ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
推奨BGM 「FIGHT」
「………………驚くほど静かだな…………。使い魔の姿も見受けられない。」
「はっきり言うと、君がいる場所は魔女がねぐらにしている空間だからね。でも、それを鑑みたとしても魔女と使い魔が一緒にいないというのは結構珍しい。もしかしたら今回の魔女、結構凶暴なのかもしれないね。」
「……………身から出た錆だ。今更お前から何を言われようが現状を打開する術がない。おとなしくマミ先輩を待つことにするさ。」
魔女の結界に取り込まれたさやか。やはりグリーフシードの近辺にいたからか、魔女が現れる場所とさほど離れていない空間にいるようだ。
しかし、何が起こるか分からない以上、さやかは巨大なドーナツの影に身を潜めながら周囲の警戒を怠らないようにしていた。
「キュゥべえ。二人の反応は?」
「まだだね。どうやらもう少し時間がかかるみたいだ。」
「…………仕方がないか。いくら範囲が絞れていたとはいえ、彼女とうまく接触できるかどうかとは別問題だ。」
「全くもってその通りだね。」
さやかはキュゥべえとそんなことを話しながら体感的に一時間の時を過ごす。不気味なほど静かな空間にも関わらず、何が起こるかわからない状況に一時間も晒されていたさやかはかなり精神的に疲弊してきていた。
「さやか、朗報だ。マミの魔力を感知した。」
「…………そうか。最悪二時間コースは覚悟していたのだが………。」
キュゥべえからマミが魔女の結界内に入ってきたことを告げられ、さやかはひとまず安堵の息を吐くとともに胸を撫で下ろした。
「でも、過度なことはやめさせた方がいいだろうね。マミの魔力に刺激されて卵が孵化してしまうかもしれないからね。」
「ん…………まぁ、私としてはとりあえず辿り着いてもらえれば十分なのだが………。」
まだ時間がかかるということにさやかは少し残念そうな表情を浮かべるもマミの到着という明確なゴールが見えているのもあるのか、さほど悲観的には捉えずに、再び息を潜めることに専念することにした。
『さやかちゃん、大丈夫?』
そんな最中、さやかの脳内にまどかの声が響いてきた。キュゥべえを介したテレパシーが送られてきたのだろう。
『今のところは、な。ところで今現在、どこにいる?まさか、マミ先輩と一緒にいる訳ではないな?』
『え?マミさんと一緒にいるけど…………?』
まどかからのテレパシーに思わずこめかみをひくつかせながら眉間に手を当ててしまうさやか。その理由としては主に二つからくる。
『ふう…………。何故危険な魔女の結界に入ってきた。わざわざまどかまで入ってくることはなかった筈だ。』
『で、でも、さやかちゃんが心配だったし………。』
『それでまどかに危険が及んでしまえば元も子もないだろう。いくらマミ先輩が強いとはいえ彼女も人間だ。当然そこには限界がある。彼女の手を煩わせることは余りよした方が賢明だ。』
『ううっ…………ご、ごめんなさい…………。』
『それと学校の鞄、結界の外に放置されていなかったか?結界に取り込まれた直後に私の近くになかったからそのままだと思うのだが………。』
『え、あ………あぁ!!?そういえば外に置いてあった………。』
『…………泥棒などに盗られていなければいいのだが………。』
さやかの説教にしょぼくれたような声を上げるまどか。そのまどかの様子にさやかはため息を吐くと再びまどかにテレパシーを送る。
『入ってしまった以上マミ先輩の側を離れないことが一番安全だ。彼女からは絶対に離れないことを心に留めながら慎重に来てくれ。』
『う、うん!!わかった!!』
さやかがそこまで言ったところでまどかからのテレパシーが脳内に響くことはなくなった。
「さ、さやかちゃんに怒られた…………。」
「ふふ、美樹さんの言う通りね。入ってしまった以上、私の側を離れないようにね?」
「は、はい!!」
友人に怒られたからか微妙に沈んだ表情から一転して、引き締まった表情を浮かべながらまどかはマミの言葉に頷き、彼女の後をついていく。
「キュゥべえ、グリーフシードの様子は?」
「…………正直言って孵化するのも時間の問題だね。」
「…………やはりか、寒気もひどくなってきているのもそのためか。」
キュゥべえからの報告にさやかは鳥肌が立っている腕をさすりながら身を潜めているドーナツにもたれかかるように背中をつける。
