ほむら「美樹さやーー「私がガンダムだ」はぁ?」 作:わんたんめん
なお展開でマミさんを間に合わすかどうかですっごく悩んだ(白目)
「……………妙ね。ここにもいないなんて。」
そう呟いたのは訝し気な表情で首をかしげるほむらだった。見滝原の隣に位置する風見野市にある魔法少女に会うために足を運んでいた彼女。しかし、肝心の人物の姿が見当たらないことにほむらは疑問気な表情を禁じ得なかった。
そんな彼女の目前には辛うじて原型は保っているものの、完全に廃墟と化している建物があった。人が住むには些か大きすぎる外観と、建物の上部に残っている十字架から、ほむらの目の前の建物が教会かその類であることが察せられる。
(市内のゲームセンターや公園、そしてこの教会の廃墟…………彼女が現れそうな場所はあらかた回ったはずだけど、それでも姿が見えない?どういうことなの…………?彼女が現れそうな場所なんて
そこまで思考が行き着いたところで、ほむらは突然教会の廃墟に背を向けながら駆け出した。その表情には、普段は冷静な彼女らしからぬ焦りが表面に出ていた。
(まさかーーーーーまさかーーーーーーーーーー入れ違いになった!?)
走りながら思考を続けるほむら。焦りから滴る汗も一切気にかけず、風見野の町を駆け抜ける。
(さやかの契約の内容はいつもと違う。さらに巴マミも生きているから彼女が自らの足で見滝原にやってくることはないと思っていたのに…………!!)
本来、起きていたことが起きていなかったため、起こることがなかったと思っていた。だが、結果としてほむらが探している人物はこれまで通り、見滝原市を訪れていた。
(よくよく考えてみれば、さやかが契約したのは私とまどかを助けるため………上条恭介の時よりも極端な『他人』のため………!!それを知ったとすれば、彼女が黙っているはずはない!!)
(彼女の大らかさに甘えた私の失態ね…………!!まだ何事も無ければいいのだけど………!!)
苦い表情を見せながら、ほむらは風見野の町を駆け抜け、見滝原への道を一目散に駆け出す。
「え、美樹さん、まだ帰ってきていないんですか?」
ほむらが風見野から見滝原へ踵を返そうとしていた同時刻、さやかの家を訪ねる人物がいた。目立つ金色の髪を左右にロール状にまとめた少女、マミだった。
ただ、その驚いた表情を見せるその顔には若干の隈や涙が流れた跡のような残っていた。まだ、彼女の中でソウルジェムの真実は消化し切れていないのだろう。
それでもさやかの家を訪れたのは、一言でいえば謝りたかった。
「悪いね、マミちゃん。ったく、何処をほっつき歩いてんだか…………。」
やってきたマミを玄関で出迎えながらも呆れたようにため息を吐き、参ったように後頭部をさすっているのはさやかの父親である慎一郎だった。
「それで、さやかに何か用かい?伝言なら俺から言っておくけどよ。」
「あ…………えっと…………だい、じょうぶ…………です。」
「ん、そうかい?せっかく来てくれたところ、申し訳ないねぇ…………。」
慎一郎の言葉にマミは若干狼狽たような反応を見せるが、彼の提案を呟くように拒否する。慎一郎も申し訳なさそうに言葉を返す。
「……………ところで、マミちゃん。なにかあった?」
「は、はい!?」
突然の慎一郎からの指摘にマミは思わず上擦った声を上げる。
「俺は曲がりなりにもクレー射撃をやってる身なんでね、それなりに目には自信がある。目蓋の下には隈、そんでもって微妙に腫れ上がっている。さらには髪質、ボロボロになってるぜ?こういうののケアは女性にとって必需品だけどよ、それがままならないほど受け止められないなんかに、確実にぶち当たっている。」
「ッ……………あ…………。」
慎一郎からのさらなる指摘にマミは自身の髪に手を触れる。その特徴的な髪は慎一郎の言う通り、決して状態がいいとは呼べるのまではなかった。
「……………ま、そういうプライベートなところを一食ともにしただけであんま付き合いが薄い俺が言うのもなんだけどよ。」
