するとその衝撃で鉄杭が撃ち出される位置にあるため、至近距離で喰らわせられれば絶大な威力を発揮するだろう。

神楽燦ともの戦闘で十七夜と共に床を破壊して急襲できたのもこの兵装のおかげだ。

ゆきかはトップスピードを維持したままゆっくりと腕を引き、装着されたパイルバンカーを構える。

 

「どんなに硬くたって…………ただ撃ち貫くのみ!!!!」

 

かえでの作った木でできたジャンプ台を駆け上がり、宙を浮き、ももこの作った間欠泉を突き抜けながらさやかの作った正門の凹みに『リボルビング・バンカー』の鉄杭を打ちつける。

同時にリボルバー内の撃鉄が起こり、ゆきかのスピードと弾倉の爆発力が組み合わさった鉄杭は硬いもの同士がぶつかり合うような凄まじい轟音と共に扉に巨大な亀裂を作り出す。

しかし、周囲の魔法少女たちが思わず反射的に耳を塞ぐような衝撃音だったが、亀裂が入りながらも門そのものはまだその役目を果たしていた。

 

「まだまだ…………!!全弾、いただいちゃってくださいッ!!!!」

 

そこからさらに追い討ちをかけるように打ち込んだバンカーの弾倉が火を吹く。

一発目を合わせて合計六発の撃鉄が起こり、一発爆ぜる度に亀裂はさらに大きくなり、ゆきかの姿もさらに奥へと隠れていく。

そして最後の六発目、バンカーを叩きつけたと同時に正門をぶち抜き、フェントホープの外へ出るゆきか。

貫通されたことで自重を支えきれなくなったのか正門は音を立てて崩れ去っていく。そんな誰もが目を引くようなことが自身の背後で起こっている中、ゆきかの意識は前方に広がる光景に視線が釘付けになっていた。

外ではウワサによって誘導されてきた魔女が辺り一面を覆い尽く勢いで飛び回っていたり、地上を闊歩していた。

本来魔女は結界の外からは出てこないはずだが、それが普通に外で実体化しているだけでもかなりの異常自体。

見渡せば羽根の魔法少女たちが複数人のグループで手分けして魔女に対応しているように見える。

しかし、目的はどうにも魔女の撃破というより捕獲のために動いているようだった。

 

まだ情報の出揃っていないゆきかたちにはエンブリオ・イヴが関わっていると察するまでが限界。それ以上のことはわからない。

だが、それでもわかることはある。

自分たちが乗り込んできた影響もあるのだろうが、魔女の数に対して圧倒的に魔法少女の頭数が足りていない。

今は固まって動いているのと、魔女たちはどちらかといえば廃遊園地の敷地内に入ろうと躍起になっているのが功を奏しているのか、意識がそれほど羽根たちに向いていないのかそこまで状況は凄惨ではない。とはいえ魔女一体に対して手こずっている様子を羽根たちは見せている。

あの様子ではいずれ誰かの命が消えてゆく。それくらいの確信を抱いてしまうくらいには。

 

「さやかさん!!お願いします!!」

 

意を決した表情でゆきかは崩れゆく正門の方に向かってさやかを呼ぶ。

その瞬間、崩れた時の粉塵を突き抜けながら翠色の輝きを散らし、さやかが空を翔ける。

その姿はオーライザーとドッキングした『ダブルオーライザー』からさらに変化していた。

右手にはGNソードⅡブラスター、左手にはブラスターと同じくらいの刀身をもった幅広の剣、GNソードⅢがそれぞれ握られ、両肩のバインダーには上からバスターソードⅡとGNシールドを二つ連結されたものが装着され、オーライザーの時点ですでに巨大とも言えていた状態からさらに巨大化したような印象を感じさせる。

それは背部も例外ではなく、大小様々な実体剣がこれでもかと追加されたザンユニットに搭載。後ろからさやかを見ようとしても足がギリギリ見えるかどうか。

 

「あの子あんな量の剣全部使う気!?何刀流ってレベルじゃなくない!?ロマンの塊すぎない!?あたしどっちかと言うと可愛いものの方が好きなんだけど!!」

 

「いや、流石に腕の本数が物理的に足らないだろう。」

 

「見るだけで頭痛くなりそう…………バカなの!?バカだったわ…………」

 

「レナちゃん、自分で自分にツッコミ入れてないで早く外へ出ようよ。」

 

もはや全部載せしているさやかの姿に思い思いの感想を抱く面々。

そんなこともつゆ知らず、ダブルオーライザーの強化形態『ダブルオーザンライザー』の装備にセブンソード/Gの武装を加え、完全武装(フルアーマー)となったさやかは前方を埋め尽くす魔女を見据えると両手両バインダー、さらにザンライザーから延びる二本のサブアームに握られたGNソードⅡといった射撃兵装を全て前方へ向ける。

 

「火力を前面に集中させる!!頼むから射線には入らないでくれ!!」

 

「は、はいッ!!」

 

ゆきかにそう警告を出しつつ、さやかは前方を覆いつくす魔女を見据える。

各射撃兵装の銃口にビームの光が灯りつつある中、さやかの瞳が金色に輝きだす。

 

「ダブルオーザンライザー、目標を殲滅するッ!!!」

 