「……………君はいわゆる人間でいう霊感が強いのかい?魔女と出会すたびに鳥肌とか不安に苛まれているようだけど。」
「そうなのかもしれない。あまり、そんなつもりはなかったのだがな。」
さやかが素っ気なくそう答えるとキュゥべえはそれ以上の質問はせずにグリーフシードの観察に戻った。
そのキュゥべえが視線を戻した瞬間、グリーフシードが妙な胎動を帯び始める。
「限界だ………魔女が孵化する………!!」
「っ…………間に合わないか………!!」
キュゥべえが張り上げた声にさやかは険しい表情を浮かべながら身構える。これまで見てきた魔女は揃って巨体を有していたため、すぐさま行動に移れるようにするためだ。
そして、グリーフシードの中に込められていた呪いが集約化していくと、そこから出てきたのは、人形とさほど大きさの変わらないメルヘンな魔女であった。
「……………あれが、魔女、なのか?」
「そうみたいだね。」
キュゥべえの言葉にさやかは思わず拍子抜けしたような表情を浮かべる。なぜなら前例とあまりにも違いすぎるその姿に毒気が抜けかけているのも事実だ。
とはいえキュゥべえ曰くだが、魔女であることは変わりないため、一度途切れかけた警戒心をもう一度張り詰めさせながらその魔女の動向を注意深く見つめる。
しかしーーーー
「何も………してこないな。」
「そうだね。現れたところであるあの椅子から一向に動く気配がない。」
現れた人形のような魔女は脚が極めて長い椅子に鎮座したまま一向に動く気配が見受けられなかった。だが、さやかは変わらずの警戒心を保ちながら周囲を見渡す。
「だが、使い魔がちらほらと見受けられるようにはなった。このままでは囲まれるのも時間の問題か…………。」
視界の端にチラチラと映り始める黒い球体に所々に赤い斑点のようなものがついた
使い魔と思しき物体がさやかに危険信号を上げ続ける。中にはナース帽のようなものを被っている個体があるのは結界を広げた場所が病院であることが作用しているのだろうか。
しかし、さやかは直感していた。このままでは確実に囲まれる、と。
「さやかちゃぁぁぁぁぁん!!!!!」
「っ…………間に合ったか…………。」
その時、響いてきた友人の声、それと同時に響く銃声、その放たれた弾丸はさやかの周囲に蔓延っていた使い魔を貫いた。待ちに待った人の到着にさやかは自然と笑みが溢れる。
「お待たせ。ケガとかしてない?大丈夫?」
「ああ、特に行動を起こしたわけではないからな。」
降り立ってきたマミとまどかにさやかは待ちわびたと言うような口調で二人に笑みを向ける。
「それじゃあ、さっさと片付けてくるわね♪」
「すまない。マミ先輩、またマスケット銃を一丁貸してほしい。」
「ええ、いいわよ。」
さやかの申し付けにマミは踊るような笑顔を振りまきながらさやかにマスケット銃を一丁渡すと、文字通り颯爽と飛んでいった。
「……………なんか、調子に乗っているように感じるのは気のせいか…………?」
「ま、マミさん、私の願いのこと話したらすごく嬉しそうにしてくれてね………。」
「願い………?魔法少女になるつもりなのか?」
「…………というより、もう魔法少女になるだけで私の願いは叶ったようなものなんだけどね。私、なんの役にも立てられないことって嫌だから………。」
「誰かの役に立ちたい、か…………。何もわざわざそのために魔法少女にならなくても良いように思えるが………。」
「でも、マミさんを一人ぼっちにさせたくはないから………。」
「…………そういうことか。」
まどかの言葉にさやかは魔女の討伐に向かったマミの背中を見つめた。その彼女の背中はひどく小さく見えた。
「あ、さやかちゃん。一応伝えておこうかなって思っていたんだけど、さっきね、ほむらちゃんと会ったんだ。結界の中で。」
「暁美ほむらが…………?」
「うん。なんだか、この魔女はいつもと一味違うって、なんていうのかな………すごく必死だった。でも、マミさんがリボンで縛り上げちゃって、そのまま置いてきちゃった………。」
「必死だった………?彼女がか?」
さやかの確認にまどかは申し訳なさげな顔を浮かべながらもしっかりと頷いた。
「っ…………くっ………!!」
時は少し巻き戻し、魔女がいる場所とは離れた場所。ここではほむらが何故か錠がつけられた赤いリボンに縛り上げられ、身動きが取れないでいた。
(ダメ………やっぱり切れない………動けば動くほど、締め付けられる………!!)