狼狽るマミを尻目に慎一郎は少々気まずそうに目線を逸らした。
「なんかあったら、ウチのさやかでも頼ってくれ。同年代の同性ってだけでも話しやすいだろうし、アイツはどこか大人びている?達観って言った方がいいのか?ともかくそういう性格の持ち主だ。相談にはもってこいの相手だろうよ。だけど、それでも手に負えないようだったら、いつでもウチの玄関の扉を叩いて構わねぇ。俺たち大人がなんとかしてやるからな。」
慎一郎は軽く頰をかくと、ニヒルな笑みを見せながらマミに向き直る。
「わかり…………ました。その、私なんかのために、ありがとうございます。」
「いいっていいって、気にしなさんな。」
マミのお礼に慎一郎は手をヒラヒラを振りながら自身が好きでやっていることだからと念を押す。
その様子にマミは一度お辞儀をすると、さやかの家を後にする。
パタンと閉じられたドアを見届けた慎一郎はニヒルな笑みから無表情に戻すと、一度頭の中で整理をつけるようにため息をついた。
「…………こりゃあさやかからなんか聞いた方が良さそうだな…………。この前の退院祝いの外食した時にさやかとマミちゃんの二人でなんか話してたんのも引っかかる………。」
顎に指を乗せながら探偵のように推理を思い浮かべた慎一郎は、リビングにいる理多奈の元へ向かった。
(…………美樹さんのお父さん、そんなふうに言ってくれたけど、肝心の美樹さんとちょっとすれ違いを起こしているのよね…………。)
さやかの家から離れたマミだったが、その表情はイマイチ優れないものを浮かべる。とは言っても重苦しいものではなく、どちらかと言えば残念そうに思っているようなものであった。
(…………お父さんのご好意を無駄にしないためにも早く美樹さんとお話ししないと…………!!)
いつまでも気まずい関係ではいられないと決意を改めたマミは、日が傾き始め、空がオレンジ色に染まりかけている見滝原の町を歩き始める。
(でも美樹さん、一体どこに…………?今日は学校をサボった身ではあるけど、さすがにもう放課後の時間よね?)
歩きながらさやかの行動を予測し始めるマミ。まず最初に時間的に学校に居残りをしている可能性は低いことから、学校周辺を除外する。マミの記憶上にも、居残りが必要な行事などはなかったからだ。
(参ったわね…………美樹さんと友達になってからそれらしいことを全くしてないから、彼女がいそうなところがこれっぽちもわからないわ…………。)
悩まし気な表情を浮かべながら頰に腕を立てるマミ。そんな最中、マミの指につけられている指輪が目についた。キュゥべえと契約し、魔法少女となったその証のソウルジェム。
それが自身の魂が形となったものであり、それが砕かれるとその瞬間死んでしまうということ、そしてソウルジェムの輝きが穢れに染まり切った時、自身は魔女と化してしまうことを聞いたことは眉を潜めざるを得ず、世迷言と断じることも吝かではなかった。
しかし、そのほむらから伝えられた真実を、その時点でまだ魔法少女ではなかったさやかが信じたのだ。
その真実を疑う、ということはそれを信じた友人であるさやかを疑うこと。誰かを失うことに恐怖し、一人ぼっちだったマミはまだ完全に飲み込めないながらも、頭ごなしに否定することだけは避けていた。
そんなことでソウルジェムを見るたびに少々考え込んでしまうようになってしまったマミだが、その視界に入り込んだソウルジェムを見て、ある一つの可能性を見出す。
(まさか………私の代わりに魔女のパトロールを………?)
それが脳裏を過った瞬間、マミは指から指輪を取り外すと、形状を楕円形のアクセサリーに変える。魔力を反応を探って、さやかの場所を特定するためだ。完全に思いつきの発想だったがーーーーー
(やっぱり反応があった!!ここら然程離れていない、よかったーーーー)
マミのソウルジェムにさやかの魔力の反応があったことにひとまずの安堵の息を吐く。しかし、その反応の隣には長らく見てはいなかったが、見知った魔力の反応もあった。
(どうしてあの子がここに…………?)
