ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
(これが、ウワサと融合させられた鶴乃だと?)
目の前のデカブツを前にして驚愕のあまり立ち尽くすさやか。
記憶の中の鶴乃は二振りの扇を使った炎とそれをイメージさせるような快活な性格の持ち主のはずだった。
『ガンダム────ガンダム!!』
「くっ………!!」
振るわれた巨腕から咄嗟に飛び退く。
今の彼女は人の体躯から大きく逸脱したような姿をしていた。紫に近い色をした鎧のような装甲、大木のような両腕、そしてその先には血に塗れたような深紅の爪。
何よりその背から生み出される橙色の粒子────さやかは色が異なるも、あれも自身が生み出すGN粒子と同じものであろうと直感していた。
さやかは知る由もないが、それはMSとしてのダブルオーガンダムがあった世界のMA。
そして前回記憶ミュージアムのウワサの中で戦った『アルヴァトーレ』の発展型、『レグナント』だった。
『ジャマをするなぁ!!!』
中にいるであろう鶴乃の声────でありながらどこかで聞いた、誰かに似ているような声が重なったと共に胸部装甲が展開し、そこに目が眩むほどのエネルギーの充填が始まる。
「ッ────それを撃たせるわけには!!」
それを見たさやかは瞬時に理解した。
そこから放たれるのがあの曲がるビームであることを。
そして自身の周りには戦闘で傷を負っている仲間の魔法少女たちの姿があった。
脳裏にさっきのビームがよぎる。
ビームは基本まっすぐにしか進まないはずだ。それにも関わらず、あの巨体から放たれたであろうビームは途中で進路を変え、予想外の方向から飛んできた。
故にさやかは瞬時に防御はともかく、回避は困難だと判断した。
「ほむら!!」
そしているであろう彼女に向けてそう叫んだとき、全てが止まった感覚がさやかの体を奔る。
何かが触れたわけでもない、直感的に感じたそれだったが、気づいた時にはさやかの周囲にはすでに放たれた状態のロケットランチャーの弾頭が無数にあった。
『ッ────』
突然の強襲にレグナントはビームのチャージを中断し、両腕でガードの構えを取った。
直後、再始動した弾頭が襲い掛かり、轟音と爆炎が上がる。
相手の視界が塞がれたところをさやかは見逃さず、突き出すように構えたGNバスターソードⅢで突撃を仕掛ける。
「ハァァァッ!!」
さやかの狙いは巨体の右肩部分。
あの巨体が鶴乃の変貌した姿だとは考えたくはないが、致命傷にはならないようにと考えてのことだった。
「やっぱり!!」
しかし、そのバスターソードの切先はとてつもなく硬い何かにぶつかり合う音と生じた激しいスパークで塞がれたことを直感させた。
スパークで巨体を隠していた爆炎が吹き飛ぶ。そこから現れるのは橙色のGNフィールドに包まれた姿だった。
「わかっていたが!!」
剣先とぶつかり合っているところをさやかはより力をかけられるように持ち直し、さらにドライヴの出力を上げてバスターソードを無理矢理押し込む。
そしてバスターソードⅢに限らず、ダブルオーの持つ実体剣はそのほとんどにGNフィールドに対する特効がついている。
故に、突き出された切先は激しいスパークを生じさせながらフィールドを突破、ある程度突き出したところでそのままバスターソードⅢを横に振り抜き、一時的にフィールドを崩壊させる。
そしてさやかは腰に下げていたGNソードⅡロングを左手で持ち、狙い通り巨体の右肩に突き刺した。
明らかな損傷だが─────レグナントは特に反応を見せず、鋭い爪で切り裂きにかかって来るが、それを避け、一度距離を取る。
少し様子を見たが、さやかが刺したところを痛がったり、気にすることはなかった。
あれは鶴乃とウワサが混ざり合ったわけではなく、あくまで鎧のように着込んでいるものと見ていいだろう。
「あなた、なんで外から………なんて疑問は聞かないでおくわ。」
そこにほむらがやってくる。
激しい戦闘のせいか表情などから疲れが見えているがケガはさほどない様子だ。
「かなり人数が減らされたわ。巴さんが回復をしてくれてはいるけどさほどここから離れていない場所でやっているわ。」