振り解こうにも力を入れれば入れるほど余計に締め付けの強さが上がってしまうため、どうしようもできないでいるほむら。
一応、マミ自身からは帰ってくるころにはリボンを解くと言質自体はあったためこのままおとなしくしているのも選択肢のうちにはあった。
しかし、彼女にはその選択肢が絶対に取れない理由があった。
(早くしないと、巴マミはあの魔女にやられる…………!!)
彼女はなぜか知っていた。巴マミが今回の魔女に喰われて、死んでしまうことを。
だからほむらは彼女を止めようと、今回の魔女を自分に任せてほしいと言った。
しかし、マミはほむらに対する不信感のせいでそれを妄言、もしくは戯言と断定し、ほむらを縛り上げてしまった。
それ故に、一刻も早く、このリボンの拘束を破って、マミの援護に向かわなければならない。
だが、マミのリボンは想像以上の耐久性があり、非力なほむらの腕では動くことさえまともに出来ず、悶えるように身を捩らせるのが関の山であった。
(……………どうやっても解けない………!!無理なの………?彼女を救うことは…………!!)
ほむらは何か手段はないかと思考を張り巡らせる。しかし、現状拘束されてしまっている身ではまずなによりこのリボンを解かない限り行動することは許されない。
だからと言ってマミのリボンを引きちぎろうにもそれをできる手段すらない。ほむらはいわゆる詰みの状態にかけられていた。
(……………諦めるしかないみたいね。彼女のことは………。いずれのために彼女の力は借りたかったけど………。せめて、まどかだけでも助けないと………!!)
ほむらは頭の中ではそう言っているものの、その俯いた表情は思考の声とは裏腹に悔しさに滲んでいるようだった。
「…………暁美ほむら…………?」
「さやかちゃん…………?ほむらちゃんがここにいるの?」
不意に視線をマミから外し、訳もなく背後を振り向くさやか。そんな彼女にまどかは不思議そうな顔を向けるが、さやかはハッとした表情をすると、すぐさまマミの方に視線を戻した。
「………すまない。無意識だった。」
「そ、そう、なの?」
まどかから不思議そうな顔は向けられたままだったが、ひとまずそれ以上の追及は回避し、今はマミの方に意識を集中しようとするさやか。
しかし、彼女の意識にはどうにも妙な感覚が入り込んでいた。
(なんだったんだ………今のは?諦観、無力感、だけれどもどこか、誰かの生存を求めているような………?)
(これは、暁美ほむらの感情か?なぜ私にそんなものが流れ込んでくる………?)
何故か自身に流れ込んでくるほむらの感情に困惑を隠し切れないさやか。そのほむらの願いの矛先はマミに向けられていた。
(何故だ?何故マミ先輩の生存を願う?そして、それを諦めている?それではまるで、彼女の死亡する未来が確定しているかのような口ぶりではないか………!!)
「違う…………!!」
「さ、さやかちゃん………?」
突然さやかの口から出てきた否定の言葉にまどかはびっくりしたような声を上げる。
「未来を決めつけるな!!まだ何も、何も終わっていないッ!!!!」
「お前だけ知ったような顔をして、勝手に諦めて、絶望をするな!!」
さやかはこの場にいないはずのほむらに向かって叫ぶとマスケット銃を構えながら身を潜めていたドーナツから躍り出る。
「さやかちゃん!?一体何を………!?」
まどかの静止の声も届かず、さやかは全力で駆け出した。その先は魔女と思しき人形にマスケット銃の銃弾を撃ち込み、その銃弾から伸びた糸で人形を宙吊りにしたマミの姿があった。
彼女は走り出しているさやかに気づく様子もなく、とどめの一撃と言わんばかりに巨大な大砲を拘束した魔女に向ける。
「ティロ・フィナーレ!!」
そして、放たれた砲撃。弾丸は40〜50センチくらいの人形の体に風穴を開けるとそこからリボンが伸び始め、人形の体を絞り上げる。
しかし、そのリボンが絞り上げた瞬間、不自然に人形の頭部が膨らむとそこから大きさが不釣り合いな巨大な蛇のような外見をしたナニカが口から押し出された。
その巨大な蛇の全景が徐々に明らかになるとソレは口に付いている鋭利な牙をギラつかせるとマミに狙いをつけ、急接近を始める。
「えーーーー」
突然の魔女の攻撃に呆けたような声しかあげられないマミ。そう、ほむらの見立て通り、彼女はここで魔女に喰われて死んでしまう。マミの死はのちにまどかとさやかに強すぎるほどの影響を及ぼし、暗い影を落とす。