突然戻ってきた知り合いの魔力反応。普通であれば喜ばしいことだが、マミは素直には喜んでいないような顔を見せる。
(…………あまりいい予感はしないわね。)
険しい顔つきを見せたマミは足早にさやかの魔力反応があった地点へと向かう。
もしかしたら、旧友に銃口を向けざるを得ないやるせない思いを抱きながら…………。
路地から響き渡る甲高い音。しかし、その音は鋭く、響き渡るたびに鉄のような何かがぶつかり合っているようにも聞こえる。その音の間隔もどんどんと短くなっていく。
打ち合うスピードが両者ともに加速しているのか、はたまた片方がもう片方を一方的に攻撃しているか。
「ッ……………グゥ……………!!!」
そのどちらかであれ、両手でサーベルを握りしめたさやかは相手の苛烈を極める猛攻にはじき飛ばされ、地面から砂埃を生み出しながら後退させられる。
特徴的な青を基調とした騎士甲冑は所々がえぐられたように破損し、たなびかせていた白いマントもあちこちが汚れ、端が不均等にちぎれているなど、明確な怪我を負っていないだけマシだが、見るからにボロボロの様子であった。
疲労もかなり溜まっているのか、既に荒い息を吐きながら肩で息をしているという有様であった。
「おいおいそんなもんかよ、こっちはまだ有り余っているぜぇ?」
対する少女はまだ余裕と言った佇まいで汗一つすらかかず、息も全く上がっていなかった。その現実にさやかは苦い表情を禁じ得ず、舌打ちのような悪態しか付くことができなかった。
(奴がベテランなのは分かっていたが…………ここまで力量に差があるとは………!!)
それでも逃走を図ることが難しいなら、立ち向かう他に方法はない。そのままむざむざと目の前の少女の遊び道具として終わるつもりはさらさらない。
一度大きく息をついたさやかはサーベルを構えなおし、少女の次の攻撃に備える。
(…………すぐにぶっ潰せると思っていたが、中々まぁ持ち堪えるじゃねぇか…………。)
一方の少女も余裕の表情とは裏腹に内心ではさやかと似たような苦い表情を浮かべていた。
(少しずつ削っている感覚はあるが、野郎………決定打だけ確実に避けやがる………!!あの様子だともうそろそろ限界だろうよ。)
始めは猛烈な怒りを持ってさやかに襲いかかった少女。その怒りの火も決して収まった訳ではない。しかし、赤子の手をひねるように潰せると思っていた相手は今現実として外観はボロボロながらも目に宿った生気は失わずしっかりと両足で立ち続けていた。
(ちったあ手札切るか…………こんな奴に使うのも尺に触るんだけどよ………!!)
(こんな大馬鹿野郎を野放しにしておく方がよっぽど頭に来るんだよ!!!!)
鬼気迫る表情を浮かべた少女は槍を構え直すとさやかに向かって突進を仕掛ける。
対するさやかは構えた状態からサーベルの剣先を少女に向けるだけで、受けの姿勢を取る。槍と剣ではリーチに決定的な差がある以上、さやかには否が応でも初撃を避けた上で懐に入ることを強制される。それ故に受けの姿勢なのだろうがーーーー
「おらぁ!!」
少女は槍を振り上げるとさやかに向けて振り下ろす。飛んでくるであろう攻撃に身構えると何気なく違和感を覚える。少女の振り上げた槍と少女自身を見比べるとその違和感にすぐに気づいた。
(間合いが遠い?)