「なら、鶴乃はわたしの方で受け持つ。おそらく─────」
言おうとした矢先、気配を感じ取ったさやかはほむらの手を取り、抱きかかるように引き寄せ、その場を飛び退く。
次の瞬間、2人のいた辺りは轟音と共に現れた樹の根っこのようなもので破壊される。
その根っこの一本一本が人の横幅ほど太く、捕まりでもすれば無事で済まなそうだと感じてしまうほど。
察知ができていたため、攻撃の中心からは逃れられたが範囲そのものからは脱していなかったらしく、一本がほむらを抱えたさやかに向かう。
「ッ………片手を離す!しっかり捕まってくれ!!」
「え、ええ!!」
「振り落とされるなよ!!」
さやかからほむらはそう言われるがままに彼女の首に自身の腕を回し、振り落とされないようにする。
さやかはザンライザーのサブアームにGNソードⅡを持って来させ、ほむらを抱えていた両腕を腰に片腕を回す程度にすると、逆手で持ち手を握り、居合に近い勢いでそのまま振り抜く。
急速に迫ってきた根っこだが、さやかはタイミングよく切り落とした。
しかしその背後からは橙色の粒子を帯引きながら飛来するミサイルが。
「美樹さん、後ろよ!!斬り落とせる!?」
「お前と共であれば!!」
それに気づいたほむらが自身の盾を回転させ、時間を停止させる。
本来であれば彼女自身しか動けなくなるが、彼女と体を密着させているさやかはその対象から外れ、色が失った世界でも活動ができる。
だが、それはあくまでほむらや触れているさやかだけの話だ。ビームを撃ってもすぐに時間停止の影響を受けてしまうため、さやかは止まっているミサイルをすべて斬り伏せる。
「これはおまけだ!!」
斬り伏せたミサイルの先にいたレグナントに接近。
右肩に刺さった剣を蹴り、さらに奥に押し込んだ上、そこにビームを放つ。
時間停止下でビームは剣に当たる直前で止まるが、さしたる問題はない。
そして、時は再び動き出す。
『ッ!?』
突然の爆発に巨体は大きく体勢を崩しながら後ずさる。
「…………あれが鶴乃だと言うのは本当なのか?あともう一体何かいるな?」
「ええ、この建物を警備しているウワサの本体よ。それはともかくここにきた私たちみんなで目の当たりにしたわ。彼女があの姿になっていくのを。」
ほむらを下ろしながら聞いたことに険しい表情を見せる。
いろはが嘘をつくとは微塵も思ってなかったが、いざそれが事実だと確信してしまうとそれはそれでキツイものがある。
「それと────あの子、多分マギウスに何かされたわよ。」
そう言われて、思わずレグナントの方に顔を向ける。
ちょうど爆発の煙が晴れてきたところだったのか、外装が割れ、中が覗けるようになっていた。
「なん、だ……………!?」
そこにいた鶴乃の姿に言葉を失った。色彩が反転したような毒々しい青緑色の姿と表情こそ怒りのようなものに染まっているものの正気を失っているような虚な赤い瞳にさやかは言いようのない不快感のようなものを感じた。
「…………今は戦うしかない。いろはとやちよのふたりを借りたいが構わないか?」
「─────鶴乃をなんとかできそうなの?」
自分に言い聞かせるようにしながら鶴乃の救出が目的の一つであった2人を呼ぼうとした時、やちよといろはが来た。
2人に見たところ目立った外傷はない。ほむら曰く何人か離脱している苛烈な戦場の中で行動を続けられているのは流石は代表者と言ったところだろう。
だが、特にやちよが顕著だったが、いつもはベテランの風格を感じさせる張り詰めた雰囲気を宿していた彼女の瞳は明らかに不安のようなもので揺れ動いていた。
「少なくともあの外装は壊しても問題はなさそうだ。だが、あの鶴乃の姿に関してはわからない。というよりなにがあってああなった?」
その疑問には誰も答えることができなかった。
もっともさやか自身答えを求めて言った言葉ではないため、それ以上は何も言わない。
「とりあえず、伝えることを伝えよう。ほむら、さっきここに来る時に屋上を見たがマギウスの2人はいなかった。どこへ向かったかは想像が着くが、下手に止めようと戦力を分散させるよりは一旦足並みを揃えた方がいいと思う。向こうのウワサを倒したらみんなで外へ出てほしい。」