しかしそれはーーーー
「貴様のその身勝手な歪み、そして巴マミが死ぬという運命!!両方とも、この私が断ち切るッ!!!」
別の世界線の話だ。
マミが魔女に喰われる寸前、響いた乾いた音。それはマミにとっては聴き慣れたマスケット銃からの銃声だ。しかし、当の本人の両の手にはそのマスケット銃は握られていない。
そして、その銃声が響いた直後、魔女は痛々しい悲鳴のような絶叫を上げると思わず右にのけぞるようにその進行ルートを変えた。
つまるところ、魔女は巴マミのすぐ左脇に墜落して行った。彼女は死の運命から逃れられたのだった。
「え…………?」
突然に次ぐ突然の状況に理解が追いつかないマミ。しかし、時間は無常にも流れ続ける。
「魔女!!貴様の相手はこの私だ!!」
耳朶を打つ声に思わず視線を声のした方向に向ける。そこには彼女の知らぬ間にかなりの距離を詰めていたさやかの姿があった。手にはまだ煙が燻っているマスケット銃を握っているため、先ほどの銃声はさやかがマスケット銃を撃ったからだろう。
そしてそのさやかは手を大きく振りながら声を張り上げていた。まるで、自分が囮でも引き受けたかのようにーーーー
その直後、マミのすぐそばで地響きと共に黒い巨体が身を持ち上げる。さっきの魔女だ。その正面に見える顔は完全に怒りに歪んでおり、その顔の大半を占めている巨大な瞳は片方が塞がれていた。
「まさか、美樹さん………狙ったの?あのタイミングで魔女の目をーーー」
マミがその呟いた瞬間、魔女は怪獣のような雄叫びをあげながら突進を始める。
そのことに気づいたマミは咄嗟に魔女をさやかに向かわせないとしてマスケット銃を出すがーーーー
「あ、あれーーーー」
カクンッと、彼女の膝が崩れ落ちるように力を失い、地面に膝をつけてしまう。よく見れば彼女の足は目の前の死という現実に直面したのもあったのか、生まれたての小鹿のようにプルプルと震え上がっていた。
「ダメ………美樹さん…………!!!」
マミは届かないと頭では理解しながらも現実を認められないあまり、呆然と手を伸ばす。
「まどか!!早く僕と契約を!!」
「さやかちゃぁぁぁぁぁん!!!!!」
キュウべぇが現状の打開策としてまどかに契約を迫るが、その声も聞かずに涙を浮かべながら友人に迫る死に、絶叫のような叫び声を上げる。
「私は………生きる。生きて、明日を掴む!!」
先輩と友人の声が響く中、さやかがそう叫んだ。その瞬間、彼女の両の瞳、その虹彩が澄んだ金色に変貌を遂げる。
次の瞬間、さやかは手に持っていたマスケット銃を突進で突っ込んでくる魔女に向けてバク転を行使して距離を取りながら投擲。
ブレることがなく投げられた銃は突進してくる魔女にまっすぐと飛んでいき、もう片方の傷つけられていない方の目に突き刺さった。
片方を銃弾に貫かれ、もう片方も銃が突き刺さったことで視界を失った魔女。しかし、突進すること自体は辞めずにその大きな口を開き始める。
その噛まれたら一巻の終わりであることは確定の大口からさやかは大きく横に飛ぶことで回避する。
しかし、その魔女の巨体のあまり喰われることは回避するも、魔女の突進自体から逃れることは叶わず、魔女と接触したさやかは弾き飛ばされてしまう。
さながらバスやトラックといった大型車輌との接触事故を起こしたような状況にまどかとマミは思わず息を飲む。
「っ…………くぅ…………。」
何回か地面に体を打ち付けられたさやかだったが、苦悶の表情を浮かべるだけで四肢がもがれたというスプラッタなことにはなってはいなかった。
視界をなくした魔女が自身の結界の壁に衝突している間にさやかはすぐさま立ち上がり、再び駆け出した。
その先には足が言うことが聞かずにへたり込んでいるマミがいた。
「み、美樹さん………!?貴方、生きてるの………!?」
「ああ、なんとかな。だが、魔女を倒せるのは貴方だけだ。手を貸すが、立てるか?」
さやかから差し伸べられた手をマミが手に取るとさやかは引っ張りあげることでマミを立たせる。
「…………引き金を引くだけなら何とかなるわ。」
「そうか…………。」
そう言うとさやかはその場に座り込んでしまった。魔女と接触するレベルまで落としたが、ダメージ自体は普通の女子中学生に看過できるレベルではなかったようだ。
それを証拠にさやかはぶつけた箇所を押さえながら荒い息を吐き始めていた。
(これ以上、時間はかけられない………!!)