先ほどまで打ち合っていたのもあってなんとなく間合いを体で覚えたさやかはそのことに眉を潜める。しかし、攻撃が避けやすくなったのであればその後の反撃も容易くなる。さやかはタイミングを見定めてサーベルを構えるがーーー
「なっ!?」
さやかは驚愕したような表情を浮かべる。振り下ろされた槍の穂先はさやかを捉えずに地面に突き刺さるが、少女はその槍の柄を棒高跳びの要領でしならせると、空高くへと飛び上がる。本来硬いはずの槍の柄がしなやかに、そして伸縮するという想定外にさやかは思わず意識を外され、目線が少女に向く。
空高く飛んだ少女は槍の柄を元の長さに戻すと、空中で振り回しながら今度は槍そのものを巨大化させる。
「ッ…………!!」
目に見える異常に意識を戻したさやかは咄嗟にその場を飛び退いた。直後、巨大化した槍がその膨大な質量を持って、さやかが直前までいた場所の地面を粉々に粉砕する。
「この戦いに…………意味はない……………!!!」
「はっ!!まだんなこと言ってんのかよ!!トーシローらしい甘ちゃんっぷりだな!!!」
巨大な槍が地面に激突した衝撃波に煽られながら呟いたさやかの言葉だったが、少女には耳ざとく聞かれていたようで、貶すような口調でさやかに暴言を吐く。
「この際だから言っておくけどさ!!使い魔なんて言うのは本当は戦うに値しねぇんだよ!!無駄以外の何物でもねぇ!!そんなのはさっさと4、5人食わせて魔女にさせた方がいいんだよ!!」
「……………………正気か?」
巨大化した槍を元の大きさに戻しながら少女は槍の穂先をさやかに突き付けながら使い魔についての自論を述べる。その自論にさやかは疑う訳でもなく、だからと言って怒りを露わにするわけでもなく、ただ淡々と少女に問いかける。
「それはこっちのセリフなんだよ!!魔法少女にとってグリーフシードを落とす魔女がいなければそのうちやっていけなくなる!!そんな当たり前のこともわかんねぇのかよ!!」
向けられた槍のように鋭い剣幕でまくし立てる少女にさやかは顔を背け、悲痛な面持ちを見せる。その様子に少女は一瞬、現実を認識してくれたのだと思ったがーーーー
「分かっている。だが、その犠牲になった人間には必ず家族がいる。だが魔女に喰われた人間は死体すら、現実世界に戻ってくることはない。その遺族は探し続けるだろう。ずっと…………遺体すら帰ってこない家族を見つけるために…………。」
その静かな語り口のまま、さやかは少女にその悲痛な面持ちを向ける。家族、という単語に少女は苦渋の表情を見せ、顔を俯かせる。
「そんなものは、私達が直面するであろう現実より、悲惨なものだ。お前にはそれがわからないのか?お前が死ねば、家族はお前を見つけるためにずっと探し続ける。そんな枷を、お前は家族に押し付けるのか?お前の言っていることはそれと同じことだ。」
「だからお前は使い魔でも潰すってか?」
「……………見かけたら、倒すだけだ。」
さやかから俯いた少女の影を伺うことはできない。ただ、この戦いを止めたいと思う気持ちから少々卑怯ながら、家族を折り合いに出した。そのことが少しでも少女の心中に引っかかってくれればいい、そんな思いだった。
「ーーーーーーーーーーーーーーあたしには関係ないね。」
しかし、その言葉と同時に少女は槍を振るう。明らかにリーチは足りていなかったはずだが、突然、槍の柄が分離し、その間から鎖を覗かせると、遠心力のかかった攻撃がさやかに襲いかかる。
「ッ………クッ………!?」
不意打ちにも等しい少女の攻撃に思わずさやかは目を見開きながらもその攻撃をサーベルで防ぐ。しかし、勢いまでは殺しきれずに防いだとはいえモロに受けたさやかは吹っ飛ばされ、建物の外壁に体を打ち付ける。
「カハ…………!!」
壁に体を打ち付けたことにより、肺から息を吐き出され、痛みに思考がぼやける。背中からずり落ちるように地面にへたり込んださやかは痛みに悶えながらも不意打ちを仕掛けてきた少女に目線を向ける。
「あたしには家族なんていねぇんだよ。みんな揃って死んじまったからな。」
その少女の目は酷く冷たかった。冷え切ったその目には怒気が見え隠れしていた。
「ハァ…………ハァ…………。」
胸の痛みに表情を歪ませながら、さやかはなんとか立ち上がる。しかし、足元はふらつき、立っているのがやっとだった。もはや勝負はついた。これ以上の戦いはまさに無意味だ。それでも少女はその槍の穂先をさやかに突きつける。
「やっぱお前、一回痛い目にあった方がいいな。これ以上、馬鹿な真似なんかしでかさないようにな。」
少女の言葉にさやかは鋭い目線で返す。
「安心しな、命までは取らねえよ。せいぜい三ヶ月くらいの重傷を受けてもらうだけだ。そんだけの怪我をすりゃあ、ちっとは懲りるだろ。」
呟くようにそういうと少女は高々と槍を振り上げる。さやかは少女が向けている目線からその狙いが腕、もしくは足の四肢を狙っていると推測する。
しかし、推測したところで、今のさやかに動く余力は戻っていない。
(……………私は…………死ぬのか?)