「わかったわ。」
「あとひなのに伝言も頼む。探していた友人がここの外壁周辺で戦っていると。」
伝言に頷いたことを見届けるとさやかは前方で怯んでいる
武装の爆発を受けたことでうめき声をあげているが、壊された装甲から見える血のようにどろっとした瞳からは虚であるはずなのに殺意のようなものをまざまざと感じた。
「─────戦えるか?」
さやかは鶴乃を警戒しながら片目でやちよを見てそう確認すると、彼女は己に向けて手を差し出した。
「……………正直、わからないのが本音。だから、手伝って。」
「元よりそのつもりだ。だが、いいのか?コネクトをした時、お前は何かに怯えているようだったが。」
自身へ伸ばした手を向けるやちよにさやかは再度確認のようなものを告げる。
フェントホープに向かう前、さやかとのコネクトが引き起こす現象があまりにもいつもと感覚が違うため、予めある程度確認した方がいいとの総意で行ったことだが、やちよとコネクトをした時、異変が起こった。
コネクト自体は成功したものの、茫然とした様子でいたところ急に青ざめ、頭に誰かの声が幻聴のように聞こえると言ってパニックに陥ったのだ。
幸いすぐさま取り押さえられるだけの人数はいたため、事なきを得たが、他の誰にもそのようなことがなかった以上、原因はやちよの方にあるだろうという十七夜の言葉で何か原因がわかるまでやちよとのコネクトは控えるようにしていた。
「………今のあの子と戦うには貴方の力が必要よ。でもそれ以上に────」
「私はもうこれ以上誰も犠牲にしたくない。せっかくまた手を取り合えたのに、私の持つ魔法のせいでなんて────」
(そういえば、以前から彼女は妙に自身の前で誰かが死ぬことを恐れているな。)
当たり前といえば当たり前のこと。
だがやちよは記憶ミュージアムのウワサでやちよといろはの2人を逃すためにその場に留まった時にも自身が関わったことで誰かが死んでしまうことを望んでいないような言葉をさやかにかけていた。
何か、そういうことがあったのだろうか。
「わかった。だがこれだけは伝えておきたい。お前が幻聴のような声に苛まれた時、私が感じたもので嫌な感覚は感じなかった。十七夜も言っていたが、その声をわからなくしているのは自分自身かも知れない。」
「聞こえた声は悪いものじゃない。貴方はそう言いたいのね?」
やちよの言葉にさやかは無言で首を縦に振った。
少しの間お互い喋らない沈黙があったが、吠えるような金切り声を挙げた鶴乃に弾かれるように意識を切り替える。
ともかく今は考えるには時間が惜しい。これ以上危険な相手を前に考えを巡らすことはできない。
「────まずは奴を追い出す!!2人とも、手を貸すから最後まで可能性を捨てるなよ!!」
「わかっているわよ!!」
「はい!絶対に諦めません!!」
差し出されたやちよの手に重ね合わせる。
光の眉に包み込まれた彼女を見届け、空いていた手を今度はいろはの方に向ける。
「いろは、一旦奴を拘束したい。理想はお前のドッペルから出ていたような布なのだが、行けるか?」
「…………やってみます!!」
さやかからそう請われるが、いろはは即座にそれに応え、さやかに自身の力と繋げるようにコネクトをする。
いつもは大抵さやかの力が他人への形だが、今回はいろはからさやかへのコネクトだ。
いろはの魔力である薄い桜色のような光が仄かに自身の武装に宿ったことを見たさやかは連結したGNバスターソードⅢを構え、振り下ろした。
光を帯びた切先はその軌跡に宿した光を残していった。
そして、その残った光が空間を切り開くように広がると、その中から夥しい量のシーツが飛び出した。
『ッ……………!!!』
意思を持ったように襲いかかってくるシーツに鶴乃は爪で切り払いながら回避するが、屋内であるため元々動きの方はあまりよくない。
程なくして物量に押し負け、絡まるシーツで身動きが取りづらくなった。
「お互い広い場所の方が戦い易いだろう?」
動きが散漫になったところにさやかは背後に周りこみ、鶴乃に絡みついているシーツを掴むとそのまま建物の外へ向かう。
二つのGNドライヴが二乗分の出力を発揮するツインドライヴの前に身動きの取れない鶴乃は引きずられていき、外壁を壊しながら屋外へ出る。