さやかの様子からそう判断したマミはマスケット銃を出すと、壁に激突した魔女に目線を向ける。
幸い、さやかが傷つけた眼球が回復した様子は見られず、さほど動かないで周囲の様子が見えないことを不思議に思っているのか、キョロキョロと辺りを見回していた。
その間にマミはマスケット銃を巨大化させ、先ほどのティロ・フィナーレを放ったものと同じ大きさまで大きくする。
「まだ………まだよ、あれを倒すにはもっと大きく…………!!」
そう言うとマミは魔力を込め、ただでさえ大きかった大砲をさらに巨大化させる。
魔力が込められた大砲が光に包まれるとその砲身を伸ばし始める。
大砲から光が消えるころにはその大砲はもはやそのようなレベルではなくーーー
「れ、列車砲か何かのようだ…………。」
さやかがあまりの大きさにその巨体を見上げながら若干引き気味の笑みを浮かべる。そしてマミはその列車砲の砲身の先に足をかけ、未だ辺りを見廻している魔女にその砲口を向ける。
「ボンバルダメント!!てぇぇぇぇぇ!!!」
マミの号令とともに火を吹いた列車砲は爆撃と聞き間違えるかのような轟音を響かせると、魔女の巨体を覆い尽くすほどの爆発を生み出した。その火力と衝撃が合わさった爆風に思わず手で身構えるさやかだったが、マミの結界が彼女の周囲に張り巡らされており、事なきことを得た。
「ま、魔女はどうなったんだ………?」
爆風が止むと魔女の確認をするさやか。すると程なくしないうちに視界がユラユラと陽炎のように揺らぎ始め、元の病院の風景に戻っていった。
これはつまり、魔女はしっかりと打倒されたのだ。
「倒したか………。よかっt「美樹さん!!」「さ゛や゛か゛ぢゃぁぁぁぁぁぁん!!!」うおああああああ!?」
なんとか危険から切り抜けたことにさやかがやり切ったようにしているところに正面から突っ込んでくる人影が二つ。
その影に突進を受けたさやかは座っていた状態から上半身をぶつける形で押し倒される。
「な、何故突進なんかをしてくるんだ二人とも………。」
「あ・な・た・ねぇ!!死ぬつもりなの!?魔女に一対一でもかなり危険なのに、よりによって魔法少女じゃない美樹さんが前に出張るって正気なの!?」
「そ、そうでもしなかったら貴方は確実に死んでいた。具体的に言えば、首から上を丸噛りがいいところだっただろう。」
もの凄い剣幕で詰め寄ってくるマミにさやかはその剣幕に圧され気味の様子を見せながらそう反論する。
しかし、それが余計に彼女に怒りに油を注いだようでーーー
「貴方が変に前に出てきて、それで死んじゃったらどうするのよ…………!!!残された人のこととか………少しは考えなさいよ………魔女の結界の中で死んじゃったら、もう誰にも見つけてもらえないのよ………?ずっと、ずっと行方不明者のまま、家族の人たちは探し続けるのよ………!?」
そこまで言ったところで、マミはその瞳から大粒の涙を溢しながら泣き出してしまった。その彼女に申し訳なさげな顔を浮かべていると隣ですでに嗚咽をこぼしながら泣き出しているまどかの姿が目に映る。
「…………まどか。君も同じか?」
「ッ……………!!!」
さやかがそう尋ねるとまどかは泣いているのを抑え込むように下唇を噛みしめながら風切音がなりそうな勢いで首を縦に振った。
「危険なことをしたのは謝る。二人が怒りを露わにするのも当然だ。だが、そんな私の頼みを聞いてくれないか?結構重大なんだ、これが。」
さやかが微妙に表情をひくつかせながらの言葉にマミとまどかは彼女の顔に視線を合わせる。
「……………医者、呼んでくれないか?魔女と衝突したときのダメージと、今の突進で、もう体が、げんか………い…………。」
その言葉を最後にさやかは体から発せられる痛みという名前の危険信号に耐えかねて、意識を闇に落としてしまう。
その後、焦りに焦りまくった二人がすぐそばの病院に担ぎ込まれたひと騒動は、病室にいた恭介や放置されてしまったほむらの耳にも届いていた。
マミさん生存ッ!!マミさん生存ッ!!
……………多分、武器借りてたとはいえ生身で魔女にダメージ与えた奴っていんのかな…………。
あ、今回の話は参考にはしないでね?純粋種とのお約束だ!!
これ、ガンダムファイターとかパイロットならまだ許されると思うけどせっさんはどうだろう………。