胸の痛みに耐えるので精一杯のさやかに少女の言葉は耳に届かない。しかし、目の前に掲げられた槍の煌めきが、さやかの脳裏に『死』のイメージを強烈に焼き付ける。
(ここで私が死ねば、何も変わらない…………ただ死因が違うだけで、何も変わらない…………!!)
思い浮かぶのはほむらの姿。ここでさやかが死んでしまえば、彼女にとって魔女化した『美樹さやか』と同じような運命を辿ったようなものだろう。そしてそのまま刻が流れれば、いずれまどかが契約し、またほむらは果てしない時間の旅に旅立ってしまうだろう。
(変わらないんだ!!このままでは何も!!だから、
自分自身を、友人を、魔法少女を。
変わらない今日から明日を、未来へと続く明日を、切り開くためにーーーーーーーーーーーーーー
「わ………た………し………は…………!!」
「チッ、まだ喋れんのかよ………いい加減にーーーーー」
「私達は………………変わるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そのさやかの絶叫、叫びが薄暗い路地に響いた瞬間、さやかの体ーーーーーーー具体的に言えばソウルジェムから溢れ出んばかりの光が路地を照らす。
「なーーーーーーなん、だよ、この
突然の変化に少女は思わず後ずさる。しかし、その光が特に何か影響を与えているわけではないとわかるとすぐさま体勢を立て直した。
「どういうカラクリだか知らねえけどよ、その訳のわかんねぇ光を出すのをやめろぉ!!!」
人間、原理がわからないものには恐怖心を抱く。その心情を示すように少女は槍を振り上げると光を生み出している元凶であるさやかに向けて振り下ろす。
しかし、その槍は何か硬いものにぶつかったような音を立て、受け止められる。
「なにっ!?」
少女が驚愕といった顔を浮かべたと同時に光の奔流が鳴りを潜める。光が収まるとその中から、槍を受け止め、さやかと少女の間に立ち塞がるように突き刺さっている人間の身の丈ほどと大きさをした、白と青の物体が姿を表す。
「た………盾かっ!?」
「剣だッ!!!」
その巨体に少女は思わずその物体が盾かと叫ぶが、さやかはまるでその物体を心得ているように剣であると叫ぶ。
そしてさやかはその巨大な剣の上部に腕を伸ばすと、取手のような部分を掴み、突き刺さった地面から引っこ抜き、勢いそのまま横一文字に振り回した。
「うおッ…………!!?」
振り回した剣の風圧に少女の体は思わずのけぞり、さやかと距離を取るために後退する。
「ッ…………テメェ…………なんなんだよ、その姿は!!!」
一度下がり、さやかの全体像を見た少女は険しい表情を浮かべながらさやかに質問をぶつける。
さやかのその姿は先ほどまでの騎士甲冑姿とは違い、濃い青などの青色を基調とした制服のような姿となり、携えた巨大な剣とは別に、腰に刀身の長さが違う2振りの剣、両膝に備え付けられた刀身の幅が広い武装があった。
そして右肩には銃身が長く、その下部にクリアグリーンの部品が付けられた銃が、そして何より目を引くのが、両肩の、先ほど溢れ出た淡い緑色と淡い水色に輝く粒子を出している同じ形をしたコーン型の物体。
「これが……………私の、魔法少女としての力だッ!!!」
少女は今、変革の刻を迎えたーーーーーーーーーー
「刹那、まだ見ているのか?いくら気になる存在があったとはいえ、量子ワープには時間制限がある。これ以上はミッションの進行に障害がーーーー」
「ティエリア、これを見てくれ。」
何かを見ている男の姿とその男に小言をいっている妖精のような半透明の体を持った人。
小言をいう人に、男は唐突に自身が見ている映像を見せる。
そこにはさやかの姿が映し出されていた。そしてーーーー
「こ、これは…………ツインドライヴ………!?それにダブルオーか、この装備は………!?」
「ああ。」
「なぜ彼女がツインドライヴを………それにかなりの小型化を可能にしている!?」
「わからない。それこそ、彼女がいる世界に存在する、魔法と呼ばれるものかもしれない。だが、これだけは言える。」
彼女は、確実にイノベイターだ。