「あれは─────」
外に出たところでさやかは何かを見つけた。
掴んでいたシーツを放り投げ、鶴乃を適当なところにぶん投げて見つけた何かへ足早と向かう。
「杏子!!それに黒江たちか!!」
さやかが見つけたのはフェリシア、さな、黒江の3人を引き連れた杏子だった。
「さやか!悪い、エンブリオ・イヴの正体は想像以上にデカい魔女だった。アタシらだけじゃ手に負えねぇからこっちに来た。」
「そうか………いや、気にしなくていい。おそらくだがマギウスの2人が向かっていただろうから鉢合わせなかったようでよかった。それに、2人もよく戻ってくれた。」
杏子からの報告にそう返しながらさやかはフェリシアとさなの2人に安堵の表情を向ける。
「おう!つっても最初からアイツらに従うつもりはなかったけどな!!」
「私の帰る場所は今はみかづき荘以外にありませんから。」
二人の言葉に満足そうな笑みを見せるさやかだったが、後ろから聞こえてくる物音に切り替えるように表情を引き締めた。
「───手短に説明する。さっき私が投げ飛ばしたのはウワサに取り込まれた鶴乃だ。おそらく私を基にしたウワサだろう。」
「あ、あれが鶴乃なのか!?」
起き上がった
だがそれはフェリシアだけの話で他の3人は表情こそ険しいもののある程度冷静さを保っていた。
そのことに不思議な顔を見せるさやかだが、その理由もすぐにわかった。
どうやら鶴乃の現状を教えてくれた人物がいるらしい。
『────というわけで、わたしは今ウワサの引き剥がし方を知っていそうなみたまさんのところへ向かっているところです。まさか、鶴乃さんがウワサの上からウワサを重ね着しているようなことになっているとは思いもよりませんでしたが。』
「ともかく事態は一刻を争うことに変わりはないらしいな。すまない、感謝する。」
さやかは手に乗せている何かの形に折られた折り紙と話していた。
その相手は梓みふゆだ。マギウスからの離反を決意したみふゆはウワサに取り込まれた鶴乃を救出するために有識者らしいみたまのところへ向かうことにした。
さやかが持っている折り紙はみふゆが情報共有を迅速に行うために杏子に持たせたものだった。
『あの……こんなことを言うのは今更烏滸がましいことかもしれませんが、鶴乃ちゃんのこと、よろしくお願いします。』
「安心してほしい。その心持ちはお前が慕う魔法少女も同じだ。だから肩の荷が降りたのなら今一度向き合うことを勧める。外野である都合、代弁するつもりはないが、おそらく向こうもそれを望んでいるはずだ。」
『それは─────いえ、お気遣い、ありがとうございます』
折り紙からの声が聞こえなくなったことを確認したさやかはそれを懐にしまい、鶴乃と再び相対する。
(まずは奴が羽織っている私のウワサからだな。あとは────)
さやかは右腕にGNソードⅢを装着すると、折りたたんでいた刀身を伸ばした。
「杏子!!上でほむらたちが苦戦している!手を貸すから援護に行ってくれ!ここは私とみかづき荘のみんなで相手取る!!」
「わかった!ようやくお披露目って奴か!!」
「ん?行く前に渡さなかったか?」
「なんか知らねぇけどレナとコネクトしたはずみで使われた。まぁ、結果オーライな感じにはなったけどな。」
杏子の言葉に少し突っ込みたいところがあったが、もうすでにそれについて話せる時間はない。
さやかは杏子の手を握り、自身とのコネクトを行う。
「みんなを任せた。行ってくれ、杏子!!」
杏子は光に包まれながらニィッ、と口角を上げると赤い粒子光を輝かせながら空へと上がっていった。
(あとはやちよだが…………あれは彼女自身にしかわからない。うまく折り合いをつけてくれよ…………!!)
ちな赤いけどクリーンにはなってるからそこは安心してくれ
マギレコ世界にさっさんを武力介入させるのは……………
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ガンダムだ
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ガンダムではない