トリガーが引かれ、さやかの持つすべての射撃兵装からビームとミサイルが嵐のように発射される。

乱れ撃ちといっても過言ではない攻撃に行動が制限されいる魔女はなすすべもなく撃ち抜かれ、薄暗くなっていた神浜市の空を一瞬の花火となって彩っていく。

しばらく続いた爆発の光に目がくらんでいたももこたちが目が開けるようになったときには空を埋め尽くしかけていた魔女たちの数が一瞬自身の目を疑ってしまうほどにまでその数を激減させていた。

 

「パ、パワーがダンチ過ぎる………!!」

 

「ダメだ!まだ来るぞ!!」

 

味方であるはずのさやかが引き起こした現実にドン引きに近い反応を見せるももこだが、さやかの表情は険しい。

それに気づいた十七夜が彼女の見据える方向に視線を向けると新たに誘導されてきた魔女が群れを成して向かってきているのが目についた。

 

「まだあんな数………半径200キロとか言っていたけどどんな場所から引き寄せているのよ!!」

 

「少なくとも神浜市の外からも連れてきているよね…………」

 

「…………これは、事が終わったあとも相当な面倒ごとがついてくるのが目に見えてくるな。」

 

まだまだやってくる魔女たちに辟易といった反応みせるレナとかえでをよそに十七夜は少し先の未来を察して渋い表情を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

「相当上ったはずだけど、まだ頂上が見えてこないのね。」

 

「ええ、全体像を実際見たわけじゃないとはいえ、かなり広大な広さね。このフェントホープって建物は。」

 

里見灯花、および柊ねむの拿捕に動くいろはたち。さやかたちと別れてからかなりの時間上へと上がってきたはずだが、未だフェントホープの頂上にたどり着けないでいた。

ゆきかからフェントホープの高さはいわゆる中世に出てくるお城くらいのものだと聞いてはいたが、そのイメージとはあまりにかけ離れている内部の広さだ。

 

「もしかしたら、外へ向かった美樹さんたちの方が早かったかもしれないわね。」

 

「ま、それならそれで集まってきている魔女たちも一斉に蜘蛛の子を散らすだろうからそのあとが楽なんだがな。」

 

代表者二人も余裕な様子だが、ゴールが見えてこないことには一定の不快感のようなものがあるらしく、顔つきもどこか険しい。

 

「しかし、かなり暴れたはずですが一向に姿をみせませんね。あの警備用のウワサの本体、名前を確か女王グマのウワサでよかったでしょうか?」

 

「そうね。確かに子分ともいえるウワサの手下も多くつぶしたはずだけど………」

 

怪訝な表情で警備用のウワサの親玉である女王グマのウワサが姿を見せない理由を考えるななかとこのは。

 

「……………まさか、この状況をひっくり返せるような『切り札』が向こうにあるとか?」

 

「何が出てきても叩き潰すだけだぁ!!」

 

漠然と漂う嫌な雰囲気にわずかに汗を流す葉月と対照的に猪突猛進気味に防衛のウワサたちを蹴散らすあやめ。

 

「…………あれ?なんというか羽根の魔法少女の人たちの数が少ない気が………?」

 

「ホントだ!ってことはあーしたち誘われてるってこと!?」

 

初めはウワサのほかに羽根の魔法少女も迎撃に出ていたはずだが、里見灯花の放送があってからは明らかに羽根の姿が見えなくなっている。

流石の割と能天気の気質のあるみとと衣美里も感じてきた危険に緊張の様子を隠せない。

やがて一行はホールのような広い空間に躍り出る。

 

「これは…………いかにもって感じの空間ね。」

 

「あぁ………ぜってぇデカいのが来る……みんな油断すんなよ!!」

 

代表者の見せる警戒に一同も同じように警戒するように周囲を見渡す。

奥にはさらに上へと続く階段のようなものが見えるが、その空間のあまりに異質な静けさにその足取りは極めて遅い。

 

「………………待って、向こうの階段から誰か降りてくる足音がするわ。」

 

異変に一番に気づいたマミの声に警戒していたみんなの視線がマギウスのいるであろう屋上へと続く階段に向けられる。

耳を凝らしてみると確かに彼女の言う通り階段の奥から誰かが降りてきているのかコツコツ、という甲高い足音が聞こえてくる。

 

(……………オレンジ色の光?いえ、どちらかと言えば光の粒のような………?)

 

ふと階段から漏れ出すように見える光の粒に気づくマミ。一体何事かと思ったが、その粒も足音が大きくなるにつれて見えなくなっていった。

 

「ウワサ、ではなさそうですね。マギウスのどちらか、それとも────」

 

いつでも抜刀できるよう刀を構えるななかだったが、現れてきた人物に思わず言葉を詰まらせる。

 

「……………………フフッ」

 

それもそのはず。現れたのは今まで行方知れずだった鶴乃だ。

しかし、彼女の雰囲気はかなり変貌していた。天真爛漫な印象を見せていた顔は不気味なほどに怪しい笑みを浮かべ、瞳孔は赤く、闇に沈んだかのように濁り切っている、

何より彼女の印象を手助けしていたオレンジ色の服装が正反対の冷ややかな印象を受ける青緑色に近いものになっていた。

 

「─────ウソ、ですよね。」

 

明らかに鶴乃は何かされている。しかも最悪に近い形、人体改造もかくやというような有様に大きく目を見開いて固まることしかできないいろは。

そのつぶやかれた言葉はひどい有様となった鶴乃か、はたまたそれをやったであろうマギウスに対してか。

 

 




今年は…………本当に筆が遅い一年でした………(白目)
来年も、どうかよろしくおねがいします………

マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………

  • ガンダムだ
  • ガンダムではない

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